アメリカ版 TENNIS
2005年11・12月号
ピート・サンプラス
文:Stephen Tignor


サンプラスは最大の大会において、自分のゲームのレベルを上げた。
他のいかなるテニスプレーヤーよりも、彼はプロの運動選手に与えうる最高の
賛辞に値した。すなわち、彼は多額の金を稼いだのだ

テニスファンの心の中では、偉大な選手は単なる個人ではなく、何かを象徴している。 ジョン・マッケンローは怒れる天才、ジミー・コナーズは熱い血と闘志、クリス・エバートはプレッシャーの下での優雅さを、それぞれ体現していた。では、ピート・サンプラスの名前に、何を思い浮かべるだろうか? よりシンプルで、より高貴なものだ。勝者。

彼のアイドルであるマイケル・ジョーダン、友人であるウェイン・グレツキーのように、サンプラスは彼のスポーツにおける最も偉大な近代チャンピオンである。だが、初めからそうだったのではない。初期のピストル・ピートは、激しい競争心よりも生の粗削りな才能で知られていた。

キャリア4年目の時点で、1週たりとも1位になった事はなかった。それは1992年USオープン決勝で、21歳の彼がステファン・エドバーグと対戦した時であった。4セットの後にサンプラスが敗者として歩み去った時、もはや2番目では決して充分ではないのだと彼は知ったのだ。

「以前は、僕は6位でも幸せだった」とサンプラスは言う。「頑張りが足りなかった。もしあの敗戦がなかったら、僕は自分が成したほどの事を達成していなかっただろう」

*写真をクリックすると、拡大版が見られます。

カリフォルニア育ちのしなやかな男が成し遂げた事は、数々の記録を塗り替えた。サンプラスは徹底的に勝利した。テニス界最大のステージで、そして毎週毎週のツアーで。14個という男子テニス界最多のグランドスラム・タイトルを獲得しただけでなく、6年連続してシーズンをナンバー1で終え、1位の座に286週間いた。どちらも男子の最高記録である。彼の名はテニス界で最も高名な大会、ウインブルドンと同義となり、8年間で7つのタイトルを獲得した。

しかしサンプラスは、ほぼあらゆる場所で勝利した。彼はイワン・レンドルの有名な8年連続USオープン決勝進出に終焉をもたらした。コーチが脳腫瘍と診断され、涙にむせびながらもメルボルンでクーリエを倒した。そしてキャリア最後の試合では、最大のライバル、アンドレ・アガシを降し、5つ目のUSオープン・タイトルを獲得した。1995年、合衆国が最後にデビスカップを獲得した時、決勝で3勝すべてを挙げ、ロシアを負かしたのは誰だったか? 

それでもなお、たび重なる挑戦にもかかわらず、フレンチ・オープンは彼を避け続けた。それが彼の履歴の穴であり、オープン時代にはロッド・レーバーとアガシの2人しか、フレンチを含むすべてのメジャー大会で優勝した男はいないという事実によってのみ、容認されうるだろう。もちろん、多くの女子選手はそれを果たしており、ここでサンプラスの後に続く3人も含まれる。

では、彼はいかにしてトップに選ばれたのか? それは彼の業績の非凡さである。トップ3人の女子選手は、同等に完璧な記録を有している。男子はより競争が激烈な中、サンプラスは単独で際立っている。

獲得賞金を見てみよう。偉大さを測る物差しとしては、賞金額は滅多に顧みられない。何十年間も賞金はなかったからである。しかし我々が選出した2位と3位、マルチナ・ナヴラチロワとシュテフィ・グラフが、ほぼ同額のキャリア獲得賞金(2,100万ドル)であるのに対して、サンプラスが引退した時の生涯獲得賞金は4,300万ドルで、2位のアガシが当時獲得していたものよりほぼ1,700万ドル多い。この事は注目に値する。

偉大さはドル紙幣だけで測られるものではない。しかし最も賞金の高い大会は、概して最も重要な大会である。そしてそれは、サンプラスが自分のプレーのレベルを上げた場所である。他のいかなるテニス選手よりも、彼はプロの運動選手に与えうる最高の賛辞に値した。すなわち、彼は多額の金を稼いだのだ。

キャリア・ハイライト
* ウインブルドンとUSオープンで計15回、決勝戦に進出し、そのうち12回優勝。
*年末の選手権大会で5回優勝。ATPツアー記録。(イワン・レンドルとタイ)
*年間500万ドルを獲得した最初の選手。(1995年)



「TENNIS」誌の時代における40人の偉大な選手たち

アメリカ版「TENNIS」誌の創刊40周年を祝し、我々は過去40年間における最高の選手たち40人を選出した。今年の各号で、リストに挙がった選手たちを4人ずつ明らかにしてきた。現在までに40位から5位までは紹介済みだが、2005年最後の号で、ここに過去40年間で最も偉大な4人の選手たちをご紹介する。

これらの選手たちについては、これまでの号で紹介された。我々のウェブサイト 「TENNIS.com.」で彼らへの賛辞を読む事ができる。

40位 ガブリエラ・サバティニ(Gabriela Sabatini)
39位 パトリック・ラフター(Patrick Rafter)
38位 バージニア・ウェイド(Virginia Wade)
37位 グスタボ・クエルテン(Gustavo Kuerten)

36位 ジェニファー・カプリアティ(Jennifer Capriati)
35位 スタン・スミス(Stan Smith)
34位 レイトン・ヒューイット(Lleyton Hewitt)
33位 ハナ・マンドリコワ(Hana Mandlikova)

32位 トレーシー・オースチン(Tracy Austin)
31位 ジュスティーヌ・エナン - アルデンヌ(Justine Henin-Hardenne)
30位 アーサー・アッシュ(Arthur Ashe)
29位 リンゼイ・ダベンポート(Lindsay Davenport)

28位 イリー・ナスターゼ(Ilie Nastase)
27位 アランチャ・サンチェス - ビカリオ(Arantxa Sanchez-Vicario)
26位 ジム・クーリエ(Jim Courier)
25位 ビーナス・ウィリアムズ(Venus Williams)

24位 ギレルモ・ビラス(Guillermo Vilas)
23位 イボンヌ・グーラゴン(Evonne Goolagong)
22位 マルチナ・ヒンギス(Martina Hingis)
21位 ロイ・エマーソン(Roy Emerson)

20位 ケン・ローズウォール(Ken Rosewall)
19位 ロジャー・フェデラー(Roger Federer)
18位 ボリス・ベッカー(Boris Becker)
17位 セレナ・ウィリアムズ(Serena Williams)

16位 ジョン・ニューカム(John Newcombe)
15位 マッツ・ビランデル(Mats Wilander)
14位 ステファン・エドバーグ(Stefan Edberg)
13位 モニカ・セレシュ(Monica Seles)

12位 アンドレ・アガシ(Andre Agassi)
11位 ジョン・マッケンロー(John McEnroe)
10位 イワン・レンドル(Ivan Lendl)
9位 ビリー・ジーン・キング(Billie Jean King)

8位 ロッド・レーバー(Rod Laver)
7位 ジミー・コナーズ(Jimmy Connors)
6位 マーガレット・コート(Margaret Court)
5位 ビョルン・ボルグ(Bjorn Borg)

4位 クリス・エバート(Chris Evert)
3位 シュテフィ・グラフ(Steffi Graf)
2位 マルチナ・ナヴラチロワ(Martina Navratilova)
1位 ピート・サンプラス(Pete Sampras)