テレグラフ
2007年12月17日
ピート・サンプラス:フェデラーは僕の記録を塗り替える事ができる
文:Mark Hodgkinson


見せかけの空しい賛辞が1人の名士からもう1人へと贈られるのは、ハリウッド辺りでなされる事かも知れない。しかしビバリーヒルズの邸宅でテニスの話をするのは「ミスター誠実」であるという事は疑いようもなかった。それは心のこもったピート・サンプラスからの言葉だった。もし彼がカウベルを1〜2個所有するほどの、「ロジャー・フェデラー称賛会」の会費を納める会員だったとしても、さほど驚かなかっただろう。

ビバリーヒルズからバーゼルへと、テニス・チャンピオンの称賛は明白だった。マリア・シャラポワが郵便切手を集めるように、フェデラーはグランドスラム・タイトルを集めている――熱心に。そして2008年のシーズンには、14のグランドスラム・タイトルというサンプラスの記録にフェデラーが並ぶであろう可能性は高い。もしかしたら、凌ぎさえするかも知れない。しかしサンプラスが自分の記録を、達成するために人生を費やした歴史上の地位を、失う事に不機嫌だとは思わないでほしい。フェデラーのような男が自分の記録を破り去る事に、サンプラスは満足している。「ロジャーは2008年に、何らかの歴史を塗り替えようとしている。歴史書は間もなく、すべて彼のものになる」とサンプラスは語った。

そして「ピストル・ピート」は、友人であるフェデラーのような存在はこれまでにいなかったと、ためらいなく公言した。

「ロジャーがこの3年ほどの間にしてきた事は、まさに目を見張るようだった――彼は人類の歴史でも最も群を抜いたスポーツマンだと思う。個人スポーツの世界で、ロジャーがこの数年間でした事に近い者さえ思い浮かばないよ」とサンプラスはスイス人について語った。フェデラーは12のメジャータイトルを引っさげて来月のオーストラリアン・オープンに臨む。

「だがロジャーは、自分がどれほど偉大かという事について、快適でいるとは思わない。数週間前、ロジャーと僕はこの事について話をした。テニス史で誰が最も偉大なテニス選手かについて。彼はこの話題自体に居心地が悪そうだった。
チャンピオン達:11月にエキシビションをプレーした後のピート・サンプラスとロジャーフェデラー

「ロジャーは脚光を浴びるため、称賛を受けるため、メダルのためにテニスをしているのではない。テニスが好きだから、彼はテニスをする。そしてコート上では競争心が強い。しかし称賛を受けるため、最も偉大だと呼ばれるためにしているとは思わない。彼が望むのは、戦いの場でテニスをする事だ。ロジャーについて僕が好きなところはそこだ。彼がゲームを愛しているのが分かる事」

フェデラーが春にサンプラス家のコートでボールを打って以来、彼らは2007年シーズンの間に友情を深めてきた。残念な事に、サンプラスの妻、ハリウッド女優のブリジット・ウィルソンが、ゲームの間に自家製のレモネードを供したかどうかは伝わっていない。ともあれ、それが繋がりの始まりだった。そして秋には、フェデラーとサンプラスはアジアでエキシビション・マッチを行った。サンプラスは今でも世界トップ10に並びうる力のある可能性を示唆したミニツアーだった。

サンプラスは語った。「ロジャーが僕の家に来た時は素晴らしかったよ。僕たちは数時間ヒッティングをし、少しばかりポイント・プレーをして、ドリルをした。そしてテニスやそれぞれの世代について語り合った。だが僕が彼をよく知る事ができたのは、恐らくアジアでだった。僕たちはずっと一緒に過ごし、親しい間柄になったんだ」

「ロジャーはとても楽しい男で、僕たちは夕食を食べながら大いに笑い合ったよ。彼は愉快な男で、冗談が好きだ。そしてちょっといたずら者なんだ」

「それは彼がプライベートにしておきたい一面だろう。ロジャーについて言われている事は、すべて真実だ――謙虚な男で、地に足が着いている。彼が自分自身を律するやり方が好きだ。テニス界にとって、これほどの大使はいないだろう」

引退したばかりの頃サンプラスは、自分の記録はスイス銀行の金庫室と同じくらい安全だと思っていたに違いない。「僕は自分の記録が永遠に保たれる事を望んだか? そりゃそうだ。記録を作る事は、僕が得ようと励み、懸命に努力したものだからね。だがロジャーのような男が僕の記録を破るのなら、かまわないよ」

サンプラスが14回のうち最後のグランドスラム優勝を果たしたのは、つい最近の2002年USオープンでだった。しかしフェデラーは初のメジャー、ウインブルドン・タイトルを翌年に獲得し、それ以来男子テニス界の頂点に君臨してきた。サンプラスは語った。「ロジャーはオーストラリアン・オープンの優勝候補で、それで13だ。そして、これまでは果たせなかったが、彼はフレンチ・オープンで優勝し、パリで僕の記録に並びうる見込みがある。そしてウインブルドンのセンターコートで記録を破る事もできるだろう」

「もし彼がフレンチ・オープンで優勝しなかったら、恐らくUSオープンで破るだろう」

「それが約束されているとは思わない。大いに努力が必要だ。だが彼には、2008年にそれを成し遂げる大きなチャンスがあると思う。この数年で、ロジャーはあらゆる記録を破ってきた。2007年には、最長連続ナンバー1在位週でジミー・コナーズの記録を抜いた。そして間もなく、グランドスラム記録も彼のものになろうとしている。やがて、すべての記録は彼のものになろうとしている。僕は彼のためにそれを嬉しく思うよ。彼はスポーツを支配している。僕がしてきたよりも、これまでの誰よりも」