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創世記Vol. 15 大洪水の後

9:1 それで、神はノアと、その息子たちを祝福して、彼らに仰せられた。「生めよ。ふえよ。地に満ちよ。 9:2 野の獣、空の鳥、――地の上を動くすべてのもの――それに海の魚、これらすべてはあなたがたを恐れておののこう。わたしはこれらをあなたがたにゆだねている。 9:3 生きて動いているものはみな、あなたがたの食物である。緑の草と同じように、すべてのものをあなたがたに与えた。 9:4 しかし、肉は、そのいのちである血のあるままで食べてはならない。 9:5 わたしはあなたがたのいのちのためには、あなたがたの血の価を要求する。わたしはどんな獣にでも、それを要求する。また人にも、兄弟である者にも、人のいのちを要求する。 9:6 人の血を流す者は、人によって、血を流される。神は人を神のかたちにお造りになったから。 9:7 あなたがたは生めよ。ふえよ。地に群がり、地にふえよ。」

 洪水の後で、神様はもう一度人間が全ての生物を支配することを確認されました。そして肉食を許しました。エデンでは植物だけが食物として許されていましたが、この時から肉食が許されたのです。それは恐らくすでに肉食が普通になったいたのを追認されたのでしょう。カインやその子孫たち、特にレメクがベジタリアンだったとは考えられません。
 そして、肉類の生食を禁じ、殺人を厳しく戒めました。「人の血を流す者は、人によって、血を流される。神は人を神のかたちにお造りになったから。」という一節は現在の社会に重要だと思います。今はノアの時代のように殺人が横行しています。死刑廃止論など論外です。私はもっと厳しくすべきだと思います。
 「あなたがたは生めよ。ふえよ。地に群がり、地にふえよ。」という言葉も色々考えさせられますね。今、正に人間は地に群がり増えました。地球が養うことが出来る人口はどれほどなのでしょうか。すでに限界に近いのではないかと思います。

9:8 神はノアと、彼といっしょにいる息子たちに告げて仰せられた。 9:9 「さあ、わたしはわたしの契約を立てよう。あなたがたと、そしてあなたがたの後の子孫と。 9:10 また、あなたがたといっしょにいるすべての生き物と。鳥、家畜、それにあなたがたといっしょにいるすべての野の獣、箱舟から出て来たすべてのもの、地のすべての生き物と。 9:11 わたしはあなたがたと契約を立てる。すべて肉なるものは、もはや大洪水の水では断ち切られない。もはや大洪水が地を滅ぼすようなことはない。」 9:12 さらに神は仰せられた。「わたしとあなたがた、およびあなたがたといっしょにいるすべての生き物との間に、わたしが代々永遠にわたって結ぶ契約のしるしは、これである。 9:13 わたしは雲の中に、わたしの虹を立てる。それはわたしと地との間の契約のしるしとなる。 9:14 わたしが地の上に雲を起こすとき、虹が雲の中に現われる。 9:15 わたしは、わたしとあなたがたとの間、およびすべて肉なる生き物との間の、わたしの契約を思い出すから、大水は、すべての肉なるものを滅ぼす大洪水とは決してならない。 9:16 虹が雲の中にあるとき、わたしはそれを見て、神と、すべての生き物、地上のすべて肉なるものとの間の永遠の契約を思い出そう。」 9:17 こうして神はノアに仰せられた。「これが、わたしと、地上のすべての肉なるものとの間に立てた契約のしるしである。」

神様はもう大洪水によって人間と生物を滅ぼすことはしないと約束され、そのしるしとして虹を選ばれました。虹はこの時、初めて造られたのではないと思います。ただ、それをしるしとされたのです。虹は英語でRainbowと言います。「雨の弓」です。昔、戦争が終わると、和平のしるしとして、お互いの弓の弦を切って、弓の弧を自分の方に向けました。それが和平のしるしでした。虹は神様の方、天に弓の弧が向いています。もう戦いは終わった、平和になったという意味であることが分かります。神は人と和解したのです。十字架もそれと似ていますね。西洋の弓は日本と違って真ん中に一本、矢を乗せる木があります。弓の弦を切ると、弓はもっと平坦になりますから十字架の形に似てきます。

9:18 箱舟から出て来たノアの息子たちは、セム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。 9:19 この三人がノアの息子で、彼らから全世界の民は分かれ出た。 9:20 さて、ノアは、ぶどう畑を作り始めた農夫であった。 9:21 ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 9:22 カナンの父ハムは、父の裸を見て、外にいるふたりの兄弟に告げた。 9:23 それでセムとヤペテは着物を取って、自分たちふたりの肩に掛け、うしろ向きに歩いて行って、父の裸をおおった。彼らは顔をそむけて、父の裸を見なかった。 9:24 ノアが酔いからさめ、末の息子が自分にしたことを知って、 9:25 言った。「のろわれよ。カナン。兄弟たちのしもべらのしもべとなれ。」 9:26 また言った。「ほめたたえよ。セムの神、主を。カナンは彼らのしもべとなれ。 9:27 神がヤペテを広げ、セムの天幕に住まわせるように。カナンは彼らのしもべとなれ。」 9:28 ノアは大洪水の後、三百五十年生きた。 9:29 ノアの一生は九百五十年であった。こうして彼は死んだ。

イラスト 渡辺百合
この箇所は奇妙なところです。普通ならこんな話は書かないものです。せっかく大洪水を逃れた聖なる偉大な人物の恥をわざわざ書いているのですから。しかし、愉快な話ですね。ノアは行い澄ました聖人君子ではなく、私たちと同じ弱みも欠点もある愛すべき人間だったのです。むしろこの時のハムとセムとヤペテの行動が重要です。ハムは父の裸を見て笑ったのでしょう。そして「おい、おい、親父が素っ裸で寝ているよ。見て来いよ。」とか言ったのでしょう。しかし、セムとヤペテは後ろ向きで着物を父にかけるという、実に立派な行動をしています。このことから、ハムの子カナンが呪われています。これはちょっと理解できないことです。ある人々は実際にはカナンが第一発見者だったのではないかと言っています。そして、父であるハムに言ったのです。「ねえ、ねえ、おじいちゃんがおかしい格好で寝ているよ」。ハムは子を叱ることをしないで、一緒になって笑ったのでしょうか。ちょっと不可解なことですが。
 この時のノアの呪いが、今に至るまで人種差別の基準となったといいます。ハム「色黒」の人の子孫がしもべのしもべとなるのだから、奴隷としてもいいのだという口実になったらしいのです。確かに、不思議なことに、「神がヤペテを広げ、セムの天幕に住まわせるように。」という言葉も現実となりました。ヤペテ、すなわち色白の人は文化的にも経済的にも世界を支配しています。それでいて精神面ではセムの子孫により頼んでいます。世界の大宗教といわれるユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教などは皆、セム族から出ています。

10:1 これはノアの息子、セム、ハム、ヤペテの歴史である。大洪水の後に、彼らに子どもが生まれた。 10:2 ヤペテの子孫はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メシェク、ティラス。 10:3 ゴメルの子孫はアシュケナズ、リファテ、トガルマ。 10:4 ヤワンの子孫はエリシャ、タルシシュ、キティム人、ドダニム人。 10:5 これらから海沿いの国々が分かれ出て、その地方により、氏族ごとに、それぞれ国々の国語があった。

 ヤペテの子孫の名前は現在のロシアや東欧地方、またスペインなど地中海沿岸地方の名として残っています。

10:6 ハムの子孫はクシュ、ミツライム、プテ、カナン。 10:7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカ。ラマの子孫はシェバ、デダン。 10:8 クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の権力者となった。 10:9 彼は主のおかげで、力ある猟師になったので、「主のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ。」と言われるようになった。 10:10 彼の王国の初めは、バベル、エレク、アカデであって、みな、シヌアルの地にあった。 10:11 その地から彼は、アシュルに進出し、ニネベ、レホボテ・イル、ケラフ、 10:12 およびニネベとケラフとの間のレセンを建てた。それは大きな町であった。 10:13 ミツライムはルデ人、アナミム人、レハビム人、ナフトヒム人、 10:14 パテロス人、カスルヒム人――これからペリシテ人が出た――、カフトル人を生んだ。 10:15 カナンは長子シドン、ヘテ、 10:16 エブス人、エモリ人、ギルガシ人、 10:17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 10:18 アルワデ人、ツェマリ人、ハマテ人を生んだ。その後、カナン人の諸氏族が分かれ出た。 10:19 それでカナン人の領土は、シドンからゲラルに向かってガザに至り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムに向かってレシャにまで及んだ。 10:20 以上が、その氏族、その国語ごとに、その地方、その国により示したハムの子孫である。

 ハムの子孫の名はほとんど、現在の中東、アフリカに残っています。この中で、特にニムロデは最初の権力者、王となりました。「クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の権力者となった。 彼は主のおかげで、力ある猟師になったので、『主のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ。』と言われるようになった。」このニムロデ帝国を古代バビロンとも呼びます。ニムロデはその後、神への反逆者、オカルトの始祖となったという人々もいますが聖書からはそれは読み取れません。

10:21 セムにも子が生まれた。セムはエベルのすべての子孫の先祖であって、ヤペテの兄であった。 10:22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャデ、ルデ、アラム。 10:23 アラムの子孫はウツ、フル、ゲテル、マシュ。 10:24 アルパクシャデはシェラフを生み、シェラフはエベルを生んだ。 10:25 エベルにはふたりの男の子が生まれ、ひとりの名はペレグであった。彼の時代に地が分けられたからである。もうひとりの兄弟の名はヨクタンであった。 10:26 ヨクタンは、アルモダデ、シェレフ、ハツァルマベテ、エラフ、 10:27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 10:28 オバル、アビマエル、シェバ、 10:29 オフィル、ハビラ、ヨバブを生んだ。これらはみな、ヨクタンの子孫であった。 10:30 彼らの定住地は、メシャからセファルに及ぶ東の高原地帯であった。 10:31 以上は、それぞれ氏族、国語、地方、国ごとに示したセムの子孫である。 10:32 以上が、その国々にいる、ノアの子孫の諸氏族の家系である。大洪水の後にこれらから、諸国の民が地上に分かれ出たのであった。

セムの子孫の名は中東からメソポタミア、現在のイスラエルからイラク方面に至る地域にあるようです。これらの名の意味を調べるのはちょっと困難なのですが、ペレグだけは分割という意味であることが読み取れます。このことからペレグの時代にバベルの塔が建てられたのでしょう。