20:1 あなたが敵と戦うために出て行くとき、馬や戦車や、あなたよりも多い軍勢を見ても、彼らを恐れてはならない。あなたをエジプトの地から導き上られたあなたの神、主が、あなたとともにおられる。 20:2 あなたがたが戦いに臨む場合は、祭司は進み出て民に告げ、 20:3 彼らに言いなさい。「聞け。イスラエルよ。あなたがたは、きょう、敵と戦おうとしている。弱気になってはならない。恐れてはならない。うろたえてはならない。彼らのことでおじけてはならない。
20:4 共に行って、あなたがたのために、あなたがたの敵と戦い、勝利を得させてくださるのは、あなたがたの神、主である。」
20章は戦争の規定です。今日的に言うなら、「あなた方は核兵器もミサイルも恐れてはならない」ということになるでしょう。比較にならないと、言われるかもしれませんが、当時の感覚からすれば同じことでしょう。私達と共に行って、私達のために戦い、勝利を得させてくださるのは私達の神、主なのです。例えそれが人間でなくとも、いや、人間でなければなおさら、神御自身が私達のために戦われるのを待ちましょう。そうでなければ勝ち目はありません。
20:5 つかさたちは、民に告げて言いなさい。「新しい家を建てて、まだそれを奉献しなかった者はいないか。その者は家へ帰らなければならない。彼が戦死して、ほかの者がそれを奉献するといけないから。 20:6 ぶどう畑を作って、そこからまだ収穫していない者はいないか。その者は家へ帰らなければならない。彼が戦死して、ほかの者が収穫するといけないから。 20:7 女と婚約して、まだその女と結婚していない者はいないか。その者は家へ帰らなければならない。彼が戦死して、ほかの者が彼女と結婚するといけないから。」 20:8 つかさたちは、さらに民に告げて言わなければならない。「恐れて弱気になっている者はいないか。その者は家に帰れ。戦友たちの心が、彼の心のようにくじけるといけないから。」 20:9 つかさたちが民に告げ終わったら、将軍たちが民の指揮をとりなさい。
ここは戦争に出る(徴兵)男性の条件を告げています。まず、家を建てたばかりの人、次にぶどうの収穫を控えた人、次に結婚を控えた人です。これはとても思いやりのある規定で、昔の横暴な王たちの国々では無かったことではないでしょうか。3500年前にこういう決まりがあった国とはなんと素晴らしいことだったでしょう。
次に、戦争におびえている弱気なものへの配慮があります。当時の男の中にも優しい性格の人がいたのでしょう。
20:10 町を攻略しようと、あなたがその町に近づいたときには、まず降伏を勧めなさい。 20:11 降伏に同意して門を開くなら、その中にいる民は、みな、あなたのために、苦役に服して働かなければならない。 20:12 もし、あなたに降伏せず、戦おうとするなら、これを包囲しなさい。 20:13 あなたの神、主が、それをあなたの手に渡されたなら、その町の男をみな、剣の刃で打ちなさい。 20:14 しかし女、子ども、家畜、また町の中にあるすべてのもの、そのすべての略奪物を、戦利品として取ってよい。あなたの神、主があなたに与えられた敵からの略奪物を、あなたは利用することができる。 20:15 非常に遠く離れていて、次に示す国々の町でない町々に対しては、すべてこのようにしなければならない。 20:16 しかし、あなたの神、主が相続地として与えようとしておられる次の国々の民の町では、息のある者をひとりも生かしておいてはならない。 20:17 すなわち、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人は、あなたの神、主が命じられたとおり、必ず聖絶しなければならない。20:18 それは、彼らが、その神々に行なっていたすべての忌みきらうべきことをするようにあなたがたに教え、あなたがたが、あなたがたの神、主に対して罪を犯すことのないためである。
当時の国とは都市そのものでした。ひとつの城壁の中にある町がひとつの国家と考えらていました。昔の日本のようにお城に住む城主が変わっても住民にはさほど影響がないというのではなく、その城主と住民の運命は同じでした。滅亡か勝利か従属か覇権かです。特に中東の場合、ネピリムの血筋については何度もお話しました。また偶像崇拝、悪霊礼拝の危険は最も神御自身の忌み嫌われるところでした。この悪習はイスラエルには入ってはならないものでした。しかし、その後の歴史では彼らは盛んにこれらの宗教や礼拝をしています。
20:19 長い間、町を包囲して、これを攻め取ろうとするとき、斧をふるって、そこの木を切り倒してはならない。その木から取って食べるのはよいが、切り倒してはならない。まさか野の木が包囲から逃げ出す人間でもあるまい。 20:20 ただ、実を結ばないとわかっている木だけは、切り倒してもよい。それを切り倒して、あなたと戦っている町が陥落するまでその町に対して、それでとりでを築いてもよい。
日本にいると分からないのですが、日本は実に植物に恵まれた国です。しかし、中国や韓国の山々は木に覆われない禿山が多いのです。それは燃料として切ってしまったからで、何百年という立派な木は全くありません。木は大木になるには何百年もかかるので、切り倒すことは本当に注意しなければならないのですが、人間はそうしてきませんでした。有名なレバノン杉はほとんど残っていないといわれています。モアイという無意味な像を作るために木をことごとく切り倒して、結局人の住めない島になったイースター島は、私たちへの警告です。
21章においては犯人の判らない殺人事件、女奴隷を妻とすること、複数の妻の子の取り扱い、わがままな子どもの取り扱いが書かれています。これらは日常生活の細部に渡るまで神様の決まりと配慮があることを示していて興味深いところです。
21:1 あなたの神、主があなたに与えて所有させようとしておられる地で、刺し殺されて野に倒れている人が見つかり、だれが殺したのかわからないときは、 21:2 あなたの長老たちとさばきつかさたちは出て行って、刺し殺された者の回りの町々への距離を測りなさい。 21:3 そして、刺し殺された者に最も近い町がわかれば、その町の長老たちは、まだ使役されず、まだくびきを負って引いたことのない群れのうちの雌の子牛を取り、 21:4 その町の長老たちは、その雌の子牛を、まだ耕されたことも種を蒔かれたこともない、いつも水の流れている谷へ連れて下り、その谷で雌の子牛の首を折りなさい。 21:5 そこでレビ族の祭司たちが進み出なさい。彼らは、あなたの神、主が、ご自身に仕えさせ、また主の御名によって祝福を宣言するために選ばれた者であり、どんな争いも、どんな暴行事件も、彼らの判決によるからである。 21:6 刺し殺された者に最も近い、その町の長老たちはみな、谷で首を折られた雌の子牛の上で手を洗い、 21:7 証言して言いなさい。「私たちの手は、この血を流さず、私たちの目はそれを見なかった。 21:8 主よ。あなたが贖い出された御民イスラエルをお赦しください。罪のない者の血を流す罪を、御民イスラエルのうちに負わせないでください。」彼らは血の罪を赦される。 21:9 あなたは、罪のない者の血を流す罪をあなたがたのうちから除き去らなければならない。主が正しいと見られることをあなたは行なわなければならないからである。
犯人が判らない殺人事件の処理の仕方は、最寄の町の長老が水の流れている川に連れて行った雌の子牛を殺し、その上で手を洗い証言することでした。何となく主イエスの死刑を定めたピラトを思い出させます。このような儀式の中に犯人がいれば自責の念に駆られたのでしょう。次に戦争で捕らえた美しい奴隷を妻にめとることが赦されています。
21:10 あなたが敵との戦いに出て、あなたの神、主が、その敵をあなたの手に渡し、あなたがそれを捕虜として捕えて行くとき、 21:11 その捕虜の中に、姿の美しい女性を見、その女を恋い慕い、妻にめとろうとするなら、 21:12 その女をあなたの家に連れて行きなさい。女は髪をそり、爪を切り、 21:13 捕虜の着物を脱ぎ、あなたの家にいて、自分の父と母のため、一か月の間、泣き悲しまなければならない。その後、あなたは彼女のところにはいり、彼女の夫となることができる。彼女はあなたの妻となる。 21:14 もしあなたが彼女を好まなくなったなら、彼女を自由の身にしなさい。決して金で売ってはならない。あなたは、すでに彼女を意のままにしたのであるから、彼女を奴隷として扱ってはならない。
これは正妻ではなく第二第三夫人のケースでしょう。
さらに愛されている夫人とそうでない夫人の子どもの取り扱いは、原則に従って長子は長子として扱うべきことが定められています。跡目相続の問題はいつも大きな問題だったのでしょう。
21:15 ある人がふたりの妻を持ち、ひとりは愛され、ひとりはきらわれており、愛されている者も、きらわれている者も、その人に男の子を産み、長子はきらわれている妻の子である場合、 21:16 その人が自分の息子たちに財産を譲る日に、長子である、そのきらわれている者の子をさしおいて、愛されている者の子を長子として扱うことはできない。 21:17 きらわれている妻の子を長子として認め、自分の全財産の中から、二倍の分け前を彼に与えなければならない。彼は、その人の力の初めであるから、長子の権利は、彼のものである。
次にわがままな子供の取り扱いが書かれています。わがままでかたくなで放蕩の子供は町の門に連れて行き長老に裁かれた後に町中の人によって石で撃ち殺されました。両親に従わないことは諸悪の根源と考えられていたからです。これなど今の子供に読み聞かせたいところです。
21:18 かたくなで、逆らう子がおり、父の言うことも、母の言うことも聞かず、父母に懲らしめられても、父母に従わないときは、 21:19 その父と母は、彼を捕え、町の門にいる町の長老たちのところへその子を連れて行き、 21:20 町の長老たちに、「私たちのこの息子は、かたくなで、逆らいます。私たちの言うことを聞きません。放蕩して、大酒飲みです。」と言いなさい。 21:21 町の人はみな、彼を石で打ちなさい。彼は死ななければならない。あなたがたのうちから悪を除き去りなさい。イスラエルがみな、聞いて恐れるために。 21:22 もし、人が死刑に当たる罪を犯して殺され、あなたがこれを木につるすときは、 21:23 その死体を次の日まで木に残しておいてはならない。その日のうちに必ず埋葬しなければならない。木につるされた者は、神にのろわれた者だからである。あなたの神、主が相続地としてあなたに与えようとしておられる地を汚してはならない。
最後に書かれている「木につるされた者は、神にのろわれた者だからである」は主イエスの十字架の場面で語られていることばです。キリストは私たちの身代わりとしてのろわれたものとなりました。