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                          バイブルランド博物館

創世記 アブラハム]U サラの死

23:1 サラの一生、サラが生きた年数は百二十七年であった。 23:2 サラはカナンの地のキルヤテ・アルバ、今日のヘブロンで死んだ。アブラハムは来てサラのために嘆き、泣いた。 23:3
それからアブラハムは、その死者のそばから立ち上がり、ヘテ人たちに告げて言った。 23:4
「私はあなたがたの中に居留している異国人ですが、あなたがたのところで私有の墓地を私に譲っていただきたい。そうすれば私のところから移して、死んだ者を葬ることができるのです。」


 イサクが生まれたのがアブラハム100歳のときでした。サラはアブラハムより10歳若いので90歳のときにイサクを生んだことになります。そうすると、サラが死んだときイサクは37歳でした。立派な若者だったことでしょう。137歳のアブラハムはヘテ人という民族の仲に居留していました。そこで墓地を購入する必要が生まれました。

 イラスト: 渡辺 百合            ここで考えていただきたいのは、当時の他の民族の王たちは墓地を非常に大切にしました。エジプトの王などはピラミッドを作ったり、秘密の墓を作るのにほとんど一生を掛けています。中国でも秦の始皇帝の墓はまだ発掘が始まっていませんが想像を絶する規模のようです。アブラハムも小さいながら部族を率いていたのですが、彼らは流浪の民でした。そして、彼らは地上に墓のために壮大な建造物を建てたり、飾り立てたりすることは考えていなかったのです。

これらの人々はみな、信仰の人々として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるかにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり寄留者であることを告白していたのです。彼らはこのように言うことによって、自分の故郷を求めていることを示しています。もし、出て来た故郷のことを思っていたのであれば、帰る機会はあったでしょう。しかし、事実、彼らは、さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。それゆえ、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいませんでした。事実、神は彼らのために都を用意しておられました。ヘブル11:13〜16

 彼らはこの地上ではなく「さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷」を目指していたので、ピラミッドも陵墓も必要なかったのです。

23:5 ヘテ人たちはアブラハムに答えて言った。 23:6 「ご主人。私たちの言うことを聞き入れてください。あなたは私たちの間にあって、神のつかさです。私たちの最上の墓地に、なくなられた方を葬ってください。私たちの中で、だれひとり、なくなられた方を葬る墓地を拒む者はおりません。」 23:7 そこでアブラハムは立って、その土地の人々、ヘテ人にていねいにおじぎをして、 23:8 彼らに告げて言った。「死んだ者を私のところから移して葬ることが、あなたがたのおこころであれば、私の言うことを聞いて、ツォハルの子エフロンに交渉して、 23:9 彼の畑地の端にある彼の所有のマクペラのほら穴を私に譲ってくれるようにしてください。彼があなたがたの間でその畑地に十分な価をつけて、私に私有の墓地として譲ってくれるようにしてください。」

 この地方の人々にとってアブラハムは神々のように見えたのでしょう。彼らは非常な尊敬を持ってアブラハムの願いを聞いています。ああ、私たちも周りの人々に、そのように見られたいものですが・・・悲しいかな、かなわぬ願いですね。

23:10 エフロンはヘテ人たちの間にすわっていた。ヘテ人のエフロンは、その町の門にはいって来たヘテ人たちみなが聞いているところで、アブラハムに答えて言った。 23:11 「ご主人。どうか、私の言うことを聞き入れてください。畑地をあなたに差し上げます。そこにあるほら穴も、差し上げます。私の国の人々の前で、それをあなたに差し上げます。なくなられた方を、葬ってください。」 23:12 アブラハムは、その土地の人々におじぎをし、 23:13 その土地の人々の聞いているところで、エフロンに告げて言った。「もしあなたが許してくださるなら、私の言うことを聞き入れてください。私は畑地の代価をお払いします。どうか私から受け取ってください。そうすれば、死んだ者をそこに葬ることができます。」 23:14 エフロンはアブラハムに答えて言った。 23:15 「ではご主人。私の言うことを聞いてください。銀四百シェケルの土地、それなら私とあなたとの間では、何ほどのこともないでしょう。どうぞ、なくなられた方を葬ってください。」 23:16 アブラハムはエフロンの申し出を聞き入れ、エフロンがヘテ人たちの聞いているところでつけた代価、通り相場で銀四百シェケルを計ってエフロンに渡した。 23:17 こうして、マムレに面するマクペラにあるエフロンの畑地、すなわちその畑地とその畑地にあるほら穴、それと、畑地の回りの境界線の中にあるどの木も、 23:18 その町の門にはいって来たすべてのヘテ人たちの目の前で、アブラハムの所有となった。 23:19 こうして後、アブラハムは自分の妻サラを、カナンの地にある、マムレすなわち今日のヘブロンに面するマクペラの畑地のほら穴に葬った。 23:20 こうして、この畑地と、その中にあるほら穴は、ヘテ人たちから離れてアブラハムの私有の墓地として彼の所有となった。

 ヘテ人、エフロンの言い値は結構高いものだったようです。しかし、アブラハムは値切ることはしませんでした。こうして地上の小さな土地がアブラハムのものとなりました。驚くことに、その土地、洞穴は今でもそのままイスラエルのヘブロンにあります。そこにはアブラハム、サラ、ヤコブ、レアの骨が納められているということです。ヤコブのもう一人の妻ラケルは彼女が死んだ土地、ベツレヘムに今でもあるそうです。
 日本だったら、ここには大きな神社が建てられ、参拝者が絶えることはないでしょうが、質素な建物があるだけです。ただ、見学者は多いようです。“ようです”というのは、へブロンは私がイスラエルに行ったときはアラブ側にあり、危険なために行けなかったからです。今は行けることでしょう。

紀元前1世紀に、マクペラの洞窟を覆うかたちで「ヘロデ王の城壁」と呼ばれる城が作られたため、今では洞窟そのものを見学することはできず、大理石の城の中に後世にしつらえられたアブラハムやその一族の墓所を見ることができるだけです。城の床下にはアブラハム当時の洞窟があり、オリジナルの墓所も存在しているというが、その正式な調査は行われていないそうです。