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Bible Land museum
バイブルランド博物館
創世記Vol.43 ユダの失敗
38:1 そのころのことであった。ユダは兄弟たちから離れて下って行き、その名をヒラというアドラム人の近くで天幕を張った。
38:2 そこでユダは、あるカナン人で、その名をシュアという人の娘を見そめ、彼女をめとって彼女のところにはいった。
38:3 彼女はみごもり、男の子を産んだ。彼はその子をエルと名づけた。 38:4
彼女はまたみごもって、男の子を産み、その子をオナンと名づけた。 38:5 彼女はさらにまた男の子を産み、その子をシェラと名づけた。彼女がシェラを産んだとき、彼はケジブにいた。
38:6 ユダは、その長子エルにタマルという妻を迎えた。 38:7 しかしユダの長子エルは主を怒らせていたので、主は彼を殺した。
38:8 それでユダはオナンに言った。「あなたは兄嫁のところにはいり、義弟としての務めを果たしなさい。そしてあなたの兄のために子孫を起こすようにしなさい。」
38:9 しかしオナンは、その生まれる子が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないために、兄嫁のところにはいると、地に流していた。
38:10 彼のしたことは主を怒らせたので、主は彼をも殺した。 38:11 そこでユダは、嫁のタマルに、「わが子シェラが成人するまで、あなたの父の家でやもめのままでいなさ。」と言った。それはシェラもまた、兄たちのように死ぬといけないと思ったからである。タマルは父の家に行き、そこに住むようになった。
ヨセフの話が続く前に、またしても情けない物語が挿入されます。こんな話が何で聖書の中にあるのか、また、なければならないのか、と不思議に思うと同時に、これらの物語を書き残したイスラエル人が、どう見ても先祖の名誉にならない物語を書き記し、忠実に保存して来たことは一般的な常識からは考えられないことです。しかし、それが聖書なのです。聖書は人間の罪の深層をえぐり出して見せます。これが人間の本性なのです。行い澄ました聖人君子の話ではないのです。だからこそ救い主が必要なのです。
ユダは兄弟の中で最も有能で、指導的な立場に立ちました。後に「ユダの獅子」ダビデを輩出するこの部族は今もイスラエル民族の中心です。しかし、そのユダにしてこの恥ずかしい物語があったのです。ユダはカナン人の女と交渉を持っています。これも意外なことです。本来なら決して交わらないはずなのです。ディナの話を思い出してください。
その女性から生まれた長男のエル(神という名)は何かの罪を犯し、神に殺されてしまいます。恐らく信仰に関するよほど大きな罪だったのでしょう。異邦人の女の子だったから宗教的に問題があったのかもしれません。ユダは次男のオナンに長男エルの嫁タマル交渉を持って子供を与えるように命じます。しかし、オナンは子供が生まれても自分の子にならないで兄の子になって長男の特権がその子に残されることを嫌って、子供が生まれないように性交渉の途中で止めます。ここからオナニーと言う言葉が出来ました。ユダはやむを得ず、タマルに三男のシェラが成人するまで寡婦のままでいなさいと言います。ところがタマルはどうしても子どもがほしかったのです。そうでないと家族の中で自分の存在が認められないからです。そして、シェラが成人するまでに、子どもが産めなくなってしまうかもしれないのです。
イラスト: 渡辺 百合
38:12 かなり日がたって、シュアの娘であったユダの妻が死んだ。その喪が明けたとき、ユダは、羊の群れの毛を切るために、その友人でアドラム人のヒラといっしょに、ティムナへ上って行った。
38:13 そのとき、タマルに、「ご覧。あなたのしゅうとが羊の毛を切るためにティムナに上って来ていますよ。」と告げる者があった。
38:14 それでタマルは、やもめの服を脱ぎ、ベールをかぶり、着替えをして、ティムナへの道にあるエナイムの入口にすわっていた。それはシェラが成人したのに、自分がその妻にされないのを知っていたからである。
38:15 ユダは、彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたので遊女だと思い、
38:16 道ばたの彼女のところに行き、「さあ、あなたのところにはいろう。」と言った。彼はその女が自分の嫁だとは知らなかったからである。彼女は、「私のところにおはいりになれば、何を私に下さいますか。」と言った。
38:17 彼が、「群れの中から子やぎを送ろう。」と言うと、彼女は、「それを送ってくださるまで、何かおしるしを下されば。」と言った。
38:18 それで彼が、「しるしとして何をあげようか。」と言うと、「あなたの印形とひもと、あなたが手にしている杖。」と答えた。そこで彼はそれを与えて、彼女のところにはいった。こうしてタマルは彼によってみごもった。
38:19 彼女は立ち去って、そのベールをはずし、またやもめの服を着た。
ユダの妻が死んだ後に、羊の毛を刈るときが来ました。前にも書いたように、これは農夫で言えば収穫の時です。日本で言えば祭りのような華やいだ時でしょう。この時、嫁のタマルは娼婦のふりをしてユダを誘惑します。そして彼から、ユダのしるしとなるものを受け取ります。そしてタマルは身ごもりました。すさまじい執念ですね。何とかして家族の中に自分の位置を見つけようとしたのです。
38:20 ユダは、彼女の手からしるしを取り戻そうと、アドラム人の友人に託して、子やぎを送ったが、彼はその女を見つけることができなかった。
38:21 その友人は、そこの人々に尋ねて、「エナイムの道ばたにいた遊女はどこにいますか。」と言うと、彼らは、「ここには遊女はいたことがない。」と答えた。
38:22 それで彼はユダのところに帰って来て言った。「あの女は見つかりませんでした。あそこの人たちも、ここには遊女はいたことがない、と言いました。」
38:23 ユダは言った。「われわれが笑いぐさにならないために、あの女にそのまま取らせておこう。私はこのとおり、この子やぎを送ったのに、あなたがあの女を見つけなかったのだから。」
ユダは後でこの女からユダのしるしを取り戻そうと、子ヤギを友人に託して送りますが、その女はいませんでした。それどころかそのあたりには娼婦はいないと言う話でした。ユダは「まあいいか、あの女がいないなら放っておこう」と言います。
38:24 約三か月して、ユダに、「あなたの嫁のタマルが売春をし、そのうえ、お聞きください、その売春によってみごもっているのです。」と告げる者があった。そこでユダは言った。「あの女を引き出して、焼き殺せ。」 38:25 彼女が引き出されたとき、彼女はしゅうとのところに使いをやり、「これらの品々の持ち主によって、私はみごもったのです。」と言わせた。そしてまた彼女は言った。「これらの印形とひもと杖とが、だれのものかをお調べください。」 38:26 ユダはこれを見定めて言った。「あの女は私よりも正しい。私が彼女を、わが子シェラに与えなかったことによるものだ。」こうして彼は再び彼女を知ろうとはしなかった。 38:27 彼女の出産の時になると、なんと、ふたごがその胎内にいた。 38:28 出産のとき、一つの手が出て来たので、助産婦はそれをつかみ、その手に真赤な糸を結びつけて言った。「この子が最初に出て来たのです。」 38:29 しかし、その子が手を引っ込めたとき、もうひとりの兄弟のほうが出て来た。それで彼女は、「あなたは何であなたのために割りこむのです。」と言った。それでその名はペレツと呼ばれた。 38:30 そのあとで、真赤な糸をつけたもうひとりの兄弟が出て来た。それでその名はゼラフと呼ばれた。
ところがなんと、3ヵ月後に、タマルが妊娠したと言う話が起こりました。それも売春によってです。ユダは烈火のごとく怒り、タマルを焼き殺せと命じます。本当に焼き殺すつもりだったとは思えませんが、それほど怒ったのでしょう。ところがタマルは「この人によって私は身ごもったのです」とユダのしるしを公表します。ああ、ユダは一族の前で大恥をかくことになりました。嫁を犯してしまったのですから。
このタマルから双子が生まれます。そしてタマルはユダの正式な妻になるのです。それは何と、イエス様の系図にも載っています。
アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、マタイ1:1〜3
聖書はすさまじい人間模様の書物ですね。人間そのものが、あからさまに表わされています。私はこのような人間の暗闇の部分と言うものは、何時の時代でも同じだと思います。人間とはそういうものなのです。この罪の連鎖を断ち切るために、イエス様は罪の世に生まれてくださったのです。御自身は罪無き方でしたが。