1999年7月17日
デビスカップ準々決勝 対オーストラリア / ボストン
合衆国ダブルスチーム記者会見


ピート、第5セットの第8ゲームは見事でした。あのゲームについては、いくらでも話ができます。あのゲームの間、どんな事が心をよぎりましたか? ついにブレークを果たした訳ですが。

ピート・サンプラス:
正直言うと、ぼんやりしている感じだ。何が起こったのか、正確にはよく覚えてないんだ。

アレックス・オブライエン:ここは暑いんだと思う。ピートはブレークするのに素晴らしいゲームをしたよ。

サンプラス:あのポイントの時、多分マーク(ウッドフォード)は少し硬くなったんだと思う。彼は2回もダブルフォールトをしたんだからね。サービング・フォー・マッチで30-15の時は、僕は喜びで飛び上がっているようなものだった。彼の頭をたたき落とさんばかりだったね。

あのプレーは……

サンプラス:
ちょっと我を忘れたよ。

ガリクソン監督:彼はダブルスをしている事を忘れたんだよ。

サンプラス:あそこでストリングスを切ったんだ。そしてブレークポイントになった。ダブルスは2ポイントくらいが問題なんだ。もし僕たちがあのゲームを落としていたら、試合は完全に終わっていた。それを撥ね除けたんだ。とても厳しかった。

今日の日中はとても、とても暑かった。二人ともそれを感じていて、第3・4セットの前半では、その事を話していた。僕たちは暑さのため、精神的に少し疲れていたが、くじけまいと頑張ったんだ。そしてガリーは第5セットで、インスピレーションを与えてくれた。

僕たちに必要なのは1ブレークで、それを得たんだ。甘い勝利だよ。観客の力は途方もなく大きかった。観客は100%僕たちの味方だった。素晴らしい雰囲気で、それが全てだったよ。

(聞き取り不能)

ガリクソン監督:金曜日、トッド(マーチン)はレイトン(ヒューイット)に対してかなり苦戦したが、彼は本当に暑さを感じていた。ジム(クーリエ)がプレーしていた時は、そこまで暑くなかったので、少しはマシだった。だが、思うに選手はみんな約1カ月間イングランドにいて、それからここに来てこの暑さだ。しかも4日前は(華氏)63度(摂氏約17度)だった。我々としては、週末もそうであってほしかったが、全てのプレーヤーにとって厳しい暑さだ。もちろんオーストラリア選手も含めて。

その2人のうち、ジムかトッドは今日、医者に診てもらうのですか?

ガリクソン監督:
我々にはチーム・ドクターがいるが、彼はチームの全選手に気を付けている。

フィットネスの問題は、医者に診てもらうよう彼に頼んでいるほどの関心事なのですか?

ガリクソン監督:
もちろん、それは常に関心事だ。だが我々にはチーム・ドクターがいて、彼は監督を含めて全員をチェックしている。

サンプラス:彼は必要なんだ、本当だよ。

ピートが明日プレーするかもしれないという話は?

ガリクソン監督:可能性としてはある。

なぜ可能性としてあるのですか?

ガリクソン監督:選手によっては100%のコンディションという訳ではないからだ。

トッドは100%ではないのですか?

ガリクソン監督:
今のところ私が言えるのはそれだけだ。

それはこの時点では、あなたにとって少し皮肉に思えませんか?

ガリクソン監督:いいや、そんな事はない。

オブライエン:皮肉という言葉は、ふさわしくないと思う。

アレックス、ふさわしい言葉は何ですか?

オブライエン:そうだな、つまり、それは選択にすぎない。

デビスカップの規則は……

ガリクソン監督:我々は規則を知っている。あなたが規則を引用しなくてもいいよ。

ピート、あなたはどう考えていますか?

サンプラス:僕はここにいられて、ただ嬉しいよ。(笑)まず僕に言わせてくれ。僕はトムという人を知っている。そして、新聞や何かを読んで、あなたたちが彼に対して厳しい論調なのも承知している。だが僕が今週ここにいる唯一の理由は、トムのためなんだ。

何年もの彼と僕との関係が、僕がここにいる理由だ。そして、将来もっとデビスカップでプレーしたいと望んでいるからだけでなく、この5〜6年、共にくぐり抜けてきた事ゆえに、僕はトム・ガリクソンのために、ただプレーするつもりでいる。

ピート、あなたは明日プレーする事も辞さないですか?

サンプラス:まあ、それは我々がこれから話し合う問題だ。今日は暑い日だったが、僕は試合の後、かなり順調に回復したと思うよ。誰にでも出番の可能性がある状態だろう。

マークは、今日あなたがダブルスをするのは、それほど容易くはないだろうと思っていたようですよ。昨日トムは、あなたを軽んじるのはいささか馬鹿げた事だと言いました。(マークの)発言は、発奮材料になりましたか?

サンプラス:もちろん。つまり、確かに僕はあまりダブルスをしないが、同じテニスだ。マークは偉大なダブルス・プレーヤーだ。だがデビスカップでプレーするという状況に関しては、僕にも過去に経験がある。初めての試合に臨むのはそれほど簡単な事じゃないが、我々はとても上手く対処したと思うよ。

アレックスと僕は過去に組んだ事はなくて、ほんの少し練習した事があるだけだ。だが、プレーする時はほとんど問題にならない。けっこうだよ、少しばかりの動機づけは、害にはならないね。

初めてこの男とプレーしてみて、どうでしたか?

オブライエン:そりゃ、史上最も偉大であろう選手と一緒にプレーするチャンスを得るのは、スリルを感じるよ。僕は明らかに少し神経質になっていた。出だしはとてもナーバスだった。第3・4セットで少し神経がピリピリした時、いささか気分が悪くなったが、彼と一緒にプレーするのは素晴らしいよ。彼はレベルを上げる事ができ、本当に試合をものにしたいと決めた時のレベルは驚くべきものだ。彼とコートにいるのは、とても楽しかったよ。

ピート、第3・4セットで、あなたがとても疲れて、元気がないように見えた時、立ち直れないと口に出すか、あるいはそう考えた瞬間は……

サンプラス:
最初の2セットは勢いもあったし、観客も盛り上がっていたと思う。第3セットでブレークされた時、風向きが……、我々はいわば……風船がちょっと破裂したような感じだった。それに暑かった。あの暑さの中で、ダブルスの名手に対して3時間も猛烈さを維持するのは大変だよ。

だが、さっき言ったように、第4セットが終わった時点では2セット・オールだった。そして第5セットでは、ガリーが我々にインスピレーションを与えてくれた。お前たちに必要なのはブレークする事、そしてこの2ゲームを死にものぐるいでプレーしろと、彼は言ったんだ。そして僕たちはそうした。

それは起こった。僕たちは幸運にも、必要とするブレークを得られたんだ。だが、暑かった。君たちは見ていたが、僕たちはプレーしていたんだよ。少しばかり焦げ付くようだった。

第5セットの2番目のポイントでスマッシュした際、第5セット第1ゲームの事ですが、あなた自身が叫んでいる事に気付きましたか? あなたはのめり込んでいました。何度、自分がそのような事をしていると気付きましたか?

ガリクソン監督:
時にもよるが、あの時点では、我々は我々自身に少しばかりガッカリしていた。だから屋根までも飛び乗って叫び、死ぬつもりはないという事を相手に知らしめた瞬間だった。

そして今日のような試合の第5セットでは、持てる全てをつぎ込まなければならないのだ。あの時点では、叫んだのはそれほど重大な事ではなかった。だが、彼らへメッセージを送った事になったかもしれない。我々はまだ……我々は戦うつもりだし、最後まで戦うと。そして我々はそうしたのだ。

あの第5セット第8ゲームで、マークがダブルフォールトを3回犯したのを見て、どれほど驚きましたか?

サンプラス:
まあ、少し……あそこは緊張する場面だった、間違いなく。マークが何度そういう立場に立った事があるかは問題じゃない。彼はダブルスでたくさんのグランドスラム優勝を遂げてきた。だが第5セットでプレーしている時には、緊張を感じるものなんだ。それが誰であろうと、何回グランドスラムで優勝しようと、関係ない。少し驚いているが、あそこはとても緊張する場面だったから、それが表れたんだ。

ピート、確かにあなたはキャリアの中で、いくつかダブルスの大試合を経験しています。しかし本格的にプレーはしていません。ダブルスのプレーに順応する際、最も難しい事は何ですか?

サンプラス:僕にとってはサービスリターンと、ネットでの動きだね。少しだけ違うんだ。サーブとボレーは、かなりすっきりしたものだ。だが今日は、僕のリターンはちょっと安定していなかったと思う。

それは……それはシングルスで、あるリズムに入り込むのとは違う。かなり速くて、気を引き締めていなければならない。不注意なエラーはできないんだ。けれども、先ほど言ったように、それでもテニスだ。いわば自分の位置を見いだすのに少し時間がかかるだけだ。そして僕たちは今週、かなり良い練習をしてきたから、本当に強いという結果になったんだよ。

第5セット第8ゲームでは、あなたは途轍もないサービスリターンでゲームポイントをしのぎました。そして実際のゲームポイントは、あなたの素晴らしいショットによるものでした。それについて話してください。

オブライエン:僕は、自分の良いショットを覚えているのが苦手なんだよね。悪い方のを覚えている傾向がある。だが、そう、僕は……もし僕があの場面をしのいで、彼にもう一度チャンスを与えられれば、と考えていただけだよ。つまり、彼はサーブするだけでも、相手に大きなプレッシャーをかけていたからね。基本的には、もう一度チャンスを得ようとしていただけだ。幸いにも、そうできた。我々はあのゲームで、ついにブレークしたんだからね。

それから、あのロブは、 サンドン(ストール)は前後の動きが抜群という訳ではないから、僕はただ彼の頭上を越えるロブを打ったんだ。そして彼がバックハンドを外した時、僕は恐らく世界じゅうで最高に幸せな男だったよ。特に、次は彼のサーブだったからね。

ピート、あなたは3カ月間ずっと、シングルスはプレーしないと言ってきました。今、何が変化してきましたか?

サンプラス:
まあ、我々はまだ生き延びているって事で、みんな幸せな気持ちでここにいると思うよ。正直になろう。僕はこの3カ月間、そう言ってきた。今のところ、我々は追い詰められている。僕たちは今晩その事を話し合い、そこからだ。

だが、それは非常にデリケートな話題だ。つまり、僕がシングルスに出ない事について、トムはずっとメディアに叩かれてきたが、それは妥当ではない。それは僕の選択だった。僕は最初からずっと、ここでシングルスに出るつもりはないと言ってきた。そしてトムがいるから、僕はここにいるんだ。僕がここにいたいからだ。彼との関係が、僕が将来もデビスカップに出場する理由だよ。

(規則変更に関して)

ガリクソン監督 :それは実際に変わってきた。我々デビスカップ・ワールドグループの監督たちは、全てのグランドスラム大会で非公式の会合を持ち、フォーマットや規則、スタッフなどについて話をしてきたと思う。

事実上、全監督が良い規則だと考えた1つは、使いたいどんな選手でも、プレーが可能であるべきだという事だ。来年は現実になる。今年は、それは規則にない。だが、良い変更だったと思う。試合をよりエキサイティングにするだろうし、他のスポーツのように、監督やコーチにもっと多くのオプションを与える事になるだろう。

ドロー発表前のどこかの時点で、ピート、トムはあなたにシングルスをプレーするか尋ねましたか?

サンプラス:まあ、話はした。そしてトム、ジム、トッドと、僕がチームの一員になる事について話し合いをした。僕はただ居心地悪く感じていた。…… バーミンガムで起きた事の後に僕がシングルスをプレーするのは、正当だとは思わなかった。彼らの出番だと思ったし、我々がここにいるのは彼らのおかげだよ。

この数カ月間ずっと、僕はシングルスをプレーしないと言ってきた。ここに座って嘘をついたりしなかった。ここではダブルスに出ると言っておいて、前言を翻してシングルスに出ようとなんてしていなかった。自分の主張通りにした。この週末に勝とうが負けようが、これが我々のチームだ。

とはいっても、トムはあなたに尋ねましたか?

サンプラス:話し合ったよ、うん。そりゃ、トムは僕にシングルスをプレーしてほしいだろう。でも僕は、それが正しい事だとは思えなかったんだ。くたくたになるまで、後知恵で批判する事はできる。しかし基本は、我々は1勝2敗で負けている、そして明日は2試合あるという事だ。考えておこう。

もしトッドの具合が良くなかったら、あなたはプレーするでしょうか?

サンプラス:きっとね。もしトッドの体調が、普段より悪かったらね。

トム、皮肉は置くとして、もしトッドがそう言うなら、誰がそれを伝えなくてはならないのですか? 言い換えれば、それは ITF(国際テニス連盟)の医師に保証されなければならないのですか?

ガリクソン監督:中立の立場の医師がいて、怪我や病気などを抱えている者は誰でも、その人が診察しなければならないのだ。そして中立の医師がそれを公認すると、代理を立てる事ができる。

中立の立場の医師ですか?

ガリクソン監督:そうだ。

あの時のあなたのサービスゲームについて、話してもらえますか。4つのブレークポイントをしのぐために、どれくらい大きな自信の後押しがあったのですか?

オブライエン:試合を始める時には、特にデビスカップでは、緊張感があると思う。ピート以外の男たちは、最初のサービスゲームでは苦労するんだ。僕はただ自分に言い聞かせる。踏み止まって、緊張を払いのけろとね。最初の緊張感を払いのけ、試合に入り込む事ができるかどうかは、重要な事柄だと思う。ひとたび試合に入り込んだら、僕はかなり気楽になったよ。

ピート、あなたのサーブの1本は、時速149マイル(約238キロ)と計測されました。我々の何人かは笑ってしまったのですが、あれは正確だったんでしょうかね?

サンプラス:正確だった。信じてよ、正しかったさ。(笑)

ガリーのコーチング・スタイルについても話してくれますか。精神面とか、戦略とか、あるいは?

サンプラス:第4セットでは、彼は「お前たちは何をやってるんだ、配管工みたいだぞ」って感じだったよ。

ガリクソン監督:配管工へ悪気はないよ。

サンプラス:あの時点では、複雑な戦略はたくさんないよ。第5セットでは、むしろインスピレーションだ。もっと必死に頑張り抜くんだ。そしてただ……レベルを上げる、それが全てだ。勝利するか、家に帰るかだ。そして……でも、ないね、そんなに話さない。

僕たちは水分を摂る事やタオルや、可能な限り冷静でいようとする事を、より気に懸けていた。確かに……ガリーの立場に立つと、暑さの中であそこに座り、僕たちが苦労しているのを見守るのは、少しばかり消耗する事だ。だが我々はやり遂げた。まだ生き残っている。

いったいぜんたい、あなたのスラムダンク・オーバーヘッドに、我々はどれくらい感情的な飛躍を見ていたのでしょうか?

サンプラス:この白人の少年はジャンプできるんだよ。

デビスカップだという感情はどれくらい?

サンプラス:場面と雰囲気と人々が、僕をやる気満々にしてくれた。僕自身とアレックスだけじゃない。それに、あれは僕の好きなショットなんだ。あれを打つのが好きなんだ、観客が喜んでくれるから。あれを打つのが好きなんだよ。

いわば対戦相手へメッセージを送るんだ。我々は上手くやっていると。それに、あのショットを打つのが好きだ。打つのが楽しいショットなんだ。もしミスをすると、ちょっと愚かにも見えかねないが、幸いにも今日は、2つばかり良いのを打ったよ。

トム、トッドは今日、特に何が不安だったのですか? 彼の病気は何ですか?

ガリクソン監督:トッドは今年ずっと、医学上の驚異と言えた。彼は1月以降、緊張状態にある……競い合った試合をし、ツアーでも3〜4番目の結果を出しているか、リハビリを受けているかだ。この1年ずっと、必ずしも体調が良くなかったのに、いくつかの試合に勝利できている。だから、彼にはいろいろな問題があるのだ




記者団の中にはアメリカ人、オーストラリア人双方がいたのでしょうが、どの質問を誰がしたのかは分かりません。ピートがシングルスに出場するかどうかについては、恐らくオーストラリア側からの(牽制の意味を込めた)質問が多かったのではないかと思われます。本当にしつこい!(笑)

アレックス・オブライエンは、ピートの結婚パーティーにも出席していたし、引退後も一緒にポーカーやバスケットボールなどを楽しんでいるようです。この記者会見の発言でも、さっぱりとした気性が伺え、家が近いという事もあるでしょうが、ピートはこういうタイプの人と馬が合うんだろうなぁと感じます。