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ヨシュア記  No. Z アイの攻略とギブオンの策略

 8章はアイの町を攻め取る話ですが、非常に単純でほとんど説明を要しないところです。その上、いわゆる戦記物で勝利の報告ですから、イスラエル民族なら血沸き肉踊るのでしょうが、我々異邦人は何となく複雑な気持ちになります。聖絶という言葉がさびしく聞こえるのですが、これもネピリムとの混血という説明以外はなかなか納得いかないでしょう。
 ヨシュアは部隊を二つに分け、町の後方に伏兵を設けて挟み撃ちにします。こうしてアイを完全に滅ぼしつくします。一つ気をつけたいのは、エリコの場合、どんな物品も持って来てはならなかったのですが、アイの場合は許可されていることです。この違いはなぜだか分かりません。霊的な意味でもあるのでしょうか。(ちなみにエリコは「薫り高い」、アイは「山」と言う意味です。)
 9章はイスラエルを恐れ、策略をめぐらして滅ぼされるのを逃れるギブオン(口語訳はギベオン、新共同訳はギブオン、KJV、TEV は Gibeon 、丘という意味)などの町々の話です。これはヨシュアたちが神様の御旨を尋ねなかった失敗の記録です。ギブオンは10章2節では「大きな町であって、王国の都の一つのようであり、またアイよりも大きくて、そこの人々はみな勇士たちであった」とあります。
9:1 さて、ヨルダン川のこちら側の山地、低地、およびレバノンの前の大海の全沿岸のヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の王たちはみな、これを聞き、 9:2 相集まり、一つになってヨシュアおよびイスラエルと戦おうとした。 9:3 しかし、ギブオンの住民たちは、ヨシュアがエリコとアイに対して行なったことを聞いて、 9:4 彼らもまた計略をめぐらし、変装を企てた。彼らは古びた袋と古びて破れたのに継ぎを当てたぶどう酒の皮袋とを、ろばに負わせ、 9:5 繕った古いはきものを足にはき、古びた着物を身に着けた。彼らの食料のパンは、みなかわいて、ぼろぼろになっていた。 9:6 こうして、彼らはギルガルの陣営のヨシュアのところに来て、彼とイスラエルの人々に言った。「私たちは遠い国からまいりました。ですから、今、私たちと盟約を結んでください。」
9:7 イスラエルの人々は、そのヒビ人たちに言った。「たぶんあなたがたは私たちの中に住んでいるのだろう。どうして私たちがあなたがたと盟約を結ぶことができようか。」 9:8 すると、彼らはヨシュアに言った。「私たちはあなたのしもべです。」しかしヨシュアは彼らに言った。「あなたがたはだれだ。どこから来たのか。」 9:9 彼らは言った。「しもべどもは、あなたの神、主の名を聞いて、非常に遠い国からまいりました。私たちは主のうわさ、および主がエジプトで行なわれたすべての事、 9:10 主がヨルダン川の向こう側のエモリ人のふたりの王、ヘシュボンの王シホン、およびアシュタロテにいたバシャンの王オグになさったすべての事を聞いたからです。
9:11 それで、私たちの長老たちや、私たちの国の住民はみな、私たちに言いました。『あなたがたは、旅のための食料を手に持って、彼らに会いに出かけよ。そして彼らに、私たちはあなたがたのしもべです。それで、今、私たちと盟約を結んでくださいと言え。』 9:12 この私たちのパンは、私たちがあなたがたのところに来ようとして出た日に、それぞれの家から、まだあたたかなのを、食料として準備したのですが、今はもう、ご覧のとおり、かわいて、ぼろぼろになってしまいました。 9:13 また、ぶどう酒を満たしたこれらの皮袋も、新しかったのですが、ご覧のとおり、破れてしまいました。私たちのこの着物も、はきものも、非常に長い旅のために、古びてしまいました。」 9:14 そこで人々は、彼らの食料のいくらかを取ったが、主の指示を仰がなかった。
 何とも牧歌的な物語ですが、ヨシュアたちは見事に引っかかったのです。古いパンとぶどう酒の古い皮袋に騙されて、彼らが遠くから来たと思いました。「主の指示を仰がなかった」と言う言葉は非常に重い言葉です。
9:15 ヨシュアが彼らと和を講じ、彼らを生かしてやるとの盟約を結んだとき、会衆の上に立つ族長たちは、彼らに誓った。 9:16 彼らと盟約を結んで後三日たったとき、人々は、彼らが近くの者たちで、自分たちの中に住んでいるということを聞いた。 9:17 それから、イスラエル人は旅立って、三日目に彼らの町々に着いた。彼らの町々とは、ギブオン、ケフィラ、ベエロテ、およびキルヤテ・エアリムであった。 9:18 会衆の上に立つ族長たちがすでにイスラエルの神、主にかけて彼らに誓っていたので、イスラエル人は彼らを打たなかった。しかし、全会衆は族長たちに向かって不平を鳴らした。
 一旦結ばれた契約は変えられません。人間同士の約束でも、神の前で誓ったものは変えられないのです。これは私たちも気をつけなければならないことですね。
9:19 そこで族長たちはみな、全会衆に言った。「私たちはイスラエルの神、主にかけて彼らに誓った。だから今、私たちは彼らに触れることはできない。 9:20 私たちは彼らにこうしよう。彼らを生かしておこう。そうすれば、私たちが彼らに誓った誓いのために、御怒りが私たちの上に下らないだろう。」 9:21 族長たちが全会衆に、「彼らを生かしておこう。」と言ったので、彼らは全会衆のために、たきぎを割る者、水を汲む者となった。族長たちが彼らに言ったとおりである。
9:22 ヨシュアは彼らを呼び寄せて、彼らに次のように言った。「あなたがたは、私たちの中に住んでいながら、なぜ、『私たちはあなたがたから非常に遠い所にいる。』と言って、私たちを欺いたのか。 9:23 今、あなたがたはのろわれ、あなたがたはいつまでも奴隷となり、私の神の家のために、たきぎを割る者、水を汲む者となる。」 9:24 すると、彼らはヨシュアに答えて言った。「あなたの神、主がそのしもべモーセに、この全土をあなたがたに与え、その地の住民のすべてをあなたがたの前から滅ぼしてしまうようにと、お命じになったことを、このあなたのしもべどもは、はっきり知らされたのです。ですから、あなたがたの前で私たちのいのちが失われるのを、非常に恐れたので、このようなことをしたのです。 9:25 ご覧ください。私たちは今、あなたの手の中にあります。あなたのお気に召すように、お目にかなうように私たちをお扱いください。」 9:26 ヨシュアは彼らにそのようにし、彼らをイスラエル人の手から救って、殺さなかった。 9:27 こうしてヨシュアは、その日、彼らを会衆のため、また主の祭壇のため、主が選ばれた場所で、たきぎを割る者、水を汲む者とした。今日もそうである。
 こうして、これらの町々の人々はイスラエルの奴隷となりました。これは一面、非常に危険なことでもありました。内側から攻められることもあるからです。また、混血も起こりうるでしょう。ヨシュアの失敗の例として記録されたのでしょう。