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創世記Vol.18  アブラハム U

13:14 ロトがアブラムと別れて後、主はアブラムに仰せられた。「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。 13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。 13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。 13:17 立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。」 13:18 そこで、アブラムは天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のそばに来て住んだ。そして、そこに主のための祭壇を築いた。

神様は再びアブラムにこの地を与えると言う約束をします。この地の範囲については後から出てきます。この中で、アブラハムの子孫が「地のちりのようになる」という言葉は、ちょっと意外です。いくらイスラエル・ユダヤ人が多くても地のちりとはオーバーな感じがします。アブラハムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の祖として敬われていますからこの三大宗教を合わせれば、そうなるかも知れません。しかし、また別の意味があるのかも知れません。まだ実現していないと言うような意味で。

14:1 さて、シヌアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティデアルの時代に、 14:2 これらの王たちは、ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シヌアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラの王、すなわち、ツォアルの王と戦った。 14:3 このすべての王たちは連合して、シディムの谷、すなわち、今の塩の海に進んだ。 14:4 彼らは十二年間ケドルラオメルに仕えていたが、十三年目にそむいた。 14:5 十四年目に、ケドルラオメルと彼にくみする王たちがやって来て、アシュテロテ・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミム人を、 14:6 セイルの山地でホリ人を打ち破り、砂漠の近くのエル・パランまで進んだ。 14:7 彼らは引き返して、エン・ミシュパテ、今のカデシュに至り、アマレク人のすべての村落と、ハツァツォン・タマルに住んでいるエモリ人さえも打ち破った。 14:8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アデマの王、ツェボイムの王、ベラの王、すなわちツォアルの王が出て行き、シディムの谷で彼らと戦う備えをした。 14:9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティデアル、シヌアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、この四人の王と、先の五人の王とである。

 この戦争はメソポタミア地方の王たちの同盟による大きな軍事行動だったようです。その中心だったのはエラムの王ケドルラオメル(口語訳ケダラオメル)で、彼は当時の中東の覇者だったようです。これらの王の名前は歴史的には不明です。アムラフェルがハムラビ法典のハムラビだと言う説がありましたが、時代が違うようです。

← 死海。今は水不足で二つに分かれている。この下の浅い部分にソドムとゴモラがあったことがロンワイアットさんによって確認されている。

14:10 シディムの谷には多くの瀝青の穴が散在していたので、ソドムの王とゴモラの王は逃げたとき、その穴に落ち込み、残りの者たちは山のほうに逃げた。 14:11 そこで、彼らはソドムとゴモラの全財産と食糧全部を奪って行った。 14:12 彼らはまた、アブラムのおいのロトとその財産をも奪い去った。ロトはソドムに住んでいた。 14:13 ひとりの逃亡者が、ヘブル人アブラムのところに来て、そのことを告げた。アブラムはエモリ人マムレの樫の木のところに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの親類で、彼らはアブラムと盟約を結んでいた。

 ソドムとゴモラがまだ滅亡していなかった時のことです。シディムの谷は現在の死海の付近のことで今のように水がなく、肥沃な土地だったようです。しかし、瀝青、すなわちコールタールが自然に噴出していました。
 死海からガリラヤ湖に至る谷間は、紅海を経て、アフリカ東部にある大地溝帯の北限に当たります。これは言わば地球の裂け目で、今でも年間数ミリづつ広がっています。アフリカの大地溝帯は豊かな平原で多くの動物が住んでいることで知られています。この一帯では今でも大地の裂け目からマグマの噴出があり、湖が、真紅に染まったり、苛性ソーダやマグネシュームなどが噴出して美しい模様を作ったりします。このマグマの活動が後にソドムとゴモラの滅亡をもたらしました。

14:14 アブラムは自分の親類の者がとりこになったことを聞き、彼の家で生まれたしもべども三百十八人を召集して、ダンまで追跡した。 14:15 夜になって、彼と奴隷たちは、彼らに向かって展開し、彼らを打ち破り、ダマスコの北にあるホバまで彼らを追跡した。 14:16 そして、彼はすべての財産を取り戻し、また親類の者ロトとその財産、それにまた、女たちや人々をも取り戻した。 14:17 こうして、アブラムがケドルラオメルと、彼といっしょにいた王たちとを打ち破って帰って後、ソドムの王は、王の谷と言われるシャベの谷まで、彼を迎えに出て来た。
 

 大地溝帯
東アフリカを南北に走り紅海、死海を経てガリラヤ湖に至る大地の裂け目。この死海の近辺にソドムゴモラがあった。
 
 この話の前半のアブラムの行動は、信仰厚き清らかな聖者とは思えない、目を見張るばかりの果敢なものでした。彼には自分の家で生まれた奴隷で軍事訓練を施していた318人もの私設軍隊を持っていたのです。奴隷と言う言葉の現在的な意味と当時の意味とはかなりかけ離れたもので、今で言うところの社員とか従業員にあたる人々です。これについては塩野七生さんの「ローマ人の物語」を読むと良く分かります。
 アブラムの軍隊のゲリラ的な夜襲によって、メソポタミア連合軍は、数においては相当上回っていたはずなのですが、混乱に陥り敗走します。アブラムはロトとその家族、他の捕虜も取り戻します。
 そのアブラムを迎えにシャレム(エルサレム)の王メルキゼデクと言う人物が現れます。この人は聖書の中で最も謎に満ちた、不思議な人物です。そして、主イエスの職務のためになくてはならない役割があります。この件は非常に重要なので、次週に考えましょう。