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ヨシュア記  No.V ヨルダン川渡河

3:1 ヨシュアは翌朝早く、イスラエル人全部といっしょに、シティムを出発してヨルダン川の川岸まで行き、それを渡る前に、そこに泊まった。 3:2 三日たってから、つかさたちは宿営の中を巡り、
3:3 民に命じて言った。「あなたがたは、あなたがたの神、主の契約の箱を見、レビ人の祭司たちが、それをかついでいるのを見たなら、あなたがたのいる所を発って、そのうしろを進まなければならない。 3:4 あなたがたと箱との間には、約二千キュビトの距離をおかなければならない。それに近づいてはならない。それは、あなたがたの行くべき道を知るためである。あなたがたは、今までこの道を通ったことがないからだ。」
 神様はヨシュアの時代に、イスラエルの民に、あの出エジプトの紅海を渡った奇跡をもう一度経験させました。紅海を割ったように、ヨルダン川をせき止めたのです。2000キュビトは約900メートルです。契約の箱が先頭に立ちました。神の臨在がイスラエルを覆っていました。
3:5 ヨシュアは民に言った。「あなたがたの身をきよめなさい。あす、主が、あなたがたのうちで不思議を行なわれるから。」 3:6 ヨシュアは祭司たちに命じて言った。「契約の箱をかつぎ、民の先頭に立って渡りなさい。」そこで、彼らは契約の箱をかつぎ、民の先頭に立って行った。
3:7 主はヨシュアに仰せられた。「きょうから、わたしはイスラエル全体の見ている前で、あなたを大いなる者としよう。それは、わたしがモーセとともにいたように、あなたとともにいることを、彼らが知るためである。 3:8 あなたは契約の箱をかつぐ祭司たちに命じてこう言え。『ヨルダン川の水ぎわに来たとき、あなたがたはヨルダン川の中に立たなければならない。』」
 川の向こうは敵地です。祭司と契約の箱は常に最前線にいました。紅海を渡った世代はほとんど死に絶え、当時の子供たちが中心でした。彼らは話に聞いていたモーセの紅海を割る奇跡を、ちょっと小さいけれど目の当たりにしたのです。
3:9 ヨシュアはイスラエル人に言った。「ここに近づき、あなたがたの神、主のことばを聞きなさい。」 3:10 ヨシュアは言った。「生ける神があなたがたのうちにおられ、あなたがたの前から、カナン人、ヘテ人、ヒビ人、ペリジ人、ギルガシ人、エモリ人、エブス人を、必ず追い払われることを、次のことで知らなければならない。 3:11 見よ。全地の主の契約の箱が、あなたがたの先頭に立って、ヨルダン川を渡ろうとしている。 3:12 今、部族ごとにひとりずつ、イスラエルの部族の中から十二人を選び出しなさい。 3:13 全地の主である主の箱をかつぐ祭司たちの足の裏が、ヨルダン川の水の中にとどまると、ヨルダン川の水は、上から流れ下って来る水がせきとめられ、せきをなして立つようになる。」
3:14 民がヨルダン川を渡るために、天幕を発ったとき、契約の箱をかつぐ祭司たちは民の先頭にいた。 3:15 箱をかつぐ者がヨルダン川まで来て、箱をかつぐ祭司たちの足が水ぎわに浸ったとき、――ヨルダン川は刈り入れの間中、岸いっぱいにあふれるのだが―― 3:16 上から流れ下る水はつっ立って、はるかかなたのツァレタンのそばにある町アダムのところで、せきをなして立ち、アラバの海、すなわち塩の海のほうに流れ下る水は完全にせきとめられた。民はエリコに面するところを渡った。 3:17 主の契約の箱をかつぐ祭司たちがヨルダン川の真中のかわいた地にしっかりと立つうちに、イスラエル全体は、かわいた地を通り、ついに民はすべてヨルダン川を渡り終わった。
 ヨルダン川はそれほど大河ではありません。しかし、この時期は川の幅は一杯に広がっていました。その水がはるか上流でダムにせき止められたもののように立ち上がりとどまったのです。彼らは父たちの話に聞いた奇跡を自分たちで経験しました。
4:1 民がすべてヨルダン川を渡り終わったとき、主はヨシュアに告げて仰せられた。 4:2 「民の中から十二人、部族ごとにひとりずつを選び出し、 4:3 彼らに命じて言え。『ヨルダン川の真中で、祭司たちの足が堅く立ったその所から十二の石を取り、それを持って来て、あなたがたが今夜泊まる宿営地にそれを据えよ。』」 4:4 そこで、ヨシュアはイスラエルの人々の中から、部族ごとにひとりずつ、あらかじめ用意しておいた十二人の者を召し出した。 4:5 ヨシュアは彼らに言った。「ヨルダン川の真中の、あなたがたの神、主の箱の前に渡って行って、イスラエルの子らの部族の数に合うように、各自、石一つずつを背負って来なさい。 4:6 それがあなたがたの間で、しるしとなるためである。後になって、あなたがたの子どもたちが、『これらの石はあなたがたにとってどういうものなのですか。』と聞いたなら、 4:7 あなたがたは彼らに言わなければならない。『ヨルダン川の水は、主の契約の箱の前でせきとめられた。箱がヨルダン川を渡るとき、ヨルダン川の水がせきとめられた。これらの石は永久にイスラエル人の記念なのだ。』」 4:8 イスラエルの人々は、ヨシュアが命じたとおりにした。主がヨシュアに告げたとおり、イスラエルの子らの部族の数に合うように、ヨルダン川の真中から十二の石を取り、それを宿営地に運び、そこに据えた。 4:9 ――ヨシュアはヨルダン川の真中で、契約の箱をかつぐ祭司たちの足の立っていた場所の下にあった十二の石を、立てたのである。それが今日までそこにある。―― 4:10 箱をかつぐ祭司たちは、主がヨシュアに命じて民に告げさせたことがすべて終わるまで、ヨルダン川の真中に立っていた。すべてモーセがヨシュアに命じたとおりである。その間に民は急いで渡った。
 イスラエルの諸族が渡り終わるまで契約の箱とそれを担ぐ祭司たちは川底に立っていました。そして、あのホレブの山の時は各部族ごとに石のケルンを作りました。今度は十二部族で一つのケルンを作りました。それもヨルダン川の川底の石を担いでくるように命じられました。
4:11 民がすべて渡り終わったとき、主の箱が渡った。祭司たちは民の先頭に立ち、 4:12 ルベン人と、ガド人と、マナセの半部族は、モーセが彼らに告げたように、イスラエルの人々の先頭を隊を組んで進んだ。 4:13 いくさのために武装した約四万人が、エリコの草原で戦うために主の前を進んで行った。 4:14 その日、主は全イスラエルの見ている前でヨシュアを大いなる者とされたので、彼らは、モーセを恐れたように、ヨシュアをその一生の間恐れた。
 ルベン、ガド、マナセの半部族はその後ヨルダン川を戻ったのでしょう。この時は、イスラエルとして行動したのです。
 偉大な指導者の後を継ぐのは非常に困難な仕事ですが、神様はヨシュアをモーセと同じように愛されていることを示されたのです。
4:15 主がヨシュアに、 4:16 「あかしの箱をかつぐ祭司たちに命じて、ヨルダン川から上がって来させよ。」と仰せられたとき、 4:17 ヨシュアは祭司たちに、「ヨルダン川から上がって来なさい。」と命じた。 4:18 主の契約の箱をかつぐ祭司たちが、ヨルダン川の真中から上がって来て、祭司たちの足の裏が、かわいた地に上がったとき、ヨルダン川の水はもとの所に返って、以前のように、その岸いっぱいになった。
 このような現象は周りの民族の目の前で起こったのですから、それこそ大きなニュースとなったことでしょう。彼らは戦う前に恐れおののいたに違いありません。
4:19 民は第一の月の十日にヨルダン川から上がって、エリコの東の境にあるギルガルに宿営した。 4:20 ヨシュアは、彼らがヨルダン川から取って来たあの十二の石をギルガルに立てて、
4:21 イスラエルの人々に、次のように言った。「後になって、あなたがたの子どもたちがその父たちに、『これらの石はどういうものなのですか。』と聞いたなら、 4:22 あなたがたは、その子どもたちにこう言って教えなければならない。『イスラエルは、このヨルダン川のかわいた土の上を渡ったのだ。』 4:23 あなたがたの神、主は、あなたがたが渡ってしまうまで、あなたがたの前からヨルダン川の水をからしてくださった。ちょうど、あなたがたの神、主が葦の海になさったのと同じである。それを、私たちが渡り終わってしまうまで、私たちの前からからしてくださったのである。
4:24 それは、地のすべての民が、主の御手の強いことを知り、あなたがたがいつも、あなたがたの神、主を恐れるためである。」
 こうしてヨルダン川を渡りカナンに入ったのです。モーセの奇跡を再現する奇跡を見ながら、アブラハムに約束された「乳と蜜の流れる」地へ。

■ギルガル (〈ヘ〉gilgal) 「転がす」を意味する動詞〈ヘ〉ガーラルに由来する名詞で,ヨシ5:9によれば「エジプトのそしりを,あなたがたから取り除いた(〈ヘ〉ガーラル)」ゆえに,ギルガルと呼ばれた.しかし別の解釈ではギルガルは「石環」を意味し,神聖な大きな石の環が立てられているために名づけられた地名であると言う.1.ヨルダン渡渉後,イスラエル人が最初に宿営した地.カナン征服の軍事的根拠地となった(ヨシ4:19,5:10,9:6,10:6‐43).位置については,ヨルダン川とエリコの中間点という以外,あまりよく分っていない.J・マイレンバーグは,エリコの北東部にあるキルベト・エル・メフジルの北側と考える.それはヨセフォス,エウセビオスの記事や,考古学の試掘の結果,そこから初期鉄器時代の遺物が発見されたことによる(Bulletin of theAmerican Schools of Oriental Research,140,1955,pp.11‐27).イスラエル人はギルガルに,ヨルダン渡渉の記念として12の石を立てた(ヨシ4:20).またヨシュアはここで新しい世代の者たちに割礼を行った(ヨシ5:7‐9).またカナンにおける最初の過越のいけにえをささげた.そしてその翌日マナの降ることがやんだ(ヨシ5:10‐12).ここは前述のように,カナン征服の根拠地となった.
士師の時代に,主の使いがギルガルからボキムに上ってきた(士2:1).サムエルは毎年,ベテル,ギルガル,ミツパを巡回し(Tサム7:16),初代の王サウルはギルガルで王権を授与された(Tサム11:15).しかしそのギルガルで重大な罪を2度犯し,王位から退けられた.一つは勝手にいけにえをささげたことであり(Tサム13:9‐15),もう一つはアマレクの王アガグを許したことである(Tサム15:20‐23).ユダの部族の代表者たちは,アブシャロムの死後ダビデを歓迎するためにギルガルにやって来た(Uサム19:15,40).エリヤ,エリシャの時代,この地に預言者学校が建てられていた.エリヤは昇天前,ギルガルを出てベテルに「下って行った」(U列2:1‐2).この表現から,ある学者たちは,このギルガルを別の町,すなわちベテルの北11キロにある現在のジルジリヤと考える.しかし異論も多い.エリシャはこの地に戻った時,毒の入った煮物に麦粉を入れて毒を消し去った(U列4:38‐41).その後この地は偶像礼拝の中心地となり,預言者たちの叱責を受けた(ホセ4:15,9:15,12:11,アモ4:4,5:5).