1999年7月15日
デビスカップ・サイト
デビスカップ準々決勝 対オーストラリア / ボストン
合衆国チーム記者会見


チームの選択はどうなりましたか? どのように決定しましたか?

ガリクソン監督:ふむ、バーミンガムの後、ピートが私に電話をしてきて、自分をチームで使ってもらえるようにしたいと言ったんだ。だが、ダブルスだけに出たいと望んでいた。ジムとトッドがシングルスに出場して当然だと、彼は強く感じていた。彼らが対イギリス戦でした事のためだけでなく、過去数年にわたってデビスカップへ示してきた献身ゆえにだ。彼らがシングルをプレーするべきで、自分はチームに加わってダブルスに貢献したいと強く望んでいた。

様々な大会での記者会見の記録を見れば、この2カ月間、それは断固として一貫したテーマだったと分かる。今、きっとピートも同じように考えていると話すだろうね。基本的にはそういう事だ。

監督として、ピートにシングルスをプレーするよう説得を試みなかったのですか?

ガリクソン監督:その事は話し合った。ピートと私は個人的に話をした。我々はおよそ3夜前にチーム・ミーティングを開き、幾つかのオプションを検討した。そしてこれが、到達した結論だった。

しかし、絶対的な古今最高の選手を外すというのは、非常に難しい事でしたか?

ガリクソン監督:彼はプレーするのだから、外してはいないよ。

シングルスからという意味です。

ガリクソン監督:いずれにせよ、彼は少しばかりダブルスに取り組む必要があった。彼は今年、ダブルスではあまり上手くいってなかった。それで……。

決定はあなたの決断ですか、それとも皆で決めたのですか?

ガリクソン監督:皆の総意だ。全員がそれぞれ考えを持っていた。そして、導き出された結論があれだ。皆が意見を出し合った。自分がどう考えているか、皆が私に語ってくれた。ここにいる男たちは、皆とても成熟した大人だ。若造ではない。彼らは若いだけでなく、今や大人でもある。そしてこの結論が導き出されたのだ。

ジム、あなたはドローについて、どんな事を考えていますか? どう感じていますか?

ジム・クーリエ:ドローは申し分ないと思うよ。明日、トッドと僕はプレーするつもりだ。今日は、誰がまずプレーするかを知る手続きにすぎない。我々は共に、明日は用意ができているだろう。

我々は長いことこういう事をしてきた。君たちにとっては、あれこれ仮説を立てて憶測するのは面白いだろう。だが我々は、自分たちがプレーしているのだとお互いに承知している。だから、僕は自分が準備できていると分かっているし、もちろんトッドも同じように感じているよ。

再び第5試合でプレーする役になって、嬉しいですか?

クーリエ:No. 2プレーヤーは常に、第5試合を任される運命だ。僕が自分の順位を上げない限り、しばらくは第5試合の任に就いているだろうね。(笑)

あなたは、ピートがシングルスをプレーできるよう、喜んで自分の出番を提供するだろうと言った事がありました。その事を再考しましたか、それとも…?

トッド・マーチン:
僕は実際には……、もし言ったとしても、「自分の出番を提供する」と言ったつもりはない。我々は最も良いチームを作り上げるべきだと思う、と言ったのだ。

あなたが言っているのは、ピートがチームの一員であるという前提での話だと思う。僕は、単に自分の立場の話だと考えていた。もしガリーが僕をチームの一員に選ばないとしても、それはそれで満足だと感じていたんだ。だが明らかに、我々はほぼ全員がとても満足のいく結論に達した。そしてその大部分を成功させるだろう。

ピート、シングルをプレーするという誘惑を避けるのは厳しかったですか? なぜなら、あなたはこれまで……。

ピート・サンプラス:うむ、まず最初に、今週ここにいる事について、僕はとても気にしていると言おう。ジムとトッドがイギリスで成した事の後で、僕が最もしたくなかったのは、チームに現れて時流に乗っかる事だった。それが、過去2カ月の間、僕はダブルスだけに出るつもりだと言ってきた理由だ。

ジムとトッドはシングルスをプレーして当然だ。彼らは今年だけでなく、過去2年間、デビスカップへの献身を示してきたんだ。僕は同じ立場じゃない。僕は自分がチームに、いわば途中からやって来て、そしてシングルスをプレーするのが正当だとは思わなかった。僕はただ居心地悪く感じていた。2カ月前も居心地が良くなかった。1カ月前も。今も落ち着かない。

ジムとトッドが僕をチームの一員にしてくれただけで、充分にありがたい。僕たちはバーミンガムの後に、愉快な話を少しばかりしたんだ。僕はここにいられて嬉しいよ。

ピート、最近どれくらいダブルスをしてきましたか? 門外漢として、どのように適応しなければなりませんか?

サンプラス:
まあ、今年はあまりダブルスをしていない。でも、以前にもデビスカップでダブルスをしてきたよ。とにかく同じスポーツだ。ライン内側にコントロールし、ビッグサーブを打ち、いいリターンをする事。

今週アレックスと一緒に大いに練習して、僕たちはかなり良い感触を得ていると思う。それに、僕はけっこうなダブルスができる、できると知っているよ。だから、僕たちは用意ができているつもりだ。

この2日間、トム、あるいは他の選手たちの誰かが、あなたがシングルスをプレーしても問題ないと納得させようとしましたか?

サンプラス:さっき言ったばかりだけど、イギリスで起きた事の後に時流に乗って、そしてここで旗持ちになるのは居心地が良くなかったんだ。トッドのショーであり、ジムのショーだ。彼らはイギリスで信じ難いようなタイに勝った。僕がここに来てシングルスをプレーするのは、正当だったとは思わない。

そうする事に居心地が良くなかったんだ。その事をみんなに話した。だが、その話はもういいよ。我々は今、プレーする必要があると思う。僕は今シングルスをプレーしていない。そしてトッドは素晴らしい年を送ってきた。ジムも素晴らしい年を送ってきた。そして我々は簡単には負かされないつもりだ。

もしチームが勝ち進んだら、次のラウンドでシングルスをプレーするのは問題ないでしょうか?

サンプラス:うん。もし勝ち進むなら、そうだね、僕はトッドやジムやその他の人達に、デビスカップへの献身を示してきたと考えるだろう。この週末がどうなるか、注目しよう。

座ってシングルスの試合を観戦するのは、どのくらい辛いでしょうか? 特に、あなたと少しばかりライバル関係のあったラフターの試合は?

サンプラス:まあ、僕はここへ、ダブルスだけをするつもりで来たからね。過去2カ月間、そんな風に考えていたよ。1992年もそうだった。優勝した時、僕はダブルスだけをプレーしたんだ。僕はチームのためにここにいる。仲間をサポートし、声援するためにここにいるんだ。それがデビスカップというものだよ。

パット・ラフターがいる事は、あなたにとってモチベーションを付け加えるものではなかったのですか?

サンプラス:僕は過去2年間にわたってパットと対戦してきたし、もちろん、我々の試合は申し分ないものだった。だが、質問の答はノーだね。つまり、それは要因になっていない。

トム、大会の前に週などに、ピートがシングルスでプレーするという事を真剣に考慮しましたか? あなたにとって、それは重大な選択肢でしたか?

ガリクソン監督 :まあ、それほど考えなかったね。これが結論であると、みんな理解していると思う。我々は、より試合に関連のある他の質問に移るべきだと思うね。

ジム、トッド、最終シングルス試合に関してコメントできますか? もし最終試合までもつれたら、その事をどれくらい楽しみますか? もし誰が最終試合をするか決めるとしたら……(聞き取り不能)?

クーリエ:クレイグ(恐らくガブリエル、記者)、もちろん話せるよ。人によって、ゲームの最後にボールを持ちたがる者もいれば、そうでない者もいる。僕はゲームの終わりにボールを持っていたいな。いずれにせよ、僕は何らかの方式の管理下にある。

これは現在の形式の1つだ。かつては No. 1と No. 2は、誰が第5試合をするか見抜くために、ドロー・セレモニーで入れ替わったりしたものだった。現在は常に No. 1対 No. 1よりも、どちらかと言うと、No. 2対 No. 2が対戦している。それはとても残念だね。

だが、それが今の方式であり、コンピュータ・ランキングの方式だ。僕が第5試合の任を受け持ち、ほぼ間違いなくシングルスをプレーするつもりだが、それを望んでいるよ。大博打を打つのを楽しむんだ。僕は長いことプレーしてきたが、普通の大会で1回戦を戦うよりも、そういう試合の方がよりエキサイトするね。

トッド、あなたはどれほど……(聞き取り不能)馴染んでいるか、話してくれますか?

クーリエ:
僕が最初に答えよう。パットとはしばらくプレーしていない。だが、彼と対戦した試合では、なかなか良い結果を収めているよ。レイトンとは一度も対戦がないから、彼についてはあまり分からないな。

マーチン:今年1回レイトンと対戦し、接戦の末に僕が勝った。パトリックとは恐らく8回くらい接戦を演じてきて、彼の方が2勝くらい上回っているかな。

遅れて申し訳ありません。ピートへの質問は、恐らく全てなされたでしょうが、パット・ラフターと話したところ、オーストラリア・チームの一般的な感情としては、彼らは今でもあなたがシングルスをプレーしないのを驚いているそうですよ。

クーリエ:
それは、まだ質問されてなかったな。尋ねてくれて嬉しいよ。(笑)

サンプラス:もう一度言おう。イギリスで起きた事の後、過去2カ月間、僕はダブルスをプレーするつもりだった。この部屋の誰にも嘘をついていなかった。あなた方に一杯食わせ、ここではダブルスに出ると言っておいて、そしてシングルスに出ようとなんてしていなかった。だから、驚きの意味が分からないね。それは僕の驚きではない、オーストラリア・チームの驚きだ。

サンプラス:ところで、なぜ彼らが驚いているのか分からないね。トム、ダブルスは重要なポイントになり得るかい?

ガリクソン監督:いつだってそうだよ。

この場合、我々は少しばかり不利だと感じますか? 彼らは経験豊かなダブルス・プレーヤー同士がペアを組み、我々は……アレックスはたくさんダブルスをしてきましたが、ピートはそうではないという意味で。彼は No. 1シングルス・プレーヤーなので、大いに埋め合わせをするでしょうか?

ガリクソン監督:絶対にね。どんな時だって、ピートはコートで使えるよ。

サンプラス:あなたはダラスで、僕がマッケンローと組んだのを見なかったの? ミネソタでは? 最初の2セットを見なかったの?

ガリクソン監督:ピートは素晴らしいダブルスができるし、オーストラリア・チームはウッドフォード とストールが組む事になる。彼らが一緒に組んでプレーした事は殆どない。だから、彼らが組んでプレーするという意味においては、ウッディーズがプレーするのとは違うと思うよ。

今回はサンドンにとって、デビスカップでプレーする初めての経験だろう。だから彼はプレーに、そして世界最高のシングルス・プレーヤーと対戦する事に、きっと少し緊張するだろう。加えて、アレックスは素晴らしいダブルスをしている。我々にもチャンスがあるよ。

トム、来年の2000年にはルールが変更されようとしています。監督は……(聞き取り不能)怪我のあるなしに関わらず、日曜日のラインナップを変更する事が可能になります。そうなると、駆け引きという点ではどの程度の有利さが生じるでしょうか?

ガリクソン監督:その質問は、来年からは4人のチームメンバーのうち誰にでも、自由に代理を務めさせられ、それが監督にとってどの程度の利点になるかという事だと思うが。私は良いと思う。

つまり、他のスポーツでは、監督は望ましい選手を投入できる。テニスでは、誰がどの試合に出られるか限定されている。来年は、誰がプレーするかについて、監督は自由裁量権を持つ事になる。それは然るべき途だ。もしチームに4人の選手がいたら、誰でも使えるようであるべきだ。

トッド、あなたはウインブルドンでラフターとタフマッチを演じました。それについて話して……(聞き取り不能)

マーチン:僕としては、願わくば今度は違う結果になってほしいと思っているよ。ハードコートでは、彼のサーブのバウンドが一定になる事を当てにできるだろう。僕としては、それが特に重要な事だ。同じく、時にはステイバックする機会を与えられる事。

パトリックはリターンがとても上手い。特に僕のサーブは、見事にリターンしてくる。いつもサーブ&ボレーをしていると、……時にはかなり守備的な立場に置かれる。だから、ハードコートでは時にステイバックする機会もある事は、僕の助けとなってくれるだろう。

今年は歴史的な年ですが、デビスカップについて、出場したものでも見たものでも構いません。思い出を語ってもらえますか?

マーチン:バーミンガム。加勢してくれよ。(笑)

クーリエ:バーミンガム、イングランド。(笑)

ガリクソン監督:ジム、喋らせてくれよ。

クーリエ:接戦だった。

ガリクソン監督:ブラジルは良かった。

サンプラス:声を大にして言うけど、ロシアを忘れるわけにはいかないよ。そこからだ。僕にとっては、恐らくモスクワだった。厳しい週末だったよ。

ガリクソン監督:一般的には、アウェイでの試合の方が記憶に残るだろう。敵地で戦うのだし、家から離れている。対戦相手の得意なサーフェスでやる訳だし、アウェイの方がチームとしての繋がりが強くなる。55,000人もの人々がチケットやら何やらを頼んできたりしないしね。

だから、少なくとも私は、監督として6年間やってきたが、アウェイでの試合の方がホームでのものより忘れがたいと言えそうだ。例えば最初のタイだったインドでは、特にドロー・セレモニーが思い出深いものだった。トッドがパンツに大きな穴をあけてしまい、彼は初めてのデビスカップ出場時に、タオルでそれを繕わなければならなかったんだからね。あれもかなり忘れがたかったよ。

マーチン:僕は概して、ドロー・セレモニーが得意なんだ。(笑)
訳注:マーチンは1997年準決勝(対オーストラリア)のセレモニー時に、気分が悪くなって昏倒した。

ジム、先ほどあなたは、プレッシャーのかかる第5試合をプレーする事に、やりがいを感じると話しました。なぜそう思うのか、話してもらえますか? それはジュニア時代にも備わっていた資質だと感じますか? それとも、時間をかけてそうなってきたのでしょうか?

クーリエ:なぜかというのは難しいなぁ。思うに……、そうだね、僕は子供の頃からいつも、ゲームの最後にボールを持ちたがる奴だったんだ。キックボールであれ、野球であれ、なんだろうがね。いつだって終わりに関わりたがる奴だった。

テニスもなんら違いはないだろう。いつも大概の大会に関わっているという以外にはね。デビスカップは、それがチームメイトの肩に掛かっているという唯一の場だ。僕がしくじっても、素晴らしいチームメイトがいて勝ち進んだ事もあった。同じく僕がチームを救った事もあった。

これはユニークな競い合いだ。基本的に、互いに助け合う事のできる唯一のイベントだ。そして僕は理由が何であれ、最後にコールを受けるのが好きなんだ。

もし第5試合までもつれる場合、あなたの経験をどれくらい生かす事ができるか、話してもらえますか?

クーリエ:経験があるというのは良いものだ。だが、こういう試合には独特のものがある。そのような状況で、選手によっては実力以上のプレーをする者もいれば、実力を発揮できない者もいる。コンディションという理由だけでも、選手が実力通りのプレーをするのを目にする機会はめったにない。そして今回はレイトンにとって最初のタイだ。ここにいる誰も、レイトン自身でさえ、どうなるかはその場に立ってみないと分からないだろう。もちろん我々は皆、興味を持って見るよ。

ガリクソン監督:アトランタでの、サフィンに対する最初の11ゲームを覚えているかい。彼も新人だった。

クーリエ:良くない日というのは、あるもんだよ。

アレックス、何かデビスカップの思い出は?

アレックス・オブライエン:ありがとう、僕に骨を投げてくれて(話すチャンスをくれて)、バド(コリンズ、有名な記者)。僕もバーミンガム、イギリスと言わなければならないだろうな。僕はダブルスで負けたけれども、それでもこの2人の男の戦いぶりは、特に最終試合のジムは驚嘆すべきものだった。皆がジムについて話すし、トッドも信じ難いような試合をした。この2人の男があそこで披露した心意気を見るのはすごい経験だった。そのチームの一員でいたのは、ただ素晴らしかったよ。

トム、あなた自身、これは大胆な決定だと思いますか? もし機能しないと……(聞き取り不能)

ガリクソン監督:我々の結論だ。これが全てだ。これが我々の方針だ。我々は皆、申し分ないと感じている。私は満足している。選手たちもそうだ。もし他の人々が気に入らないのなら、それは彼らの問題だ。

実際にはいつ最終決定を下したのか、聞かせてもらえますか?

ガリクソン監督:今日の正午だ。我々のラインナップを書き込んだ紙片をステファンに渡した時だね。




記者団の質問は、実にしつこい。何がなんでもピートをシングルスに出させたいという事だったのでしょうか? 結局、合衆国チームはダブルス以外1勝もできずに大敗し、ピートの気持ちは理解されなかったようでした。シングルスの試合中も、テレビカメラはチームメイトを見守るピートを執拗に捉え、サングラスで表情を隠していても、ピートの居心地悪さが伝わってきました。

確かに、勝負の世界では「甘ちゃん」な考え方なのかもしれません。ましてピートほどの選手の立場では。でも、いかにもピートらしい筋の通し方、気の使い方だと私は思うし、彼のそんなところが好きです。

この時のチーム・メンバーは、同年代の気の置けない仲間といった面々で、ピートはその雰囲気も好きだったんだろうなぁ。このメンバーとは、その後も付き合いがありますしね。また、絶対に勝たねばならない状況で奮起して、見事にダブルスで勝利したピートに、意地・矜持のようなものを感じました。だから好きさっ!