1999・9・26 小 石 泉 牧師
ノアの箱船
“主は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった。それで主は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。そして主は仰せられた。「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。人をはじめ、家畜やはうもの、空の鳥に至るまで。わたしは、これらを造ったことを残念に思うからだ。」しかし、ノアは、主の心にかなっていた。これはノアの歴史である。ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。ノアは三人の息子、セム、ハム、ヤペテを生んだ。地は、神の前に堕落し、地は、暴虐で満ちていた。神が地をご覧になると、実に、それは、堕落していた。すべての肉なるものが、地上でその道を乱していたからである。そこで、神はノアに仰せられた。「すべての肉なるものの終わりが、わたしの前に来ている。地は、彼らのゆえに、暴虐で満ちているからだ。それで今わたしは、彼らを地とともに滅ぼそうとしている。” 創世記6:5〜13
このところ地震、台風と多くの災害が世界的に起っています。それらはノアの洪水を思い起こさせます。この聖書の言葉は本当に驚くべきものです。世界の歴史のある時点で、確かに人類のほとんどが滅ぼされ、世界は破滅したと言うのです。当時の人口がどれほどであったかは分りませんが数百万、数千万、数億の人間が一度に死に、世界の動物も植物もそして恐らく大地も破滅したと言うこの事件は想像を絶する物語です。
まず、そのような決心を神にさせた人類の堕落と暴虐はどれほどのものだったのでしょう。それは現在世界で起っているものよりひどかったのでしょうか。イエス様の言葉によればそう大きな違いはなさそうです。
“人の子が来るのは、ちょうど、ノアの日のようだからです。洪水前の日々は、ノアが箱舟にはいるその日まで、人々は、飲んだり、食べたり、めとったり、とついだりしていました。そして、洪水が来てすべての物をさらってしまうまで、彼らはわからなかったのです。人の子が来るのも、そのとおりです。”
マタイ24:37〜39
“あなたは自分のために、ゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟に部屋を作り、内と外とを木のやにで塗りなさい。それを次のようにして造りなさい。箱舟の長さは三百キュビト。その幅は五十キュビト。その高さは三十キュビト。箱舟に天窓を作り、上部から一キュビト以内にそれを仕上げなさい。また、箱舟の戸口をその側面に設け、一階と二階と三階にそれを作りなさい。わたしは今、いのちの息あるすべての肉なるものを、天の下から滅ぼすために、地上の大水、大洪水を起こそうとしている。地上のすべてのものは死に絶えなければならない。”創世記14〜17
この箱船にあたる言葉を英語の聖書はARKと訳しました。そしてなぜかモーセの幕屋に置かれた契約の箱も同じARKとしました。原語のヘブル語では箱船はTEBAH、契約の箱はARONと全く違うのでどうしてなのだろうと思っています。(なお、モーセの兄アロンはAARON、光り輝くと言う意味です)
この箱船のサイズは長さが300キュビト、約132m、幅50キュビト、約22m、高さが30キュビト、約13m。建物で計算してみると、平面積876坪!という巨大な船です。もちろん船ですから前後に尖っているのでこの80〜60%ぐらいとしてみても600坪ほどの広さの3階建てになります。これは現在の大型タンカーの3分の2ほどの大きさで、極めて形が似ていると言うことです。
当時、このような巨大な船の造船技術があったのでしょうか。(契約の箱を発見したロン・ワイアットさんはトルコのアララット山の麓でこの箱船の残骸を発見しています。そのサイズは聖書の通りで山頂から滑り落ちて土に埋もれていますが竜骨、骨組みなどは今でも確認できるそうです。)
“しかし、わたしは、あなたと契約を結ぼう。あなたは、あなたの息子たち、あなたの妻、それにあなたの息子たちの妻といっしょに箱舟にはいりなさい。またすべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二匹ずつ箱舟に連れてはいり、あなたといっしょに生き残るようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。また、各種類の鳥、各種類の動物、各種類の地をはうものすべてのうち、それぞれ二匹ずつが、生き残るために、あなたのところに来なければならない。あなたは、食べられるあらゆる食糧を取って、自分のところに集め、あなたとそれらの動物の食物としなさい。」ノアは、すべて神が命じられたとおりにし、そのように行なった。主はノアに仰せられた。「あなたとあなたの全家族とは、箱舟にはいりなさい。あなたがこの時代にあって、わたしの前に正しいのを、わたしが見たからである。”6:18〜 7:1
最初の個所に「ノアは、主の心にかなっていた。ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ」とありました。神の御心にかない、正しく、全き人で神とともに歩いた人! なんと幸いな人だったことでしょう。当時の全人類の中で何とたった一人! このように言われた人が本当にいたのです。私はこの事に圧倒されます。一人しかいなかったという悲しいこともさる事ながら、数千万、数億の中に残された、たった一人の正しい人ノア。人間が創造されてからわずか2000年にも満たない時にすでに人類は堕落し、神は全てを滅ぼすと決心した。その決心は簡単に成されたものではないことでしょう。どれほどの悲痛な決心だったことでしょうか。神が悔いたという言葉が使われたのはこの時と、サウル王だけだったのではないかと思います。神様が後悔される。それほど人類の罪は深かったのです。そして今もそれは同じです。
こうしてノアは船を作りました。このような巨大な船がたった一人で出来るものではなく、家族でも無理で、専門的な職業の人を雇ったと考えられます。この工事は当然、当時の人々の話題となったことでしょう。人々は「ノアと言う変な人が大きな船を作っているそうだ。見に行こう。」と出かけてきたことでしょう。人々は笑い、さざめきながらその工事を見守ったことでしょう。この時、ノアは訪れてきた人々に神の怒りと裁きについて伝えたのです。これは正に私たちの伝道そのものです。
“信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました。”ヘブル11:7
しかし、人々は聞き入れませんでした。
“また、昔の世界を赦さず、義を宣べ伝えたノアたち八人の者を保護し、不敬虔な世界に洪水を起こされました。”Uペテロ2:5
洪水は起り、人々は死に絶えました。
“昔、ノアの時代に、箱舟が造られていた間、神が忍耐して待っておられたときに、従わなかった霊たちのことです。わずか八人の人々が、この箱舟の中で、水を通って救われたのです。” ペテロ3:20
私たちはこの物語に、救いが無いように感じます。人々の罪に対して裁きが行われました。そこには人間と神の間に立つ救い主の姿がありません。しかし、ノアとは安らぎ、慰めの意味です。そして実はこの箱船こそキリスト、救い主を表すのです。それはちょうど契約の箱がイエス・キリストを表すように、ノアの箱船も主キリストを表しているのです。ノアは「義の宣伝者」と書かれています。ノアは箱船を作ることによって神の裁きと、救い、「神の裁きがある、しかし、この箱船に入れば救われる。」と言うことを宣べ伝えていたのです。これは今日の福音の宣伝と同じ事です。私たちも箱船を作っているのです。それは教会のことでもあります。人々は聞きます、あなたは何をしているのですか? 「神の裁きが来ます。早くこの福音、キリストの救いの箱船に入って下さい。」 こうして2000年間クリスチャンはキリストの箱船である教会を作ってきたのです。やがて洪水ではなく、神の火による滅びがやってきます。
“主の大いなる日は近い。それは近く、非常に早く来る。聞け。主の日を。勇士も激しく叫ぶ。その日は激しい怒りの日、苦難と苦悩の日、荒廃と滅亡の日、やみと暗黒の日、雲と暗やみの日、角笛とときの声の日、城壁のある町々と高い四隅の塔が襲われる日だ。わたしは人を苦しめ、人々は盲人のように歩く。彼らは主に罪を犯したからだ。彼らの血はちりのように振りまかれ、彼らのはらわたは糞のようにまき散らされる。彼らの銀も、彼らの金も、主の激しい怒りの日に彼らを救い出せない。そのねたみの火で、全土は焼き払われる。主は実に、地に住むすべての者をたちまち滅ぼし尽くす。”ゼパニヤ1:14〜18
“全地はこうなる。・・主の御告げ。・・その三分の二は断たれ、死に絶え、三分の一がそこに残る。わたしは、その三分の一を火の中に入れ、銀を練るように彼らを練り、金をためすように彼らをためす。彼らはわたしの名を呼び、わたしは彼らに答える。わたしは「これはわたしの民。」と言い、彼らは「主は私の神。」と言う。”ゼカリヤ13:89
このような日が来ようとしているのです。さて、しかし、ノアさんの方に話を戻しましょう。とても信じられないような愉快な?話があるのです。
“箱舟から出て来たノアの息子たちは、セム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。この三人がノアの息子で、彼らから全世界の民は分かれ出た。さて、ノアは、ぶどう畑を作り始めた農夫であった。ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。カナンの父ハムは、父の裸を見て、外にいるふたりの兄弟に告げた。それでセムとヤペテは着物を取って、自分たちふたりの肩に掛け、うしろ向きに歩いて行って、父の裸をおおった。彼らは顔をそむけて、父の裸を見なかった。ノアが酔いからさめ、末の息子が自分にしたことを知って、言った。「のろわれよ。カナン。兄弟たちのしもべらのしもべとなれ。」また言った。「ほめたたえよ。セムの神、主を。カナンは彼らのしもべとなれ。神がヤペテを広げ、セムの天幕に住まわせるように。カナンは彼らのしもべとなれ。」”創世記9:18〜27
聖書は何と不思議な書物でしょう。「ノアは、主の心にかなっていた。ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ」と言われたノア。全人類の中で唯一生き延びた神の人ノア。その人が酔っ払って裸で寝ていたと書いているのです。それを恐らくハムの子カナンが見つけてハムに知らせたのでしょう。普通こんな偉大な人の恥は書かないものです。しかし、聖書は容赦なく人間ノアの失敗を書いています。ノアの不覚。しかし、その恥を話の種にして笑い興じたハム。それに対して父の恥を覆った、セムとヤぺテ。この美しい行為をノアは神の名で祝福しています。一方でハムは呪われました。セムとは名声。ヤぺテは白い。ハムは黒いという意味です。この3人から人類は再生されたと聖書は言っています。してみるとこれは黄色人種、白色人種、黒色人種の祖先とも考えられます。そして歴史はその通りになったことを教えています。
ノアの物語は5000年も前の古い話ですが、実は明日にも起る未来の話でもあるのです。あなたも箱船を作るのを手伝って下さい。教会をみんなで作りましょう。