スポーツ・ビジネス・ダイアリー
2007年9月21日
14回のグランドスラム優勝者ピート・サンプラスと対談する
文:Jeremy Caslin


ピート・サンプラスは、プロスポーツ界では稀と思われる事を成した。彼は泣き言を言うのではなく、大成功を収めてテニス界を去ったのだ。2002年USオープンで、相手もふさわしくアンドレ・アガシを倒して。それはサンプラスにとって5回目のUSオープン・タイトルであり、記録となった14回目のグランドスラム優勝だった。間もなくロジャー・フェデラーに追い越されると彼は承知しているが。

現在サンプラスは引退生活を、妻のブリジット、2人の息子クリスチャンとライアンと過ごせる事を楽しんでいる。再びラケットを握り、そしてアウトバック・チャンピオンズシリーズのポイント・ランキングで2位につけている。来週のシャーロット大会に先駆けて、サンプラスはスタッフ記者のジェレミー・キャスリンと対談し、ゲームへの復帰について語った。

好きなミュージシャンあるいはバンド:パール・ジャム
好きな映画:「グラディエイター」
テニス以外の好きなスポーツ:ゴルフあるいはバスケットボール
ゴルフのハンデ:
最も憧れる運動選手:マイケル・ジョーダン
休暇を過ごすお気に入りの場所:(カリフォルニア州)パーム・デザートに家がある
最高のダブルス・メンバー4人:パンチョ・ゴンザレス、ロッド・レーバー、ルー・ホード(とピート自身)


Q: 結婚して2人の幼い子供の父親になりましたが、かつてあなたは自分を「ワールドクラスの眠り屋」と表現しました。2人の子供がいて、11時間も続けて眠る事は可能でしたか?

サンプラス:
いいや、もうそういう事はないよ。そういう日々は終わった。あの頃ほど眠る必要がないし、睡眠についてそんなに神経質でもない。現在はそれほど活動していないから、たくさん眠る必要もないしね。子供たちは(午前)6時、6時半とか7時頃に起きて、遊ぶ気になっている。それで僕も起きるんだ。実際、身体が慣れてくるよ。早起きはいい事だよね。

Q: コートから、テニスから離れている時には、他にどんな事をしているのですか? もしくは何に夢中ですか?

サンプラス:
もう一度テニスを少しばかりしているが、楽しいし、僕を発奮させてくれる。ジムで時間を過ごし、体調を整えてもいる。体調がいいと、気分もいいよ。ゴルフをしたり、子供や妻と過ごし、よく家族で出掛けたりもする。週に2回バスケットボールのゲームをして、ポーカーは週に1回。だから36歳の引退生活者としては、かなり詰まったスケジュールだよ。

Q: あなたは2002年USオープンで優勝した後に引退し、明らかに競争力があった時にテニス界を去りました。あの時点で去った事に後悔はありますか?

サンプラス:
いいや。後悔はない。僕は覚悟がついていた。自分がもう一度プレーしたいと思うかどうか知るために、やってみようとした。終わった、先へ進む時だと確信するのに7〜8カ月かかった。プレーするためのあらゆる機会を自分に与えたかったが、もう僕の心にはなかった。それが、キャリアを終える時だった。

Q: 復帰してチャンピオンズシリーズで競い合う事になったきっかけは何ですか? また、これまでのところ、どう考えていますか?

サンプラス:
テニスに関しては、およそ3年間何もしなかった。テニスを見なかったし、プレーもしなかった。テニス記事を読む事もしなかった。そして引退から3年が経ち、僕は少し落ち着かない気分になっていた。それで、言わば行動を開始して、幾つかのエキシビションでプレーする事にしたんだ。プレーする事、体調を取り戻す事を楽しんだ。それからジム(クーリエ)が電話をくれて、彼のイベントで少しプレーする事をもちかけてきた。ボストンとアテネでプレーしたが、とても楽しかったよ。家庭で過ごす事も、準備すべき何かについて考える事も、体調を整える事も、外に出て年配の男たちと競う事も、みんな良かったよ。楽しかった。以前ほどのストレスはないが、僕たちはみんな良いプレーをして競い合い、ファンに素敵なショーを披露したがっていると思う。

Q: ジム・クーリエは、海外進出を含めてシリーズを拡大する余地があると語っています。あなたはもっと多くのイベントに出場したり、海外へ行く可能性はありますか?

サンプラス:
今の段階では、海外に行くのは考えにくいかな。アテネでプレーしたが、あれは特殊な事例だった。言わば状況によるね。もし適切な状況だったら考慮するだろうが、行きたいとは思っていない。その時その時だね。

Q: ある時点で、我々がアガシ - サンプラス戦をチャンピオンズシリーズで見る可能性はあると思いますか?

サンプラス:
そうなったら素晴らしいだろうね。ジムはそれを望んでいるだろうし、僕も彼と対戦するのはワクワクするだろうね。ツアーに多くの関心をもたらすだろう。再び彼と僕がコートにいるのは、かなり楽しみだろうから。彼は1年前に引退したばかりだから、まだその気にならないのだと思う。緊張を解いて、気楽にしているんだ。テニスから離れる時間が必要だ。きっと来年、または2年後くらいには、僕たちはプレーできるだろう。今でも素晴らしい好対照だ。

Q: ロジャー・フェデラーは現在、あなたの記録である14のグランドスラム・タイトルに2つ足りないだけです。それらの大会で優勝するために直面する競争の深さという点で、彼はあなたの時代と同様のプッシュを受けていると思いますか?

サンプラス:
最近の彼は、以前より少しばかりプッシュされていると思う。全体的にはかなり優れた選手がたくさんいるが、素晴らしい選手というのはあまりいないようだ。(ラファエル)ナダルと(ノバク)ジョコビッチは素晴らしい選手だ、本当にね。彼ら以外には見当たらない。だが現在の50位以内の選手たちは、僕がプレーしていた頃の50位内より優れている。だから、トップの方は少し寂しいが、全面的にはより層が厚い。彼は誰よりもとても優れている。すべてのタイミングがうまく働いている。もちろん彼は僕の記録を破るが、他の男たちも少しずつ近づいている。彼には今でも特別のギアがある。自分は誰よりも優れているという特別の信念がね。

Q: あなたは11月にクアラルンプールで、フェデラーとエキシビション・マッチを演じる予定です。もし充分に良いプレーをすれば、2008年にはウインブルドンかUSオープンに戻る気になりそうですか?

サンプラス:
いいや。それはない。

Q: 今日の男子テニスでは皆が強烈なサーブを打ちますが、あなたやジョン・マッケンロー、パトリック・ラフターのような本物のサーブ&ボレーヤーは、ほとんど見当たらないようです。アンディ・ロディックあるいは誰かビッグ・サーバーがプレーしている時に、テレビに向かって「前へ詰めて! 前へ詰めて!」と叫んだ事がありますか?

サンプラス:
イエスと言うだろうね。だが現実的にいうと、サーブ&ボレーができるようになるには、若い頃に一定の練習をする必要がある。違った動き方があるし、ネットでの感触は時間をかけて身につけていかなければならない。一夜にしてはならないよ。アンディは前に詰めようとしてきたが、彼はネットでは快適でない。サーブ&ボレーゲームが消えていくのは残念だ。今はだいたいの選手がコート後方からボールを激しく打ち、同じプレーをしている。中に入ろうとはしない。僕はコントラストが好きだ。サーブ&ボレーヤーを見るのが好きだ。それが殆どいなくなってしまったのは悲しい事だ。

Q: ダブルスをプレーするのは、ロディックにとって有意義だと思いますか?

サンプラス:
もちろん。彼にとって(サーブ&ボレーは)天成のものにはならなくても、練習になる。それに取り組み、ロジャーに対して重要な状況になった時、自信を持つためにね。ネットに出るのは、自分がそうしたいからであって、しなければならないからじゃないと感じるために。ダブルスをし、1日20分練習し、ネットで居心地良くなる事……彼はそれに否定的なようだ。あるいは心地良くないので、練習を望まないように思える。だが彼が次のレベルに到達したいのなら、毎年少しずつ何かを自分のゲームに加える必要がある。それは誰もがやろうとしている事だ。彼にもできるよ。

Q: ロディックとジェームズ・ブレイクが世界のトップ10にいるにも関わらず、合衆国の男子テニスは、あなたとアンドレの後継者を見いだす事に苦労していると言われたり書かれたりしてきました。ジュニア・テニス、あるいは選手の育成法に変更が必要だと思いますか?

サンプラス:
そうは思わない。ジェームズとアンディが世界の1位と2位でない理由への答えが、そこにあるとは思わない。それはサイクルなんだ。アメリカのテニスがそれほど支配的ではない時代もあった。そして90年代には支配的だった。今はそうでない。行きつ戻りつだ。周期的なんだと思うよ。アンドレ、僕、ジム、マイケル(チャン)は、とても稀な集団だった。かなり特殊だった。これから数年でそれを再び見いだそうとするのは難しいよ。この先ずっとないとは言わないが。