ホームページ・メッセージ070325 小 石 泉
Bible Land museum
バイブルランド博物館
創世記Vol. 8 エデン追放U
3:22 神である主は仰せられた。「見よ。人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るようになった。今、彼が、手を伸ばし、いのちの木からも取って食べ、永遠に生きないように。」 3:23 そこで神である主は、人をエデンの園から追い出されたので、人は自分がそこから取り出された土を耕すようになった。 3:24 こうして、神は人を追放して、いのちの木への道を守るために、エデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。
イラスト 渡辺百合

Vol.3でお話しすべきだったのですが、神様は人間を造るとき「われわれに似るように、われわれのかたちに」人を創造されました。このわれわれというのは神の三位一体を表すのかどうかは、良く分かりません。ただ、尊敬の複数形というのがあるのだそうです。しかし、やはり三位一体の神の内での会話と考えたいものです。
ここでは「人が神のようになった」と言っています。私にはこの言葉はひどく皮肉に聞こえます。あの木の実を食べた人は罪を犯す可能性を持ちました。決して神のような美しい、清らかな、正しいものとなったのではありません。善悪を知るといいますが、善よりもむしろ悪を知る者となったのです。悪とは不思議なものです。それは神の御性質には無いのに、創造された天地の中に生まれてきたのですから。
宇宙の中で、ただ地球だけに悪は存在しているのでしょうか。もちろんその背景には罪の源泉とも言うべきサタンの存在があります。ここで当然、疑問になるのがサタンとは何かということです。なぜ、サタンはいるのか。何時からいるのか。どうして神様はサタンを造ったのか。そもそも天使はどれぐらいいるのか。そんな疑問が生まれてきます。
実は聖書はサタンの誕生について少しだけ書いています。サタンは元々は天使の長でした。ユダヤ人の伝承ではルシファーという名の天使だったといわれています。しかし、実はルシファーというのはラテン語で、ヘブル語ではヘレルといいます。もっとも聖書にはその名前は出てきません。ただ、エゼキエル書28章には不思議な言葉があります。
28:1 次のような主のことばが私にあった。 28:2 「人の子よ。ツロの君主に言え。神である主はこう仰せられる。あなたは心高ぶり、『私は神だ。海の真中で神の座に着いている。』と言った。あなたは自分の心を神のようにみなしたが、あなたは人であって、神ではない。 28:3 あなたはダニエルよりも知恵があり、どんな秘密もあなたに隠されていない。 28:4 あなたは自分の知恵と英知によって財宝を積み、金や銀を宝物倉にたくわえた。 28:5 商いに多くの知恵を使って財宝をふやし、あなたの心は、財宝で高ぶった。 28:6 それゆえ、神である主はこう仰せられる。あなたは自分の心を神の心のようにみなした。 28:7 それゆえ、他国人、最も横暴な異邦の民を連れて来て、あなたを攻めさせる。彼らはあなたの美しい知恵に向かって剣を抜き、あなたの輝きを汚し、 28:8 あなたを穴に投げ入れる。あなたは海の真中で、刺し殺される者の死を遂げる。 28:9 それでもあなたは、自分を殺す者の前で、『私は神だ。』と言うのか。あなたは人であって、神ではない。あなたはあなたを刺し殺す者たちの手の中にある。 28:10 あなたは異邦人の手によって割礼を受けていない者の死を遂げる。わたしがこれを語ったからだ。――神である主の御告げ。――」
28:11 次のような主のことばが私にあった。 28:12 「人の子よ。ツロの王について哀歌を唱えて、彼に言え。神である主はこう仰せられる。あなたは全きものの典型であった。知恵に満ち、美の極みであった。 28:13 あなたは神の園、エデンにいて、あらゆる宝石があなたをおおっていた。赤めのう、トパーズ、ダイヤモンド、緑柱石、しまめのう、碧玉、サファイヤ、トルコ玉、エメラルド。あなたのタンバリンと笛とは金で作られ、これらはあなたが造られた日に整えられていた。 28:14 わたしはあなたを油そそがれた守護者ケルブとともに、神の聖なる山に置いた。あなたは火の石の間を歩いていた。 28:15 あなたの行ないは、あなたが造られた日からあなたに不正が見いだされるまでは、完全だった。 28:16 あなたの商いが繁盛すると、あなたのうちに暴虐が満ち、あなたは罪を犯した。そこで、わたしはあなたを汚れたものとして神の山から追い出し、守護者ケルブが火の石の間からあなたを消えうせさせた。 28:17 あなたの心は自分の美しさに高ぶり、その輝きのために自分の知恵を腐らせた。そこで、わたしはあなたを地に投げ出し、王たちの前に見せものとした。 28:18 あなたは不正な商いで不義を重ね、あなたの聖所を汚した。わたしはあなたのうちから火を出し、あなたを焼き尽くした。こうして、すべての者が見ている前で、わたしはあなたを地上の灰とした。 28:19 国々の民のうちであなたを知る者はみな、あなたのことでおののいた。あなたは恐怖となり、とこしえになくなってしまう。」
この箇所の前半10節まではツロという町の王について語っています。ツロはフェニキア(ぺリシテ)の首都で、イスラエルの北の国です。この王はダビデと親交があり、ソロモンが神殿と王宮を建てるときに、沢山のレバノン杉を送り、有能な棟梁ヒラム・アビフを派遣しました。このヒラムという名はツロの王の代々の称号でしたので、恐らくヒラム・アビフも王家の人だったに違いありません。ツロはフェニキアは鉄の武器と交易によって栄えた町ですが、町の沖合いに島があり、他民族が攻めてくるとこの島に逃げ込んで戦うためにどこも勝つことが出来ませんでした。しかし、バビロンのネブカドレザル王(アレキサンダーだとも言う)は陸の町を破壊し、その石を海に投げ込んで島までの通路を作りツロを滅亡させます。このこともエゼキエル書26章に予言されています。
ところで問題は11章以下です。
「あなたは神の園、エデンにいて、あらゆる宝石があなたをおおっていた。赤めのう、トパーズ、ダイヤモンド、緑柱石、しまめのう、碧玉、サファイヤ、トルコ玉、エメラルド。あなたのタンバリンと笛とは金で作られ、これらはあなたが造られた日に整えられていた。わたしはあなたを油そそがれた守護者ケルブとともに、神の聖なる山に置いた。あなたは火の石の間を歩いていた。」これはどう考えても人間のことではありません。これこそルシファー、ヘレルが天国で与えられていた栄光の姿だと考えられるのです。彼は「あなたは全きものの典型であった。知恵に満ち、美の極みであった。」
とあります。何という表現でしょうか。まるで神の御子のようです。そうです、彼がその後、堕落して天から落とされて後、神のひとり子を憎み続けるのはそこに理由があります。
彼はあまりにも美しいために高慢になりました。
「あなたの心は自分の美しさに高ぶり、その輝きのために自分の知恵を腐らせた。」実に高慢が全ての悪の根源だったのです。ヘレルは美しさのあまりサタンとなりました。サタンとは「憎む者、訴える者」という意味です。こうしてサタンが出来ました。
不思議なことに、聖書は「天使の創造」については全く語っていません。彼らは天地創造よりはるかに前からいたようなのですが、神様は人間には必要の無いことだと思われたのでしょう、聖書には書かれませんでした。
さて、「今、彼が、手を伸ばし、いのちの木からも取って食べ、永遠に生きないように。」神様はいのちの木から人間を遠ざけました。罪あるものが永遠に生きたら大変です。
「そこで神である主は、人をエデンの園から追い出されたので、人は自分がそこから取り出された土を耕すようになった。」人間はエデン、喜びの園から追い出されました。以来、人には悲しみと苦しみがつきまとうようになりました。
しかし、感謝すべきことに、イエス・キリストは第二のアダムとなり十字架によって、人の罪を清め、永遠の命を与えてくださいました。イエス様は本当の「いのちの木」なのです。私たちは今やエデンに勝る「天にある喜びの園」に入る資格を与えられています。
「こうして、神は人を追放して、いのちの木への道を守るために、エデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。」
ケルビムについては前にもお話しましたが、神様の御側近く仕える、強い力を持った天使です。また回る炎の剣も昔の人々は良く知っていたようです。メソポタミアの遺跡からこの「回る炎の剣」を刻んだ石が出てきています。エデンは地上にあったのですが、今はもうケルビムも回る炎の剣もないのでしょう。エデンそのものでさえ、間もなくどこかに消えてしまいました。