メッセージ080302                   小 石  泉

      Bible Land museum
               バイブルランド博物館

創世記  ヨセフ T

37:1 ヤコブは、父が一時滞在していた地、カナンの地に住んでいた。 37:2 これはヤコブの歴史である。ヨセフは十七歳のとき、彼の兄たちと羊の群れを飼っていた。彼はまだ手伝いで、父の妻ビルハの子らやジルパの子らといっしょにいた。ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。 37:3 イスラエルは、彼の息子たちのだれよりもヨセフを愛していた。それはヨセフが彼の年寄り子であったからである。それで彼はヨセフに、そでつきの長服を作ってやっていた。 37:4 彼の兄たちは、父が兄弟たちのだれよりも彼を愛しているのを見て、彼を憎み、彼と穏やかに話すことができなかった。
37:5 あるとき、ヨセフは夢を見て、それを兄たちに告げた。すると彼らは、ますます彼を憎むようになった。 37:6 ヨセフは彼らに言った。「どうか私の見たこの夢を聞いてください。 37:7 見ると、私たちは畑で束をたばねていました。すると突然、私の束が立ち上がり、しかもまっすぐに立っているのです。見ると、あなたがたの束が回りに来て、私の束におじぎをしました。」 37:8 兄たちは彼に言った。「おまえは私たちを治める王になろうとするのか。私たちを支配しようとでも言うのか。」こうして彼らは、夢のことや、ことばのことで、彼をますます憎むようになった。


ヤコブの妻ラケルの子、ヨセフはラケルが長い祈りと忍耐の末にやっと生まれた子で、ヤコブにとっても待望の“家督を譲る子”だったのです。ヨセフの生涯を見ると、イエス・キリストの雛形であると思わされます。

この方はもとから世におられ、世はこの方によって造られたのに、世はこの方を知らなかった。この方はご自分のくにに来られたのに、ご自分の民は受け入れなかった。 しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。ヨハネ1:10〜12

 本来ならメシアとして「自分の民」イスラエルに迎えられるはずなのに、受け入れられず、苦難に会い、しかし、最後には栄光に輝く支配者として現れるからです。もちろん、主エスの場合はまだその時は来ていませんが。
 ヨセフは父の“ひとり子”のように特別な寵愛を受けました。「袖つきの長服」の意味は判りませんが子どもは一般に短い袖の服を着ていたのでしょう。ヨセフは神の寵愛も受けていました。彼は夢を見ますが、夢は聖書の中では多くの場合神からの啓示です。その夢は、ヨセフの作った麦の束が他の束にお辞儀をされるというものでした。これは明らかに神の預言的な夢です。ヨセフは黙っていれずに兄弟たちに話します。ただでさえ、自分たちと違う扱いをされているヨセフのことですから、兄弟たちが面白いはずはありません。

37:9 ヨセフはまた、ほかの夢を見て、それを兄たちに話した。彼は、「また、私は夢を見ましたよ。見ると、太陽と月と十一の星が私を伏し拝んでいるのです。」と言った。 37:10 ヨセフが父や兄たちに話したとき、父は彼をしかって言った。「おまえの見た夢は、いったい何なのだ。私や、おまえの母上、兄さんたちが、おまえのところに進み出て、地に伏しておまえを拝むとでも言うのか。」 37:11 兄たちは彼をねたんだが、父はこのことを心に留めていた。

 さらに決定的な夢が表されます。太陽と月と11の星がヨセフを拝んでいると言うのです。これにはさすがのヤコブもヨセフをたしなめるのですが、これは長い年月の後に正夢になります。

37:12 その後、兄たちはシェケムで父の羊の群れを飼うために出かけて行った。 37:13 それで、イスラエルはヨセフに言った。「おまえの兄さんたちはシェケムで群れを飼っている。さあ、あの人たちのところに使いに行ってもらいたい。」すると答えた。「はい。まいります。」 37:14 また言った。「さあ、行って兄さんたちや、羊の群れが無事であるかを見て、そのことを私に知らせに帰って来ておくれ。」こうして彼をヘブロンの谷から使いにやった。それで彼はシェケムに行った。 37:15 彼が野をさまよっていると、ひとりの人が彼に出会った。その人は尋ねて言った。「何を捜しているのですか。」 37:16 ヨセフは言った。「私は兄たちを捜しているところです。どこで群れを飼っているか教えてください。」 37:17 するとその人は言った。「ここから、もう立って行ったはずです。あの人たちが、『ドタンのほうに行こうではないか。』と言っているのを私が聞いたからです。」そこでヨセフは兄たちのあとを追って行き、ドタンで彼らを見つけた。

 ヤコブはヨセフを兄たちが牧羊しているのに送るのですが、これは危険なことでした。

37:18 彼らは、ヨセフが彼らの近くに来ないうちに、はるかかなたに、彼を見て、彼を殺そうとたくらんだ。 37:19 彼らは互いに言った。「見ろ。あの夢見る者がやって来る。 37:20 さあ、今こそ彼を殺し、どこかの穴に投げ込んで、悪い獣が食い殺したと言おう。そして、あれの夢がどうなるかを見ようではないか。」 37:21 しかし、ルベンはこれを聞き、彼らの手から彼を救い出そうとして、「あの子のいのちを打ってはならない。」と言った。 37:22 ルベンはさらに言った。「血を流してはならない。彼を荒野のこの穴に投げ込みなさい。彼に手を下してはならない。」ヨセフを彼らの手から救い出し、父のところに返すためであった。 37:23 ヨセフが兄たちのところに来たとき、彼らはヨセフの長服、彼が着ていたそでつきの長服をはぎ取り、 37:24 彼を捕えて、穴の中に投げ込んだ。その穴はからで、その中には水がなかった。 37:25 それから彼らはすわって食事をした。彼らが目を上げて見ると、そこに、イシュマエル人の隊商がギルアデから来ていた。らくだには樹膠と乳香と没薬を背負わせ、彼らはエジプトへ下って行くところであった。 37:26 すると、ユダが兄弟たちに言った。「弟を殺し、その血を隠したとて、何の益になろう。 37:27 さあ、ヨセフをイシュマエル人に売ろう。われわれが彼に手をかけてはならない。彼はわれわれの肉親の弟だから。」兄弟たちは彼の言うことを聞き入れた。 37:28 そのとき、ミデヤン人の商人が通りかかった。それで彼らはヨセフを穴から引き上げ、ヨセフを銀二十枚でイシュマエル人に売った。イシュマエル人はヨセフをエジプトへ連れて行った。

兄弟たちは相談をして、ヨセフを殺そうとしますが、ルベンはさすがに長男です、後から救い出そうとして穴に投げ込むことにします。しかし、ルベンがいない間に、ユダが中心になって砂漠のイシュマエルのキャラバン隊に売ってしまいます。イシュマエルも元とは言えばアブラハムがエジプト人の奴隷ハガルの子の子孫ですが、もう全く別の民族になっていたのです。(ミデヤンはアブラハムの第二の妻ケトラの子孫ですが、イシュマエルと一緒にいたのかもしれません)しかし、この方法でヨセフは当時の世界の中心地エジプトに行くことになったのです。 ヨセフは銀20枚で売られますが、キリストの場合はユダによって30枚で売られます。時代が違うので、同じレートとはいえませんが、売ったという行為は同じです。売った人間の名が同じなのも興味深いことです。

37:29 さて、ルベンが穴のところに帰って来ると、なんと、ヨセフは穴の中にいなかった。彼は自分の着物を引き裂き、 37:30 兄弟たちのところに戻って、言った。「あの子がいない。ああ、私はどこへ行ったらよいのか。」 37:31 彼らはヨセフの長服を取り、雄やぎをほふって、その血に、その長服を浸した。 37:32 そして、そのそでつきの長服を父のところに持って行き、彼らは、「これを私たちが見つけました。どうか、あなたの子の長服であるかどうか、お調べになってください。」と言った。 37:33 父は、それを調べて、言った。「これはわが子の長服だ。悪い獣にやられたのだ。ヨセフはかみ裂かれたのだ。」 37:34 ヤコブは自分の着物を引き裂き、荒布を腰にまとい、幾日もの間、その子のために泣き悲しんだ。 37:35 彼の息子、娘たちがみな、来て、父を慰めたが、彼は慰められることを拒み、「私は、泣き悲しみながら、よみにいるわが子のところに下って行きたい。」と言った。こうして父は、その子のために泣いた。 37:36 あのミデヤン人はエジプトで、パロの廷臣、その侍従長ポティファルにヨセフを売った。

ルベンは嘆き悲しみますが、もう売ってしまったのです。そして彼らはヨセフの長服に雄山羊の血を浸して父の元にもって行きます。悪い獣にやられたのだと。ヤコブは嘆き悲しみますが、これを見た兄弟たちは自分たちのした行為の重大さに遅かったことに気がついたのです。
 しかし、これが、実は神様のご計画であり、ヨセフがエジプトの偉大な宰相として現れる布石だったのですから、なんというドラマの筋立てでしょうか。苦難の僕が栄光の王となって現れるのがキリストのストーリーなのです。ヨセフは数年後に大いなる栄光の姿で兄弟たちの前に現れますが、キリストの場合はその時はまだ来ていません。しかし、間もなく実現するでしょう。