ESPN.com
2007年11月26日
サンプラスには今でも何かがある
文:Peter Bodo,


アジア3都市におけるエキシビション・ツアーの最終戦で、ピート・サンプラスがロジャー・フェデラーを破った(7-6[8]、6-4)事は注目を集めた。そして既に、どこかからシュプレヒコールが聞こえてくる。カムバック! カムバック! カムバック!と。

現実を直視しよう。フェデラーの支配が続く期間、テニス界に欠けているものは、堅実なストローク技能に裏打ちされた突き刺すようなサーブを持ち、対戦相手を圧倒しコントロールできる、大きく、強く、しなやかなプレーヤーである。

フェデラーのライバルのうち2人は、ほぼその条件を満たしている。マラト・サフィンとアンディ・ロディックである。しかしサフィンにはひたむきさが足らず、身体的にも頑丈でないと判明した。ロディックはあっぱれな信念を持って戦っている。しかし彼はサーブをフルに生かす、あるいは効果的な作戦を実行するだけの動きができない。

サンプラスがエキシビションで披露したやり方は、ピートの時代にいた3人のグランドスラム・チャンピオンに対しては、フェデラーも力量を誇示しなければならなかっただろうと夢想させる。ステファン・エドバーグ、ボリス・ベッカー、イワン・レンドルに対してである。私の意味する事をはっきりさせよう。ジョン・マッケンロー、ジミー・コナーズ、マッツ・ビランデル等は、ロジャーに対して見込みがあるとは思わない。

エドバーグ、ベッカー、レンドルは、現在に欠けている何かをコートにもたらした。サーブが大きな意味を持つパワーゲームで相手を圧倒するための意志、そして能力。最近フェデラーを苦しめた唯一の男はデビッド・ナルバンディアンだった。しかしそれは彼のスタイルあるいは戦略のためではなく、彼がたまたま良いタイミングでゾーンへ入ったにすぎなかった。私は「さあ、ゾーンに行くぞ!」という戦略が、いつも上手く機能するとは考えない。

これらのエキシビションでのスコアは、我々に何かを語りかける。ピートは最初の対戦では、6-4、6-3で負けた。それは緊張と、試合勘の不足によるものだろう。だがその後は、サンプラスならではのスコアだった。サンプラスほど7-6、6-4で試合に勝つ者はいなかった。彼は自分のサーブを信頼し、ブレークのチャンスが訪れるまでは、しばしばサービスを楽にキープするだけでクルージング態勢に入った(それによって対戦相手にじわじわとプレッシャーを与えていく)。かつての見慣れたピート――速い室内カーペットではブレークされない――を彷彿とさせる。実際、ピートは引退してから8〜10ポンド体重が増したので、恐らく彼のサーブはさらに重くなっただろう。

私はこのエキシビション・シリーズに、多くの意味を求めるつもりはない。2人の男は楽しみ、闘いというよりもデモンストレーションを披露しているのだ。フェデラーには得るものはなかった。ゲームに対する健全な敬意と関心を持つ良き男という、さらなる尊敬の念を得る以外には。そしてピートが挙げた勝利は、2人の偶像的グランドスラム・チャンピオンが来年早々マジソン・スクエア・ガーデンで行う予定のエキシビションを宣伝するのに、確かに役立つだろう。それはテニス界にとって素晴らしい時であると保証されたのだ。

それでも、ピートはこれらの試合で声明をしたのだ。今なおサーブ&アタックの作戦は、少なくとも速い室内カーペットでは、現在のプロの大半には成し得ないところまで行けるのだと。