ホームページ・メッセージ071014 小 石 泉
Bible Land museum
バイブルランド博物館
創世記 イサクT エソウとヤコブ
25:19 これはアブラハムの子イサクの歴史である。アブラハムはイサクを生んだ。
25:20 イサクが、パダン・アラムのアラム人ベトエルの娘で、アラム人ラバンの妹であるリベカを妻にめとったときは、四十歳であった。
25:21 イサクは自分の妻のために主に祈願した。彼女が不妊の女であったからである。主は彼の祈りに答えられた。それで彼の妻リベカはみごもった。
25:22 子どもたちが彼女の腹の中でぶつかり合うようになったとき、彼女は、「こんなことでは、いったいどうなるのでしょう。私は。」と言った。そして主のみこころを求めに行った。
25:23 すると主は彼女に仰せられた。「二つの国があなたの胎内にあり、二つの国民があなたから分かれ出る。一つの国民は他の国民より強く、兄が弟に仕える。」
25:24 出産の時が満ちると、見よ、ふたごが胎内にいた。 25:25 最初に出て来た子は、赤くて、全身毛衣のようであった。それでその子をエサウと名づけた。
25:26 そのあとで弟が出て来たが、その手はエサウのかかとをつかんでいた。それでその子をヤコブと名づけた。イサクは彼らを生んだとき、六十歳であった。
ここにも不妊の女性が出てきます。イサクとリベカも二〇年間子供が居なかったのです。それにしても昔はずいぶん晩婚だったのですね。今とは違った時間の流れだったのでしょう。また、聖書は正規の結婚以外はアブラハムのように書かないこともあります。
生まれてきたのは双子でした。エソウとは“毛深い”“毛むくじゃら”と言う意味です。ヤコブとは“後に続く”“押しのける”と言う意味です。エソウはともかく、ヤコブはその後の彼の人生と、彼の子孫たちの性格となりました。ヤコブは晩年イスラエルと名前を変えさせられますが、本当にそうですね。今も、イスラエルはパレスチナに住んでいた人々を押しのけています。もっともパレスチナに居た人々はその地を開拓して、今のようなエデンのような国土にすることはなかったのですが。元々パレスチナ人というのは最近作られた名前です。それまでは単なるアラブの遊牧民、トルコ人などの混合民族でした。
25:27 この子どもたちが成長したとき、エサウは巧みな猟師、野の人となり、ヤコブは穏やかな人となり、天幕に住んでいた。 25:28 イサクはエサウを愛していた。それは彼が猟の獲物を好んでいたからである。リベカはヤコブを愛していた。 25:29 さて、ヤコブが煮物を煮ているとき、エサウが飢え疲れて野から帰って来た。 25:30 エサウはヤコブに言った。「どうか、その赤いのを、そこの赤い物を私に食べさせてくれ。私は飢え疲れているのだから。」それゆえ、彼の名はエドムと呼ばれた。 25:31 するとヤコブは、「今すぐ、あなたの長子の権利を私に売りなさい。」と言った。 25:32 エサウは、「見てくれ。死にそうなのだ。長子の権利など、今の私に何になろう。」と言った。 25:33 それでヤコブは、「まず、私に誓いなさい。」と言ったので、エサウはヤコブに誓った。こうして彼の長子の権利をヤコブに売った。 25:34 ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えたので、エサウは食べたり、飲んだりして、立ち去った。こうしてエサウは長子の権利を軽蔑したのである。
エソウは男性的なさっぱりした性格だったようです。しかし、ヤコブは粘液質の女性的な性格でした。彼は双子なのに、兄に長男の特権があることを深く恨んでいたようです。昔は長男の特権は他の子供たちに比べて絶大なものでした。それも神との関係、礼拝を司るという高貴な任務は長男に引き継がれました。長男には神の特別な祝福がありました。それはこの後の出エジプト記を見ると良く分かります。
エソウが狩りから帰ってきたとき、ヤコブは豆を煮ていました。これはすごく面白いですね。ヤコブはなぜ豆を煮ていたのでしょうか。召使も居たはずなのです。それは赤い豆でした。レンズ豆を煮てもらって食べたことがありますがそんなに赤くなかったように記憶しています。しかし、ヤコブのは赤かったのでしょう。エソウはそれを食べさせてくれと頼みます。それで“赤い”エドムと呼ばれたとありますが、これは今でもエダムチーズという名前にその名残があります。ヤコブの出した条件は兄弟とは思えない冷酷なものでした。「長男の特権を売りなさい」。何だか背筋が冷たくなるような言葉ですね。それほどヤコブの頭の中は長男の特権で一杯だったのでしょう。そしてその価値を知っていたのです。それに対してエソウは軽薄でした。「ああ、そんなものくれてやるよ。とにかく腹が減って死にそうなんだ。長男の特権なんてどうってことないよ。」
それにしても「エサウは長子の権利を“軽蔑した”」はないでしょう。口語訳聖書は「エサウは長子の特権を軽んじた。」とあります。日本語のセンスの問題ですがね。
このヤコブの行動は長男の特権、すなわち神との関係を大切に考えたという弁護も出来るかもしれませんが、どう見ても卑劣です。彼は晩年、エソウに会ったとき、それこそひれ伏して謝っています。しかし、神様はこのずるがしこいヤコブを愛されました。それはやはりヤコブの神への関心がエソウに勝っていたからです。
26:1 さて、アブラハムの時代にあった先のききんとは別に、この国にまたききんがあった。それでイサクはゲラルのペリシテ人の王アビメレクのところへ行った。 26:2 主はイサクに現われて仰せられた。「エジプトへは下るな。わたしがあなたに示す地に住みなさい。 26:3 あなたはこの地に、滞在しなさい。わたしはあなたとともにいて、あなたを祝福しよう。それはわたしが、これらの国々をすべて、あなたとあなたの子孫に与えるからだ。こうしてわたしは、あなたの父アブラハムに誓った誓いを果たすのだ。 26:4 そしてわたしは、あなたの子孫を空の星のように増し加え、あなたの子孫に、これらの国々をみな与えよう。こうして地のすべての国々は、あなたの子孫によって祝福される。 26:5 これはアブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めと命令とおきてとおしえを守ったからである。」
アビメレクはアブラハムのときにも出てきますからずいぶん長生きしたように思いますが、恐らく、アビメレクというのはペリシテ人の王の称号だと思います。このアビメレクはアブラハムのときとは別人でしょう。イサクは偉大な父の祝福を素直に受けています。
26:6 イサクがゲラルに住んでいるとき、 26:7 その土地の人々が彼の妻のことを尋ねた。すると彼は、「あれは私の妻です。」と言うのを恐れて、「あれは私の妹です。」と答えた。リベカが美しかったので、リベカのことでこの土地の人々が自分を殺しはしないかと思ったからである。 26:8 イサクがそこに滞在して、かなりたったある日、ペリシテ人の王アビメレクが窓から見おろしていると、なんと、イサクがその妻のリベカを愛撫しているのが見えた。 26:9 それでアビメレクはイサクを呼び寄せて言った。「確かに、あの女はあなたの妻だ。なぜあなたは『あれは私の妹です。』と言ったのだ。」それでイサクは、「彼女のことで殺されはしないかと思ったからです。」と答えた。 26:10 アビメレクは言った。「何ということをしてくれたのだ。もう少しで、民のひとりがあなたの妻と寝て、あなたはわれわれに罪を負わせるところだった。」 26:11 そこでアビメレクはすべての民に命じて言った。「この人と、この人の妻に触れる者は、必ず殺される。」 26:12 イサクはその地に種を蒔き、その年に百倍の収穫を見た。主が彼を祝福してくださったのである。 26:13 こうして、この人は富み、ますます栄えて、非常に裕福になった。
おやおや、よくまあ似たような話があるものです。イサクの場合はアブラハムよりは危機には瀕していません。イサクは常に祝福の道を静かに歩いた人です。
26:14 彼が羊の群れや、牛の群れ、それに多くのしもべたちを持つようになったので、ペリシテ人は彼をねたんだ。 26:15 それでペリシテ人は、イサクの父アブラハムの時代に、父のしもべたちが掘ったすべての井戸に土を満たしてこれをふさいだ。 26:16 そうしてアビメレクはイサクに言った。「あなたは、われわれよりはるかに強くなったから、われわれのところから出て行ってくれ。」 26:17 イサクはそこを去って、ゲラルの谷間に天幕を張り、そこに住んだ。 26:18 イサクは、彼の父アブラハムの時代に掘ってあった井戸を、再び掘った。それらはペリシテ人がアブラハムの死後、ふさいでいたものである。イサクは、父がそれらにつけていた名と同じ名をそれらにつけた。 26:19 イサクのしもべたちが谷間を掘っているとき、そこに湧き水の出る井戸を見つけた。 26:20 ところが、ゲラルの羊飼いたちは「この水はわれわれのものだ。」と言って、イサクの羊飼いたちと争った。それで、イサクはその井戸の名をエセクと呼んだ。それは彼らがイサクと争ったからである。 26:21 しもべたちは、もう一つの井戸を掘った。ところが、それについても彼らが争ったので、その名をシテナと呼んだ。 26:22 イサクはそこから移って、ほかの井戸を掘った。その井戸については争いがなかったので、その名をレホボテと呼んだ。そして彼は言った。「今や、主は私たちに広い所を与えて、私たちがこの地でふえるようにしてくださった。」 26:23 彼はそこからベエル・シェバに上った。 26:24 主はその夜、彼に現われて仰せられた。「わたしはあなたの父アブラハムの神である。恐れてはならない。わたしがあなたとともにいる。わたしはあなたを祝福し、あなたの子孫を増し加えよう。わたしのしもべアブラハムのゆえに。」 26:25 イサクはそこに祭壇を築き、主の御名によって祈った。彼はそこに天幕を張り、イサクのしもべらは、そこに井戸を掘った。
ペリシテ人たちはイサクを滅ぼすことも出来たはずですが、彼の後ろにおられる神を畏れたのです。そして丁重に立ち去ってくれるように頼みます。これは当時としては非常に異例のことです。その後、イサクはパレスチナ南部に移動しますがそこは砂漠地帯で水の確保は重要な問題でした。ところがイサクのしもべたちはいくつも井戸を掘り当てています。これも神の祝福だったのでしょう。エセクとは争い、シテナとは憎しみまたは恨み、レホボテとは拡大と言う意味です。このように次々と井戸を掘り当てることは周りの民族にとって驚異であり、イサクの後ろにいる神を意識しないではいられなかったのです。
ちなみにヘブル語で井戸はベエル、水はマイムと言います。
26:26 そのころ、アビメレクは友人のアフザテとその将軍ピコルと、ゲラルからイサクのところにやって来た。 26:27 イサクは彼らに言った。「なぜ、あなたがたは私のところに来たのですか。あなたがたは私を憎んで、あなたがたのところから私を追い出したのに。」 26:28 それで彼らは言った。「私たちは、主があなたとともにおられることを、はっきり見たのです。それで私たちは申し出をします。どうか、私たちの間で、すなわち、私たちとあなたとの間で誓いを立ててください。あなたと契約を結びたいのです。 26:29 それは、私たちがあなたに手出しをせず、ただ、あなたに良いことだけをして、平和のうちにあなたを送り出したように、あなたも私たちに害を加えないということです。あなたは今、主に祝福されています。」 26:30 そこでイサクは彼らのために宴会を催し、彼らは飲んだり、食べたりした。 26:31 翌朝早く、彼らは互いに契約を結んだ。イサクは彼らを送り出し、彼らは平和のうちに彼のところから去って行った。 26:32 ちょうどその日、イサクのしもべたちが帰って来て、彼らが掘り当てた井戸のことについて彼に告げて言った。「私どもは水を見つけました。」 26:33 そこで彼は、その井戸をシブアと呼んだ。それゆえ、その町の名は、今日に至るまで、ベエル・シェバという。 26:34 エサウは四十歳になって、ヘテ人ベエリの娘エフディテとヘテ人エロンの娘バセマテとを妻にめとった。 26:35 彼女たちはイサクとリベカにとって悩みの種となった。
ここで事件が起こります。ペリシテ人の王、アビメレクが他の王や将軍と一緒にやってきたのです。当然、軍隊を従えていたことでしょう。イサクの陣営には緊張が走ります。しかし、それはあまりにもイサクが祝福されることを見た彼らが和平にやってきたのでした。それも当時としては、そしてその後イスラエル民族が戦ったペリシテ人を思うと、非常に意外な展開だったと言えるでしょう。
彼のしもべたちはまたしても井戸を掘り当てます。シブアとはシェバと同じで誓いと言う意味です。エソウがめとった妻は偶像礼拝も持ち込んだのでした。それは信仰厚いイサクとリベカにとって悩みの種となったのでした。