ホームページ・メッセージ050807 小 石 泉
小鳥の愛と神の愛
先日のことです。かなり長い時間、病院の前で待つ時間がありました。車の中でエアコンを入れて休んでいると、突然、ひな鳥がフロントガラスにぶつかってきました。巣から落ちたのでしょう、親鳥が必死で追いかけています。ひな鳥はよたよたと飛んでは道路に落ちてしまうので、近所の人と拾い上げてはなるべく安全なところに投げてやりました。そのたびに親鳥(ヒヨドリでした)は声を張り上げて警告したり、ひな鳥に近づいてはえさをやろうとしていました。巣から落ちたひな鳥が生き延びる確率は低いと聞いていましたから、巣をさがしても見つかりません。その内、しばらくその場を離れて戻ってみると、案の状、車に引かれてぺちゃんこになっていました。わたしの見ている前でも大きなバスのタイヤにひかれて一層薄くなって、もうアスファルトの上の染みのようでした。するとそこに二羽のカラスがやってきました。カラスはどうして判るのかなあと見ていると、親鳥が猛然と反撃します。しかし、到底、及びません。やがて一羽が、紙のようになったひな鳥をついばみ始めました。すると親鳥はもう一羽のカラスをおびき寄せようとして、傷ついたふりをして、羽をばたつかせ、よろよろと地面の上を這いまわります。一羽のカラスはそれを追っていきましたが、もう一羽はせんべいのようなひな鳥をくわえて去っていきました。私は、親鳥にとっては、紙のようになっても自分の子なのだと胸が熱くなりました。私はまるでドラマを見ているようにその一部始終を見たのでした。進化論者は本能だと言うかもしれませんが、私は小さな小鳥でもこんな愛があるのだなあと、感動し、可愛そうでしばらくその場を動けませんでした。
この話を祈祷会ですると、一人の姉妹が「リツパのようですね」と言われました。リツパ、その名を知っている人はかなり聖書を読んだ人です。
ダビデの時代に、三年間引き続いてききんがあった。そこでダビデが主のみこころを伺うと、主は仰せられた。「サウルとその一族に、血を流した罪がある。彼がギブオン人たちを殺したからだ。」そこで王はギブオン人たちを呼び出して、彼らに言った。――ギブオンの人たちはイスラエル人ではなく、エモリ人の生き残りであって、イスラエル人は、彼らと盟約を結んでいたのであるが、サウルが、イスラエルとユダの人々への熱心のあまり、彼らを打ち殺してしまおうとしたのであった。――ダビデはギブオン人たちに言った。「あなたがたのために、私は何をしなければならないのか。私が何を償ったら、あなたがたは主のゆずりの地を祝福できるのか。」ギブオン人たちは彼に言った。「私たちとサウル、およびその一族との間の問題は、銀や金のことではありません。また私たちがイスラエルのうちで、人を殺すことでもありません。」そこでダビデが言った。「それでは私があなたがたに何をしたらよいと言うのか。」彼らは王に言った。「私たちを絶ち滅ぼそうとした者、私たちを滅ぼしてイスラエルの領土のどこにも、おらせないようにたくらんだ者、その者の子ども七人を、私たちに引き渡してください。私たちは、主の選ばれたサウルのギブアで、主のために、彼らをさらし者にします。」王は言った。「引き渡そう。」しかし王は、サウルの子ヨナタンの子メフィボシェテを惜しんだ。それは、ダビデとサウルの子ヨナタンとの間で主に誓った誓いのためであった。王は、アヤの娘リツパがサウルに産んだふたりの子アルモニとメフィボシェテ、それに、サウルの娘メラブがメホラ人バルジライの子アデリエルに産んだ五人の子を取って、彼らをギブオン人の手に渡した。それで彼らは、この者たちを山の上で主の前に、さらし者にした。これら七人はいっしょに殺された。彼らは、刈り入れ時の初め、大麦の刈り入れの始まったころ、死刑に処せられた。アヤの娘リツパは、荒布を脱いで、それを岩の上に敷いてすわり、刈り入れの始まりから雨が天から彼らの上に降るときまで、昼には空の鳥が、夜には野の獣が死体に近寄らないようにした。サウルのそばめアヤの娘リツパのしたことはダビデに知らされた。すると、ダビデは行って、サウルの骨とその子ヨナタンの骨を、ヤベシュ・ギルアデの者たちのところから取って来た。これは、ペリシテ人がサウルをギルボアで殺した日に、ペリシテ人が彼らをさらしたベテ・シャンの広場から、彼らが盗んで行ったものであった。 ダビデがサウルの骨とその子ヨナタンの骨をそこから携えて上ると、人々は、さらし者にされた者たちの骨を集めた。こうして、彼らはサウルとその子ヨナタンの骨を、ベニヤミンの地のツェラにあるサウルの父キシュの墓に葬り、すべて王が命じたとおりにした。その後、神はこの国の祈りに心を動かされた。Uサムエル21:1〜14
ダビデの前の王、サウルは「熱心のあまり」ギブオン人を滅ぼそうとしたようです。その罪のゆえにイスラエルに飢饉が来て、その理由を尋ねたダビデに神は答えられたのです。
実はヨシュアの時代に、カナンの地のすべての民を滅ぼしつくせと神は命じられました。しかし、エリコ、アイと当時の強力な都市国家が次々と滅ぼされてゆくのを見たカナンの都市国家の一つであるギブオンの人々は、策略をめぐらし、自分たちが遠い国から来たと偽ってイスラエルをだまし、滅亡させないと言う約束を取り付けました。(ヨシュア記9章) これはイスラエルの失敗でした、しかし、約束は約束です。神はこういうことには非常に“義理堅い”(英語で言えばRegal)のです。ところがサウルはこの誓いを破ってギブオン人を滅ぼそうとしたのです。このことからイスラエルに神は飢饉をもって警告されたのです。
その罪のためにサウルの孫が7人、ギブオン人に渡され、殺され、さらしものにされました。その中の2人の母リツパは、その死骸の前に座り、数ヶ月間、鳥や獣を追い払い続けたと言う、哀れな話なのです。
ダビデはその話を聞き、サウルの骨とその息子ヨナタンの骨を、ヤベシュ・ギルアデ(イスラエル側)という町の人々が、敵のペリシテ人の中から取り戻し、その町に葬られていたのを、取ってきて、彼らの故郷であるツェラの父キシュの墓に、あの7人の骨と共に葬ったのです。
現代の感覚から言うと、なんとも不条理で、気の毒な話です。何の罪もない孫が祖父のために殺されなければならないのですから。私はどうしてこんなことが起こらなければならなかったのだろうと考えました。そして一つのことに気がつきました。
この話には「罪の贖い」というテーマがあります。祖父サウルの罪のために、罪のない (原罪という意味ではなく)孫が殺された。罪は何らかの形で償われなければならないのです。私たちの罪を、全く罪のない神の御子が十字架に付かれて、贖ってくださいました。私たちの罪は償われました。
あの7人の子供たちは神の国で大きな栄誉を持って迎えられたことでしょう。そして、子供たち以上に苦しみ悲しんだ(子が死ぬのを見る親ほど悲しいものはありません。自分が代わってやりたいと思うものです。)リツパの愛もまた、永遠に語りつがれるのです。ダビデも切ない思いをしたことでしょう。
あのヒヨドリの悲しい愛。必死で、傷ついたふりをする姿が今でもまぶたに焼き付いています。あんな小鳥でも、愛を示すのに、今の人間は自分の子供を殺したり虐待することを平気でします。神様はどんな小さな罪でも決して忘れません。罪は必ず償わなければなりません。それがこの世であるか、次の世であるかはわかりませんが。
しかし、私たちはイエス・キリストの贖いによって、全く罪を清められ、許されているのです。キリストは傷ついたふりをしたのではなく、本当に傷つき、死にました。
だれがわれわれの聞いたことを信じ得たか。主の腕は、だれにあらわれたか。
彼は主の前に若木のように、かわいた土から出る根のように育った。彼にはわれわれの見るべき姿がなく、威厳もなく、われわれの慕うべき美しさもない。
彼は侮られて人に捨てられ、悲しみの人で、病を知っていた。また顔をおおって忌みきらわれる者のように、彼は侮られた。われわれも彼を尊ばなかった。
まことに彼はわれわれの病を負い、われわれの悲しみをになった。しかるに、われわれは思った、彼は打たれ、神にたたかれ、苦しめられたのだと。
しかし彼はわれわれのとがのために傷つけられ、われわれの不義のために砕かれたのだ。彼はみずから懲らしめをうけて、われわれに平安を与え、その打たれた傷によって、われわれはいやされたのだ。
われわれはみな羊のように迷って、おのおの自分の道に向かって行った。主はわれわれすべての者の不義を、彼の上におかれた。
彼はしえたげられ、苦しめられたけれども、口を開かなかった。ほふり場にひかれて行く小羊のように、また毛を切る者の前に黙っている羊のように、口を開かなかった。
彼は暴虐なさばきによって取り去られた。その代の人のうち、だれが思ったであろうか、彼はわが民のとがのために打たれて、生けるものの地から断たれたのだと。
彼は暴虐を行わず、その口には偽りがなかったけれども、その墓は悪しき者と共に設けられ、その塚は悪をなす者と共にあった。
しかも彼を砕くことは主のみ旨であり、主は彼を悩まされた。彼が自分を、とがの供え物となすとき、その子孫を見ることができ、その命をながくすることができる。かつ主のみ旨が彼の手によって栄える。
彼は自分の魂の苦しみにより光を見て満足する。義なるわがしもべはその知識によって、多くの人を義とし、また彼らの不義を負う。
それゆえ、わたしは彼に大いなる者と共に物を分かち取らせる。彼は強い者と共に獲物を分かち取る。これは彼が死にいたるまで、自分の魂をそそぎだし、とがある者と共に数えられたからである。しかも彼は多くの人の罪を負い、とがある者のためにとりなしをした。イザヤ53:1〜12