ヨシュアは自分の死を迎えるに当たって、最後のメッセージを語ります。切々とした彼の心情が伝わってきます。いつも思うのですが、ここに書かれていることは3000年以上前のことです。日本ならまだ歴史以前の神話の世界です。それがまるでヨシュアの息遣いが分かるかのようなリアリテイをもって伝わって来るのはすごいことですね。
23:1 主が周囲のすべての敵から守って、イスラエルに安住を許されて後、多くの日がたち、ヨシュアは年を重ねて老人になっていた。 23:2 ヨシュアは全イスラエル、その長老たちや、かしらたちや、さばきつかさたち、およびつかさたちを呼び寄せて彼らに言った。「私は年を重ねて、老人になった。 23:3 あなたがたは、あなたがたの神、主が、あなたがたのために、これらすべての国々に行なったことをことごとく見た。あなたがたのために戦ったのは、あなたがたの神、主だからである。
どんな偉大な指導者もいつかは死にます。それが人間の定めです。ヨシュアもモーセの従者として仕えて、その偉大な人物の後継者という困難な仕事をやり遂げました。「あなたがたのために戦ったのは、あなた方の神、主だからである」。彼は全く自分の功績について語ることはしません。
23:4 見よ。私は、ヨルダン川から日の入るほうの大海まで、これらの残っている国々と、すでに私が断ち滅ぼしたすべての国々とを、相続地として、くじによってあなたがたの部族に分け与えた。
23:5 あなたがたの神、主ご自身が、あなたがたの前から彼らを追いやり、あなたがたの目の前から追い払う。あなたがたは、あなたがたの神、主があなたがたに告げたように、彼らの地を占領しなければならない。
「占領しなければならない」とあるのはまだ多くの異民族が残っていたからです。約束の地も祝福も、棚から牡丹餅のように降ってくるものではなく戦って勝ち取るものだと思わされます。霊的祝福も同じでしょう。
23:6 あなたがたは、モーセの律法の書にしるされていることを、ことごとく断固として守り行ない、そこから右にも左にもそれてはならない。 23:7 あなたがたは、これらの国民、あなたがたの中に残っているこれらの国民と交わってはならない。彼らの神々の名を口にしてはならない。それらによって誓ってはならない。それらに仕えてはならない。それらを拝んではならない。
23:8 ただ、今日までしてきたように、あなたがたの神、主にすがらなければならない。
他の民族と交流し、彼らの神々を信じたりすることは神様が一番嫌われることでした。イスラエルは人類の代表として選ばれたからです。ヨシュアにとって本当に心配なことだったでしょう。
23:9 主が、大きくて強い国々を、あなたがたの前から追い払ったので、今日まで、だれもあなたがたの前に立ちはだかることのできる者はいなかった。 23:10 あなたがたのひとりだけで千人を追うことができる。あなたがたの神、主ご自身が、あなたがたに約束したとおり、あなたがたのために戦われるからである。 23:11 あなたがたは、十分に気をつけて、あなたがたの神、主を愛しなさい。
神が共に居られるなら一人が千人を追うことが出来る。これは誇張ではなく事実なのです。ここで神を崇めなさいではなく、愛しなさいと言われていることに注意しましょう。他の宗教と比べると実に奇妙な言葉です。これが聖書の神の特性です。神は恐れたり遠くから崇めるものではなく、親しく愛する方なのです。
23:12 しかし、もしもあなたがたが、もう一度堕落して、これらの国民の生き残っている者、すなわち、あなたがたの中に残っている者たちと親しく交わり、彼らと互いに縁を結び、あなたがたが彼らの中にはいって行き、彼らもあなたがたの中にはいって来るなら、 23:13 あなたがたの神、主は、もはやこれらの国民を、あなたがたの前から追い払わないことを、しかと知らなければならない。彼らは、あなたがたにとって、わなとなり、落とし穴となり、あなたがたのわき腹にむちとなり、あなたがたの目にとげとなり、あなたがたはついに、あなたがたの神、主があなたがたに与えたこの良い地から、滅びうせる。
この予言は事実となったことを覚えます。北朝イスラエルはBC 年にアッシリアに、南朝ユダはBC 年にバビロンに滅ぼされてイスラエル民族はこの約束の地から追放されました。
23:14 見よ。きょう、私は世のすべての人の行く道を行こうとしている。あなたがたは、心を尽くし、精神を尽くして知らなければならない。あなたがたの神、主が、あなたがたについて約束したすべての良いことが一つもたがわなかったことを。それは、一つもたがわず、みな、あなたがたのために実現した。 23:15 あなたがたの神、主があなたがたについて約束したすべての良いことが、あなたがたに実現したように、主はまた、すべての悪いことをあなたがたにもたらし、ついには、あなたがたの神、主が、あなたがたに与えたこの良い地から、あなたがたを根絶やしにする。
23:16 主があなたがたに命じたあなたがたの神、主の契約を、あなたがたが破り、行って、ほかの神々に仕え、それらを拝むなら、主の怒りはあなたがたに向かって燃え上がり、あなたがたは主があなたがたに与えられたこの良い地から、ただちに滅びうせる。」
ヨシュアはもう一度、神への信仰を失わないように警告します。
■ヨシュア (〈ヘ〉yehosua, yehosua,〈ヘ〉〈ア〉yesua,〈ギ〉Iesous)
1.エフライム部族のかしらエリシャマ(民1:10)の子ヌンの子(T歴7:27).彼はホセア(「救い」という意味)と呼ばれていたが,モーセによってヨシュア(「主は救い」という意味)に改名された(民13:8,16).新約聖書ではギリシヤ語でイエースースと呼ばれている(使7:45,ヘブ4:8).
ヨシュアはまだ若者であった時にモーセに仕え,モーセを通して主に従うことを学んだ.彼のことは出エジプト記に最初に記されている.モーセがレフィディムでアマレクと戦った時,モーセは手を上げて祈り,ヨシュアは剣をもって戦い,これを打ち破った(出17:8‐16).ヨシュアはモーセに信頼されていた若者であって,モーセが神の山,シナイ山に登った時,ヨシュアはモーセの従者としてモーセと共に山に登った(出24:12‐14).さらにヨシュアには会見の幕屋の任務が託されていた(出33:11).
エルダデとメダデとが恍惚状態で預言していることについて,ヨシュアはモーセに抗議した(民11:26‐30).パランの荒野に宿営していた時,モーセはカナンの地を探らせるために12部族の中から1人ずつ選んだが,ヨシュアはエフライム部族の代表として選ばれた.この時彼はモーセによって「ホセア」から「ヨシュア」に改名された(民13:8,16).偵察から帰ってきた時,カナンの地は難攻不落であるとする10人に対し,ヨシュアとカレブだけは信仰を持ってカナンに攻め入ることを主張し,あやうく石打ちにされかかった(民14:6‐10).しかし主は彼らの信仰を顧みられた.後にカナンの地に入ることができたのはヨシュアとカレブの2人だけであった(民14:30,38,26:65).このようなことの後,ヨシュアはイスラエルの40年の荒野での放浪の終りに,祭司と会衆の前でモーセの後継者として任命された(民27:16‐23,申1:38).モーセの死が近づいてきた時,ヨシュアは会見の幕屋でモーセの務めを受け継いだ(申31:14,23).
モーセの死後,ヨシュアはヨルダン川を渡れとの命令を神から受けた.彼はその準備に3日を費やした(ヨシ1:11).ヨシュアはルベンとガドとマナセの半部族の相続地としてモーセを通して約束された通りにヨルダン川の東側を与えた.このことを通してヨシュアが主に忠実であることが示され,民もヨシュアに忠誠を誓うことになった(ヨシ1:12‐18).ヨシュアは2人の者をエリコの偵察に遣わし,エリコの町がすでに主によってイスラエルに渡されていることを確信してヨルダン川を渡った(ヨシ2‐3章).ヨルダン川を渡ってからヨシュアは主の命令に従って民に割礼を施した(ヨシ5:2‐9).エリコの攻略を通してヨシュアはカナンの占領が主の戦いであることを知った(ヨシ5:13‐6:21).
アイの町の攻略においてはアカンの罪のゆえに非常な困難を経験させられた.しかしここでも罪を取り除くということで主の道が備えられることを知った(ヨシ7‐8章).アイを打ち破った後,ヨシュアはエバル山でイスラエルの神のために一つの祭壇を築き,民に律法のことばを読み聞かせた(ヨシ8:30‐35).カナンの地での最後の決戦はハツォルの王ヤビンとの戦いであった.ヨシュアは町を焼き,王を殺し,分捕り物をイスラエルの戦利品とした(ヨシ11:11).
カナンの地を占領した後のヨシュアの任務は,カナンの地を12部族に分け与えることであった(ヨシ13‐19章).この時,ヨシュアはすでに年を重ねて老人になっていた(ヨシ13:1).12部族への分割を終え,ヨシュアはエフライムの山地のティムナテ・セラフを自分の相続地として与えられた(ヨシ19:49‐50).彼はそこに町を建てて住んだ.イスラエルに定住の地が与えられてからも,ヨシュアは民の指導者であった.ヨシュアはイスラエルの全部族をシェケムに集めて,決別の説教をした.ヨシュアはイスラエルの民が異教の神を捨て,主を恐れ,誠実と真実をもって主に仕えるように誓わせた(ヨシ24章).その後ヨシュアは110歳で死に,エフライムの山地の自分の相続地のティムナテ・セラフに葬られた(ヨシ24:30).