ホームページ・メッセージ100912 小 石 泉
民数記 No.XII バラクとバラム−U
バラクとバラムの話は奇妙なほど詳細に書かれています。ある種の霊的闘争における、イスラエルの勝利を高らかに唄っているのです。それで長い箇所ですが省略しないで学ぶことにしましょう。それにしても誰が異邦人バラクとバラムのこの物語を詳細に聞き、聖書に書き記したのでしょうか。不思議と言えば不思議です。多くの聖書学者はバラム自身が後からイスラエル人に話したのだろうと言っています。私は書記のような人がいてバラムの言葉を正確に書き取ったのでなければ、これほど詳細な文章は残らなかったに違いないと思います。神様の言葉を後から記憶を頼りに概要を語ると言うにはあまりにも迫真に迫っています。
23:1 バラムはバラクに言った。「私のためにここに七つの祭壇を築き、七頭の雄牛と七頭の雄羊をここに用意してください。」 23:2 バラクはバラムの言ったとおりにした。そしてバラクとバラムとは、それぞれの祭壇の上で雄牛一頭と雄羊一頭とをささげた。 23:3 バラムはバラクに言った。「あなたは、あなたの全焼のいけにえのそばに立っていなさい。私は行って来ます。たぶん、主は私に現われて会ってくださるでしょう。そうしたら、私にお示しになることはどんなことでも、あなたに知らせましょう。」そして彼は裸の丘に行った。 23:4 神がバラムに会われたので、バラムは神に言った。「私は七つの祭壇を造り、それぞれの祭壇の上で雄牛一頭と雄羊一頭とをささげました。」 23:5 主はバラムの口にことばを置き、そして言われた。「バラクのところに帰れ。あなたはこう言わなければならない。」 23:6 それで、彼はバラクのところに帰った。すると、モアブのすべてのつかさたちといっしょに、彼は自分の全焼のいけにえのそばに立っていた。
バラクとバラムは七つの祭壇に七頭の雄牛と雄羊をささげました。彼らはどうして神への道、律法を知っていたのでしょうか。それともこういうことは当時の世界では常識だったのでしょうか。ほとんど何の説明もなしに、主という言葉が出てくることを考えると、イスラエルの神は主であり、その神は特別な神であることを彼らは知っていたのでしょう。
23:7 バラムは彼のことわざを唱えて言った。「バラクは、アラムから、モアブの王は、東の山々から、私を連れて来た。『来て、私のためにヤコブをのろえ。来て、イスラエルに滅びを宣言せよ。』 23:8 神がのろわない者を、私がどうしてのろえようか。主が滅びを宣言されない者に、私がどうして滅びを宣言できようか。 23:9 岩山の頂から私はこれを見、丘の上から私はこれを見つめる。見よ。この民はひとり離れて住み、おのれを諸国の民の一つと認めない。 23:10 だれがヤコブのちりを数え、イスラエルのちりの群れを数ええようか。私は正しい人が死ぬように死に、私の終わりが彼らと同じであるように。」
バラクはバラムにイスラエルと呪うことを願ったのに逆に祝福の言葉を聞くことになりました。当時、呪術者の言葉はそのまま実現すると信じられていました。今でも占いや呪い師が危険なのは彼らの言葉がかなりな確度で実現したり当たったりするからです。それは悪霊によるもので、悪霊は人間よりは霊的世界の知識があるからです。
23:11 バラクはバラムに言った。「あなたは私になんということをしたのですか。私の敵をのろってもらうためにあなたを連れて来たのに、今、あなたはただ祝福しただけです。」 23:12 バラムは答えて言った。「主が私の口に置かれること、それを私は忠実に語らなければなりません。」 23:13 バラクは彼に言った。「では、私といっしょにほかの所へ行ってください。そこから彼らを見ることができるが、ただその一部だけが見え、全体を見ることはできない所です。そこから私のために彼らをのろってください。」
バラクのイスラエルへの恐怖は深刻でした。彼は何とかしてイスラエルを呪わせようとします。それは全く無駄なことなのですが、まだその事に気付いていません。むしろ、益々イスラエルの特異性、選民の祝福が明らかになるだけでした。「主が私の口に置かれること、それを私は忠実に語らなければなりません。」というバラムの言葉は神の絶対主権を悪霊たちは知っているということを表すとも考えられます。
23:14 バラクはバラムを、セデ・ツォフィムのピスガの頂に連れて行き、そこで七つの祭壇を築き、それぞれの祭壇の上で雄牛と雄羊とを一頭ずつささげた。 23:15 バラムはバラクに言った。「あなたはここであなたの全焼のいけにえのそばに立っていなさい。私はあちらで主にお会いします。」 23:16 主はバラムに会われ、その口にことばを置き、そして言われた。「バラクのところに帰れ。あなたはこう告げなければならない。」 23:17 それで、彼はバラクのところに行った。すると、モアブのつかさたちといっしょに、彼は全焼のいけにえのそばに立っていた。バラクは言った。「主は何とお告げになりましたか。」 23:18 バラムは彼のことわざを唱えて言った。「立て、バラクよ。そして聞け。ツィポルの子よ。私に耳を傾けよ。 23:19 神は人間ではなく、偽りを言うことがない。人の子ではなく、悔いることがない。神は言われたことを、なさらないだろうか。約束されたことを成し遂げられないだろうか。 23:20 見よ。祝福せよ、との命を私は受けた。神は祝福される。私はそれをくつがえすことはできない。 23:21 ヤコブの中に不法を見いださず、イスラエルの中にわざわいを見ない。彼らの神、主は彼らとともにおり、王をたたえる声が彼らの中にある。 23:22 彼らをエジプトから連れ出した神は、彼らにとっては野牛の角のようだ。 23:23 まことに、ヤコブのうちにまじないはなく、イスラエルのうちに占いはない。神のなされることは、時に応じてヤコブに告げられ、イスラエルに告げられる。 23:24 見よ。この民は雌獅子のように起き、雄獅子のように立ち上がり、獲物を食らい、殺したものの血を飲むまでは休まない。」
彼らは場所を変えもう一度祭礼を行いますが、ますますバラムの言葉は神様のイスラエル祝福にエスカレートしていきます。ちなみにピスガは後にモーセが死ぬ所です。
良く読むと、バラムの祝福は実際のイスラエルよりも、立派過ぎると思われるくらいです。イスラエルは不従順で不平不満を言い続け、呪いや異教を密かにやっていたことを考えると、神様の期待の大きさと愛が見て取れます。
23:25 バラクはバラムに言った。「彼らをのろうことも、祝福することもしないでください。」 23:26 バラムはバラクに答えて言った。「私は主が告げられたことをみな、しなければならない、とあなたに言ったではありませんか。」 23:27 バラクはバラムに言った。「さあ、私はあなたをもう一つ別の所へ連れて行きます。もしかしたら、それが神の御目にかなって、あなたは私のために、そこから彼らをのろうことができるかもしれません。」 23:28 バラクはバラムを荒地を見おろすペオルの頂上に連れて行った。 23:29 バラムはバラクに言った。「私のためにここに七つの祭壇を築き、七頭の雄牛と七頭の雄羊をここに用意してください。」 23:30 バラクはバラムが言ったとおりにして、祭壇ごとに雄牛と雄羊とを一頭ずつささげた。
バラクは性懲りもなく、もう一度別の場所で同じことをします。三度目です。かなりの出費をしています。ところがバラムのイスラエル祝福は益々エスカレートし、もはや止められないまでになります。バラムは聖霊によって神の祝福の言葉で満ち溢れます。
24:1 バラムはイスラエルを祝福することが主の御心にかなうのを見、これまでのように、まじないを求めに行くことをせず、その顔を荒野に向けた。 24:2 バラムが目を上げて、イスラエルがその部族ごとに宿っているのをながめたとき、神の霊が彼の上に臨んだ。 24:3 彼は彼のことわざを唱えて言った。「ベオルの子バラムの告げたことば。目のひらけた者の告げたことば。 24:4 神の御告げを聞く者、全能者の幻を見る者、ひれ伏して、目のおおいを除かれた者の告げたことば。 24:5 なんと美しいことよ。ヤコブよ、あなたの天幕は。イスラエルよ、あなたの住まいは。 24:6 それは、延び広がる谷間のように、川辺の園のように、主が植えたアロエのように、水辺の杉の木のように。 24:7 その手おけからは水があふれ、その種は豊かな水に潤う。その王はアガグよりも高くなり、その王国はあがめられる。 24:8 彼をエジプトから連れ出した神は、彼にとっては野牛の角のようだ。彼はおのれの敵の国々を食い尽くし、彼らの骨を砕き、彼らの矢を粉々にする。 24:9 雄獅子のように、また雌獅子のように、彼はうずくまり、身を横たえる。だれがこれを起こすことができよう。あなたを祝福する者は祝福され、あなたをのろう者はのろわれる。」
ついにバラクはイスラエルを呪うことは不可能だと悟ります。バラクを単純な個人と見てはなりません、北朝鮮の金正日のような政治的な指導者、王であったのです。
24:10 そこでバラクはバラムに対して怒りを燃やし、手を打ち鳴らした。バラクはバラムに言った。「私の敵をのろうためにあなたを招いたのに、かえってあなたは三度までも彼らを祝福した。 24:11 今、あなたは自分のところに下がれ。私はあなたを手厚くもてなすつもりでいたが、主がもう、そのもてなしを拒まれたのだ。」 24:12 バラムはバラクに言った。「私はあなたがよこされた使者たちにこう言ったではありませんか。 24:13 『たとい、バラクが私に銀や金の満ちた彼の家をくれても、主のことばにそむいては、善でも悪でも、私の心のままにすることはできません。主が告げられること、それを私は告げなければなりません。』 24:14 今、私は私の民のところに帰ります。さあ、私は、この民が後の日にあなたの民に行なおうとしていることをあなたのために申し上げましょう。」
バラムは正しく行動します。彼は主の主権、その愛する民の絶対的な優位性を知っていました。そして全能の神に逆らうことの空しさも。しかし、それは敬虔な信仰によるのではなく不信仰なのに神に用いられた結果でした。それは後に分かってきます。
24:15 そして彼のことわざを唱えて言った。「ベオルの子バラムの告げたことば。目のひらけた者の告げたことば。 24:16 神の御告げを聞く者、いと高き方の知識を知る者、全能者の幻を見る者、ひれ伏して、目のおおいを除かれた者の告げたことば。 24:17 私は見る。しかし今ではない。私は見つめる。しかし間近ではない。ヤコブから一つの星が上り、イスラエルから一本の杖が起こり、モアブのこめかみと、すべての騒ぎ立つ者の脳天を打ち砕く。 24:18 その敵、エドムは所有地となり、セイルも所有地となる。イスラエルは力ある働きをする。 24:19 ヤコブから出る者が治め、残った者たちを町から消し去る。」 24:20 彼はアマレクを見渡して彼のことわざを唱えて言った。「アマレクは国々の中で首位のもの。しかしその終わりは滅びに至る。」 24:21 彼はケニ人を見渡して彼のことわざを唱えて言った。「あなたの住みかは堅固であり、あなたの巣は岩間の中に置かれている。 24:22 しかし、カインは滅ぼし尽くされ、ついにはアシュルがあなたをとりこにする。」 24:23 彼はまた彼のことわざを唱えて言った。「ああ、神が定められたなら、だれが生きのびることができよう。 24:24 船がキティムの岸から来て、アシュルを悩まし、エベルを悩ます。しかし、これもまた滅びに至る。」 24:25 それからバラムは立って自分のところへ帰って行った。バラクもまた帰途についた。
なんとバラムはイスラエルに生まれるメシヤ、キリストのことまで預言します。そしてモアブ、エドム、セイル、アマレク、ケニなどの民族の滅亡も預言します。
こうしてバラクの望みは絶たれ、彼らはそれぞれの国に帰ります。しかし、実はバラムはバラクにイスラエル攻撃の秘策を教えていくのです。それは性的罪による偶像礼拝への誘惑でした。それは31:8とヨシュア記13:22に書かれていますが別の機会に学びましょう。