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申命記  No. ]TX モーセの遺言

 ここから延々と呪いが語られます。神様が呪うと言うのも私たちにはあまりぴんと来ませんが、良く読むと愛の裏返しだということが分かります。非常に失礼な言い方ですが、私はいつも“悪女の深情け”と言う言葉を思い出してならないのです。本来なら「わたしに忠実でないなら捨てる」で終わることが出来たはずです。そうすればイスラエル民族は多くの民族と同じように歴史の中に現れて消えて行ったでしょう。呪うということは“こだわっている”からです。旧約聖書全般を通して神様のイスラエル民族へのこだわりは大変なものです。いつまでもいつまでもこだわり続けるのです。
28:14 あなたは、私が、きょう、あなたがたに命じるこのすべてのことばを離れて右や左にそれ、ほかの神々に従い、それに仕えてはならない。 28:15 もし、あなたが、あなたの神、主の御声に聞き従わず、私が、きょう、命じる主のすべての命令とおきてとを守り行なわないなら、次のすべてののろいがあなたに臨み、あなたはのろわれる。
 神に聞き従わないなら・・・呪われる。しかし、イスラエルは違反しました。
28:16 あなたは町にあってものろわれ、野にあってものろわれる。 28:17 あなたのかごも、こね鉢ものろわれる。 28:18 あなたの身から生まれる者も、地の産物も、群れのうちの子牛も、群れのうちの雌羊ものろわれる。 28:19 あなたは、はいるときものろわれ、出て行くときにものろわれる。
28:20 主は、あなたのなすすべての手のわざに、のろいと恐慌と懲らしめとを送り、ついにあなたは根絶やしにされて、すみやかに滅びてしまう。これはわたしを捨てて、あなたが悪を行なったからである。
 そう言いながら神様はイスラエルを決して滅び去らせることはありませんでした。国を追われ世界に追放され寄留してもついには帰って来たのです。
28:21 主は、疫病をあなたの身にまといつかせ、ついには、あなたが、はいって行って、所有しようとしている地から、あなたを絶滅される。 28:22 主は、肺病と熱病と高熱病と悪性熱病と、水枯れと、立ち枯れと、黒穂病とで、あなたを打たれる。これらのものは、あなたが滅びうせるまで、あなたを追いかける。
 ずいぶん念入りな呪いですね。
28:23 またあなたの頭の上の天は青銅となり、あなたの下の地は鉄となる。 28:24 主は、あなたの地の雨をほこりとされる。それで砂ほこりが天から降って来て、ついにはあなたは根絶やしにされる。
 これも面白い表現ですね。ちょっと日本人には思いつかない表現です。
28:25 主は、あなたを敵の前で敗走させる。あなたは一つの道から攻撃するが、その前から七つの道に逃げ去ろう。あなたのことは、地上のすべての王国のおののきとなる。 28:26 あなたの死体は、空のすべての鳥と、地の獣とのえじきとなり、これをおどかして追い払う者もいない。
 列王記やその後の歴史の中で、これらことは実際に何度も起こりました。
28:27 主は、エジプトの腫物と、はれものと、湿疹と、かいせんとをもって、あなたを打ち、あなたはいやされることができない。 28:28 主はあなたを打って気を狂わせ、盲目にし、気を錯乱させる。 28:29 あなたは、盲人が暗やみで手さぐりするように、真昼に手さぐりするようになる。あなたは自分のやることで繁栄することがなく、いつまでも、しいたげられ、略奪されるだけである。あなたを救う者はいない。
 中世のヨーロッパではこれらのことは真実でした。特に東欧ではポグロムという民族絶滅の運動がありました。
28:30 あなたが女の人と婚約しても、他の男が彼女と寝る。家を建てても、その中に住むことができない。ぶどう畑を作っても、その収穫をすることができない。 28:31 あなたの牛が目の前でほふられても、あなたはそれを食べることができない。あなたのろばが目の前から略奪されても、それはあなたに返されない。あなたの羊が敵の手に渡されても、あなたを救う者はいない。 28:32 あなたの息子と娘があなたの見ているうちに他国の人に渡され、あなたの目は絶えず彼らを慕って衰えるが、あなたはどうすることもできない。28:33 地の産物およびあなたの勤労の実はみな、あなたの知らない民が食べるであろう。あなたはいつまでも、しいたげられ、踏みにじられるだけである。
 これらも本当に起こりました。その結果、ユダヤ人マルクス(本名モルデカイ)が共産主義を立ち上げました。“立て万国の労働者”の本当の意味は“立て万国のユダヤ人”なのです。“搾取と圧迫に反抗せよ”はユダヤ人なら誰でも判るスローガンでしょう。
28:34 あなたは、目に見ることで気を狂わされる。 28:35 主は、あなたのひざとももとを悪性の不治の腫物で打たれる。足の裏から頭の頂まで。 28:36 主は、あなたと、あなたが自分の上に立てた王とを、あなたも、あなたの先祖たちも知らなかった国に行かせよう。あなたは、そこで木や石のほかの神々に仕えよう。 28:37 主があなたを追い入れるすべての国々の民の中で、あなたは恐怖となり、物笑いの種となり、なぶりものとなろう。 28:38 畑に多くの種を持って出ても、あなたは少ししか収穫できない。いなごが食い尽くすからである。 28:39 ぶどう畑を作り、耕しても、あなたはそのぶどう酒を飲むことも、集めることもできない。虫がそれを食べるからである。
 これらの言葉は北朝イスラエルがアッシリヤに南朝ユダがバビロンに敗北したときに実現しました。その後もシリア、ローマに隷属したとき、そしてヨーロッパを放浪したときにそうなりました。
28:40 あなたの領土の至る所にオリーブの木があっても、あなたは身に油を塗ることができない。オリーブの実が落ちてしまうからである。 28:41 息子や娘が生まれても、あなたのものとはならない。彼らは捕えられて行くからである。 28:42 こおろぎは、あなたのすべての木と、地の産物とを取り上げてしまう。 28:43 あなたのうちの在留異国人は、あなたの上にますます高く上って行き、あなたはますます低く下って行く。 28:44 彼はあなたに貸すが、あなたは彼に貸すことができない。彼はかしらとなり、あなたは尾となる。 28:45 これらすべてののろいが、あなたに臨み、あなたを追いかけ、あなたに追いつき、ついには、あなたを根絶やしにする。あなたが、あなたの神、主の御声に聞き従わず、主が命じられた命令とおきてとを守らないからである。 28:46 これらのことは、あなたとあなたの子孫に対して、いつまでも、しるしとなり、また不思議となる。
 ユダヤ民族の繁栄も神のしるしですが苦難も神のしるしです。
28:47 あなたがすべてのものに豊かになっても、あなたの神、主に、心から喜び楽しんで仕えようとしないので、 28:48 あなたは、飢えて渇き、裸となって、あらゆるものに欠乏して、主があなたに差し向ける敵に仕えることになる。主は、あなたの首に鉄のくびきを置き、ついには、あなたを根絶やしにされる。
 「あなたがすべてのものに豊かになっても、あなたの神、主に、心から喜び楽しんで仕えようとしないので」ここは印象的なことばですね。逆に神に心から喜んで仕えるなら祝福されるわけです。それが分かっていてなぜ反抗するのでしょうか。人間は不思議なものですね。
28:49 主は、遠く地の果てから、わしが飛びかかるように、一つの国民にあなたを襲わせる。その話すことばがあなたにはわからない国民である。 28:50 その国民は横柄で、老人を顧みず、幼い者をあわれまず、 28:51 あなたの家畜の産むものや、地の産物を食い尽くし、ついには、あなたを根絶やしにする。彼らは、穀物も、新しいぶどう酒も、油も、群れのうちの子牛も、群れのうちの雌羊も、あなたには少しも残さず、ついに、あなたを滅ぼしてしまう。 28:52 その国民は、あなたの国中のすべての町囲みの中にあなたを包囲し、ついには、あなたが頼みとする高く堅固な城壁を打ち倒す。彼らが、あなたの神、主の与えられた国中のすべての町囲みの中にあなたを包囲するとき、 28:53 あなたは、包囲と、敵がもたらす窮乏とのために、あなたの身から生まれた者、あなたの神、主が与えてくださった息子や娘の肉を食べるようになる。
 これも列王記では実際に起こっています。究極の飢え、究極の悲劇、究極のエゴ。人間の恐ろしさを感じます。
28:54 あなたのうちの最も優しく、上品な男が、自分の兄弟や、自分の愛する妻や、まだ残っている子どもたちに対してさえ物惜しみをし、 28:55 自分が食べている子どもの肉を、全然、だれにも分け与えようとはしないであろう。あなたのすべての町囲みのうちには、包囲と、敵がもたらした窮乏とのために、何も残されてはいないからである。
28:56 あなたがたのうちの、優しく、上品な女で、あまりにも上品で優しいために足の裏を地面につけようともしない者が、自分の愛する夫や、息子や、娘に、物惜しみをし、 28:57 自分の足の間から出た後産や、自分が産んだ子どもさえ、何もかも欠乏しているので、ひそかに、それを食べるであろう。あなたの町囲みのうちは、包囲と、敵がもたらした窮乏との中にあるからである。 28:58 もし、あなたが、この光栄ある恐るべき御名、あなたの神、主を恐れて、この書物に書かれてあるこのみおしえのすべてのことばを守り行なわないなら、
28:59 主は、あなたへの災害、あなたの子孫への災害を下される。大きな長く続く災害、長く続く悪性の病気である。 28:60 主は、あなたが恐れたエジプトのあらゆる病気をあなたにもたらされる。それはあなたにまといつこう。 28:61 主は、このみおしえの書にしるされていない、あらゆる病気、あらゆる災害をもあなたの上に臨ませ、ついにはあなたは根絶やしにされる。
28:62 あなたがたは空の星のように多かったが、あなたの神、主の御声に聞き従わなかったので、少人数しか残されない。 28:63 かつて主があなたがたをしあわせにし、あなたがたをふやすことを喜ばれたように、主は、あなたがたを滅ぼし、あなたがたを根絶やしにすることを喜ばれよう。あなたがたは、あなたがはいって行って、所有しようとしている地から引き抜かれる。 28:64 主は、地の果てから果てまでのすべての国々の民の中に、あなたを散らす。あなたはその所で、あなたも、あなたの先祖たちも知らなかった木や石のほかの神々に仕える。
 「何もそこまで・・・」と言いたくなりますね。「放っておいてくれ!!」とユダヤ人なら言いたくなるでしょうね。しかし、それが選民の宿命なのです。歴史に消えない民族の。
28:65 これら異邦の民の中にあって、あなたは休息することもできず、足の裏を休めることもできない。主は、その所で、あなたの心をおののかせ、目を衰えさせ、精神を弱らせる。 28:66 あなたのいのちは、危険にさらされ、あなたは夜も昼もおびえて、自分が生きることさえおぼつかなくなる。 28:67 あなたは、朝には、「ああ夕方であればよいのに。」と言い、夕方には、「ああ朝であればよいのに。」と言う。あなたの心が恐れる恐れと、あなたの目が見る光景とのためである。 28:68 私がかつて「あなたはもう二度とこれを見ないだろう。」と言った道を通って、主は、あなたを舟で、再びエジプトに帰らせる。あなたがたは、そこで自分を男奴隷や女奴隷として、敵に身売りしようとしても、だれも買う者はいまい。
  モーセの渾身の警告です。最後の遺言です。何かモーセの切なる思いが分かるような気がします。