テニスウィーク
2007年1月18日
サンプラスが「名誉の殿堂」、フェデラーとの対戦について語る
文:Richard Pagliaro


ピート・サンプラスは同窓会的なテニスを行い、彼のグラスコートゲームを高名な草地にもたらす。7月14日、サンプラスは「国際テニス名誉の殿堂」の式典で、テニス界の名士に仲間入りする。翌日、7月15日の日曜午前に予定されている名誉の殿堂クラシック・エキシビションでプレーし、殿堂の歴史的なニューポートの芝生でサーブ&ボレーの技能を披露する。

イベントは3試合から成り、さらに何人かのテニス・チャンピオンも登場する。

アンドレ・アガシ、ジョン・マッケンロー、ロッド・レーバー等のグランドスラム・チャンピオンは、近年ビル・タルバート・センターコート・スタジアムにおける名誉の殿堂クラシックに参加した。

2007年の名誉の殿堂クラシックは、午後2時からの「キャンベル名誉の殿堂テニス選手権」のシングルス・ダブルス決勝戦に先だち、午前10時に開始される。決勝戦、および月曜から金曜まで通しの大会チケットは入手可能。土曜日の準決勝と名誉の殿堂式典のチケットは売り切れである。

(キャリアを)振り返り、味わう時だ。妻と2人の子供、そして家族とすべての姻戚も来るよ」ESPN で「名誉の殿堂」入会式典について感想を求められ、サンプラスはこのように語った。「祝い味わう事について、現役の間はあまり考えた事がなかった。僕はメジャー大会で優勝する事に集中し、期待していたから、それをきちんと評価していなかったんだね。むしろ今、より有り難いと感じるよ。2人の子供や親族もその場に来るし、感情的になるだろう」

差し迫った芝生への帰還、現在のトップ・プレーヤーに関する意見とを合わせ、サンプラスは自分のゲームがベストの時、世界ナンバー1のロジャー・フェデラーにどんな風に噛み合うだろうかと考えた。

サンプラスはオープン時代の記録である、7つのウインブルドン・タイトルを所有している。フェデラーは、決勝戦でラファエル・ナダルに、2006年の2週間で唯一のセットを与えたが、4年連続でウインブルドン・タイトルを獲得し、オープン時代に少なくとも4年連続ウインブルドン選手権で優勝した男として、サンプラスとビョルン・ボルグに並んだ。そして48試合連続で芝での試合に勝った――オープン時代におけるグラスコートでの最長連勝記録である。

芝の上でベストの状態ならほぼ無敵と言える2人のプレーヤーの対戦で、サンプラスはスイスの名手に対して、シンプルな戦略を提出した。フェデラーに重苦しいプレッシャーを掛けるために、サーブで馬力を上げて容赦なくネットに突き進む努力をすると。

「ロジャーは現在、ウインブルドンで負け知らずと感じている。僕も全盛期は同じように感じていた」サンプラスは水曜日の夜、ネットワークとのインタビューで ESPN のクリス・フォウラー、パトリック・マッケンロー、ディック・エンバーグに語った。「99年にアンドレ(アガシ)と対戦したプレーは、恐らく僕があそこで組み立てる事のできたベストのテニスだった。もしロジャーに対してあんな風にプレーしたら、自分にチャンスがあると考えたいね。でも彼はアンドレとは違うものを披露する。彼の方が、サーブが少しばかりビッグだ。動きがいいかも知れない。バックハンドはアンドレのより弱いかも知れない。僕は激しく行って、彼のサーブで前へ詰めて攻撃し、時間の余裕を与えないようにするだろう」

サンプラスはサーブ&ボレーヤーが絶滅危惧種であるのを残念に思うと話し、サービスをキープして対戦相手のサーブで攻撃する自分の能力は、今日めったにサーブ&ボレーヤーと直面しないフェデラーに対して、手ごわい挑戦になるだろうと語った。

「最近のウインブルドンでは、皆がステイバックしている。僕はサーブ&ボレーのテニスが恋しいよ」とサンプラスは言った。「僕は可能な限りロジャーにプレッシャーを掛けようとするだろう。そして、彼が素晴らしいパスとリターンを3セット打てたら、ただもう良すぎるという事だ。だが、良いサーブを打ち、動きが良ければ、芝生の上で僕を倒すのはとても厳しいと感じていた。そしてロジャーは芝でステイバックするので、いわばそこを突いてネットに詰め、彼にプレッシャーを掛けようとするチャンスが何回か生まれる。でも、僕がどうやるかについて、あまり語れないよ。僕たちが1回対戦した時、彼は僕を負かしたんだからね」

そのセンターコートでの大試合は、2001年7月の事だった。4回戦で第15シードのフェデラーが7-6(9-7)、5-7、6-4、6-7(2-7)という劇的な勝利でサンプラスを打ち負かしたのだった。フェデラーにとっては時機到来であり、サンプラスにとっては一つの時代の終焉であった。フェデラーの勝利により、ウインブルドンにおけるサンプラスの31連勝は途切れた。フェデラーがウインブルドンでシングルスとダブルスのジュニアタイトルを獲得してから、ほぼ3年後の事だった。

サンプラスに対する勝利の後、フェデラーは準々決勝でティム・ヘンマンに4セットで敗れた。ヘンマンはサンプラスに対して1勝6敗、フェデラーに対しては6連敗を含め6勝7敗であるが、現在の世界ナンバー1は前の世界ナンバー1よりも、既に完成されたプレーヤーであると考えている。

「彼はサンプラスよりも完成されたゲームを持っている。サンプラスは1st、2ndともより強烈なサーブを持っていた」とヘンマンは語った。「ピートがプレーしていた頃のコンディションでは、常により攻撃的である事が容易かった。今はコートとボールがもっと遅いので、ロジャー(のゲーム)はとても効果的だ。彼のゲームには多くの要素があるからね」

ヘンマンの意見は、3度のローラン・ギャロス・チャンピオンであるグスタボ・クエルテンとは正反対である。クエルテンはフレンチ・オープンでフェデラーを倒している。サンプラス時代の競争レベルは、今日フェデラーが直面する相手よりもっと厳しかった、そしてサンプラスは「ずっと優れた」プレーヤーであったと、元ナンバー1のクエルテンはきっぱりと言明した。

「フォーミュラ・ワンでは、(ミハイル)シューマッハーが(アイルトン)セナの死のおかげでスポーツを征服した。同じように、フェデラーはサンプラスがいなくなった空白によって、勝利を得ている」と、ブラジルのテレビ・ネットワーク、グローボとのインタビューでクエルテンは語った。「両者とも優れたプレーヤーだが、僕はサンプラスを取るね」

その7月の日、彼の後継者となるであろう男をネットの向こう側に見て、サンプラスは自分とフェデラーとの間に、類似性を感じずにはいられなかった。強力なサーブから、運動能力の高いオールコートの攻撃、片手バックハンド、コート上での控えめな態度、同じウィルソン・プロスタッフ・ラケットにまで、2人の間には共通のスタイルがあった。同じく、フェデラーはウインブルドン王者として4年間に勝ってきた大方の試合よりも、その試合ではもっと果敢にネットへ詰めていた。

「あの時点では、(彼がどれくらい良いのか)確かではなかった。彼に才能がある事は知っていた。つまり、彼はとても、本当に良いと知ったよ」とサンプラスは語った。「実際、僕は拙い試合をした訳ではなかった。つまるところ、僕は競った試合に負けたんだ。どこまで彼が好機を掴み、そしてどこに彼が行こうとしているか分からなかった。この2〜3年、彼を見てきたが、彼は少しずつ良くなり、それを理解してきていると思う」

「ただ独力でそれを理解するんだ。彼は世界最高のプレーヤーである事に対して、自分の方式を持っている。僕がそうだったようにね。今日そうであるように、彼が支配的になっていくのかどうかは分からなかった。だが彼がプレーしているのを見ていると、彼は本当に、とても素晴らしいと思う。自分はくつろいで彼を見て、そして自分がネットの向こう側に立ったら、どうプレーするかな、と考えてみるんだ。僕たちはお互いに精一杯だろうと思うよ」

同時に、フェデラーは自身のものである9つのグランドスラム・タイトルのトロフィー全部を抱えようと、手が塞がっているだろう。14のキャリア・グランドスラム・タイトルというサンプラスの記録に、彼はあと5つまで迫っている。そしてサンプラスは昨夜、フェデラーは「僕の脇を飛び越えて」グランドスラムのトロフィーを積み上げ、やがてメジャー最多優勝を目指してもう1人の芝生の偉人――ゴルファーのジャック・ニクラウス――に迫るだろうと語った。

「ロジャーのゲーム、そしてコート内外での身の処し方に感銘を受けているよ」とサンプラスは言った。「僕は彼のファンだ。対戦相手を応援するなんて考えない。彼は14以上のメジャー大会で優勝すると、心から信じているよ。彼は17か18のメジャーに優勝すると思う。彼は僕を飛び越え、ニクラウスを追うだろう」

サンプラスはフェデラーが自分のグランドスラム記録を破ると確信している。そう信じる4つの理由を挙げた。メジャー大会でフェデラーが直面する競争の質の不足、 フェデラーがテニス界で最高のオールラウンドなアスリートである事、フェデラーが持つオールコートの武器の多彩さ、自分のゲームを進歩させ続ける彼の意欲。

「彼をプッシュする選手たちがいないし、彼はただ向上し続ける」とサンプラスは語った。「彼はテニス界で最高のアスリートで、様々な事ができる。自分がしている事について、彼はとても良く理解している。彼の優越性にはとても感銘を受けるよ。彼が支配している様は――信じ難いほどだ」

現在サンプラスは週に3回ほどヒッティングをし、かつてのプロスタッフではなくフェデラーモデルのウィルソン nCode ラケットを使っている。昨年7月、2度のローラン・ギャロス・チャンピオンであるラファエル・ナダルが、ベースライン後方から強烈なトップスピンでプレーし、ウインブルドンの決勝戦に達した光景は、彼にウインブルドンへのカムバックを誘いかけた。

「その事(ウインブルドンでプレーする事)は心を過ぎった――嘘じゃないよ」と、サンプラスは ESPN に語った。「ナダルは途方もない運動選手で、異論はないよ。だがああいった(ベースライン)ゲームなら、僕はチップショットで(ネットに)前進し、芝を有利に使おうとするだろう」

サンプラスはアメリカン・テニスの現状を概観し、デビスカップのチームメイトだったアンディ・ロディックとジェームズ・ブレイクは、共に進歩してきていると言ったが、不足も示唆した。

「ジェームズとアンディの後は、(アメリカ男子テニスは)少し心細いね」とサンプラスは語った。「若い才能であるジネプリがいる。アンディとジェームズは向上してきたと思う。だが残念ながら、彼らは明らかに世界最高のフェデラーという偉人と対戦する。やはりロジャーがメジャーで勝つだろう。(フェデラーを倒すには)特別なプレーヤーでなければならない。そしてアンディとジェームズがそのための武器ひと揃いを持っているかどうか、僕には分からない」