メッセージ061210 小 石 泉
ビッグバン宇宙論
事を隠すのは神の誉れ。事を探るのは王の誉れ。箴言25:2
私は最近、非常に興味深い本を読んでいます。それは新潮社刊サイモン・シン著「ビッグバン宇宙論」上・下です。まだ上刊だけなのですが、久しぶりに知的興味と信仰的な興奮を味わっています。「二度読む価値のある本は、読む価値がある」と言う言葉があるようにこの本は少なくとも二度は読みたいと思うし、一度では理解できない内容です。本来なら、とても難しい内容なのですが、この本は私のような数学や物理が苦手な者にも判りやすく書いています。著者はインド系のアメリカ人です。
ビッグバンとは宇宙が永遠の昔からあったのではなく、ある時点から爆発的に発生したとする宇宙論です。私たちクリスチャンにとっては当たり前のこのことを知るのに、人類は数千年を要したのです。ビッグバン宇宙論はまだ100年にもならない科学と天文学の成果で、やっと最近になるまでに、考えられ、計算され、観測され、発見されたのです。
しかし、聖書は4000年以上前から、宇宙には始まりがあったと言っています。
初めに、神が天と地を創造した。創世記1:1
この本にも少し書かれているのですが、実は歴史が書き残されるようになった時代よりはるか前に、人類は宇宙について正確な知識を持っていたらしいのです。それは古代遺跡を詳しく調べると、驚くべき正確さで太陽や星々のことが書かれていることが分かって来ています。例えばインカ文明やエジプトのピラミッドには地球の直径や太陽までの距離などが刻まれていたり、アフリカのドゴン族は木星の衛星を知っていました。私はそれは当然だと思います。アダムとエバに始まる人類の祖先たちは神様から宇宙についての正しい知識を聞いていたと思うからです。人類は神を見失うと同時に正確な宇宙の姿を見失ったです。人類が、失われた宇宙の知識を回復するまでには非常に長い時間と懸命な努力が必要でした。太陽や、夜空に輝く星を見ては人類がこの神秘を尋ねたくなったのは当然です。
紀元前6世紀にはギリシャの科学者たちは地球、太陽、月の大きさと、それらの間の距離を測ることに成功しました。しかし、それからの長い間、天文学者たちも宇宙は地球を中心に回っていると考えていました。中でもプトレマイオスはその場しのぎの理論を作り、説明しました。また紀元二世紀ぐらいからローマを中心に力をもったキリスト教会は聖書の表面的な記述から地球中心宇宙(天動説)を人々に強制しました。
十六世紀になってコペルニクスは太陽を中心にして地球や他の惑星が動いているのだという説(地動説)を発表しました。そしてティコ、ケプラー、ガリレオたちがその頃発明された望遠鏡を使って、コペルニクスの宇宙論が正しいことを支持しました。しかし、教会は彼らの説を弾圧し、口を封じました。もっともまだ彼らの説は未熟で完全に宇宙を説明するには十分ではなかったのです。
1670年にレーマーという人が光の速度は有限であり秒速30万キロメートルであると言う事を証明しました。当時、宇宙はエーテルという物質によって満たされているという説が科学者の一般的な知識でした。しかし、これも1880年にマイケルソンとモーリーという人によって否定されました。それが元になって、1900年代になってアインシュタインが時間と空間は一定ではないという考え方を発表し、ニュートンの重力の法則が大きな場では正確ではないと言う事を証明しました。これは歴史的な常識を覆す大発見でした。
しかし、アインシュタインでさえ宇宙は永遠から永遠まで一定であると考えていました。これは驚くべきことではないでしょうか。二十世紀になるまで人類は宇宙には、始まりもなく終わりもないと信じていたのです。
しかし、1922年からロシアのフリードマンという人が宇宙は一定ではなく、変化するという説を発表しました。しかし、当時はアインシュタインがあまりにも有名だったために彼の説は全く無視されました。ところが、ほぼ同じ頃ベルギーの聖職者ルメートルという人が、宇宙は小さな原子が爆発して膨張しているのだという説を発表しました。全ての銀河系宇宙がそれぞれ猛烈なスピードで互いに遠ざかっていることが判ってきたからです。つまり宇宙はある時一点から爆発して膨張し続けていることが判ったのです。それがビッグバンです。しかし、アインシュタインはこれにも強烈に反対しました。
ところが、その後、望遠鏡と写真の発達によって実は宇宙は一定ではなく、常に変化し続けているということが証明されて行きました。それは全ての銀河系の星は遠いものほど赤い波長を出していることから判りました。いわゆるドップラー効果です。遠ざかる光は赤い光を放ち、近づく光は青い色を放つのです。そして、それを時間的に逆転させると全ての銀河系は一点に集まってしまうことになります。宇宙には始まりがあったのです。正に「初めに、神が天と地を創造したのです。」
実は、十八世紀からこの頃までには地球は銀河系宇宙という壮大な宇宙の中にあるということが判って来ていました。そしてそれは厚みが1万光年、直径が10万光年のレンズ形をしているということも判っていました。ところが宇宙には星雲と呼ばれる不思議な天体があることが知られていました。科学者や天文学者たちはこれらの星雲は銀河系宇宙の中にあると考えていました。つまり宇宙とはこの銀河系だけなのだと。
しかし、十八世紀の神学者インマヌエル・カントは、神は無限のお方なのだから、宇宙も無限であるはずだと主張していました。そして二十世紀になって多くの天文学者の大変な努力によって、実は宇宙は銀河系をはるかに越える規模であり、星雲は別の銀河であることが判ってきました。そして、宇宙は銀河に満ちていました!
このことに貢献したヘンリエッタ・リーヴィットという女性がいます。彼女は聾唖者でしたが、星雲までの距離を測る方法を発見したのです。また有名なエドウィン・ハッブルはある星雲の中の変光星から星雲が銀河系宇宙のはるかかなたにあることを証明しました。
さて、私がこのように長々と科学や天文学の話をしたのは、神の創造のみ業の偉大さを人間が知るにのはこんなにも長く厳しい努力が必要だったのだなあという感慨と、結局、聖書の真理が科学によっても証明されているということに感動したからです。
ダニエルよ、あなたは終りの時までこの言葉を秘し、この書を封じておきなさい。多くの者は、あちこちと探り調べ、そして知識が増すでしょう。ダニエル12:4(口語訳)
本当に人類はあちこちと探り調べて知識が増しているのです。
主はあらしの中からヨブに答えて仰せられた。知識もなく言い分を述べて、摂理を暗くするこの者はだれか。ヨブ記38:1〜2
神様の偉大な御業や御性質を知るのには常に謙虚でなければなりません。
あなたはすばる座の鎖を結びつけることができるか。オリオン座の綱を解くことができるか。あなたは十二宮をその時々にしたがって引き出すことができるか。牡牛座をその子の星とともに導くことができるか。38:31〜32
と書かれていますが、私は人類が色々と研究したり、観測したりする努力は尊いものだと思います。冒頭にあるように、「事を隠すのは神の誉れ。事を探るのは王の誉れ。」なのです。神様は人間が、一生懸命尋ね求めているのを楽しんで見ておられることでしょう。昔の教会のように、偏狭な信仰に凝り固まって、真実を求める努力を圧殺してはならないのです。そのためにガリレオなどは命がけで戦ったのです。時には裁判や拷問、教会からの破門も受けなければなりませんでした。マルチン・ルターでさえコペルニクスを「聖書に刃向かう愚か者」と呼んでいます。
ビッグ・バン宇宙論は、まだほんの生まれたてほやほやの科学です。ここに至るまでに人類は2000年以上かかっているのです。私たちはこんなにも新しい知識によって神様の一端を知ることが出来るようになりました。人類の科学はやっと神様の創造に気がついたのです。私たちは科学が神様を証明するというこれまでにない時代に生きていることを感謝しましょう。私はそのことを思うときに興奮します。ほんの100年前には、その逆に、神様は侮られ、クリスチャンは侮辱されていました。真実はいつか明らかになります。
ところで始まりは証明されましたが、終わりはまだ証明されていません。
しかし、愛する人たち。あなたがたは、この一事を見落としてはいけません。すなわち、主の御前では、一日は千年のようであり、千年は一日のようです。主は、ある人たちがおそいと思っているように、その約束のことを遅らせておられるのではありません。かえって、あなたがたに対して忍耐深くあられるのであって、ひとりでも滅びることを望まず、すべての人が悔い改めに進むことを望んでおられるのです。しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます。このように、これらのものはみな、くずれ落ちるものだとすれば、あなたがたは、どれほど聖い生き方をする敬虔な人でなければならないことでしょう。そのようにして、神の日の来るのを待ち望み、その日の来るのを早めなければなりません。その日が来れば、そのために、天は燃えてくずれ、天の万象は焼け溶けてしまいます。しかし、私たちは、神の約束に従って、正義の住む新しい天と新しい地を待ち望んでいます。そういうわけで、愛する人たち。このようなことを待ち望んでいるあなたがたですから、しみも傷もない者として、平安をもって御前に出られるように、励みなさい。Uペテロ3:8〜14
ペテロ先生は「その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます」と言っています。これはパウロ先生の手紙にはない具体的な宇宙の未来についての予言です。
科学や天文学者は宇宙の終わりについても証明できるでしょうか。この壮大な宇宙がいつか燃えてくずれるなんて信じられるでしょうか。しかし、聖書は必ず実現するのです。だから、「どれほど聖い生き方をする敬虔な人でなければならないこと」でしょうか。厳粛な気持ちになります。それまでに、神様は、「ひとりでも滅びることを望まず、すべての人が悔い改めに進むことを望んでおられる」のです。だから御言葉を伝えましょう。
次のように約束されていますから。
賢い者は、大空の輝きのように輝き、また多くの人を義に導く者は、星のようになって永遠にいたるでしょう。ダニエル12:3(口語訳)