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申命記  No.T モーセの遺言

 申命記はカナン入国前に、もう一度神様の戒めを伝えたものです。しかし、実は、シナイ山の契約というよりも、モアブの草原で語られた戒めが中心です。というのもシナイ山では、エジプトを出て、荒野に旅する前に語られたことなので、これからカナンに入り定住するためには向いていなかったからです。そのため申命記は定住し、家や耕作地を持った場合の戒めが語られています。
 また、モーセの五書といわれていますが、明らかにモーセ以外の人、ヨシュアやその他の書記の手によると考えられる部分が多くあります。モーセから次の世代への移行の時期であることが分かります。しかし、そのスピリットから、やはりモーセの書でいいのです。
 1章から3章にかけては、モーセが出エジプトからの行程を振り返り、色々な事件や神様の教えを語られていますが、これは省略し所々取り上げます。
1:31 また、荒野では、あなたがたがこの所に来るまでの、全道中、人がその子を抱くように、あなたの神、主が、あなたを抱かれたのを見ているのだ。 1:32 このようなことによってもまだ、あなたがたはあなたがたの神、主を信じていない。 1:33 主は、あなたがたが宿営する場所を捜すために、道中あなたがたの先に立って行かれ、夜は火のうち、昼は雲のうちにあって、あなたがたの進んで行く道を示されるのだ。」
 ここにイスラエルに対する神様の御心が余すところなく現れていますね。何だかうらやましいような気さえします。
 次に一般にはあまり取り上げられませんが驚くべき記述があります。
2:9 主は私に仰せられた。「モアブに敵対してはならない。彼らに戦いをしかけてはならない。あなたには、その土地を所有地としては与えない。わたしはロトの子孫にアルを所有地として与えたからである。 2:10 ――そこには以前、エミム人が住んでいた。強大な民で、数も多く、アナク人のように背が高かった。 2:11 アナク人と同じく、彼らもレファイムであるとみなされていたが、モアブ人は彼らをエミム人と呼んでいた。 2:12 ホリ人は、以前セイルに住んでいたが、エサウの子孫がこれを追い払い、これを根絶やしにして、彼らに代わって住んでいた。ちょうど、イスラエルが主の下さった所有の地に対してしたようにである。―― 2:13 今、立ってゼレデ川を渡れ。」そこで私たちはゼレデ川を渡った。 2:14 カデシュ・バルネアを出てからゼレデ川を渡るまでの期間は三十八年であった。それまでに、その世代の戦士たちはみな、宿営のうちから絶えてしまった。主が彼らについて誓われたとおりであった。 2:15 まことに主の御手が彼らに下り、彼らをかき乱し、宿営のうちから絶やされた。
 モアブというのはアブラハムの甥ロトの娘たちが父からもらった子供の子孫ですが、彼らがエミム人を追い払ったと書かれていることに注意してください。エミム人はアナク人のようにレファイムだったと書かれています。レファイムとはネピリムまたはネピリムと人間とのハーフ、クオーターやその以下の人間です。ネピリムは堕落天使のハーフですから人間の純粋なDNAを持たない人種でした。これがカナンを征服するように神様が命じた主要な目的でした。イスラエルは地上から悪霊のDNAを根絶する任務を与えられていたのです。この話は異様に聞こえるかもしれませんが、ユダヤ人の間では常識のようです。
 それは次の言葉でも証明されています。
全土、3:10 すなわち、高原のすべての町、ギルアデのバシャンの全土、サルカおよびエデレイまでのバシャンのオグの王国の町々である。 3:11 ――バシャンの王オグだけが、レファイムの生存者として残っていた。見よ。彼の寝台は鉄の寝台、それはアモン人のラバにあるではないか。その長さは、規準のキュビトで九キュビト、その幅は四キュビトである。――
 この後、モーセは自分もカナンの地に入らせてくださいと神様に嘆願します。しかし、神様は断固としてこれを拒みます。これは興味深いですね。あのモーセでも神の前では完全ではなかったのです。
3:23 私は、そのとき、主に懇願して言った。 3:24 「神、主よ。あなたの偉大さと、あなたの力強い御手とを、あなたはこのしもべに示し始められました。あなたのわざ、あなたの力あるわざのようなことのできる神が、天、あるいは地にあるでしょうか。 3:25 どうか、私に、渡って行って、ヨルダンの向こうにある良い地、あの良い山地、およびレバノンを見させてください。」 3:26 しかし主は、あなたがたのために私を怒り、私の願いを聞き入れてくださらなかった。そして主は私に言われた。「もう十分だ。このことについては、もう二度とわたしに言ってはならない。 3:27 ピスガの頂に登って、目を上げて西、北、南、東を見よ。あなたのその目でよく見よ。あなたはこのヨルダンを渡ることができないからだ。 3:28 ヨシュアに命じ、彼を力づけ、彼を励ませ。彼はこの民の先に立って渡って行き、あなたの見るあの地を彼らに受け継がせるであろう。」 3:29 こうして私たちはベテ・ペオルの近くの谷にとどまっていた。
 モーセはカナンを望むピスガという高地から、カナンを眺めるだけでした。そこは今まで歩いてきた砂漠とは違って、緑に潤う美しい土地だったことでしょう。イスラエルを旅すると、ガリラヤ湖周辺は日本に似て緑豊かな景色が広がっています。それは第二次大戦後、ユダヤ人が非常な努力をして作ったときかされますが、モーセの時代には自然にそのような沃野だったのではないでしょうか。
4:1 今、イスラエルよ。あなたがたが行なうように私の教えるおきてと定めとを聞きなさい。そうすれば、あなたがたは生き、あなたがたの父祖の神、主が、あなたがたに与えようとしておられる地を所有することができる。 4:2 私があなたがたに命じることばに、つけ加えてはならない。また、減らしてはならない。私があなたがたに命じる、あなたがたの神、主の命令を、守らなければならない。 4:3 あなたがたは、主がバアル・ペオルのことでなさったことを、その目で見た。バアル・ペオルに従った者はみな、あなたの神、主があなたのうちから根絶やしにされた。 4:4 しかし、あなたがたの神、主にすがってきたあなたがたはみな、きょう、生きている。 4:5 見なさい。私は、私の神、主が私に命じられたとおりに、おきてと定めとをあなたがたに教えた。あなたがたが、はいって行って、所有しようとしているその地の真中で、そのように行なうためである。 4:6 これを守り行ないなさい。そうすれば、それは国々の民に、あなたがたの知恵と悟りを示すことになり、これらすべてのおきてを聞く彼らは、「この偉大な国民は、確かに知恵のある、悟りのある民だ。」と言うであろう。 4:7 まことに、私たちの神、主は、私たちが呼ばわるとき、いつも、近くにおられる。このような神を持つ偉大な国民が、どこにあるだろうか。 4:8 また、きょう、私があなたがたの前に与えようとしている、このみおしえのすべてのように、正しいおきてと定めとを持っている偉大な国民が、いったい、どこにあるだろう。 4:9 ただ、あなたは、ひたすら慎み、用心深くありなさい。あなたが自分の目で見たことを忘れず、一生の間、それらがあなたの心から離れることのないようにしなさい。あなたはそれらを、あなたの子どもや孫たちに知らせなさい。
 ここに神に従う民の祝福が書かれています。モーセは神に従順であれ、そうすればあなた方は祝福され、偉大な国民となることが出来ると諭しました。しかし、イスラエルの歴史を見ると、その反対のことばかりでした。彼らは神に不従順で、反逆し、平然と不正を働いていました。その結果、世界に離散することになったのです。それにもかかわらず、やはりイスラエル人は世界のどの民族よりも優秀でした。神の選びというものはそのように変わらないのです。
 モーセは偶像崇拝の危険性についてねんごろに話します。
4:22 私は、この地で、死ななければならない。私はヨルダンを渡ることができない。しかしあなたがたは渡って、あの良い地を所有しようとしている。 4:23 気をつけて、あなたがたの神、主があなたがたと結ばれた契約を忘れることのないようにしなさい。あなたの神、主の命令にそむいて、どんな形の彫像をも造ることのないようにしなさい。 4:24 あなたの神、主は焼き尽くす火、ねたむ神だからである。 4:25 あなたが子を生み、孫を得、あなたがたがその地に永住し、堕落して、何かの形に刻んだ像を造り、あなたの神、主の目の前に悪を行ない、御怒りを買うようなことがあれば、 4:26 私は、きょう、あなたがたに対して、天と地とを証人に立てる。あなたがたは、ヨルダンを渡って、所有しようとしているその土地から、たちまちにして滅びうせる。そこで長く生きるどころか、すっかり根絶やしにされるだろう。
 「私は、この地で、死ななければならない」。モーセの思いは胸を打ちます。私が居なくなっても大丈夫だろうか。神を捨て、神に捨てられるのではないだろうか。歴史は実際にそうなったことを示しています。
 イスラエルは神様のショーウインドーです。彼らは人類のモデルのように存在しました。悪しきにつけ、良きにつけ、彼らは人間の代表なのです。彼らは神への反逆と不従順の故にカナンを追われ世界に離散しました。普通ならそこで民族というものは消滅するものです。しかし、彼らは今に至るまで存在し続けました。そして間もなく、世界を支配するでしょう。ただし、イエス・キリストを信じることによってですが。