1999年11月28日
1999 ATPチャンピオンシップ / ハノーバー、ドイツ(決勝戦後)
ピート・サンプラス / アンドレ・アガシ 6-1、7-5、6-4

ピート・サンプラス記者会見



ATP ツアー:彼にとり10回目の世界選手権で、ピートは5回目の、そしてこの千年期最後の優勝を飾りました。質問を始めてください。

今週初めにアンドレは、もしこの大会で優勝しなかったら、自分がナンバー1であるとは感じないだろうと言いました。あなたは自分がナンバー1であるように感じますか?

ピート・サンプラス:僕がナンバー1だと感じるか? そうでもないよ。1年間を見れば、彼はフレンチとUSオープンで優勝し、ウインブルドンでは決勝まで行った、それは重要な事だ。

だがUSオープンの後、僕は自分が1位にならないという事実を、いわば受け入れたんだ。でも、自分のキャリアで既にそれを成してきたと感じている。僕は誰よりも長く1位の座にいた。1位でいるのはステキだよ。だが今週、僕の目標は明確に、自分が身体的にどうかを見る事で、もしここで優勝できたなら、それはボーナスだった。

今日は大試合だと感じていた。そして僕はいつも、自分が好機を生かせると信じてきた。3日前、僕は彼にかなり恥ずかしい思いをさせられた。3〜4日前にね。僕はもちろん、証明したかった――僕はまだできるってね。だから良い週だったよ。

こんな場合、私が初戦の後にした質問を言い直せば、あなたが夢見ていた以上でしたか?

ピート・サンプラス:ああ、うん。もちろんだよ。僕は今週、何を期待すべきか分からなかった。パリの後に感じていた事からいって、今日のようなプレーをする事も、こんなに素晴らしい週になる事も、予想していなかった。

だが、僕はいつも――大試合で、あるいは世界最高の選手と試合する時、自分の能力に疑問を抱いた事はないよ。そして今週、ひとたび厳しい試合を幾つかくぐり抜けたら、ひとたび週末に辿り着いたら、僕は試合に慣れていくだろうと感じていた。キーファーに対していいプレーをしたのは、今日に向けて若干の自信になった。アンドレは水曜日、僕に対してとてもいいプレーをしたが、もし彼がそれを続けたら、ただただ素晴らしかったという事だ。

でも僕は、ウインブルドンを少しばかり思い出させるようなレベルのプレーをした。いわばゾーンに入り、サーブの調子も良く、おおかた自分の望んだ事ができたよ。

ピート、あなたは椅子に座る時、どことなく用心深く見えました。まだ背中に問題があるのですか?

ピート・サンプラス:
背中を氷で冷やしているんだ。見たい?

けっこうです。(笑)

怪我で3カ月間休んで――今年を3位で終えるというのは、素晴らしい業績だと感じますか?

ピート・サンプラス:まあ、すべてを考慮に入れるとね。最後までちゃんとやれたのは8大会かそこらだけで――その内で5大会に優勝した。かなり良いパーセンテージだ。ランキングよりも今日の勝利に満足しているよ。順位はそれほど重要ではない。順位もいいが、驚くべき年を過ごしたアンドレを打ち負かした事は、本当に嬉しいよ。

2つの気分を比較できますか? 昨シーズンの終わり、あなたは疲れ切っていましたが、6年連続ナンバー1を達成しました。今シーズン、あなたは身体的な問題でプレーできませんでしたが、それでも良い終わらせ方ができました。

ピート・サンプラス:まあ、昨年と比較すると、昼と夜のように違うね。昨年はランキングの事で神経をすり減らし、できる事は何でもするって感じだった。今年はリラックスした状態で臨んだよ。大して期待していなかったし。だから、世界でベストの選手たちと対戦するにあたり、きっと臨機応変にやれると思っていた。今週、僕はだんだん良くなっていき、最後に最高の状態になれたんだ。

去年、この時点では、コレチャに厳しい試合で負けて、1位の座は得たが、消耗し尽くし、非常に疲れていた。今年は、試合数が少なかったし、とてもフレッシュな気分で今日の試合に臨んだよ。第3セットでのアンドレのボディ・ランゲージからすると、彼は多くの試合を戦ってきて、恐らく精神的に少しそれを感じていたのかも知れないね。彼はとても良いプレーをしてきたが、今日は、彼と同じくらい良いプレーをする者に出くわしたんだ。

第2セットで4-1から彼を止めたのは、どれくらい重要でしたか? 第2セットの始め、あなたはサービスのリズムを失ったように見えました。

ピート・サンプラス:
そうだったね。10分かそこらリズムを失い、2回ダブルフォールトを犯して、彼にブレークを与えてしまった。いわば彼を試合に引き戻してしまったんだ。アンドレを試合に引き戻し、若干の自信を与えてしまうと、彼は相手をいわば押し切る事ができるんだよ。だが僕はまだ上手くボールを打っていると感じていた。ほんの少しスローダウンして、自分のペースでプレーする必要があった。僕がブレークバックしたら、彼は1分かそこらで勢いを失った。

第2セットの後、僕をブレークし、そして試合に勝つためには、彼は懸命に戦わなければならないのだと感じた。だから第3セットでは良い気分だったよ。

今日の見事なプレーぶりには、自分でも驚きましたか?

ピート・サンプラス:
まあ、何も――いや、そうでもない――まあ、満足しているよ。でも驚いてはいない。つまり、今までもそうしてきたよ。大舞台の決勝戦で、ベストの選手と対戦してきた。そして、大勢の観客の中を、彼と一緒にコートへ向かうんだ。僕はやる気満々で、戦う準備ができていたよ。

昨日の勝利は助けになったね。キーファーと試合をして、ラペンティとの試合に比べると自分のタイミングを取り戻していて、僕は少しばかり自信を持ってこの試合に臨んだよ。

彼はいつも、僕のベストを引き出してくれるんだ。僕の調子が上がらないと――水曜日の結果になった。でも今日は、すべてが上手くいった。

結局のところ、彼に対して最初の試合で負けたのが有利に働いたと思いますか?

ピート・サンプラス:
それが有利に働いたとは思わないよ。むしろ不利に働いた。彼は僕を2、2でやっつけたんだからね。僕にはいい感じじゃなかったよ。

だが、6日間でトップ8の選手を5人倒すのは難しい。ここで優勝した選手は皆、1試合は落としていたんじゃないかな。つまり、こういう事だ――あのレベルで5〜6日間連続してプレーするのは難しいんだ。でも、僕は最後のためにベストを確保しておかなければならなかった。

ピート、あなたの回復についてアンドレが水曜日に語った事を考慮すると、彼は過去に鑑みて、あなたが決勝にいても驚かないと承知していました。怪我からカムバックして、ほんの少ししか試合をこなしていなくても。その帽子には「レイカーズ」と書かれているのですか? それとも「ラザロ」?
訳注:ラザロ。イエスが死から甦らせた男。レイカーズ。NBAの「ロサンジェルス・レイカーズ」。ピートご贔屓のチーム。

ピート・サンプラス:「レイカーズ」だよ。(笑)

背中を痛めた後、USオープンでの感情的な記者会見では、あなたは非常に哲学的でした。物事が起きるのには理由があり、それを後に考えてみるとあなたは言いました。(答えを)見つけ出しましたか?

ピート・サンプラス:
まあ、そうだね。家で家族と過ごす時間を持てたが、良かったよ。さらに何かあるとすれば、自分の健康をありがたいと感じた。健康でなくては、プレーできないからね。

USオープンの後、感情的にすごく揺らいだよ。僕は心が乱れて、こんな状態が1年くらい続くんじゃないかと感じた。感情的な問題だと、解決策を見つけるのは難しい。

2カ月もの間、毎日治療を受けにいった。そうしなければならなかったんだ。そして、今後2〜3年のキャリアについえ考えたよ。デビスカップにもう少し参加したいとも。自分のしてきた事を振り返る時間を持てた。今までは、たくさんプレーはしてきたが、オフシーズンが短くて、そういう事はできなかったからね。

それと、少しばかり楽しんだよ。余暇を楽しんだ。今までした事がなかった事をした。テニスとトレーニングに集中するだけじゃなくて、何年もしてこなかった他の事をしたんだ。

シーズン最後の決勝戦で、アンドレをストレートで破って優勝しましたが、それは彼にある種のメッセージを送った事になりますか? 「オーケー、君は今シーズンの1位かも知れないが、僕は今でも世界最高の選手だよ」といったような。

ピート・サンプラス:
僕たちは一日じゅう、それについて議論できるだろうね。グランドスラムを見れば、彼はより堅実だったし、僕より多くプレーした。だからランキングに関しては、彼は1位で当然だと思う。2つのスラム大会で優勝し、準優勝が1回、そんな事はあまりないよ。

もしかしたら、今日の結果は彼へのメッセージになったかも知れない。僕はそうは見ていないけれどね。アンドレへの個人的なものだとか、メッセージだとかとは考えていない。僕たちは少し休んで、オーストラリアに向けて準備をし、そしてプレーするだけだ。

メッセージではないが、とにかく僕は最高のプレーをしたという事だよ。

この優勝は、オーストラリアに向けての後押しになりますか?

ピート・サンプラス:
まあ、気候や何かに関しては、夜と昼ほどの違いがあるよ。まだ随分と先だ。でも、僕は最後までやり通せる、僕はやれる、という背中に関して身体的な自信に繋がる。

僕はまだこのゲームをできる。それを疑った事はない。だが……今日のようなレベルでプレーするのは予想がつかない。

だから自信を持つ助けにはなるが、オーストラリアに向けて、再びエネルギーをチャージし、体調を整える時間はたっぷりあるよ。そして――だが確かに、クリスマスの買い物に使うお金は、もう少し余分に入ってくるね。(笑)

先日、現在のあなたの身体に必要な事について話をしました。背中のために、何かトレーニング方法などを変えるのですか?

ピート・サンプラス:
いいや。これまでと同じ方法でやっていくよ。背中のエクササイズはもう少し増やさなければならないが。背中の筋力を維持しながら、週に3〜4回トレーニングする。コンディション調整、ウェイト・トレーニング、ランニングなど、全体的にはこれまとほぼ同じになるよ。

新しいランキング・システムについては、どう思いますか? プロテニス・ツアーにどんな影響があるでしょうか?

ピート・サンプラス:
システムが簡素化されて、いいと思うよ。皆がゼロから始めて1年間プレーし、最も多くポイントを稼ぐ者がナンバー1プレーヤーという訳だ。これまでは1位の選手がしょっちゅう入れ替わったりして、少し紛らわしかったが、これからはレースという感じになる。そして、誰にでも分かりやすくなるだろう。僕は気に入っているよ。次の質問に行こう。

ピート、シーズンは終わりますが、デビスカップ決勝戦があります。どちらが勝つか、賭けますか?

ピート・サンプラス:
賭けないよ。あなたには贔屓の国があるのかな?(笑)アクセントからすると、恐らくフランスを応援しているんだね。(笑)

あなたの意見を聞かせてください。

ピート・サンプラス:
誰がプレーするの? つまり、決勝では誰がプレーするの?

フィリポウシス、ヒューイット、ピオリーン……。

ピート・サンプラス:
僕はのんびり休暇を楽しみ、そして……他の男たちが雌雄を決するのさ。(笑)

あなたは直接メルボルンに行きますか? それともクーヨンでプレーしますか?

ピート・サンプラス:
うん、クーヨンでプレーする筈だよ。

今日のアンドレのゲームについて、どう思いますか?

ピート・サンプラス:
そうだね、僕は早い段階で彼より優位に立ったと感じた。彼のリズムに入り込むチャンスを与えなかった。彼にリードを許し、自信を与えると、水曜日のような事が起こる。(今日)彼はあまり良いサーブを打たなかったし、少しばかり調子が下がっていたようだね。

ここまで彼がとても良いプレーをしてきて、多分ちょっと壁にぶつかったような気になった事、そして僕は今週でベストのプレーをした事、そういった事の組み合わせで、今日の結果、ストレートの勝利になったのだろう。