荒野の声 NO.40

ゴグの戦乱はいつ起こるのか

 先日、イスラエルの貧困層を支援する、Bridge for Peaceという団体の女性の責任者の講演を聞いた。世界各国から帰還したユダヤ人たちの中には貧しい人々も居ていくつかのキリスト教団体が支援活動をしている。これは歴史的にユダヤ人を苦しめたキリスト教から謝罪と援助をしようという働きで、それはそれで良い事である。特に、イスラエルの貧困層は正真のセム系ユダヤ人スファラデイである可能性が高いから(世界的に豊かなユダヤ人はハム系のハザールユダヤ、アシケナジーという)なおさらである。
 講演は中々興味深いことが多かったが、その中で、一つどうしても違うと思うことがあった。かなり、キリスト教信仰の内容に属することなのだが、全ての人と無関係ではないのでここに明確にしておきたい。それは私がしきりに言う、ゴグ、マゴグの戦乱に関することである。そして、これはキリスト教会全般に信じられている誤解である。
 ゴグ、マゴグに関して、聖書は二度言及している。一度目はエゼキエル書38、39章である。二度目は黙示録20章である。エゼキエル書の方は長いことと、何度も取り上げたのでここには載せないが、黙示録の方は次のような記事である。

20:7 千年の期間が終ると、サタンはその獄から解放される。 20:8 そして、出て行き、地の四方にいる諸国民、すなわちゴグ、マゴグを惑わし、彼らを戦いのために召集する。その数は、海の砂のように多い。 20:9 彼らは地上の広い所に上ってきて、聖徒たちの陣営と愛されていた都とを包囲した。すると、天から火が下ってきて、彼らを焼き尽した。 20:10 そして、彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄との池に投げ込まれた。そこには、獣もにせ預言者もいて、彼らは世々限りなく日夜、苦しめられるのである。

 このことからゴグ、マゴグの戦乱は、キリストの再臨の後に来る千年王国の後の出来事だと彼女は言った。それはキリスト教会全般に為されている解釈でもある。次の図参照

     私の解釈          一般的な解釈
       ゴグマゴグの乱       反キリストの登場
       反キリストの登場      ハルマゲドン
       キリストの再臨       ユダヤ人の悔い改め
       ハルマゲドン        キリストの再臨
       ユダヤ人の悔い改め     千年王国
       千年王国          ゴグマゴグ
       最後の審判         最後の審判
       新天新地          新天新地

 この内、千年王国については、私は本当に千年もあるのか、どういう形態なのか、皆目見当がつかない。彼女によれば、その時、アブラハム、イサク、ヤコブが復活して、イスラエルによる世界統治が為されると言う。これは初耳で驚いた。聖書から言えば、確かに、神はこの3人に大イスラエルを与えると言ったが、それは実現しなかったから、そのために、復活するのだというのだが、こうなるとほとんどお手上げである。

 ― これから、いささか難しくなるが忍耐されたい ―

 エゼキエル書の場合、ゴグは「マゴグの地のゴグ」とあるが、黙示録では「地の四方にいる諸国民、すなわちゴグ、マゴグ」とあってマゴグが民族の名となっている。さらにエゼキエル書では「メシェクとトバル大君」とあって現在のモスクワ、トボルスク地方を指しており、また38章15節には「北の果てのあなたの地」とあって、ゴグは明らかにイスラエルの北方の民族である。しかし、黙示録では「地の四方にいる諸国民」とあって全く違う概念である。さらにゴグと行動を共にする国が「ペルシャ、エチオピヤ、プテ」すなわち「イラン、エチオピア、リビア」と限定されている。それは現時点でそのまま通用する国名であって、黙示録にはそのような記述はない。
 「地の四方にいる諸国民」という記述は明らかに、ロシアのような一国を指す言葉ではない。これは非常に不可解で、現在の世界とは全く一致しないから、エゼキエル書のように東欧諸国を指すと思われる、「ゴメルとそのすべての軍隊、北の果のベテ・トガルマと、そのすべての軍隊など、多くの民もあなたと共におる。」という言葉や「 シバ、デダン、タルシシの商人、およびそのもろもろの村々はあなたに言う、『あなたは物を奪うために来たのか。物をかすめるために軍隊を集めたのか。あなたは金銀を持ち去り、家畜と貨財とを取りあげ、大いに物を奪おうとするのか』と。」というようにヨーロッパを指すと思われる記述も当てはまらない。要するに、黙示録のゴグ、マゴグは今の世界とは全くかけ離れた世界で、推測することは困難である。強いて言えば、ロシアが中東に侵攻して、同士討ちによって壊滅してから、ユダヤ人がパレスチナから追放されたように、ロシア民族が追放されて、世界に散らばるのかもしれない。
さらに、エゼキエル書では、ゴグの死体を捜す係り、それを埋める係りまでが詳述されていて、とても千年王国の後の決定的な神権の支配する世界とは言えない。まだ、世界は続くと思われる書き方である。そして、エゼキエル書は次の40章に、新しい神殿建設の設計図が描かれている。黙示録ではその後に続くものは永遠の世界、天的なエルサレムの降下となる。
 そういうわけで、ゴグ、マゴグは千年王国の後に起こることではなく、間もなく起こる第三次世界大戦のことだと、私は推測する。