そして、四代目の者たちが、ここに戻って来る。それはエモリ人の咎が、そのときまでに満ちることはないからである。創世記15:16
今週からヨシュア記を学びます。ヨシュア記を学ぶとき、どうしても頭に浮かぶのは現代のイスラエルとの類似点と相違点です。まずそれを考えて見ましょう。
ヨシュア記の場合、神からの明確な命令によるアブラハムへの“約束の地”の獲得でした。エジプトで奴隷となり、モーセによって出エジプト(英語ではExodus 脱出)し、アラビアで40年間放浪し、武力により当時幾つもの都市国家を形成していた多くの民族(総称してエモリ人またはカナン人)を滅ぼして住むように命じられたのです。それはこれらの民族が悪霊礼拝をし、子供をいけにえとして捧げる儀式を頻繁に行っていたこと、さらに、今イスラエルで語られているように、その地にはシホンのオグのようにレパイム(ネピリム)の血が濃淡はあっても流れていたことです。
一方、現代イスラエルは“約束の地”ではありましたが時期や方法は民族の“悲願”とも言うべきものでした。これは明確にしておかなければなりませんが、現代イスラエルは初めから武力でパレスチナ(カナン)に侵入したのではありません。パレスチナは長いオスマントルコの支配からイギリスによる委任統治になっていました。もともとパレスチナと言う国家はありませんでした。そこに世界中で迫害され、安住の地の無いユダヤ人が土地を購入して移り住んだのです。そして“シオンに帰ろう”という民族運動が起こりました。(これをシオニズム運動と呼びます。このシオニズムはその後大きな変貌を遂げます。)
これを最初に訴えたのはテオドール・ヘルツルです。彼は非常な苦労の末ユダヤ人を結集して国連に訴え、1948年にそれが認められてイスラエル国家が誕生しました。そこまでは何の戦争や紛争も無かったのです。しかし、独立宣言をするや、当時第二次世界大戦の直後に有り余るほどの武器を持つアラブ諸国ヨルダン、シリヤ、レバノン、エジプト、イラクなどの国々がイスラエル絶滅を宣言して襲い掛かったのです。イスラエルは三日と持たないと世界中が考えました、しかし、イスラエルは生き延び、むしろ占領地を広げていました。それから何度かの中東戦争によって現在のイスラエルが形成されました。この場合、偶像礼拝やネピリムとの混血と言う絶滅に値する“エモリ人の咎”はなかったと考えられます。
つまり、パレスチナ人が一方的にイスラエルの優勢な武力によって攻撃されて始まったというのは正しくなく、イスラエルがパレスチナ人の絶滅を図るとすればそれも正しくないのです。この二つを明確に認識すべきです。
私には現代イスラエルが聖書のアブラハムへの約束の実現なのかどうか判りません。しかし、事実としてイスラエルは存在し、さらにユーフラテス川からシナイ半島の途中までの大イスラエル(エレーツ・イスラエル)建設を目指していることは確かなことです。ちなみにイスラエルで使用されている10アグロット硬貨にはユーフラテスからエジプトの川までの“約束の地”の輪郭が描かれています。
良く間違えられるのですが、この“エジプトの川”はナイル川ではありません。アブラハムに約束されたこの国境はシナイ半島にある小さなワジ(涸れ川)です。イスラエルはエジプトとの戦争でも決してこの先は占領しませんでした。スエズ運河まで勝ち取った時もすんなりと返還しています。だからエジプトとの紛争は起きないのです。
1:1 さて、主のしもべモーセが死んで後、主はモーセの従者、ヌンの子ヨシュアに告げて仰せられた。
1:2 「わたしのしもべモーセは死んだ。今、あなたとこのすべての民は立って、このヨルダン川を渡り、わたしがイスラエルの人々に与えようとしている地に行け。 1:3 あなたがたが足の裏で踏む所はことごとく、わたしがモーセに約束したとおり、あなたがたに与えている。 1:4 あなたがたの領土は、この荒野とあのレバノンから、大河ユーフラテス、ヘテ人の全土および日の入るほうの大海に至るまでである。 1:5 あなたの一生の間、だれひとりとしてあなたの前に立ちはだかる者はいない。わたしは、モーセとともにいたように、あなたとともにいよう。わたしはあなたを見放さず、あなたを見捨てない。 1:6 強くあれ。雄々しくあれ。わたしが彼らに与えるとその先祖たちに誓った地を、あなたは、この民に継がせなければならないからだ。 1:7 ただ強く、雄々しくあって、わたしのしもべモーセがあなたに命じたすべての律法を守り行なえ。これを離れて右にも左にもそれてはならない。それは、あなたが行く所ではどこででも、あなたが栄えるためである。 1:8 この律法の書を、あなたの口から離さず、昼も夜もそれを口ずさまなければならない。そのうちにしるされているすべてのことを守り行なうためである。そうすれば、あなたのすることで繁栄し、また栄えることができるからである。 1:9 わたしはあなたに命じたではないか。強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。あなたの神、主が、あなたの行く所どこにでも、あなたとともにあるからである。」
何というねんごろな言葉でしょうか。天地を創造した全能者なる神が直接このような言葉を一人の人間にかけるものでしょうか。ヨシュアとはヘブル人によくある名前で「ヤハウエは救う」という意味で、ギリシャ語ではイエスと呼ばれた名前です。その意味で主イエスの一つの表れを示す偉大な名前です。彼はモーセに忠実に仕え立派な後継者となりました。
1:10 そこで、ヨシュアは民のつかさたちに命じて言った。 1:11 「宿営の中を巡って、民に命じて、『糧食の準備をしなさい。三日のうちに、あなたがたはこのヨルダン川を渡って、あなたがたの神、主があなたがたに与えて所有させようとしておられる地を占領するために、進んで行こうとしているのだから。』と言いなさい。」
ヨシュアは、いよいよ出撃の命令を下しました。
1:12 ヨシュアは、ルベン人、ガド人、およびマナセの半部族に、こう言った。 1:13 「主のしもべモーセがあなたがたに命じて、『あなたがたの神、主は、あなたがたに安住の地を与え、あなたがたにこの地を与える。』と言ったことばを思い出しなさい。 1:14 あなたがたの妻子と家畜とは、モーセがあなたがたに与えたヨルダン川のこちら側の地に、とどまらなければならない。しかし、あなたがたのうちの勇士は、みな編隊を組んで、あなたがたの同族よりも先に渡って、彼らを助けなければならない。 1:15 主が、あなたがたと同様、あなたがたの同族にも安住の地を与え、彼らもまた、あなたがたの神、主が与えようとしておられる地を所有するようになったなら、あなたがたは、主のしもべモーセがあなたがたに与えたヨルダン川のこちら側、日の上る方にある、あなたがたの所有地に帰って、それを所有することができる。」 1:16 彼らはヨシュアに答えて言った。「あなたが私たちに命じたことは、何でも行ないます。また、あなたが遣わす所、どこへでもまいります。 1:17 私たちは、モーセに聞き従ったように、あなたに聞き従います。ただ、あなたの神、主が、モーセとともにおられたように、あなたとともにおられますように。1:18 あなたの命令に逆らい、あなたが私たちに命じるどんなことばにも聞き従わない者があれば、その者は殺されなければなりません。ただ強く、雄々しくあってください。」
この箇所は民数記32章を思い出してください。
32:1 ルベン族とガド族は、非常に多くの家畜を持っていた。彼らがヤゼルの地とギルアデの地を見ると、その場所はほんとうに家畜に適した場所であったので、 32:2 ガド族とルベン族は、モーセと祭司エルアザルおよび会衆の上に立つ者たちのところに来て、次のように言った。 32:3 「アタロテ、ディボン、ヤゼル、ニムラ、ヘシュボン、エルアレ、セバム、ネボ、ベオン。 32:4 これら主がイスラエルの会衆のために打ち滅ぼされた地は、家畜に適した地です。そして、あなたのしもべどもは家畜を持っているのです。」 32:5 また彼らは言った。「もし、私たちの願いがかないますなら、どうかこの地をあなたのしもべどもに所有地として与えてください。私たちにヨルダンを渡らせないでください。」 32:6 モーセはガド族とルベン族に答えた。「あなたがたの兄弟たちは戦いに行くのに、あなたがたは、ここにとどまろうとするのか。 32:7 どうしてあなたがたは、イスラエル人の意気をくじいて、主が彼らに与えた地へ渡らせないようにするのか。
ルベン族とガド族、そして後にマナセ族の半分はヨルダン川の東側に着いたときその土地が牧畜に適しているのを見て、そのままそこに定着したいと申し出ました。しかし、モーセはそれが反逆と思いました。それでは民族全体の意気をくじきこれから戦いをすることに大きな障害となると思ったのです。しかし、これらの部族はそういう意図は持っていなかったのです。彼らは、妻子や老人はそこに置いて、兵士となれるものはイスラエルが勝利するまで行動を共にすると約束します。そのことを実行させたのです。これは簡単なことではなかったと思います。家族を離れて長期間カナンの地を転戦しなければならないのですから。もっともパレスチナは日本の四国ほどの狭い土地ですから、時々帰ることは可能だったでしょう。