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アメリカ版TENNIS 2005年10月号 いま一度シニアツアーの時機 文:Douglas Robson |
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3年間の中断後、シニアツアーは合衆国に戻ってくるかもしれない |
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2001年、合衆国では男子シニアツアーが打ち切られ、ヨーロッパでは苦戦していた。ジミー・コナーズやジョン・マッケンロー等の対戦は、かつては有力な演目であったが、ツアーは財政的窮地に陥り、そしてスター選手に欠けていた。 マッケンローはまだ関わっていたが、コナーズはハワード・ヒューズとなり、姿を消してしまっていた。他の選手の多く --- マンスール・バーラミやアンドレス・ゴメスのような男たち --- は、合衆国では比較的無名であり、なおかつ往時の勢いを失っていた。 |
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しかし、ツアーは「デルタツアー・オブ・チャンピオンズ」としてヨーロッパで生き残り、最近になってジム・クーリエ、ゴラン・イワニセビッチ、トーマス・ムスター、リチャード・クライチェクを含む、より若い新鮮なグループを参加登録した。試合はより競争力が増し、テニスはより魅力的になっている。 「新しい選手たちが加わって以降、相違に気付いていた」と、デルタツアーの広報を担当するデビッド・ロウは語った。「70パーセントは真剣な競技で、同時に楽しみの要素もある。そして、たとえ負けても、誰も自分にひどく腹を立てたりしない……マッケンロー以外は」 昨年、デルタツアーはヨーロッパ全体で7大会行われ、すべて多くの観客が集まった。ロンドンで6日間にわたって行われたシーズン最終戦の「チャンピオンズ・ マスターズ」では、観客の総数はほぼ3万人にも上った。そして今年は11大会が行われ、11月29日から12月4日に開催される「マスターズ」が、その最後を飾る。 実際、ツアーの財政的見通しは上向きである。これは満場の観客やスポンサーからの心強い支援 --- 殊に最終戦には --- のおかげ、 そして選手たちが数年前よりも少ない出場保証料しか受け取らないという事実による。現在、彼らは主に賞金で収入を得ている。「それはツアーがより競争的になった理由の1つである」とロウは言う。 この成功と、近年に引退したピート・サンプラス、トッド・マーチン、マイケル・チャンのようなアメリカ人プレーヤーと契約する見込みとが相まって、来年には合衆国でのツアーに再び着手する計画が持ち上がってきた。 「計画は初期段階だが、我々は何人かのプレーヤーと話をし、提案を発展させている」と、「International Management Group(IMG)」男子テニス部門の責任者であるギャビン・フォーブスは語る。IMG は、ヨーロッパでは ATP とデルタツアーを共有し、合衆国では唯一の所有権を持っている。「我々は、ビジネス界から関心を示されている。ツアーに関わる、あるいは関わる可能性のある人物が主な理由だ」 |
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スターの存在が鍵となる。合衆国でのツアーの立ち上げを助けるには、すでに加入している選手たちに加えて、サンプラスやチャンのようなアメリカ人の参加が求められる。 「我々には今でも競争力があり体調も優れた選手たちの、まったく新しい集団がある」とフォーブスは言う。「そしてマッケンローは、みんな知っているように、今でも競争心が強い」 昨年マスターズで優勝したクーリエは、合衆国でのツアーの見通しに楽観的である。またサンプラス自身も参加するかもしれないと言っている。「もしピートが引退から戻ってきたら、ツアーにとって疑いなく恩恵となるだろう」とクーリエは言う。 |
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チャンもまた、講演会や神学校のクラス、および最愛の趣味である釣りのスケジュールに組み込む事ができるなら、プレーするという考えを受け入れている。「きっと(プレーする事を)考慮するだろう」とチャンは言う。「出場して、何人かの……古株とは言いたくないな、僕たちはそれほど年じゃないから……男たちとボールを打ち合うのは楽しいだろう。一緒にやってきたピート、ジム、あるいは(ボリス)ベッカーのような男たちとね」 振り返ってみると、合衆国におけるツアーを潰したのは、単にスターの不足だけではなかった。それは関連した問題の集積であった。企業による後援資金の不足、Nuveen のような冠スポンサーを保持できなかった事、高額の出場保証料を要求した選手たち。それは各地でのツアーをだめにした。そのツアーはコナーズと、彼のビジネスパートナーであるレイ・ベントン、ヘンリー Brehm によって1992年に始められたのだが。9月11日(同時多発テロ)の6日後に大会がニューヨークで予定されていた不運なタイミングと共に、ツアーはついに終わりを迎えた。 冠スポンサーを確保する事は、再び事業計画の一部である。しかし「それは決定的な問題ではない」とフォーブスは言う。「我々はいずれかの方法でツアーを運営できると考えている」 直接シニアツアーとは結びつかないが、何らかの試行があるだろう。この11月10〜13日、ヒューストンの「ウェストサイド・テニス・クラブ」で、プロモーターのジム・ McIngvale が8人の選手によるエキシビションを開催する。出場者はマッケンロー、ベッカー、クーリエ、イワニセビッチ、マーチン、アーロン・クリックステイン、ミカエル・ペルンフォース、マッツ・ビランデルである。 もし成功すれば、シニア・プレーヤーが公式に加わってくる追い風となるだろう。彼らが参加してくれば、シーズン毎に1〜4大会が行われるだろうとフォーブスは言う。検討されている都市はニューヨーク、サンフランシスコ、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルス、シカゴである。大会は公式にデルタツアーの一部となり、ロンドンで開催されるマスターズ出場へのポイントと賞金を、選手たちは得る事ができるだろう。 「ふさわしいプレーヤーを揃え、ATP や WTA の大会がない都市を選択すれば、ツアーには成功のチャンスがある」と Brehm は言う。彼は現在、スポーツと娯楽のイベントをプロデュースする「Vizion グループ」の管理責任者を務めている。「エキシビションや1回限りのイベントでは上手くいかない。ファンは、単なるショーではなく、真の競争を見たいと望んでいるのだ」 長年で初めて、シニアツアーは両方を提供する用意ができているようである。 |
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