岩手山と姫神山 2002年8月2日夜行〜4日
岩手山:馬返し登山口(柳沢コース)〜山頂〜焼走り登山口
姫神山:一本杉登山口〜山頂〜一本杉登山口
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22時、マイクロバスで池袋を出発。途中だんだん天気が崩れてくる感じ。夜が明けると霧雨が降っている。岩手山に近づいても何も見えないのは残念だ。
バスが1本道の坂道を上り詰めると広大な駐車場へ。馬返し登山口だ。さすがに広い。雨は止む気配もなく、合羽を着て歩くことにする。キャンプ場があり、豊富な水が流れている。その脇を通って山に入る。
今日はロングコース。コースタイムで7時間余り、標高差も相当ある。(登山口630m、頂上2038m、約1,400mはかなりのもの。)覚悟して歩き始める。
岩手山は活火山で、現在解放されているコースは地図のちょうど右半分、山頂から東側の4コースのみ。
6:45、歩き始める。このコースは、一合目までが長い。1時間とガイドブックにある。但し、その後は5合目までがさらに1時間、8合目で1時間、山頂まで50分という間隔だ。山頂のコマクサは楽しみだが、ほかに花はあるのか?
・・・と思って見回すと意外に種類がある。初めて見る花で、小さな紫の釣鐘の先の4つの花弁がくるっと巻き上がっているものが大変目立つ。(後で調べるとどうやらクサボタンらしい。)背丈もそこそこあり、大きな株だ。
<クサボタン>
ようやく1合目に到着。みんなも「え?まだ1合目なの〜?」と溜息。
背の低い木に白い小さな花が咲いている。これはなんだろう?と思って歩いていくうちに、咲いた花の形から「ミヤマ・ホツツジ」と分かった。しかし、相変わらず完全に咲いていないと確信が持てないものばかり。(勉強が足りません!)
2合目から新道と旧道に分かれるが、旧道は展望のよい尾根コース、悪天候時には新道を、と本にあったが、私たちは樹林帯の新道(右側の道)を行く。
このあたりでようやく合羽を脱いで、少し楽になるが、急登が連続し、暑さと寝不足のトリプルパンチで苦しい。
と、私の前の男性がかなり苦しそうで、フラフラしているので、M子リーダーに声をかけて臨時休憩。先頭の女性も相当遅れているので、相談の結果、この2人は残念だがここで引き返すことになる。バスは12時まで待っていてくれることになっているので安心だ。
気を取り直し、少しだけペースも上がってまた登りつづける。しかし、暑いし苦しいのには変わりない。新道と旧道はごく近くを並行しているので、時々「連絡通路」がある。休憩の時に向こうが見えた。尾根を行く登山者がゴマ粒のように見える。景色はよさそうだが、暑いだろうなあ・・・。合流するのは7合目だ。
<向こうは見晴らしのよい旧道>
だんだん日が差してきて、明るくなってきた。お花も沢山咲いている。ホトトギスの黄色い花、カラマツソウの白い花、かわいいハクサンオミナエシ、そしてときどきランが・・・。う〜ん、分からない。少なくとも2種類の違う花を見たが、1つはツレサギソウのようでもある。一度専門の図鑑を買ってじっくり比較してみたいと思う。
あとは私にも分かる花でアオヤギソウが沢山咲いているが、さすがに地味なので先を行くメンバーの誰一人として「あ、アオヤギソウだ。」の声は上がらない。でも、よく見ると結構可憐な花なんだけどなあ・・・。
<アオヤギソウ>
そのうちに苦しい登りもようやく一段落して、8合目の避難小屋前にでた。立派な小屋(というより建物)と、豊富に湧き出る水場があって、冷たい水は本当においしい。登山者が一杯集まっている。流石に100名山。只今の時刻10:55、途中でいろいろあったものの,5時間かかっている。
しかし、このあたりは何とお花畑!
早池峰で見たようなトウチソウの白い花が沢山咲いている。(シロバナ・トウチソウ)葉っぱの形がそっくりだ。早池峰のはピンクの花だが,白も綺麗だ。
<シロバナ・トウチソウ>
ミネ・ウスユキソウも群落を作っている。
<ミネウスユキソウ>
さらにセリ科の白い花が咲いているが、同定が難しいので最初から諦めている私・・・。
あとはヨツバシオガマ、ハクサンシャジン、それにミヤマ・ハンショウヅルが何とそこここにた〜くさん。こんなに群生しているのは初めて見た。アキノキリンソウも咲いている。これだけ豊かな花畑は、噴火のため登山規制をしているからかもしれないな,と思う。人が入らなければ,自然はこんなに豊かなのだろうな。・・・複雑な心境だ。
<紫の小さい花はミヤマ・ハンショウヅル>
このあたりは山頂がよく見える。ザレた道が続いている。ジグザクに山頂までの道が見える。
<もうすぐ山頂>
すると、ザレ場にはコマクサとイワブクロ(タルマイソウ)が一杯!!見事なものだ。
<イワブクロ> |
<コマクサ> |
お釜の周りを取り囲む外輪山の上で昼食。イワブクロには白い花のものもある。M子リーダーが以前来た時は猛烈な風で飛ばされそうになり、地形も風景もどこをどう歩いたか記憶にないほどだ、という。今回は多少の風はあるものの、安全に登頂できそうで、ほっとする。
最高地点の薬師岳は目の前に聳えている。昼食を済ませて外輪山を歩くと小さな石仏が短い間隔で沢山立っている。富士山の山頂のお釜巡りを思い出しながら、最後の坂を登ると最高地点、2038m。写真の順番待ちが大変だ。
展望はないが、長い登りもこれで終わりと思うとほっとする。
コマクサは焼走りコースにも沢山あると聞いて期待しながら下山にかかる。
降りてすぐの平笠不動避難小屋へは通行止めで行かれない。代わりに簡易トイレが2基設置してあるが、中はハエが凄い数で・・・出来ることならドアを開けたままで使いたいくらいだった。でも、ないよりは遥かにましである。
ザレた下りは歩きにくい。しかし、コマクサと、今度は初めてイワギキョウが顔を出してくれた。本当にかわいい花だ!
<イワギキョウ>
コースが変わると見事に花の種類も変わる。面白いものだ。5合目のツルハシ分岐を過ぎると地図上でも真っ直ぐなトラバースルートになっている。まるで海岸を歩くような砂礫地を下っていく。これは脚には非常に厳しい。
しかし、この厳しさを補って余りある、斜面一杯のコマクサの大群落にはびっくりした。山頂まで見渡す限りの斜面をコマクサと、オヤマソバと、タルマイソウが埋め尽くしている。北アルプスでもこんな数は見たことがない。
作業をしていた人に聞くと、これも登山規制の賜物だそうだ。
壮観、とはまさにこのことを言うのだろう。
さて、膝が痛くなりそうなころようやく第1噴出口へ。ここでコースは左へ降りていく。だんだん傾斜も緩むはずだが、しばらくはまだ滑りやすい道を降りていく。
疲れもあって、男性陣もズルっと音を立てて何人かが滑った。
随分歩いたなあと思っても登山口は遠い。時々、焼走り登山口まで○kmとあるが、その数字がなかなか減らない。3キロ,2キロ,1キロになってからは流石に平坦になったが、なかなか辿り着かない。
溶岩流のすぐ左を歩いているのだが、壁のように高いので、溶岩流の跡は見えない。軽井沢の鬼押し出しのようになっているらしい。
5合目のツルハシ分岐から2時間、ようやく駐車場に到着。4:10になっていた。
本当に花の多い山だったが、大きな立派な山だけに体力も要る。現在は期間を限って解放されているが、夏〜秋を過ぎればまた登山規制になり,登れない。岩手山にはHPもあり、情報が載っているので、よく確認の上計画する必要がある。
*姫神山*
翌日は姫神山。標高は低いながらも綺麗な三角形をした目立つ山だ。
近づくと「第1駐車場」があるが、これはキャンプの人向け?で、通り過ぎると大きな駐車場がある。ここが登山口。標識やトイレもある。
<クリックで拡大図になります>
コースタイムは短くて、登り1.5時間、下り1時間という。
朝5時30分に宿を出発、6:00に登山開始。岩手の名水20選という清水があるという。100選ではなく20選なんだから大したものだ、という話も出る。
歩き始めると見慣れぬ大きな植物が左右に沢山生えている。地味な花も咲いているが、これは何かな。(どうやらアラシグサというらしい。)
あとは白いホトトギス、キンミズヒキ、そんなところだ。
しかし、90分で着くとはいえ、急登と階段というWパンチだ。昨夜は余り眠れなかったのと、荷物を軽くしないでザックを担いで来たせいか、体が重い。
階段状の道はその名も「ざんげ坂」・・・う〜ん、何を懺悔すればいいのかなあ。
樹林帯の中、まだ6時過ぎというのに蒸し暑い。
<樹林帯の中,急登は続く>
すると、遠雷のような音がする。「朝早くからまた演習なのかしらね。」という声。
「いや、この音は雷だよ。」「ええ?ホント?」・・・気配だけで通り過ぎてくれることを祈りつつ、やっと5合目で休憩、次も急登が待っている。
昨日の疲れと筋肉痛で、だんだん遅れてくる。毎度のパターンながら、小さい山も侮れません・・・。まあいいや、とゆっくりマイペース。最後尾でとぼとぼ歩く。
しかし、だんだん空も暗くなり始め、雷が近づいてくるような・・・。
「やばいんじゃないの?」と男性陣から声が上がる。「僕は前に岩手山でとんでもない目に会って命からがら逃げ出しだんだよ。」
いよいよ雨も降り出してきた。傘をさす人(←「そのうち通り過ぎるさ。」と思う人。)あり、合羽を着る人(←「いや、ザーっと来よ。」の人。)に分かれるが、6:4で合羽の勝ち。私は期待も込めて、暑さに負けることもあって傘派。
8合目をようやくすぎて、最後の登りにかかる。雷の音が近くなり、「ヤバイよ、これ,絶対。」とさっきの男性。大きな岩がごろごろしてくる。確か山頂は巨岩がならび、遮るものもないはず・・・。
多分あと100mもあれば山頂か、という時に豪雨となって、雷が大音響で迫ってきた。「キャー,怖いよ〜!!助けて〜。」と本気で叫んでも、本隊はどんどん進む。
ピカッ、どどど〜ん!!
・・・もう近いんじゃない?そろそろ木も低くなって、傘なんか指していられない。いや、その前に傘ではずぶ濡れになってきた。しかし、間近の山頂をめざしてみんなは進む。
とうとう岩の合間を縫って登る地点で、最後尾の雷経験者の男性と私は「もう怖いから、登らない!ちょっと下の平らな岩陰で待っています。」と戦列から離脱。
更に近づく雷の気配を背中に感じながら、必死に下る。もう肩袖は水が滴っている。小さな傘なんて何の役にも立たない。
とにかく、樹林帯の、ひさしのように伸びた平らな岩陰に入り、ほっとする。
ゴ〜!と音を立てて、登山道はあっという間に川になる。これは大変だ。
標高1000mあたりにいると雷が本当に近い。ピカっとなるたびに身を縮める怖さ。みんなは登頂できたのだろうか。
そう思ったらサブリーダーが駆け下りてきて、「下山!登頂は諦めた。」と叫ぶ。
我々も傘を片手にほとんどずぶ濡れで、もう奔流となった登山道(いや、川か。)を滑らないように、且つ出来るだけ速く駆け下りる。その間にも雷鳴が轟き、思わず「キャー!」と傘を放り出してしまった私。
どんどん背の高い樹林の中を降りていくと、待って〜の声。リーダーが追いついて、順序を元に戻してからまた下りる。「滑るから気をつけてね!」の声。
しかし、まだ全然安心はできない。雷は轟き、雨は激しく叩きつけ、いつの間にか靴のなかもズコズコ音を立てている。あ〜あ、水が入っちゃった,と思うがもうズボンもびしょぬれ、脚に生地が張り付いて、傘なんてあってもなくても変わりない。
もっとも合羽組も上下しっかり着込んだ人はいないので下半身はみんな同じくずぶぬれ。まあ見事にびっしょりだ。
しかし、こんな朝早くからこの雷雨には正直びっくりした。
本当に雷雲の中に入ると金属が帯電して音を立てるという。そんな経験をした人も中にいるので、これでも本当はまだ危険ではないのかもしれないが、私もまだ死にたくない!と本気で思うほど怖かった。
(ちなみにリーダーは雷のせいではなく、この大雨で登山道が川になって危険という判断から撤退を決めたそうだ。)
というわけで駐車場に降りると水が滴っている。が、なんと空は雲が切れて明るくなってきた。タイミングが悪いのか・・・。でも仕方ない。またの機会にとっておこう。その時には涼しい季節に楽々と登りたいものだ。
昨日の民宿でシャワーを借り、着替えをしてようやくほっとする。
サンダルのない人は、途中で買って、ようやくビールで乾杯!タイムとなる。
帰りには中尊寺によって観光が出来た。金色堂まで入り口から1キロもあるのには驚いた。往時は大変な勢力を誇り、沢山の塔頭(たっちゅう)があったという。
その中でも峯薬師堂には私好みのこんなものまで!
<背中に子カエルまで乗ってます>
久しぶりに山行で一緒になったLillyさんと一緒に観光し、最後にソフトクリームを食べて(ゴマソフトはまあまあのお味。)後は長〜〜い帰路についた。
ちなみにこの遠距離の道中ほとんど途切れなく雷雨に会って、速度制限50キロばかりだった。運転のS社長は疲れただろうなあ。岩手山では売りにきたという無農薬トマトを氷水で冷やして待っていてくれた。こんなおいしいトマト、初めて食べた。S社長,いつも有難う!