ホームページ・メッセージ110501        小 石  泉

申命記 No.]X モーセの遺言

29:1 これは、モアブの地で、主がモーセに命じて、イスラエル人と結ばせた契約の言葉である。ホレブで彼らと結ばれた契約とは別である。
 ここにはっきりこの契約すなわち律法はシナイ山のものとは違うと書かれています。申命記はエジプトを脱出したイスラエルの世代ではなく、新しい世代に向かって書かれたものです。それはイスラエル民族という集団を構成する、いわばアイデンテティの形成ではなく、すでに民族として生まれた新しい集団を導くための指針を示すことでした。
29:2 モーセは、イスラエルのすべてを呼び寄せて言った。あなた方は、エジプトの地で、パロと、そのすべての家臣たちと、その全土とに対して、主があなた方の目の前でなさった事を、ことごとく見た。 29:3 あなたが、自分の目で見たあの大きな試み、それは大きなしるしと不思議であった。 29:4 しかし、主は今日に至るまで、あなたがたに、悟る心と、見る目と、聞く耳を、下さらなかった。 29:5 私は、四十年の間、あなたがたに荒野を行かせたが、あなたがたが身に着けている着物はすり切れず、その足のくつもすり切れなかった。 29:6 あなたがたはパンも食べず、また、ぶどう酒も強い酒も飲まなかった。それは、「私が、あなたがたの神、主である。」とあなたがたが知るためであった。
 この時期、まだ出エジプトの時代の一部の老人たちが生き延びていた可能性はあります。ここで「私は、四十年の間、あなたがたに荒野を行かせたが、あなたがたが身に着けている着物はすり切れず、その足のくつもすり切れなかった」とありますが、これは本当に同じ衣服、同じ靴が擦り切れなかったという意味ではなく、物質的に不足しなかったと言う意味だと思われるのですが、本当に同じ衣服、同じ靴だったという人もいます。
 「パンも食べず、また、ぶどう酒も強い酒も飲まなかった」と言うのは、パンやぶどう酒は農耕がなされなければ収穫できないもので、イスラエルは天からのマナで養われたからです。ただ彼らは周辺の民族との交易はしたと思いますので、全く食べなかったかどうか疑問はあります。
29:7 あなたがたが、この所に来たとき、ヘシュボンの王シホンとバシャンの王オグが出て来て、私たちを迎えて戦ったが、私たちは彼らを打ち破った。 29:8 私たちは、彼らの国を取り、これを相続地としてルベン人と、ガド人と、マナセ人の半部族とに、分け与えた。
 これらの王は非常に強く、いわば軍事大国だったようです。特にバシャンの王オグはネピリムの子孫でした。つまり悪霊との混血児の血統で、体長は3メートル以上あったようです。その寝台が4メートルもあったとわざわざ書かれています。
■オグ (<へ>og) パレスチナ征服時のバシャンの王で,巨人の種族レファイムの生き残りであった(民21:33,申3:1,3,ヨシ13:12). 身体は巨大で,長さ約4メートル,幅約2メートルの鉄の寝台を用い,それはアモン人の地ラバにあった.王国は強力で要害のある60の町を持ち(申3:4-5),ヘルモン山からヤボクまで広がっていた.王都はアシュタロテとエデレイであったが,このエデレイでイスラエル人によって滅ぼされた(ヨシ12:4,13:12).領地はルベン族,ガト族,マナセの半部族に与えられた(民32:33,申3:12-13).オグの敗北はイスラエルにとって象徴的な勝利の一つで,ことわざのようによく知られるようになった(申3:1-13,ヨシ9:10).オグの敗北はカナンの装甲歩兵の威圧する姿からきた無敵の伝説を打ち壊したからである(申1:28).
 29:9 あなたがたは、この契約のことばを守り、行いなさい。あなたがたのすることがみな、栄えるためである。 29:10 きょう、あなたがたはみな、あなたがたの神、主の前に立っている。すなわち、あなたがたの部族のかしらたち、長老たち、つかさたち、イスラエルのすべての人々、 29:11 あなたがたの子供たち、妻たち、宿営のうちにいる在留異国人、たきぎを割る者から水を汲む者に至るまで。 29:12 あなたが、あなたの神、主の契約と、あなたの神、主が、きょう、あなたと結ばれるのろいの誓いとに、入るためである。 29:13 さきに主が、あなたに約束されたように、またあなたの先祖、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われたように、きょう、あなたを立ててご自分の民とし、またご自身があなたの神となられるためである。 29:14 しかし、私は、ただあなたがたとだけ、この契約とのろいの誓いとを結ぶのではない。 29:15 きょう、ここで、私たちの神、主の前に、私たちとともに立っている者、ならびに、きょう、ここに、私たちとともにいない者に対しても結ぶのである。
 神との契約。それは一方的な神の選びです。この選びは今に至るまで、いいえ、未来永劫に失われることはありません。すごいことですね。
29:16 事実、あなたがたは、私たちがエジプトの地に住んでいたこと、また、私たちが異邦の民の中を通ってきたことを知っている。 29:17 また、あなたがたは、彼らのところにある忌むべきもの、木や石や銀や金の偶像を見た。 29:18 万が一にも、あなたがたのうちに、きょう、その心が私たちの神、主を離れて、これらの異邦の民の神々に行って、仕えるような、男や女、氏族や部族があってはならない。あなたがたのうちに、毒草や、苦よもぎを生ずる根があってはならない。
 案外知られていないのですが、偶像礼拝は、ほとんどの場合人間の犠牲を捧げるものでした。それで神様は大変嫌われました。
29:19 こののろいの誓いのことばを聞いたとき、「潤ったものも渇いたものもひとしく滅びるのであれば、私は自分のかたくなな心のままに歩いても、私には平和がある。」と心の中で自分を祝福する者があるなら、 29:20 主はその者を決して赦そうとはされない。むしろ、主の怒りとねたみが、その者に対して燃え上がり、この書にしるされたすべてののろいの誓いがその者の上にのしかかり、主は、その者の名を天の下から消し去ってしまう。 29:21 主は、このみおしえの書にしるされている契約のすべてののろいの誓いに従い、その者をイスラエルの全部族からより分けて、わざわいを下される。
 「潤ったものも渇いたものもひとしく滅びるのであれば、私は自分のかたくなな心のままに歩いても、私には平和がある」とは、要するに「神に忠実に生きたって、つまらない、結局同じように滅びるのだから」と言う態度です。こう言う者を神様は「より分けて」滅ぼすと言っています。神様は細部に至るまで目が届くのですね。
29:22 後の世代、あなたがたの後に起こるあなたがたの子孫や、遠くの地から来る外国人は、この地の災害と主がこの地に起こされた病気を見て、言うであろう。 29:23 ――その全土は、硫黄と塩によって焼け土となり、種も蒔けず、芽も出さず、草一本も生えなくなっており、主が怒りと憤りで、くつがえされたソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムの破滅のようである。―― 29:24 すべての国々は言おう。「なぜ、主はこの地に、このようなことをしたのか、この激しい燃える怒りは、なぜなのだ。」 29:25 人々は言おう。「それは、彼らの父祖の神、主が彼らをエジプトの地から連れ出して、彼らと結ばれた契約を、彼らが捨て、 29:26 彼らの知らぬ、また彼らに当てたのでもない、他の神々に仕え、それを拝んだからである。 29:27 それで、主の怒りは、この地に向かって燃え上がり、この書にしるされたすべてののろいが、この地にもたらされた。 29:28 主は、怒りと、憤激と、激怒とを持って、彼らをこの地から根こぎにし、ほかの地に投げ捨てた。今日あるとおりに。」
 歴史はこの通りになったことを示しています。イスラエルは「彼らの父祖の神、主が彼らをエジプトの地から連れ出して、彼らと結ばれた契約を、彼らが捨て、彼らの知らぬ、また彼らに当てたものでもない、ほかの神々に行って仕え、それを拝んだ」ので「この地から根こぎにし、ほかの地に投げ捨て」られたのです。
29:29 隠されていることは、私の神、主のものである。しかし、現されたことは、永遠に、私たちと私たちの子孫のものであり、私たちがこのみおしえのすべてのことばを行うためである。
 ここは実に印象的な言葉です。神は隠れたところにおいでになるのです。
ことを隠すのは神の誉れ。ことを探るのは王の誉れ。 箴言25:2