ホームページ・メッセージ090510 小 石 泉
Bible Land museum
バイブルランド博物館
出エジプト記 No.9 十の災い−V
10:1 主はモーセに仰せられた。「パロのところに行け。わたしは彼とその家臣たちを強情にした。それは、わたしがわたしのこれらのしるしを彼らの中に、行なうためであり、 10:2 わたしがエジプトに対して力を働かせたあのことを、また、わたしが彼らの中で行なったしるしを、あなたが息子や孫に語って聞かせるためであり、わたしが主であることを、あなたがたが知るためである。」 10:3 モーセとアロンはパロのところに行って、彼に言った。「ヘブル人の神、主はこう仰せられます。『いつまでわたしの前に身を低くすることを拒むのか。わたしの民を行かせ、彼らをわたしに仕えさせよ。 10:4 もし、あなたが、わたしの民を行かせることを拒むなら、見よ、わたしはあす、いなごをあなたの領土に送る。 10:5 いなごが地の面をおおい、地は見えなくなる。また、雹の害を免れて、あなたがたに残されているものを食い尽くし、野に生えているあなたがたの木をみな食い尽くす。 10:6 またあなたの家とすべての家臣の家、および全エジプトの家に満ちる。このようなことは、あなたの先祖たちも、そのまた先祖たちも、彼らが地上にあった日からきょうに至るまで、かつて見たことのないものであろう。』」こうして彼は身を返してパロのもとを去った。
第八番目の災いはイナゴです。イナゴは日本ではバッタとして知られている昆虫の一種ですが、この場合はバッタです。(中国から日本に漢字が来たときにイナゴとバッタが間違えられて定着したそうです)バッタは単体で生息するときはそれほどでもないのですが、時々、大群になると体も大きくなり、凶暴になってあらゆる植物を食べつくします。* これは農業国エジプトにとって大変な災害でした。
さて、ここでモーセは「ヘブル人の神、主」と言っています。神は全地の神ですが、ヘブル人、イスラエルの神であることを良しとされました。今は、クリスチャンの神ですが最終的にはユダヤ人を含む全人類の神として現れるでしょう。
10:7 家臣たちはパロに言った。「いつまでこの者は私たちを陥れるのですか。この男たちを行かせ、彼らの神、主に仕えさせてください。エジプトが滅びるのが、まだおわかりにならないのですか。」
10:8 モーセとアロンはパロのところに連れ戻された。パロは彼らに言った。「行け。おまえたちの神、主に仕えよ。だが、いったいだれが行くのか。」
10:9 モーセは答えた。「私たちは若い者や年寄りも連れて行きます。息子や娘も、羊の群れも牛の群れも連れて行きます。私たちは主の祭りをするのですから。」
10:10 パロは彼らに言った。「私がおまえたちとおまえたちの幼子たちとを行かせるくらいなら、主がおまえたちとともにあるように、とでも言おう。見ろ。悪意はおまえたちの顔に表われている。
10:11 そうはいかない。さあ、壮年の男だけ行って、主に仕えよ。それがおまえたちの求めていることだ。」こうして彼らをパロの前から追い出した。
ここで興味深いのはパロの家臣たちがパロに提言していることが書かれていることです。これは大変珍しいことだったのではないでしょうか。もう駄目だ耐えられないという思いが国民の上から下まで起こっていたのでしょう。パロが「壮年の男」たちだけと言っているのは、もちろん人質として女性や子供を確保するためでした。この時点でもパロは3日間だけ奴隷であるヘブル人を解放するつもりでした。
10:12 主はモーセに仰せられた。「あなたの手をエジプトの地の上に差し伸ばせ。いなごの大群がエジプトの地を襲い、その国のあらゆる草木、雹の残したすべてのものを食い尽くすようにせよ。」 10:13 モーセはエジプトの地の上に杖を差し伸ばした。主は終日終夜その地の上に東風を吹かせた。朝になると東風がいなごの大群を運んで来た。 10:14 いなごの大群はエジプト全土を襲い、エジプト全域にとどまった。実におびただしく、こんないなごの大群は、前にもなかったし、このあとにもないであろう。 10:15 それらは全地の面をおおったので、地は暗くなった。それらは、地の草木も、雹を免れた木の実も、ことごとく食い尽くした。エジプト全土にわたって、緑色は木にも野の草にも少しも残らなかった。 10:16 パロは急いでモーセとアロンを呼び出して言った。「私は、おまえたちの神、主とおまえたちに対して罪を犯した。 10:17 どうか今、もう一度だけ、私の罪を赦してくれ。おまえたちの神、主に願って、主が私から、ただこの死を取り除くようにしてくれ。」10:18 彼はパロのところから出て、主に祈った。 10:19 すると、主はきわめて強い西の風に変えられた。風はいなごを吹き上げ、葦の海に追いやった。エジプト全域に、一匹のいなごも残らなかった。 10:20 しかし主がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエル人を行かせなかった。
すさまじいイナゴの大群。それは空を覆い、暗くなったほどでした。あらゆる植物は食い尽くされました。それは翌年の飢饉を予想させました。イナゴは東、すなわちアラビア半島から来たのでしょう。そしてパロの悔い改めにしたがってまた去っていきました。しかし、再びパロは心をかたくなにしました。それは世界に全能の神を印象付ける結果となりました。これらの出来事のニュースはたちまち世界中に広まったことでしょう。
10:21 主はモーセに仰せられた。「あなたの手を天に向けて差し伸べ、やみがエジプトの地の上に来て、やみにさわれるほどにせよ。」 10:22 モーセが天に向けて手を差し伸ばしたとき、エジプト全土は三日間真暗やみとなった。 10:23 三日間、だれも互いに見ることも、自分の場所から立つこともできなかった。しかしイスラエル人の住む所には光があった。 10:24 パロはモーセを呼び寄せて言った。「行け。主に仕えよ。ただおまえたちの羊と牛は、とどめておけ。幼子はおまえたちといっしょに行ってもよい。」 10:25 モーセは言った。「あなた自身が私たちの手にいけにえと全焼のいけにえを与えて、私たちの神、主にささげさせなければなりません。 10:26 私たちは家畜もいっしょに連れて行きます。ひづめ一つも残すことはできません。私たちは、私たちの神、主に仕えるためにその中から選ばなければなりません。しかも私たちは、あちらに行くまでは、どれをもって主に仕えなければならないかわからないのです。」 10:27 しかし、主はパロの心をかたくなにされた。パロは彼らを行かせようとはしなかった。 10:28 パロは彼に言った。「私のところから出て行け。私の顔を二度と見ないように気をつけろ。おまえが私の顔を見たら、その日に、おまえは死ななければならない。」 10:29 モーセは言った。「結構です。私はもう二度とあなたの顔を見ません。」
第九番目の災いは闇でした。さわれるほどの闇とはすごいですね。実はこれらの災いについて、一つの興味ある仮説があります。それはちょうどこのころエーゲ海のサントリニ島が大噴火して島の大部分が水没しました。これがいわゆるアトランティス伝説の元になったとも言われているのですが、噴火による天変地異がエジプトにまで及び、この闇はその噴火の火山灰だとも考えられるそうです。
この時の、モーセの言葉は自信に満ち、最初のおどおどした雰囲気とは大きな違いがありますが、それは引き続き起こった奇跡にモーセ自身の信仰が大きく成長したとも言えるでしょう。いよいよ、神の時が近づいていました。今の世界がちょうど同じように、主の再臨間近を思わせる様相ですね。
*バッタの相変異
大陸の砂漠地帯に分布するワタリバッタやサバクバッタなどは、ときに大量発生して大集団飛蝗を作り、植物を食べつくす蝗害を発生させることがある。集団が通りかかった地域の田畑は壊滅的な被害を受け、さらに食べるものがなくなるとバッタの集団内で共食いが起こる凄まじさである。映画『エクソシスト2』の象徴的シーンに使われた[1]。日本のトノサマバッタなどでも発生する現象だったが、近年はその発生を見る事はほとんど無い。これは農薬による防除の発達や、生育環境の変化などによると思われる。バッタの幼虫は、低い密度で生息すると孤独相(こどくそう)という、単独生活を送るふつうの成虫になるが、幼虫が高い密度で生息すると群生相(ぐんせいそう)という飛翔能力と集団性が高い成虫に変化するという特徴がある。群生相の成虫は、孤独相の成虫にくらべて後脚が短く、翅が長いスマートな体型となり、体色も黒くなる。このように、生物の個体群の密度によって、その生物の体型が変化することを、相変異(そうへんい)とよぶ。
*サントリニ島
サントリニ島は、エーゲ海に浮かぶ火山島である。紀元前1500年ごろ大噴火し、この島にあったミノア文明の都市を壊滅させた。この事件が、アトランティス大陸の伝説の元になったという説がある。
サントリン(Santorin)諸島

カルデラの外輪山を形成するのが、大きい順にサントリニ島、ティラシア(Thirasia)島、アスプロニッシ(Aspronissi)島。カルデラの中央が、ナエ・カメニ(Nae
Kameni)島と、そのそばのパレア・カメニ(Palea Kameni)島。ナエ・カメニ島には火口がある。
カルデラの内壁は、高さ60〜120 mの断崖になっている。 2000‐11‐21、人工衛星TerraがASTERで撮影