グループホームでの原状回復『闘争』記 07/06/20更新


グループホームを退所するにあたり、ホーム側と居室の原状回復を巡って揉めています。
入所者の立場の弱さと、契約書の内容が遵守されない点について大きな問題があると思っています。
どのような形で決着するか分かりませんが、同じような立場の方の参考になればと思い、少し詳しく書いてみます。

★07/06/12に解決しました。★
最新事項(6/20)


<<概要>>
ほぼ2年過ごしたグループホームを退所するにあたり、父が使っていた個室(契約上は「居室」と呼ぶ)内の『原状回復』費用の負担を求められる。
具体的には、観音開きの扉に大きな傷(穴)をつけたことと、出入り口の引き戸の下部の線状の傷などの修復費用の全額負担を求められた。
ホーム長曰く、「扉全体を替えた方が穴の補修より安上がりと業者が言っている。まだいくらになるか全く分からないが、個室内のことは入所者側で負担してもらう。」

・私の主張
穴だけ塞げばよいはずで、扉全体を替える必要はない。替える場合は全額負担は納得できない。

・ホーム長の主張
食堂や廊下など共用部分はホーム側が、居室内の原状回復は入所者が負担すると契約書に明記してあるはず。

・その後
契約書を熟読し、原状回復費は実は全く負担する必要はない、という結論に達する。
契約書の条項に言及しホーム長にその旨伝えると、ホーム長は感情的になり全く話し合いにならない。
しかたなく会社が設けているコールセンターに電話し、その結果、本社の人間と名乗る相手との交渉となる。
電話口で、ホーム長の対応を侘び、見積もりが出たら話し合うことになる。「もしその金額が高いと思うようでしたら、また話し合いで。」とのこと。

<<詳細と問題点>>
まず、傷について。車椅子ごと転倒した際に、ベニヤ板を破って穴を開けたものと思われる。目撃者なし、本人の記憶なし。
ただ、自室内のことであり、高さや形状から父が車椅子を使用中に転倒などにより開けた事はほぼ間違いと思う。
そのため、穴の補修に関しては応分の負担はやむをえないと考える。


↑傷の拡大画像。10cm×5cm程度。

←扉(内側)の左側中央やや下のへこみが傷。


入口の引き戸下部の傷。

ところが、契約書と重要事項説明書を読むと、予想外にも(?)原状回復費は不要と明記されている。
それにもかかわらず、堂々と請求し、実際、これまでの退所者からは支払わせていたことを伺わせる対応ぶり。
非常に憤りを感じ、弁護士の無料相談を利用し、こちらの主張の正当性を確信する。

本社の交渉相手には「今後一切は書面で請求するように」依頼。退所から2週間ほどになるが、未だに請求書は届いていない。

<契約書の内容について>
まず、入所者は「サービス契約書」と「重要事項説明書」を読み合わせ、捺印し、1年ごとに更改する。
今回の件に関連する箇所は以下の通り。

サービス契約書
第18条(損害賠償)
3.お客様及び身元引受人は、お客様の故意又は重過失によりグループホームの居室または共同の益に供する場所の備品について通常の保守及び管理の程度を越える補修等が必要となったときは、その費用を分担するものとします。
サービス重要事項説明書
第8条(料金)
2.生活料金
(1)入居金
入居金は、ご入居後5年以内に退居される場合、ご入居月数に応じて下記の計算式により償却した金額を差し引いてご返金させて頂きます。なお、5年経過後は入居金の返金はございません。また、5年経過後、追加入居金は必要ございません。
・計算式:償却額=300,000円/60ヶ月×ご入居月数
※入居金には原状回復費が含まれております。退去時の追加請求はございません。

これを読む限りでは、父が『故意または重過失』によって穴を開けたり傷をつけたとは解釈できない(注:グループホームとは認知症の人のみを対象とした施設。認知症の人で車椅子使用は当然だし、転倒も十分想定内のはず。)
また、父は2年入所したので入居金として12万円を支払うことになる。条文によれば、この12万円で「原状回復」費用を賄うという考え方のはず。
もしも今回、補修費が12万円で収まらないとしたらそれは私にとっては「法外な」請求と解釈する。

・弁護士によれば、
原状回復費については、借家人の敷金関連で、原状回復費については判例も多数あり、ガイドラインも明記されているので、今回のケースをそれに当てはめれば、傷の補修は最低限(1枚壁紙を張る程度の負担)ですむ。
ただし、このような介護施設内での原状回復費の負担についてはまだ判例が無いが、借家人の場合と同等に考えてよいだろうとのこと。

また、通常は契約書に、原状回復費は入所者の負担と書いてあるので、その場合には請求される。(ただし、例えば扉全体を替える費用の全額負担は過剰とのこと。)
うちの場合には、「契約書に『原状回復費が含まれる』と書いてあるのだから、払う必要はない、でよいでしょう。」とのこと。

さて、ホーム側はどう出るか、今後の対応が気になるところ。

07/05/某日
契約書では退居に伴う清算は1ヶ月以内とあるのに、全く連絡無し。そのためこちらから連絡すると、扉の交換で9万円かかったという。
入居金の2年相当分(12万円)で賄えるので追加請求はないですね、と念を押すとそうだというので電話を切る。
近日中に精算書を送るというが、これで無事落着?

07/05/31
退居に伴う精算書が届く。電話の内容とは裏腹に、9万円が返還金(入居金の未償却分、18万円)から差し引かれている。
これはやはりもう一度交渉しなければならない。
少額訴訟も考えて交渉する予定。まだ連絡はない。

07/06/02
やっと担当者から電話。とにかく、退居した人には全て同様の対応を取ってきたという。
電話の話と違うではないかと言っても、のらりくらり。結局、契約書の内容については別の部署の担当者から後日連絡するということで決裂。
この数日、少額訴訟のサイトをあちこち読んで策を練っているところ。
1つ気になるのは、少額訴訟ではなく通常の訴訟への移行を会社側が考えるという事態があるかどうか。(まあ費用対効果の面で見合わないのでありえないとは思うが。)
そうなると厄介だが・・・。
そろそろお金を払って専門家に相談すべきか・・・。
いろいろ思案中。

07/06/12
先日、9万円の領収書さえ送ってこないので、11日までに送ることと、直した部分の写真を送るようにホームにFAXしたが、返事なし。
大体、お金を引き落としておいて、その領収書をよこさないとは何事かと思う。
仕方ないので、今度は東京弁護士会の法律相談を利用することにする。
まず電話で相談し、必要に応じて有料の相談が利用できる。
電話(無料)での相談もとても親身で安心したが、面談して詳しく相談することに決めた。(30分5250円)

私が相談したのは高齢者・障害者向けの窓口(オアシス)で、相談内容は、「成年後見制度、財産管理、介護契約・老人ホームへの入所契約に関する問題、介護サービスについての不服申立、精神保健福祉法に基づく退院請求等に関する問題」となっている。
東京弁護士会高齢者・障害者総合支援センター(オアシス)

他に一般の民事などは同じ東京弁護士会で同様に相談窓口がある。

電話では様々な解決方法を教えてくれたが、工務店で今回の修理に掛かる一般的な費用の見積もりを取るとよいと言われ、普段頼んでいる工務店に電話したところ、快く無料で見積もりを作ってくれることになった。

07/06/12 18時
担当者から電話。「当方の説明不足等によるものですので、全額ご返却させて頂きます」とのこと。
やっと勝ち取った。頑張って交渉した甲斐があったと思う。
ちなみに、交渉相手は実は今大騒ぎになっている大手のC社。この大騒ぎで一体どうなることかと思ったが、無事解決できて本当によかった。
ご心配下さった皆様に感謝いたします。

なお、工務店に写真を持参して見積もりをお願いしてあったので早速お礼の電話をすると、もう見積もりを作ってくれていて、もし扉1枚を交換したとしても3万円位という話だった。
ただ、実際にも部分的修復よりは1枚取り替えるほうが一般的ということと、更に見開きであったので、2枚同時に交換した可能性が高いという話だった。

実際にC社が扉を交換したかどうか分からないが、少なくとも今までは領収書を退去者(お金を払った人)に渡さず、さらに会社の経費として落としていたのではないか。(当然それが公表されたら大変。)
また、そもそも契約書と異なる対応が現場で行われていたことを認めたようなものだろう。
本当にいい加減さに呆れる。

ただ、正当な主張をするのでさえ、これだけの労力と時間、忍耐が必要で、もし高齢者の配偶者のみが立ち向かうには困難が伴うと思う。
でも、正しいと思ったことは頑張って主張してみましょう。何か参考になることが含まれていれば幸いです。

07/06/20
本日、確かに口座に9万円振り込まれました。全て終わりました。

<参考サイト>
第三者機関として「運営適正化委員会」というものが自治体にあるという。東京都の場合はこちら
裁判以外・以前の交渉として相談できるそうです。(弁護士会から紹介されました。)

国土交通省:原状回復ガイドライン

東京都都市整備局のHP(賃貸住宅トラブル防止)

いずれも借家の場合ですが、ご参考までに。


戻る