スポーツ・イラストレイテッド
2007年2月15日
Q & A : ピート・サンプラス
ピストル・ピートがカムバックとロジャー・フェデラーについてお喋りする
文:Richard Deitsch


先週「スポーツ・イラストレイテッド」の記者リチャード Deitsch は、Q&Aコーナーでピート・サンプラスにインタビューした。35歳の名誉の殿堂入りテニスプレーヤーは、5月2〜6日にボストンでアウトバック・チャンピオンズ・シリーズ――30歳以上のツアー――に出場する。7月には、彼はロード・アイランド州ニューポートで「国際テニス名誉の殿堂」入りする。これは会話から追加分の抜粋である。


SI:あなたにとって引退はどんなものでしたか?

サンプラス:
引退は進行中の仕事だ。本を読んで答えを得られるようなものじゃないよ。でも2005年に、僕は何かを始める必要があると気づいたんだ。僕の生活はおよそ規律だったものではなかった。言わば目覚めて、ゴルフをしてという感じで、大した事はしていなかった。幾つかのエキシビションで少しばかりテニスをする約束をしたのは、僕にとって最良の事だった。体調を整える事になり、家から引っ張り出してくれた。僕が好きな事をやる機会を与えてくれた。

SI :あなたはこのツアーで2つのイベントに出場する事を約束しました。なぜ競技テニスに戻るのですか?
訳注:9月のノース・カロライナ州シャーロット戦にも出場する事になったとか。
5月に、ピート・サンプラスは3年間で初めてツアー活動に戻る。

サンプラス:この1年、ジム・クーリエと大いに話をしたんだ。僕が精神的にどんな状態か、プレーを望んでいるかどうか、彼は僕の考えを引き出していた。僕はちょっとやってみたいと思った。イベントでのプレーには、何かがある。それは、僕が参加を約束し、興奮を感じられるまでになる過程だった。僕はジムやジョン・マッケンロー、そして僕が現役だった頃に対戦した男たちとプレーするんだ。それを楽しみにしているよ。

だが参加を約束し、自分がどう感じるかを知るには、物事を明確にしなければならなかった。ジョンとジムは、楽しく、かつ競い合う週だと言ったが、僕が求めているのは競争ではない。準備すべき何かがある。楽しみに感じる何かがある。もう少しボールを打つ事ができる。もう少し体調を整えられる。それら全てが合わさって、集中心を与えてくれるんだ。かつてのようでは決してないが、似たようなものではあるよ。

SI :ボストンでのレベルが予想よりも高かったら、どうなるでしょう? プレーし続ける気になるでしょうか?

サンプラス:
良い質問だね。どんな風に感じるか、自分でも知りたいんだ。まあ、この何カ月か、僕は現役の頃よりも上手くボールを打っていると言っておくよ。その多くはテクノロジーと関係がある。僕は以前より大きいラケットを使っている。テクノロジーはゲームを新しいレベルに引き上げ、去年辺り僕はその恩恵に浴してきたよ。僕は前と同じくらいハードにサーブを打っている。よりコントロールの効いたボールを打っている。ラケットヘッドが大いに関係していると思うよ。

SI :これから18カ月の間に ATP の大会でワイルドカードを提供されるとしたら、あなたは出場を考慮するでしょうか?

サンプラス:
申し出は問題ないよ。問題は僕がそれをしたいのか、骨の折れる仕事をしたいのかどうかだ。みんな僕に、カムバックすべきだと言ったよ。現在は偉大なプレーヤーが多くない、(僕がカムバックしたら)エキサイティングだろう、テニス界の一助となるだろうってね。でも彼らは僕の立場に身を置いた事はない。現実的には、僕はただ1つの目的でプレーするんだ。それは勝つ事だ。ただカムバックのためのカムバックで、その気持ちを危うくする事はしないよ。(戻るには)理由がなければね。自分の競争的な一面と好奇心的な一面、それについて考えたよ。現実的に言って、カムバックはないね。

SI :あなたは2001年のウインブルドンでロジャー ・フェデラーと対戦しました。

サンプラス:
そして第5セット、7-5で負けたよ。

SI: フェデラーは幾つくらいメジャー・タイトルを獲得するでしょう?

サンプラス:17、18あるいは19くらいまで行くんじゃないかな。本当にそう思うよ。彼がどこまで行けるか、誰に分かる? 彼はかなり容易に優勝している。それほど挑戦を受けていないし、明らかに素晴らしいプレーをしている。この1年、彼を5セットまで追い詰めたり、何回か彼を倒した選手が3〜4人でもいたのだったら、日によっては何でも起こりうるだろうが……。だが僕は、彼は極上のギアを持っていて、誰も長く彼に食い下がる事はできないと考えているよ。彼は17、18もしくは19くらいのメジャー大会に優勝できる。彼はキャリアの中程にいて、スローダウンする、あるいは誰かがスローダウンさせるとは思わないね。

SI :彼を倒すのに、あなたならどんな作戦を立てるでしょうか?

サンプラス:僕なら彼のタイミングを狂わせようとして、そしてネットに詰め、自分のサーブと攻撃的なスタイルを使おうとするだろう。相手がステイバックしていると、彼は素晴らしいプレーをし、バックコートから支配する事ができる。僕ならそういうラリーを何回もしたくないね。ネットに詰めて、彼のセカンドサーブを攻撃しようとする。とにかく彼のリズムを失わせようとするだろう。

それは僕がクーリエ、アンドレ・アガシのような素晴らしいベースライン・プレーヤーに対して試みてきた事だった。自分のパワーとショット・メイキングの能力で、彼らを圧倒しようと心がけていた。だから僕は1st・2nd サーブともサーブ&ボレーをするだろう。彼のバックハンド――彼のより弱い側だ――を攻撃する、そこから始めるだろうね。残念ながら、今日それをできる者はいないから、彼はバックコートから運動能力の高さで優る事ができる。走りながら彼ができる事ゆえにね。誰も前に詰めようとしないようだが、それが彼を倒す方法だと思うよ。
唯一の対戦となった01年ウインブルドンで、ロジャー・フェデラー(左)はピート・サンプラスを白熱した5セットの接戦で破った。

SI :あなたのグランドスラム記録をフェデラーが追い抜いても、OKですか?

サンプラス:
もちろん。記録を保持しているのは素敵だけれど、記録は破られるためにあるんだ。今日、選手たちはより優れ、そしてロジャーは僕の記録を、タイガー・ウッズはジャック・ニクラウスの記録を、バリー・ボンズはハンク・アーロンの記録を破ろうとしているんだよ。僕にとっては残念と言えるが、ロジャーは僕の記録を8年程度しか保たせてくれないだろうね。だからといって、彼を応援しないって事はないよ。それはあり得ない。記録は破られる、そして破る者は並はずれた選手だと考えている。僕は彼がそうするのを見たい。彼はテニスの誉れだと思うからね。彼はナイスガイだ。コートの内外で自分をよく律している。良い気質を持っている。それらは僕が運動選手に望むものだ。彼は現在の我々や、人が欲する論争ゆえに記録を越えるのではないよ。

SI :最後にフェデラーと話をしたのはいつですか?

サンプラス:USオープンの数日後に話をした。彼に祝福のメッセージを送ったんだ。その後、少し話をした。僕たちにエキシビションをやらせたがっている人々がいたんだ。それは実現しない事になったが、僕たちはエキシビションについて、そして一般的な事を少し話した。「僕は君を個人的にはよく知らないが、君のゲーム、振る舞い方に敬意を表する、そして君はテニスの誉れだと伝えたい」と彼に言ったよ。彼はメディアやファンから敬意を受けていると思うが、僕もその一員だと知ってほしかったんだ。

SI :タイガー・ウッズとフェデラー、どちらがより支配的な運動選手だと思いますか?

サンプラス:良い質問だね。純粋に支配的という事で言えば、何とも言えない。ゴルフの方がテニスよりも支配的である事が難しいと思うから。タイガーが成した事をするためには、彼は多くのプレーヤーを気に掛けなければならないが、ロジャーに比べて成り行きをコントロールできない。ロジャーの場合は、1対1の勝負だ。彼は7人の男、7人の男についてのみ心を砕く必要がある。タイガーは62辺りを打つ何人もの男を気に掛けねばならない。タイガーは成り行きをコントロールできる訳じゃないから、タイガーの方がより印象的と言えるかも知れないね。

だが同時に、ロジャーはこの18カ月で5試合くらいしか負けていない。途方もない事だ。テニスがゴルフよりも支配する事が難しいかどうかは、何とも言えないよ。テニスよりゴルフでの方が、信じがたいような事がずっとたくさん起こりうると思う。だから僕は少しタイガー寄りかな。でもロジャーはタイガーより多く勝利を挙げているよ。

SI :アンドレ・アガシとはどのくらい頻繁に話をしますか?

サンプラス:
USオープンの後、彼と少し話をした。妻と僕は彼の基金のディナーに招待されたんだ。その場で話をして一緒に過ごした。お互いに連絡を取り合おうと約束したよ。僕たちは長く共に過ごしてきて、そして非常にうまくやってきたと思うよ。互いに妻と2人の子供がいる。人生のこの段階で、多くの共通点がある。

SI :現在、あなたとアガシは友人だと言い表しますか?

サンプラス:
そうだね。毎週のように連絡し合う訳ではないが、彼がロスに来たら、あるいは僕がラスベガスに行ったら、ちょっと会ったり子供たちを遊ばせたりするために連絡を取り合うだろうね。素晴らしいのは、メジャータイトルのために様々な事を経験し、終了して、僕たちが当時よりも良い友人になったという事だと思う。それを誇らしく感じるよ。
サンプラスの2002年USオープン優勝は、14のグランドスラム・タイトルを含む名誉の殿堂入りキャリアを締めくくった。

SI :テニスに関する思い出の品をどのくらい持っていますか?

サンプラス:
幾つかのトロフィーと、古いセント・ヴィンセントのウィルソン・ラケットを8本。そんなところだね。記録を破った時の、ウインブルドンのネットを持っている。でもそれは物置にある(笑)。

SI :ウェブサイト上で奥さん(女優ブリジット・ウィルソン - サンプラス)のページを見た事がありますか?

サンプラス:
もちろん。グーグル検索もしたよ。

SI :それは結婚の前、それとも後?

サンプラス:
後だよ(笑)。

SI :1試合のために、歴史上の選手の誰かから借りてみたい1ストロークは?

サンプラス:
ゴラン・イワニセビッチのサーブはどうかな? 芝生でね。かなり手強かったよ

SI :1日だけ他の運動選手になれるとしたら、誰を選びますか? その理由は?

サンプラス:
もし誰かを選べるとしたら、1998年 NBA ファイナルの第6試合、対ユタ戦で、土壇場のシュートを放ったマイケル・ジョーダンだね。素晴らしい瞬間だった。しかも彼はそれを(敵地)ユタでやったんだ。だからいっそう快かったよ。

SI :近頃の典型的な1日はどんな風ですか?

サンプラス:
7時か8時頃に起きて、子供たちが幼稚園へ行く前に、一緒に過ごす。そして10時から11時までジムへ行き、ウェイトを挙げたり走ったりする。正午から4時か5時までゴルフをする事もある。それから帰宅して、子供たちが寝る前に、一緒に数時間を過ごす。それが言わば典型的な1日だね。でも週に3日、1時30分から3時頃までテニスボールを打つ。週に2度バスケットボールをする。自宅にバスケットのリングがあるので、仲間8人で4オン4をするんだ。いいトレーニングになるよ。そして週に1度、自宅でポーカーをする。子供と一緒に多くの時間を過ごすよ。上の息子を昼食に連れていくのが楽しみなんだ。ビバリーヒルズに行って昼食を取り、一緒に過ごす。

SI :あなたは7月に名誉の殿堂入りします。スピーチの準備を始めましたか?

サンプラス:
まだ始めていないが、漠然としたもの、何を言いたいかについては考えている。僕としては、自分をここまで導いてくれた皆への感謝とでもいうものだね。自分のテニス、様々なコーチ、家族と妻への気持ちについて話す。公に何かを書き記したりはしてこなかったが、テニスは自分にとって何を意味したか、そして僕がどのようにテニスを受け止めていたか話したい。

SI :どのくらい長くなりますか?

サンプラス:
好きなだけ。5〜10分だろうね。

SI :短いようですが。

サンプラス:
ジミー・コナーズは5〜10分で、マッケンローは40分だったと聞いたよ。40分はちょっと長いね。僕は短くて感じの良いものにしたい。幾つかの重要なポイントを強調できるようにね。

SI :あなたと奥さんは、 SI スウィムスーツ特集号への登場を考えるでしょうか?

サンプラス:
さあね。多分それはないと思うよ(笑)。

SI :あなたはロジャーがフレンチ・オープンで優勝すると考えていますね。その勝利は、彼のキャリアにとって何を意味するでしょう?

サンプラス:
完全なものとなるだろう。今が完全じゃないという訳ではないが。だが彼はクレーで生まれ育った。僕がクレーと出会った時は、子供がドレミを習う感じだった。僕には縁遠いものだったよ。彼のゲームはかなりクレーに合っていると思う。だからそれは時間の問題だろう。現在は10年前よりも、優れたクレーコート・プレーヤーがたくさんいるから、厳しくはある。僕の時のように骨の折れる事ではあるだろうが、彼はクレー育ちだから、より快適だと思うよ。

SI :もし友人に1文であなたを表すよう頼んだら、彼らは何と言うでしょう?

サンプラス:
さり気ないユーモアのセンス、皮肉屋、初めは少し警戒心が強いが、いったん壁を崩すと友好的。

SI:ジャスティン・ギメルストブは SI.com のコラムで、今のあなたはフェデラーを除く誰とも遜色ないレベルでプレーしていると思う、と書いていました。

サンプラス:
僕たちはテニスとスポーツについて話をしていたんだ。ジェームズ・ブレイクは世界6位だが、もし彼が数カ月の準備期間をくれたら、現時点の僕が彼と試合をするのはどんな感じだろう、ってね。僕には今でもサーブがあり、ブレークするのはかなり難しいように思ったんだ。

SI :あなたは35歳――さほど年ではないですよね。

サンプラス:
その通り。今日の道具をご覧よ。例えばフェルナンド・ゴンサレスがあのラケットから得られるパワーは、途方もないものだ。ラケットは並みのプレーヤーをマシにし、素晴らしいプレーヤーをさらに良くする。それを考えるね。

SI :タイガーと一緒にゴルフをした事がありますか?

サンプラス:
いいや、ブラックジャックを何回かしただけだ。ESPN のインタビュー番組でラスベガスにいた時、僕たちはブラックジャックをして、一緒に夕食を食べたよ。

SI :あなたの家でポーカーゲームをする人の中で、読者が知っている人は?

サンプラス:
ダン・ハリントン。

SI :ダン・ハリントンですか?

サンプラス:
アクション・ダン自身だよ。彼は本当に感じの良い男で、とても頭がいいんだ。僕たちはテニスの事や、彼のポーカーの話をする。

SI :彼とゲームをするのは怖じけづきますか?

サンプラス:
賭け金を吊り上げていく時、僕はどちらかと言えば彼を避ける。彼と競り合わないようにしようとするんだけど、時々ハマっちゃうんだ。

SI :ツアーの中で最もからかいやすい愉快な人は誰でしたか?

サンプラス:
いつもティム・ヘンマンと仲良くしていたよ。僕たちは互いにからかい合っていたと言えるね。彼と親しかった。ギメルストブみたいな奴かな、僕は面白がってイヤミを言ったりしていたよ(笑)。

SI :今やあなたと奥さんは、どちらもこのQ&Aコーナーに登場しました。それは恐らく、7つのウインブルドン・タイトルに匹敵するのでは?

サンプラス:
ありがとう(笑)。クールだね。

SI :まだ会った事がなくて、会ってみたいと思う人物はいますか?

サンプラス:
どうしても会ってみたいという人はいないね。感銘を受けていた人物とついに会えたが、それはパール・ジャムのエディ・ベダーだった。僕はパール・ジャムの大ファンなんだ。コンサートの前に彼と話をするチャンスを得た。これまでの人生で、スポーツマンから俳優までいろいろな人々に出会ってきたが、彼は僕が会ってみたいと思っていた人だった。

SI :奥さんが出演した映画のタイトルを全て言えますか?

サンプラス:
今は言えるよ。付き合い始めた頃は、知らなかったのもあったけど。彼女が「Saved by the Bell」(1989年のTVシリーズ)に出ていたのも知っている。時間をくれたら、それら全てを思い出せるよ。



<おまけ>
ピートとギメルストブが1月11日、UCLAで練習していた時の写真です。
*クリックすると、大きい写真が見られます。