鐘ガ岳と日向山    2003年10月12日

コース:広沢寺温泉入り口〜鐘ガ岳〜七沢温泉〜日向山〜日向薬師


 伊豆ガ岳から次の山までだいぶ空いてしまうので、ギリギリになってから会の山行に申し込んだ。Tリーダーの山行は3度目、大体3年ぶりになる。
実はこの会に入っての初山行がTさんで、九鬼山だった。その後随分経ってからの2度目は二子山から武川岳で、その時も「久しぶりだね。前回は〇年の〇月△日の××山だったね。」と非常に記憶力がよい方なので、 余計に普段のご無沙汰で肩身が狭い。

 今回は丹沢でも低山で陽だまりハイクに向くような山だが、連休の中日で他の山行は殆どが泊り、日帰りで近場というとこれしかない。
これしかない、というと非常に聞こえは悪いが、でもよく名前を聞く山だし、足慣らしにも丁度よいので楽しみに出かける。
実はほんの2,3日前にMリーダーから電話があって、「13日にまた行こうかってことになっているけど。」と個人山行のお誘いが。伊豆ガ岳の時にそんな話が出て、気にしていたのだが、数日前になっても 連絡がなかったので、催促するのも申し訳ないと思い、Tリーダーのこの山行に申し込んだところだった。
「すみません、Tさんのに申し込んだところなんです。」・・・う〜ん、残念。

 さて、今回は朝もゆっくりなのが嬉しい。くるくる変わる天気予報によれば、朝は雨でもすぐに上がるという。今回は本降りなら中止、ということになっているが、多分決行だろう。
小田急に乗って本厚木で降りる。9:00集合、バスは9:20発。多分人数は少ないと思うが、改札を出ると、見慣れた女性が1人待っていた。Kさんだ。
「誰もこないから、どうしようかと思っていたところよ。Tさんはいつも早いのに、今日はまだ誰も来ていないから、1人で行くのもイヤだしなあって思っていたの。」
あらまあ。でもこれで2人。しばらく待っていると改札からまた見覚えのある顔の男性が1人。会釈する。もうしばらくすると、なんとご近所のY子さんが!
「あれ〜?Y子さんも?」「そうなのよ。実はMさんから電話を貰って、それも直前だったから、私も少し前にTさんの山行に申し込みました、って答えたら、あなたも来るってそこで聞いたので、 今日は安心して来たのよ。」

 さらに見覚えのある男性がもう一人。9:00になったがまだリーダーが来ない。おかしいなあ。朝の雨で中止にしたのかなあ?
でも、これで五人。山へは行ける。・・・9:05になる。バスの時間もあるし、みんなで相談しようか、と思った矢先、
改札からTリーダーが出てきた。なんとMさんも!
「あれ〜?Mさんも?」「そうなのよ。明日は天気も悪そうだし、昨日の夜電話して、私も来ちゃった。」
あっという間に2人のリーダーも加わって総勢7名になった。外はもう傘も不要で、明るくなっている。バスに乗ろうと外へ出るが、Tリーダーはバス停を探している。
切符売りのおばさんがいたので尋ねると、「あっちのサティーって書いてあるビルまで行って乗って。」・・・どうやらバスターミナルができた?らしい。少し離れているのでちょっと焦る。
歩道から下に潜ることになるが、バスターミナルから乗るしかないようだ。結構地下通路も広くて分かりにくい。指示された9番乗り場も見当たらず、一瞬焦るが、何とか見つけてギリギリセーフ。
結局、駅前には停まらず、このターミナルの次は駅前からまっすぐに伸びる通りの予備校前だった。かなり変わってしまったらしい。

 広沢寺温泉入り口で降りる。バス通りから枝分かれした立派な舗装道路が左へ伸び、上の方には「鐘ガ嶽方面」の看板まである。鐘ガ"嶽"の文字を見て、一同「わ〜凄い山に登るみたいだね。」
歩いて行くとすぐにまたバス停があり、また標識があるので分かりやすい。ここを下っていくと、今度は民家の間を縫うように進み、枝道があってちょっと迷う。「鐘ガ嶽はどっちですか?」なんて尋ねながらようやく石段前に到着。(10:10)


鐘ガ嶽への上り口

 今朝までの雨もありなんだか滑りそう。石段を上がってようやく登山道となる。
鹿避けか、有刺鉄線が張り巡らされている。最初の頃は、〇丁目と彫ってある石柱の上に小さな石仏が乗っており、信仰の厚さを物語る。どんどんその数字は増えていき、 「いくつまであるのかしらね。20丁目くらいかな?」

 急ぐ旅でもなし、何故か会の昔話(?)が延々と続く中、見上げると坂の上に空がみえる。
やっぱり20丁目で終わりかなあ、楽勝だね、と思ったら何と!まだ上がある。しかも、石段の連続。
急で狭いので登山靴だと歩きにくい。しかもどんどん1段1段の奥行きは狭くなり、それが傾いていたりして、 「これは手すりがないから、降りる時は怖いねえ。」と男性が漏らすほど。
・・・空は重く空気もむ〜っとして、とても10月とは思えない蒸し暑さ。汗が噴出し、結構大変になってくる。
イヤになるほど石段を登ってようやく社が見える。でも本当の頂上はもう少し先にあり、靄がかかったような山頂には先客がいた。
山頂にはあれ?人が2人いるのかな??と思うような石像が無造作に立っている。不思議な光景だ。

 時刻も11:30過ぎとなって、昼食にする。なんだかじめじめしていて展望もないし、いまいちだなあ、と思っていると、 先客の方から「きゃ〜!」と声が上がる。何事かと思ったら「ヒルだ!」
え〜、うっそ〜こんな所にいるの?!

と、その時「いやだ、私のズボンにも1匹いるわ!」とY子さん。・・・え、これがヒル?
初めて見るヒルは、予想外に小さくて、ちょっと黒っぽい。体長1センチほどで、Y子さんのズボンの裾を登っている。
ヒルは人の気配を感じて木の上からも降ってくるという。
うわ、っとみんないっせいに地面から立ち上がり、上を見て、木の枝の伸びていない場所を探して移動するも、目は地面にくぎ付け。地面にも這っていたら・・・?!

先客の方はもう血を吸われたらしく、男性陣から「血が出るまで気がつかないのかなあ。」という声があがると「わからないのよ。後からかゆくなって気がつくんだから。」とKさん。
いずれにせよ、丹沢にはヒルがいる、とは耳にタコができるほど聞いてはいたものの、10月だし、この561mの山頂にいるなんて、夢にも思わなかった。
お陰で昼食も落ち着かないし、Mさんなどは傘をさして立って食べている。あ〜最悪・・・。

 立つ時もザックを背負う時もよ〜く見て、ヒルを連れてこないように気をつける。
12:20に出発。今度は尾根を下って山神の隧道へ向かう。
どうも花が少なく、せっかくY子さんがいるのに残念。でも、マツカゼソウを初めて見たので、覚えることができた。
さて、すぐに隧道へ出る。実はここも懐かしい場所。まだ会に入りたての頃、会員みんなで様々なルートから大山へ上ったとき、私はここから登る、不動尻コースを選んだ。その時初めて、 今では一番お世話になっているIリーダーと一緒に、お話しながら先頭を歩いたような記憶がある。
"弱い人が先頭に"は山の大原則である。何年前の話になるのだろう・・・。

 そんなことを思い浮かべつつ、これからは長い車道歩き。ここから延々広沢寺方面に戻り、大沢でV字に向きを変えて日向山へ向かうのだ。
車道歩きは私のもっとも苦手とすることである。が、顔見知りばかりだし、それぞれに話しに花を咲かせながらどんどん歩いて行く。
分岐はどこかなあ、と昭文社の地図を取り出して眺めつつ歩く。随分歩いたなあと思っていると道は広くなって、広沢寺温泉を通過し、Tリーダーはまだまだ歩いていく。
まだなのかなあ、もうそろそろなのでは?と思っていると、「日向薬師→」という標識があって、地図と見比べるとちょっと分岐の角度が違うような気もするが、 いい加減で曲がらないと日向山に行けない感じになってきたので、先を行っているリーダーを呼び止めてバックしてもらう。

しかし、もう完全に街中の道となり、なんだか変だ、変だと思っているとまた広い道にぶつかったので標識を探すと、あった。
「←日向薬師・順礼峠  :関東ふれあいの道:  七沢温泉・日向薬師→」となっている。あれ〜?なんで??
日向薬師方面に行けば必ず日向山に出るはずだが、正反対の向きに両方載っているのはなぜだろう。それに、持っている地図とは全く一致しない。でも、Tさんは「こっち、こっち。」とすたすた歩き出すので、 後をついていく。車道を登っていくとだんだん道幅も狭くなってきて、何と七沢温泉に出てしまった。
ここで初めて、「さっき広沢寺温泉の前を通ったよねえ。ってことは、大沢の分岐より随分先に行ってしまったってことでしょう。」とNさん。再度地図を見ればまさにそのとおり。全くもう、私もまだまだ地図読みができていないこと。
こういう里山こそ、1/25000の地形図でしっかり読まないといけないなあと痛感。
結局、随分と遠回りをして(もう相当の時間を車道歩きに費やしている)、ようやく現在地が確認できたことになる。

 気を取り直して、日向山登山口を探す。当初は大沢川沿いに歩いて弁財天のあたりから日向山に登るはずが、今は山の反対側から登ること位置になっている。
でも、現在地さえ確認できれば、また地図に沿って歩けばいいだけだ。「この先で右側に登山口があるはずですよね」と言うとNさんは「さっき聞いたら左に登山口があるって言ってたよ。」・・・え?
しかし、Mさん、Y子さんは今年の2月に一度ここへ来たそうで、その時も迷ったとか。そのうちに、「ああ、そうそう、こんな所だったわよねえ。」
ようやく道の右側に登り口が見えてきた。


右手に登山口を確認する

時計を見ると既に14:20になっている。Nさんが「自分ひとりだったらもう登らないようなあ。温泉に入ってビールだね。」と笑う。
とにかく、車道歩きで脚が痛くなってきたから、山道は嬉しい。


日向山登山口(「日向薬師ハイキングコース」の表示)

これも小さな小さな山(404m)なのに、階段があったりして楽には登らせてくれない。しかし、何とか15:05に到着。
先客は何と外国人の若い男性だった。Kさんが話し掛けている。が、彼は日本語は分からないようだ。手に持っていたのは、日本語の簡単なイラスト地図。
どうしようかな〜と思ったが、Kさんが話し掛けたこともあり、ちょっと私も話し掛けてみる。すると嬉しそうに反応が返ってきた。
伊勢原に住んでいるという。自転車で下の登山口まできたらしい。明日は秩父から奥多摩まで縦走したい、という。一人で?と聞くとそうだ、というので、 「熊が出るかもしれないから鈴をつけていったほうがいい。」と言うと、信じられないという表情で"Bear?Bear!?"と聞き返す。

 あの、動物のクマのことか?とまで言うので、そうだ、と言うと、 「誰も教えてくれなかった。」とショックを受けている。「どんな大きさか、クマが出たらどうするのか?銃を携帯するのか?」と聞かれて私もびっくり。
いえいえ、鈴を鳴らして歩けば熊が避けてくれるから、と説明する。どんな鈴がいいのか見せてくれ、というのでザックを探すと今日は家に置いてきてしまったようだ。
一生懸命ガサゴソ探していたら、もういいです、ありがとう、というのでカウベル(cow bell)みたいな物でよい、と言ったら安心したようだ。

しかし、英語版の地図を探しているのだが、というが丸善や三省堂に行けばあるのだろうか・・・。
とにかく、街中で話し掛けてもみんな英語は分からないと言って逃げてしまう、と嘆いているので、いやいや、日本人は大体英語が分かるけど、発音が・・・とか文法が・・・と 思って尻込みしているだけだ、と説明しておいた。
それにしても、私が話す英語は中学生並み。あ〜まだまだ修行が足りない。発音"だけ"はネイティブ並み(?)なので、英語はどこの国で習ったのか、と誉めてはくれたけど。(笑)

さて、ようやく最後の下山、と思ったら、これがまた曲者。何と殆ど鎖が張ってある急勾配の狭い道だ。スリップ注意、最後まで気が抜けない。それに、ここでズボンを汚したくないし。
Tリーダーはもうお話に夢中で、お陰で私も会の人物相関関係に相当詳しくなった。(笑) もっとも、一番驚いたのは、 うちの会が昔は20代の若者ばっかりだった、ということだ。

 山道もすぐに日向薬師に出て、ちょっとお参りし、近道だと聞いて神社の境内を抜けてバス停へ。
16:07、長い一日だった。
教訓:里山や市街地を抜ける時こそ、地形図をキチンと携帯いたしませう。


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