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民数記  No. XV ヨルダン川の東にて

 イスラエルの民はいよいよヨルダンを渡って、約束の地カナンに進入することになったとき、一つの問題が起こりました。それはガド族とルベン族がヨルダン川の東側の土地で良いと言い出したのです。これはモーセたちにとって、驚くべき裏切りであり、民族を分断する謀反に思えました。モーセは怒りました。
32:1 ルベン族とガド族は、非常に多くの家畜を持っていた。彼らがヤゼルの地とギルアデの地を見ると、その場所はほんとうに家畜に適した場所であったので、 32:2 ガド族とルベン族は、モーセと祭司エルアザルおよび会衆の上に立つ者たちのところに来て、次のように言った。 32:3 「アタロテ、ディボン、ヤゼル、ニムラ、ヘシュボン、エルアレ、セバム、ネボ、ベオン。 32:4 これら主がイスラエルの会衆のために打ち滅ぼされた地は、家畜に適した地です。そして、あなたのしもべどもは家畜を持っているのです。」32:5 また彼らは言った。「もし、私たちの願いがかないますなら、どうかこの地をあなたのしもべどもに所有地として与えてください。私たちにヨルダンを渡らせないでください。」 32:6 モーセはガド族とルベン族に答えた。「あなたがたの兄弟たちは戦いに行くのに、あなたがたは、ここにとどまろうとするのか。32:7 どうしてあなたがたは、イスラエル人の意気をくじいて、主が彼らに与えた地へ渡らせないようにするのか。
 モーセは荒野の放浪の原因となったカデシュ・バルネアのことを思い出させます。十二人の斥候のうち十人はカナンの地を奪うことは出来ないと悲観的な報告をし、そのためにイスラエルは四十年間も荒野をさまようことになったのです。
32:14 そして今、あなたがた罪人の子らは、あなたがたの父たちに代わって立ち上がり、イスラエルに対する主の燃える怒りをさらに増し加えようとしている。 32:15 あなたがたが、もしそむいて主に従わなければ、主はまたこの民をこの荒野に見捨てられる。そしてあなたがたはこの民すべてに滅びをもたらすことになる。」 32:14 そして今、あなたがた罪人の子らは、あなたがたの父たちに代わって立ち上がり、イスラエルに対する主の燃える怒りをさらに増し加えようとしている。 32:15 あなたがたが、もしそむいて主に従わなければ、主はまたこの民をこの荒野に見捨てられる。そしてあなたがたはこの民すべてに滅びをもたらすことになる。」
しかし、彼らの意図は違いました。彼らはイスラエルの分裂を求めていたのではありませんでした。自分たちだけがこの地で安楽に暮らすつもりはないと彼らは告げます。
32:16 彼らはモーセに近づいて言った。「私たちはここに家畜のために羊の囲い場を作り、子どもたちのために町々を建てます。 32:17 しかし、私たちは、イスラエル人をその場所に導き入れるまで、武装して彼らの先頭に立って急ぎます。私たちの子どもたちは、この地の住民の前で城壁のある町々に住みます。 32:18 私たちは、イスラエル人がおのおのその相続地を受け継ぐまで、私たちの家に帰りません。 32:19 私たちは、ヨルダンを越えた向こうでは、彼らとともに相続地を持ちはしません。私たちの相続地は、ヨルダンのこちらの側、東のほうになっているからです。」 32:20 モーセは彼らに言った。「もしあなたがたがそのようにし、もし主の前に戦いのため武装をし、 32:21 あなたがたのうちの武装した者がみな、主の前でヨルダンを渡り、ついに主がその敵を御前から追い払い、 32:22 その地が主の前に征服され、その後あなたがたが帰って来るのであれば、あなたがたは主に対しても、イスラエルに対しても責任が解除される。そして、この地は主の前であなたがたの所有地となる。 32:23 しかし、もしそのようにしないなら、今や、あなたがたは主に対して罪を犯したのだ。あなたがたの罪の罰があることを思い知りなさい。 32:24 あなたがたの子どもたちのために町々を建て、その羊のために囲い場を作りなさい。あなたがたの口から出たことは実行しなければならない。」 32:25 ガド族とルベン族はモーセに答えて言った。「あなたのしもべどもは、あなたの命じるとおりにします。 32:26 私たちの子どもたちや妻たち、家畜とすべての獣は、そこのギルアデの町々にとどまります。 32:27 しかし、あなたのしもべたち、いくさのために武装した者はみな、あなたが命じられたとおり、渡って行って、主の前に戦います。」
 彼らはそこに女性や子供や老人は残しますが、自分たちの内の兵役につける壮年たちは、イスラエルと共にヨルダンを渡り、カナンの地の征服まで行動を共にしますと申し出ます。これはモーセたちを納得させます。これによって征服する地はむしろ広がったのです。
このことはイスラエル民族がモーセというカリスマ的指導者に盲目的に服従していたのではなく、ある種の民主主義的な発言権を持っていたことを感じさせます。モーセはむしろ喜ぶべきこととしてこれを受け入れます。モーセにとって「目からうろこ」のような出来事でした。
32:28 そこで、モーセは彼らについて、祭司エルアザル、ヌンの子ヨシュア、イスラエル人の部族の諸氏族のかしらたちに命令を下した。 32:29 モーセは彼らに言った。「もし、ガド族とルベン族の戦いのために武装した者がみな、あなたがたとともにヨルダンを渡り、主の前に戦い、その地があなたがたの前に征服されたなら、あなたがたはギルアデの地を所有地として彼らに与えなさい。32:30 もし彼らが武装し、あなたがたとともに渡って行かなければ、彼らはカナンの地であなたがたの間に所有地を得なければならない。」
 33章では出エジプトの行程をもう一度振り返っていますが、この道筋は、現在はほとんど分かりません。なぜなら多くの聖書学者たちは、放浪の荒野をシナイ半島だけに限定しているからです。実際には何度も話したようにシナイ山そのものでさえアラビヤ半島にあったのですから、彼らの行程はアラビヤ半島全体であったと考えられるからです。
33:51 「イスラエル人に告げて彼らに言え。あなたがたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるときには、 33:52 その地の住民をことごとくあなたがたの前から追い払い、彼らの石像をすべて粉砕し、彼らの鋳造をすべて粉砕し、彼らの高き所をみな、こぼたなければならない。 33:53 あなたがたはその地を自分の所有とし、そこに住みなさい。あなたがたが所有するように、わたしがそれを与えたからである。 33:54 あなたがたは、氏族ごとに、くじを引いて、その地を相続地としなさい。大きい部族には、その相続地を多くし、小さい部族には、その相続地を少なくしなければならない。くじが当たったその場所が、その部族のものとなる。あなたがたは、自分の父祖の部族ごとに相続地を受けなければならない。33:55 もしその地の住民をあなたがたの前から追い払わなければ、あなたがたが残しておく者たちは、あなたがたの目のとげとなり、わき腹のいばらとなり、彼らはあなたがたの住むその土地であなたがたを悩ますようになる。 33:56 そしてわたしは、彼らに対してしようと計ったとおりをあなたがたにしよう。」
 ここでもカナンの地に入ったとき、異民族を徹底的に追い払うこと、偶像を壊し、粉砕することを命じています。これは非常に重要でした。第一にもしかするとネピリムの血が薄められていたにせよ入っている可能性があったこと。感染症、性病、が蔓延したこと。何よりも偶像崇拝は非常に盛んだったことです。こういう場合、神様の目から見れば、この地は穢れていて洗浄しなければならなかったのです。現在の世界はどうでしょうか。


ヨルダン川