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民数記  No. XVI 逃れの町(最終回)

34章で、いよいよ、神様はカナンの地に入るに当たっての最終的な範囲を示されます。これは現在のイスラエルにヨルダンの東側を加えたほどの地域ですが、正確にたどることは難しいと思います。
 ルベンとマナセの半分は彼らの希望通り、ヨルダン川の東側に住むことになりました。これらの相続地を割り当てた総監督は祭司エレアザルとヨシュアでした。それぞれの部族長が定められました。中にはあのユダの氏族エフネの子カレブも居ました。
34:17 「この地をあなたがたのための相続地とする者の名は次のとおり、祭司エルアザルとヌンの子ヨシュアである。
34:29 イスラエル人にカナンの地で相続地を持たせるよう主が命じたのはこの人々である。」
35章ではレビ人の相続地の決まりがあります。
35:1 エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの草原で、主はモーセに告げて仰せられた。 35:2 「イスラエル人に命じて、その所有となる相続地の一部を、レビ人に住むための町々として与えさせなさい。彼らはその町々の回りの放牧地をレビ人に与えなければならない。 35:3 町々は彼らが住むためであり、その放牧地は彼らの家畜や群れや、すべての獣のためである。 35:4 あなたがたがレビ人に与える町々の放牧地は、町の城壁から外側に、回り一千キュビトでなければならない。 35:5 町の外側に、町を真中として東側に二千キュビト、南側に二千キュビト、西側に二千キュビト、北側に二千キュビトを測れ。これが彼らの町々の放牧地である。
 本来、レビ人は相続地を割り当てられないように思われますが、実際に住む場所と、少々の家畜の放牧地は必要なわけで、それが細かく決められています。レビ人はすべての部族の中に分散して住んだものと思われます。 これと平行して「逃れの町」の決まりがあります。これは実にユニークな制度です。
35:6 あなたがたが、レビ人に与える町々、すなわち、人を殺した者がそこにのがれるために与える六つの、のがれの町と、そのほかに、四十二の町を与えなければならない。 35:7 あなたがたがレビ人に与える町は、全部で四十八の町で、放牧地つきである。 35:8 あなたがたがイスラエル人の所有地のうちから与える町々は、大きい部族からは多く、小さい部族からは少なくしなければならない。おのおの自分の相続した相続地に応じて、自分の町々からレビ人に与えなければならない。」
レビ人に与えられた町は48です。その内、特に「逃れの町」として全土に6つの町が定められました。それは次のような目的のためです。
35:9 主はモーセに告げて仰せられた。 35:10 「イスラエル人に告げて、彼らに言え。あなたがたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるとき、 35:11 あなたがたは町々を定めなさい。それをあなたがたのために、のがれの町とし、あやまって人を打ち殺した殺人者がそこにのがれることができるようにしなければならない。 35:12 この町々は、あなたがたが復讐する者から、のがれる所で、殺人者が、さばきのために会衆の前に立つ前に、死ぬことのないためである。 35:13 あなたがたが与える町々は、あなたがたのために六つの、のがれの町としなければならない。 35:14 ヨルダンのこちら側に三つの町を与え、カナンの地に三つの町を与えて、あなたがたののがれの町としなければならない。 35:15 これらの六つの町はイスラエル人、または彼らの間の在住異国人のための、のがれの場所としなければならない。すべてあやまって人を殺した者が、そこにのがれるためである。
つまり殺意がなく、成り行きで人を殺しが場合には処刑や復讐を逃れるために、この町に入ることが許されました。ヨルダン川の東と西に3つづつです。
ただし、次のような場合は許されず、死刑となりました。

  1. 鉄器を使って人を殺した場合。
  2. 石で殺した場合。
  3. 十分人を殺せる木製品の場合。
  4. 悪意をもって殺した場合。
  5. 敵意をもって殺した場合。
これらの場合は復讐が許されました。それ以外の偶発的な殺人は、その人が「逃れの町」に逃げ込めば、殺されませんでした。ただし町の境界を出たら、殺しても良いことになっていました。また、その時の大祭司が死ぬと、罪を許され自分の町に帰ることが出来ました。このことは罪を犯した者への厳密な戒めですが、主イエスは私たちの「のがれの町」なのです。私たちは、殺人は犯さなくとも、罪深いものです。しかし、大祭司である主イエスの元に逃げ込むとき、罪を許されるのです。
35:33 あなたがたは、自分たちのいる土地を汚してはならない。血は土地を汚すからである。土地に流された血についてその土地を贖うには、その土地に血を流させた者の血による以外はない。 35:34 あなたがたは、自分たちの住む土地、すなわち、わたし自身がそのうちに宿る土地を汚してはならない。主であるわたしが、イスラエル人の真中に宿るからである。」

36章では、一つの問題が提起されました。27章で男の子供が居ない家族が、土地を相続した場合、その女性が他の家族と結婚すると、その所有地が他の部族に移ってしまうのかということです。これでは相続地は分断されてしまいます。
 これに対する答えは次のようなものでした。
36:6 主がツェロフハデの娘たちについて命じて仰せられたことは次のとおりである。『彼女たちは、その心にかなう人にとついでよい。ただし、彼女たちの父の部族に属する氏族にとつがなければならない。 36:7 イスラエル人の相続地は、一つの部族から他の部族に移してはならない。イスラエル人は、おのおのその父祖の部族の相続地を堅く守らなければならないからである。
36:8 イスラエル人の部族のうち、相続地を受け継ぐ娘はみな、その父の部族に属する氏族のひとりにとつがなければならない。イスラエル人が、おのおのその父祖の相続地を受け継ぐためである。 36:9 こうして相続地は、一つの部族から他の部族に移してはならない。イスラエル人の部族は、おのおのその相続地を堅く守らなければならないからである。』」 36:10 ツェロフハデの娘たちは、主がモーセに命じられたとおりに行なった。 36:11 ツェロフハデの娘たち、マフラ、ティルツァ、ホグラ、ミルカおよびノアは、そのおじの息子たちにとついだ。 36:12 彼女たちは、ヨセフの子マナセの子孫の氏族にとついだので、彼女たちの相続地は、彼女たちの父の氏族の部族に残った。
こうして、細かい原則が示されました。それにしても他の部族とは結婚できないのですから、今の感覚からすると困りますね。
相続地は、神の子としての権利は、あのエソウとヤコブの長子の特権のように、ないがしろにしてはならないものなのです。私たちもキリストの贖いによって受け継いだ特権、永遠の命の権利、天国での特権を失ってはなりません。堅く保っていましょう。
36:13 これらは、エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの草原で、主がモーセを通してイスラエル人に命じた命令と定めである。
こうしていよいよ、約束の地カナンに入る準備が終わりました。しかし、覚えましょう、カナンは誰も住んでいない無人の野原ではなかったのです。そこに住んでいる人々との戦いを通して奪い取るべき土地でした。その人々は神の前に堕落し、偶像崇拝、疫病、暴力、自己中心、不道徳、窃盗、殺人などがはびこっていました。
それは救われる前の私たちの心のようです。私たちもまた、自分の内的な堕落を追い出さなければなりません。救いは与えられます。約束されています。しかし、同時にそれは奪い取るものなのです。主イエスもこう言っています。 バプテスマのヨハネの日以来今日まで、天の御国は激しく攻められています。そして、激しく攻める者たちがそれを奪い取っています。マタイ11:12