タンパ・トリビューン
2007年4月28日
時を経て、サンプラスはコートへの帰還を待ち望んでいる
文:Joey Johnston


タンパ――何も残されていなかった。ピート・サンプラスはそれを知っていた。2002年USオープン――そしてキャリア後期の失望するような2年間を消し去る、アンドレ・アガシを下した衝撃的な決勝戦での勝利――に続く数カ月間、サンプラスは歩み去る用意ができていた。

そして実際、彼は全力疾走のテニスから普通の家族生活へと姿を消した。

さらに証明すべき事があったか?

彼は記録的な14のグランドスラム・シングルスタイトルを有し、4,300万ドル以上もの生涯獲得賞金を得ていたのだ。

彼はジョン・エルウェイ、テッド・ウィリアムズ、レイ・ブーケにも似た有終の美を飾ったのだ――完璧な終わり。

彼は人生を送っていた――妻や2人の子供とカリフォルニアで引退生活を送り、夜更かしをして、ゴルフをして、 気ままに暮らしていた。

サンプラスは語った。「どれだけゴルフをして、特にすべき事もない朝を迎えられるか? 競技生活をやめると――老いた七面鳥――しばらくの間は、休息は心地よいよ。身体と精神を休める事ができる。だが時が経つにつれて、満たされないと感じるようになってくる」

「結局、人間は働かなければならないのだと思うよ」

その仕事がプレーだとしても。

サンプラスは、この最新の局面がどこへ向かうかいまだ不確かで、完全なカムバックはしていないが、テニスに戻っている。

今晩、セント・ピート・タイムズ・フォーラムにおいて、サンプラスは4年目を迎えるメルセデス-ベンツ・クラシック・イベントに参加する。そして少年時代の相棒で長年のライバルだったジム・クーリエと、ベスト・オブ・3セットのエキシビションを戦う。

35歳のサンプラスは、アウトバック・チャンピオンズシリーズのために来週はボストンへ向かう。これはクーリエの会社インサイドアウト・スポーツ&エンターテインメント社が創設した30歳以上のツアーである。

「ピートは我々のスポーツにおける、最も偉大なチャンピオンの1人だ」とクーリエは語った。

「彼が没頭し、試合で活気づいているのを見るのは素晴らしい。観客は彼に応えるだろう。彼はテニスに信じられないようなシーンをもたらしてくれたんだ」

19歳で1990年USオープン・タイトル――イワン・レンドル、ジョン・マッケンロー、そしてアガシを立て続けに破った――を獲り、フラッシングメドウでさらに4つのトロフィーを獲得した。

8年間で7回のウインブルドン優勝。

オーストラリアン・オープンで2タイトル。

2回のデビスカップ優勝で合衆国チームに貢献。

年間に1,000エースを記録した初の男。

あのピート・サンプラスは今でも存在するのか?

「競技は5年間していないので、予想がつかないよ」とサンプラスは言った。「僕が今でもかなり上手くできる1つの事は、サービスをキープする事だ。サーブ&ボレーは健在だ。動きはかなりいいよ。より大きいラケットを使っていて、パワーの助けとなっている」

「もちろん、奇跡は期待していない。年齢を重ねるにつれて、シャープさは失われてくる。以前ほどはハードに練習しないしね。だが我々にはプライドがある。かつてに近いレベルでプレーしたいと思うよ。そういう全体を通して、ただ本当に楽しみたいんだ」

サンプラスはかつて、所属する ATP ツアーのスケジュールに拘束され、コンピュータ・ポイントを追い求め、スポンサーを満足させ、1年にわたる厳しい仕事をしてきた。今、彼は参加するイベントを自分で選ぶ。

サンプラスは語った。「テニスに戻る事は、生活になにがしかの調和を加える。テニスは集中するものを与えてくれる。自分でコントロールできるもの、慣れているものだ」

「僕は家族を愛しているし、家族と過ごす時を大切にしている。だがこのレベルで戻る事は、僕に達成感、努力目標を与えてくれるだろう。そして願わくば、僕をさらに良い父親にしてくれるといいね。再び手を汚すべき時は来るんだ」

サンプラスは自分が全盛期だった頃の、毎週毎週というリズムを懐かしいとは思わない。

しかし彼はウインブルドンのセンターコートを、USオープンを、クーリエやアガシのような選手との関係を懐かしむ。

今晩は、それらの思い出が再燃する。ことに、イベントはタンパで開催されるからだ。ここはサンプラスがナンバー1へと上り詰めた6年間を過ごした土地なのだ。

「僕はタンパで素晴らしい時を過ごした。人々は僕をとても親切に遇してくれたし、サドルブルックで充実したトレーニングができたからね」

「それは僕が懸命に励んでいた日々だった。タンパに帰ってくるのは、いつも素晴らしい気分だったよ」

「ある意味で、あの頃が懐かしいね。競技場が懐かしい。1年のうち、あの4週間(ウインブルドンとUSオープン)を本当に懐かしく思う。でも脚光や注目を浴びる事は、必ずしも懐かしいとは感じない。僕は確かに人生の新しい段階にいるが、再び競い合い、自分に何ができるかを見るチャンスを得て、感謝している」