29:1 あなたは、彼らを祭司としてわたしに仕えるように聖別するため、次のことを彼らにしなければならない。
祭司の務めは第一に「わたしに仕える」ことです。わたしとは言うまでも無く神御自身です。これは尊い仕事です。それはまたキリストの雛形でもあります。現在で言うなら牧師に当たるでしょうか。しかし、ちょっと違うような気もします。現在の牧師は「信徒に仕える」ものだとされています。特に日本では信徒に仕える牧師ほど良い牧師だと。
神に仕えるということを深く考えると気が遠くなるほど気高い仕事です。それにもかかわらず本人は全く普通の人間であって、特別な構造にはなっていないのです。ここに聖別するという言葉がありますが、これは原義では「取り分ける」という意味です。一番分かりやすいのは、昔神棚に毎日ご飯を捧げました。そのご飯はお釜のご飯と変わりないものでしたが、まず、最初に「取り分け」られました。そのように同じ人間の中から取り分けられることです。特別な人間ではありません。
以下に詳細な任職のしきたりが書かれています。一つ一つの意味は分かりませんが、何という細かさでしょうか。祭司になるということはこれほど厳密で崇高なものなのです。簡単になれるものではありません。
すなわち、若い雄牛一頭、傷のない雄羊二頭を取れ。 29:2 種を入れないパンと、油を混ぜた種を入れない輪型のパンと、油を塗った種を入れないせんべいとを取れ。これらは最良の小麦粉で作らなければならない。 29:3 これらを一つのかごに入れ、そのかごといっしょに、あの一頭の雄牛と二頭の雄羊とをささげよ。
これらの捧げものの意味するところは、祭司が全イスラエルの代表者として神に対面する者であり、国家の存亡にかかわる大事業だったことです。これはピラミッドやパルテノン神殿や伊勢神宮など偶像や悪霊に仕えること以上に重大な、天地を創造された神の施設での奉仕者、神官の任職に関わるものでした。
29:4 アロンとその子らを会見の天幕の入口に近づかせ、水で彼らを洗わなければならない。
水は非常に貴重なものでした。恐らくイスラエル人は荒野の旅の期間、水浴はしなかったでしょう。今でも乾燥地帯の人々はお風呂に入る習慣はあまり無いようです。中国の一部では一生お風呂に入ることはないと聞きました。
29:5 あなたは、装束を取り、アロンに長服とエポデの下に着る青服と、エポデと胸当てとを着せ、エポデのあや織りの帯を締めさせる。 29:6 彼の頭にかぶり物をかぶらせ、そのかぶり物の上に、聖別の記章を掛ける。 29:7 そそぎの油を取って、彼の頭にそそぎ、彼に油そそぎをする。 29:8 彼の子らを近づけ、彼らに長服を着せなければならない。 29:9 アロンとその子らに飾り帯を締めさせ、ターバンを巻きつけさせる。
長服というのはヨセフの生地にも出てくる上等な服のことです。また青は天を表す色で
非常に高級な染料でした。(注参照)
永遠のおきてによって、祭司の職は彼らのものとなる。あなたは、アロンとその子らを祭司職に任命せよ。
祭司職は「永遠のおきてによって」相続されました。一般人がなることも、儀式を行うことも禁じられました。歌舞伎や能のように非常に微妙なしきたりや所作は素人が学んで会得するより、親から子に生活の中で伝えられてゆくものです。祭司の務めはそれ以上に厳密で真剣なものだったからです。
29:10 あなたが、雄牛を会見の天幕の前に近づけたなら、アロンとその子らがその雄牛の頭に手を置く。 29:11 あなたは、会見の天幕の入口で、主の前に、その雄牛をほふり、 29:12 その雄牛の血を取り、あなたの指でこれを祭壇の角につける。その血はみな祭壇の土台に注がなければならない。 29:13 その内臓をおおうすべての脂肪、肝臓の小葉、二つの腎臓と、その上の脂肪を取り、これらを祭壇の上で焼いて煙にする。 29:14 ただし、その雄牛の肉と皮と汚物とは、宿営の外で火で焼かなければならない。これは罪のためのいけにえである。
まず雄牛がアロンとその子達の罪の清めのために捧げられました。まず罪を除いてからでなければ奉仕に携わることは出来ませんでした。祭壇の上では内臓の脂肪などが焼かれましたが、肉と皮と汚物は天幕の外、しかも宿営(キャンプ地)の外にあるごみ焼却場で焼かれました。それは罪を表すものだからです。
29:15 あなたは雄羊一頭を取り、アロンとその子らはその雄羊の頭に手を置かなければならない。 29:16 あなたはその雄羊をほふり、その血を取り、これを祭壇の回りに注ぎかける。 29:17 また、その雄羊を部分に切り分け、その内臓とその足を洗い、これらをほかの部分や頭といっしょにしなければならない。 29:18 その雄羊を全部祭壇の上で焼いて煙にする。これは、主への全焼のいけにえで、なだめのかおりであり、主への火によるささげ物である。
雄羊の一頭は全焼のいけにえ(口語訳では燔祭)として捧げられました。これ汚物を除いて洗ってから全て焼き尽くされました。これは祭司の献身を意味しています。
29:19 あなたはもう一頭の雄羊を取り、アロンとその子らはその雄羊の頭に手を置く。 29:20 あなたはその雄羊をほふり、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、その子らの右の耳たぶ、また、彼らの右手の親指と、右足の親指につけ、その血を祭壇の回りに注ぎかける。 29:21 あなたが、祭壇の上にある血とそそぎの油を取って、アロンとその装束、および、彼とともにいる彼の子らとその装束とに振りかけると、彼とその装束、および、彼とともにいる彼の子らとその装束とは聖なるものとなる。 29:22 あなたはその雄羊の脂肪、あぶら尾、内臓をおおう脂肪、肝臓の小葉、二つの腎臓、その上の脂肪、および、右のももを取る。これは、任職の雄羊である。
もう一頭の雄羊は彼らがその仕事にふさわしくなるための任職の証でした。装束にも血や油が注がれるのはわたしたち日本人から見ると汚れないかと思うのですが、きわめて乾燥した地帯ですからすぐに乾燥してしまったのでしょう。
29:23 主の前にある種を入れないパンのかごの丸型のパン一個と、油を入れた輪型のパン一個と、せんべい一個、 29:24 これらをみなアロンの手のひらと、その子らの手のひらに載せ、これらを奉献物として主に向かって揺り動かす。 29:25 これらを、彼らの手から取り、全焼のいけにえといっしょに祭壇の上で焼いて煙とし、主の前になだめのかおりとする。これは、主への火によるささげ物である。
レビ記によるとパンや穀物の捧げものが捧げられていますが、これは人間として必要な食物全般の祝福を祈るのでしょう。
29:26 あなたはアロンの任職用の雄羊の胸を取り、これを奉献物として主に向かって揺り動かす。これは、あなたの受け取る分となる。 29:27 あなたがアロンとその子らの任職用の雄羊の、奉献物として揺り動かされた胸と、奉納物として、ささげられたももとを聖別するなら、 29:28 それは、アロンとその子らがイスラエル人から受け取る永遠の分け前となる。それは奉納物であり、それはイスラエル人からの和解のいけにえの奉納物、すなわち、主への奉納物であるから。
揺り動かすという動作は神道の神主が榊(さかき)を振り回す動作を連想させます。榊と胸肉の違いはありますが。和解のいけにえ(口語訳では酬恩祭)は神との平和を喜ぶものです。感謝賛美を表します。
29:29 アロンの聖なる装束は、彼の跡を継ぐ子らのものとなり、彼らはこれを着けて、油そそがれ、祭司職に任命されなければならない。 29:30 彼の子らのうち、彼に代わって祭司となる者は、聖所で務めを行なうために会見の天幕にはいるとき、七日間、これを着なければならない。
アロンの聖なる装束は代々伝えられました。もちろん何度か作り変えられたでしょう。彼らは奉仕のために天幕に入るときはこの衣装を着ました。私たちが神の前に出るとき、このような特別な装いをしなければならないのでしょうか。いいえ、私たちの装いはイエス・キリストの贖いによる「義の衣」です。イエスの血によって清められた尊い衣装が用意されています。感謝ですね。
29:31 あなたは任職用の雄羊を取り、聖なる場所で、その肉を煮なければならない。 29:32 アロンとその子らは、会見の天幕の入口で、その雄羊の肉と、かごの中のパンとを食べる。 29:33 彼らは、彼らを祭司職に任命し、聖別するための贖いに用いられたものを、食べる。ほかの者は食べてはならない。これらは聖なる物である。 29:34 もし、任職用の肉またはパンが、朝まで残ったなら、その残りは火で焼く。食べてはならない。これは聖なる物である。 29:35 あなたが、わたしの命じたすべてのことをそのとおりに、アロンとその子らに行なったなら、七日間、任職式を行なわなければならない。 29:36 毎日、贖罪のために、罪のためのいけにえとして雄牛一頭をささげなければならない。祭壇のための贖いをするときには、その上に罪のためのいけにえをささげ、これを聖別するために油をそそぐ。
七日間の任職式、七日間、毎日、雄牛一頭を捧げる。それも罪の清めのために。しかし、私たちはイエス・キリストの尊い贖いが永遠に一回だけ捧げられたので十分なのです。
29:37 七日間にわたって祭壇のための贖いをしなければならない。あなたがそれを聖別すれば、祭壇は最も聖なるものとなる。祭壇に触れるものもすべて聖なるものとなる。 29:38 祭壇の上にささげるべき物は次のとおりである。毎日絶やすことなく一歳の若い雄羊二頭。 29:39 一頭の若い雄羊は朝ささげ、他の一頭の若い雄羊は夕暮れにささげなければならない。 29:40 一頭の若い雄羊には、上質のオリーブ油四分の一ヒンを混ぜた最良の小麦粉十分の一エパと、また注ぎのささげ物として、ぶどう酒四分の一ヒンが添えられる。 29:41 もう一頭の若い雄羊は夕暮れにささげなければならない。これには朝の穀物のささげ物や、注ぎのささげ物を同じく添えてささげなければならない。それは、なだめのかおりのためであり、主への火によるささげ物である。 29:42 これは、主の前、会見の天幕の入口で、あなたがたが代々にわたって、絶やすことのない全焼のいけにえである。その所でわたしはあなたがたに会い、その所であなたと語る。 29:43 その所でわたしはイスラエル人に会う。そこはわたしの栄光によって聖とされる。29:44 わたしは会見の天幕と祭壇を聖別する。またアロンとその子らを聖別して、彼らを祭司としてわたしに仕えさせよう。 29:45 わたしはイスラエル人の間に住み、彼らの神となろう。 29:46 彼らは、わたしが彼らの神、主であり、彼らの間に住むために、彼らをエジプトの地から連れ出した者であることを知るようになる。わたしは彼らの神、主である。
「わたしは彼らの神、主(YHWH)である。」イスラエルは神に愛された選びの民でした。彼らがそのことに忠実だったら祝福の歴史をたどったことでしょう。しかし、不振工と傲慢がその後の悲惨な歴史を生みました。しかし、もう一度彼らは神の民として世界に輝きわたるでしょう。その時は間近です。
「青」という訳語は明るい空色を連想させるが(参照出24:10),原語の〈ヘ〉テケーレスはむしろ紫に近い濃紺あるいは青紫を指す.その染料はアサガオガイという巻貝などから得られた.青色に染めた布は,紫色や純白のものと同様に珍重され,王など身分の高い人が着る豪華な衣服に用いられた(エス1:6,8:15,エゼ27:7,24).偶像の装飾に供される例もある(エレ10:9).イスラエルにおいては,この色のより糸は聖所(神殿)への奉納物に含められ(出25:4,28:5,35:6,23,25),幕屋の幕(出26:1,4,31,36,27:16,35:35,36:8,11,35,37,38:18),祭司の式服やエポデの素材(出28:6,8,15,28,31,33,37,39:1‐3,5,8,21‐24,29,31),聖なる器具の運搬時の覆い(民4:6‐12)として用いられた.ソロモン王は神殿建築の折,染物職人を召集した(U歴2:7,13‐14,3:14).