ホームページ・メッセージ100919 小 石 泉
民数記 No.]111 イスラエルの敗北
25:1 イスラエルはシティムにとどまっていたが、民はモアブの娘たちと、みだらなことをし始めた。 25:2 娘たちは、自分たちの神々にいけにえをささげるのに、民を招いたので、民は食し、娘たちの神々を拝んだ。 25:3 こうしてイスラエルは、バアル・ペオルを慕うようになったので、主の怒りはイスラエルに対して燃え上がった。 25:4 主はモーセに言われた。「この民のかしらたちをみな捕えて、白日のもとに彼らを主の前でさらし者にせよ。主の燃える怒りはイスラエルから離れ去ろう。」
何時の時代でも人間の弱点は変わらないものです。バラムがバラクと謀って、打った手は女性でした。この箇所は現在の一般的な考えでは人種差別と映るかもしれません。しかし、異民族との混血は神様が厳重に禁止されたことです。そこには霊的な堕落が伴うからです。バアル・ペオルとは「始まりの主」と言う意味ですが、何の始まりか分かりません。ちなみにバアルはその後イスラエルの最大の偶像崇拝となりました。ミデアンはモアブと同盟関係にあったようです。
25:5 そこでモーセはイスラエルのさばきつかさたちに言った。「あなたがたは、おのおの自分の配下のバアル・ペオルを慕った者たちを殺せ。」 25:6 モーセとイスラエル人の全会衆が会見の天幕の入口で泣いていると、彼らの目の前に、ひとりのイスラエル人が、その兄弟たちのところにひとりのミデヤン人の女を連れてやって来た。 25:7 祭司アロンの子エルアザルの子ピネハスはそれを見るや、会衆の中から立ち上がり、手に槍を取り、 25:8 そのイスラエル人のあとを追ってテントの奥の部屋にはいり、イスラエル人とその女とをふたりとも、腹を刺し通して殺した。するとイスラエル人への神罰がやんだ。 25:9 この神罰で死んだ者は、二万四千人であった。
モーセとイスラエルが主の前で罪を嘆き悲しんでいるとき、その目の前をミデアン人の女を連れた男が通りかかりました。まるで映画のワンシーンのように鮮烈な印象を与える箇所ですね。容易に状況が飲み込めます。この時、祭司の集団の中から大祭司アロンの孫ピネハスが立ち上がりこの男女を殺します。ピネハスとは「神の言葉を伝える人、至聖所」と言う意味です。彼は熱心で美しい精神の青年であったことが想像できます。
ここで神罰と言うのは恐らく疫病だと思われます。あるいは性病かもしれません。異民族との交流には付き物だったのでしょう。
それにしても、この事件でのモーセの立場は複雑です。モーセの妻はミデアン人だったのです。モーセの場合エジプトのパロから逃れて一人でミデアン人の中に住んだのですから、やむを得なかったのに比べて、ここでは単なる享楽のための交流であったにしても、モーセの心中は穏やかなものではなかったでしょう。
25:10 主はモーセに告げて仰せられた。 25:11 「祭司アロンの子エルアザルの子ピネハスは、わたしのねたみをイスラエル人の間で自分のねたみとしたことで、わたしの憤りを彼らから引っ込めさせた。わたしは、わたしのねたみによってイスラエル人を絶ち滅ぼすことはしなかった。 25:12 それゆえ、言え。『見よ。わたしは彼にわたしの平和の契約を与える。 25:13 これは、彼とその後の彼の子孫にとって、永遠にわたる祭司職の契約となる。それは彼がおのれの神のためにねたみを表わし、イスラエル人の贖いをしたからである。』」 25:14 その殺されたイスラエル人、ミデヤン人の女といっしょに殺された者の名は、シメオン人の父の家の長サルの子ジムリであった。 25:15 また殺されたミデヤン人の女の名はツルの娘コズビであった。ツルはミデヤンの父の家の氏族のかしらであった。 25:16 主はモーセに告げて仰せられた。 25:17 「ミデヤン人を襲い、彼らを打て。 25:18 彼らは巧妙にたくらんだたくらみで、あなたがたを襲ってペオルの事件を引き起こし、ペオルの事件の神罰の日に殺された彼らの同族の女、ミデヤンの族長の娘コズビの事件を引き起こしたからだ。」
ピネハスの行動は最大限に賞賛されています。ピネハスは祭司の中でも最も有力な家系を引き継ぐことになりました。ここで驚くのは殺された男と女の家系や名前までが公表されていることです。男性は有力な氏族の人で、女性の方もミデアンの氏族の頭だったとありますから、単なる普通の男女の戯れとも違うのかもしれません。
この事件の後に、この書の名前の元になる人口調査が行われます。
26:1 この神罰の後、主はモーセと祭司アロンの子エルアザルに告げて仰せられた。 26:2 「イスラエル人の全会衆につき、父祖の家ごとに二十歳以上で、イスラエルにあって軍務につくことのできる者すべての人口調査をせよ。」 26:3 そこでモーセと祭司エルアザルは、エリコをのぞむヨルダンのほとりのモアブの草原で彼らに告げて言った。 26:4 「主がモーセに命じられたように、二十歳以上の者を数えなさい。」エジプトの国から出て来たイスラエル人は、
以下は概略を取り上げます。
ルベン人諸氏族で、登録された者は、四万三千七百三十人であった。
シメオン人諸氏族で、二万二千二百人であった。
ガド諸氏族で、登録された者は、四万五百人であった。
ユダ諸氏族で、登録された者は、七万六千五百人であった。
イッサカル諸氏族で、登録された者は、六万四千三百人であった。
ゼブルン人諸氏族で、登録された者は、六万五百人であった。
ヨセフの子孫の諸氏族は、それぞれ、マナセとエフライム。
マナセ諸氏族で、登録された者は、五万二千七百人であった。
エフライム諸氏族で、登録された者は、三万二千五百人であった。
ベニヤミン族の諸氏族で、登録された者は、四万五千六百人であった。
ダン族の諸氏族は、次のとおりである。六万四千四百人であった。
アシェル諸氏族で、登録された者は、五万三千四百人であった。
ナフタリ族の諸氏族で、登録された者は、四万五千四百人であった。
これがイスラエル人の登録された者で、六十万一千七百三十人であった。
言うまでもなくこれは成人男子の数です。女性や子供を足すとこの3〜5倍で200万から300万人となります。本当にそんなに居たのか私はいつも疑問に思うのですが、聖書は文字通り解釈すべきなのかもしれません。
26:52 主はモーセに告げて仰せられた。 26:53 「この人々に、その地は、名の数にしたがって、相続地として割り当てられなければならない。 26:54 大きい部族にはその相続地を多くし、小さい部族にはその相続地を少なくしなければならない。おのおの登録された者に応じて、その相続地は与えられなければならない。 26:55 ただし、その地はくじで割り当て、彼らの父祖の部族の名にしたがって、受け継がなければならない。 26:56 その相続地はくじによって、大部族と小部族の間で割り当てられなければならない。」
約束の地カナンに入った後の各氏族の割り当て地はその人数に従いましたが、その土地の選別はくじ引きでした。
26:57 さてレビ人で氏族ごとに登録された者は、次のとおりである。ゲルションからはゲルション族、ケハテからはケハテ族、メラリからはメラリ族。 26:58 レビ諸氏族は次のとおりである。すなわち、リブニ族、ヘブロン族、マフリ族、ムシ族、およびコラ族。ケハテはアムラムを生んだ。 26:59 アムラムの妻の名はヨケベデで、レビの娘であった。彼女はエジプトでレビに生まれた者であって、アムラムにアロンとモーセとその姉妹ミリヤムを産んだ。
ここにレビ人の数が数えられていますが、興味深いのは、ここで初めてモーセとアロンの両親が紹介されていることです。父はアムラム、母はヨケベデです。アムラムは「高く上げられた人々」ヨケベデは「ヤハウエは光栄」です。(注:これらの人名はロバート・ヤングのコンコーダンスから引用していますが、良くまあこんなに詳しく調べる人がいるものだと感心しますね。)
26:62 その登録された者は、一か月以上のすべての男子二万三千人であった。彼らは、ほかのイスラエル人の中に登録されなかった。彼らにはイスラエル人の間で相続地が与えられていなかったからである。 26:63 これがモーセと祭司エルアザルが、エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの草原で、イスラエル人を登録したときにモーセと祭司エルアザルによって登録された者である。 26:64 しかし、このうちには、モーセと祭司アロンがシナイの荒野でイスラエル人を登録したときに登録された者は、ひとりもいなかった。 26:65 それは主がかつて彼らについて、「彼らは必ず荒野で死ぬ。」と言われていたからである。彼らのうち、ただエフネの子カレブとヌンの子ヨシュアのほかには、だれも残っていなかった。
最後の言葉は印象的ですね。14章30節に、
ただエフネの子カレブと、ヌンの子ヨシュアのほかは、あなたがたを住まわせるとわたしが誓った地に、だれも決してはいることはできない。
とありましたが、その通りになったのです。信仰の勇者はこのように偉大で尊敬を受けるに値するのです。神ご自身でさえ尊く用いられることを思います。