1998年11月26日
ATPチャンピオンシップ / ハノーバー ドイツ
ピート・サンプラス/カロル・クチェラ 6-2, 6-1

ピート・サンプラス記者会見



---今あなたは、6年連続年末1位の記録を作るという今年のゴールを達成しました。来年は何が残っていますか? 来年のあなたの目標は何ですか?

ピート う〜ん、まだ……。

イオン・ティリアク 7年連続?(笑)

ピート それはティリアク氏のセリフだよ。僕はまだ来年の事は考えてない。12月にオフを取った時に、来年のゴールについて考えるよ。僕たちは1年のスタートをオーストラリアン・オープンで切るから、それが最初の目標だね。でも僕の目標に関しては変わりはない。グランドスラム大会と……できる限り長くトップにい続けるという事だ。でも今回成し遂げた事は、今年が最終的に終わった時に味わうものだ。今週が終わったら僕は家に帰り、この事を楽しむよ。この記録に懸けていたから、そのために払った犠牲は報われた。USオープン以降ヨーロッパでたくさんプレーした……6週連続でね。報われたよ。

---ここまでそんなにも一生懸命やってきたのに、今日あなたは1球のボールを打つ事さえなく、1位の座を獲得してしまいました。ちょっと皮肉な感じがしますか?

ピート そうだね、ちょっと皮肉だよね。僕はホテルの部屋でパスタを食べていた時、彼(リオス)が棄権したと知ったんだ。なんだか奇妙な感じだった。僕は試合に勝つなり、大会で優勝するなりしなければならないと思っていた。この成り行きはちょっと皮肉だね。

---パスタでお祝いしましたか?

ピート 僕と友人とでね。(笑)いや、自分で自分を祝福したよ。ちょっとぎこちない気分だ。さっきも言ったように、勝たなければならないと思っていたからね。マルセロには不運だった。でも彼も週末まで到達するには、たくさんの仕事が残っていた(リオスは第1戦に敗退)。僕が今年、そしてこの6年間やってきた事の価値を減じるものではないよ。

---コナーズはあなたに、祝福の電話をしてくるでしょうかね?

ピート まだなんのメッセージも受け取ってない。でもアメリカでは感謝祭の祝日だから、彼はきっと忙しいんだろうね。

---これである意味、この大会に再び優勝する事が、さらに重要になりましたか?

ピート この2カ月間の僕のメインの目標は、1位で終える事だった。それは成し遂げた。僕は今ここにいて、自分のプレーをしている。僕が優勝できないって理由はないよね。もしそうなったら、ケーキを飾るようなものだね。

---マルセロが棄権して記録を得た訳ですが、あなたはコートに出て楽しみ、自分がどんなにいいプレーをできるか披露して、ケーキを飾るつもりだったんじゃありませんか?

ピート 生放送ではなかったけれど、僕は準決勝に進出した。誇りを感じているし、会場に来た人々は、いいテニスを観戦した。僕は1位になった。今日はとにかく、自分のテニスを楽しもうと、自分に言い聞かせていたんだ。そして楽しんだ。20〜30分のうちに僕は1セット取って、さらにブレークもしていた。僕は今日の事の成り行きに、とてもリラックスしていたし、自分のテニスを楽しむ事ができた。これ以上いいプレーなんてできないよ。

---6年連続1位になって、もし今週優勝できなかったら、何か矛盾を感じますか?

ピート いや。みんな同じ条件なんだ。もし優勝できなかったら、それはただそういう事だ。だからといって、いま僕が感じている事や成し遂げた事は、なんら変わらない。1年の間にはたくさんの大会があり、これはその1つだ。でも僕がここでした事について、いい気分で家に帰るよ。

---今年の初め頃、私たちの多くはたびたび、あなたがあまりいいプレーをしていないと言ってきました。そしてあの頃、あなたはちょっと苦しんでいました。今年の終わりに1位になれないのではないか、という疑いを抱いた事はありましたか?

ピート 僕にとってのターニングポイントは、ウインブルドンだった。もしウインブルドンで優勝しなかったら、1位になる可能性はとても低かっただろう。でも僕は優勝して、そこから、まだ充分チャンスはあると感じるようになった。もしUSオープンで優勝できていたら、6週連続でプレーする必要はなかっただろう。でもちょっと不運で、もう少しプレーする必要があると感じ、そうした。さっきも言ったように、それは報われたよ。今年初めの4〜5カ月間は、あまりいいプレーができなかったから、年の終わりに少したくさんプレーしなければならなかった。それが僕がやらねばならない事だった。その犠牲は報われたよ。

---肩の荷が下りたような感じですか? 1位についての話題がすごかったですから。

ピート 重荷とは見ていない。究極の偉業という風に受け止めているよ。この記録はもしかしたら、永遠に破られないだろうと感じている。この2カ月ほど、これは今できなければ二度とできないものだと分かっていた。「これは僕が記録を破るチャンスなんだ」って感じていた。1位になるという事は1つの事だが、1位でい続けるという事は、また別の事だ。それは倍も大変な事なんだ。自分のキャリアの大半をトップでいるなんて、ちょっと圧倒される気分だよ。過去の多くの選手は、トップのプレッシャーにうまく対処できなかったり、その地位を楽しんでこなかった。僕は1位でいる事がとても心地よいし、そういう感じ方が、自分を律するのを助けてくれた。

---この事を祝福する、あなた自身からの何か特別のプレゼントはありますか?

ピート 僕はまだ仕事中だ。願わくばカッコよく家に帰りたいね。(笑)

---スポーツ界の中で、誰も6年連続で1位になった人はいない事を考えると、現時点では、あなたは世界一のスポーツマンだと見なせるでしょうか?

ピート それに答えるのは難しい。この6年間やってきた事に、僕はずっと慎ましくあろうとしてきたけど、とても難しいよ。1位になった事のある人には、僕の言っている事の意味が分かるだろう。僕は自分で「僕は最高だ、最高のスポーツマンだ」なんて言う気はない。ただ記録が物語るに任せる。テニスを知っていて、テニス界にいた人なら、トップでい続けるのがいかに難しい事か知っているだろう。6年連続トップにいたという事は、引退した時にその真価を味わえるだろう。今年の終わりに少し味わうよ。どんなスポーツでもトップにいるのは厳しいけれど、特にテニスは個人競技だからね。ここで成し遂げた事について、僕はとても誇りを感じているよ。

---あなたは引退した後に、自分の成し遂げた事を味わうと言いましたが、大衆やメディアは、あなたやあなたの業績を、現役中より引退後に、より評価すると思いますか?

ピート グランドスラムの記録とか1位の記録とかで、この2年くらいの間に、少しずつ評価されてきていると思うよ。この場にアメリカのメディアがあまりいないのは残念だけれど、見たところここは満員のようだ。素晴らしいよ。でもあなたの言った事は、多分正しいだろう。僕は引退後に、多分もっと評価されるだろう。僕は今夜、そしてこのところ、なにがしか評価されていると感じているよ。僕が22〜23歳で、ウインブルドンやUSオープンで優勝していた頃は、テニスはうまく行ってないとか、退屈だとか何年も耳にしてきた。聞くのが辛い事だった。でもずっと続けてきて、最近感じられるのはただ1つ、敬意だ。ここ数年は敬意を受けていると感じているよ。

---この記録も手にして、今後あなたにとってさらなる刺激となるのは、グランドスラムですか?

ピート その事は頭にあるよ。このところ言われてきた事だし。今年が終わったら、クリスマスが終わったら、僕はオーストラリアン・オープンに向けて準備する。それが次の目標だ。でも年を重ねるにつれて、僕はこの良い時を、もっと味わいたいと感じるようになった。ウインブルドンで優勝した事、ここでした事、1年間やってきた事をね。長い間、僕はただ前進あるのみで、勝利をあまり楽しんでこなかった。今は、今夜ワインの1杯でも傾けて、少し楽しみたい気分になっているよ。

---グランドスラム優勝や6年連続1位の記録を得て、フレンチ・オープンのタイトルは、さほど重要ではなくなりましたか? それとも今でも最重要課題ですか? すべてを完璧にするべきものですか?

ピート フレンチでの優勝は、今の僕にとって最大のチャレンジだ。でも1年を1つの大会だけのために過ごす事はできない。1つの大会だけのために、自分に多大のプレッシャーをかける事はできない。できる限りの準備をして、可能な限り調子を整え、願わくばある年優勝できたらいいね。それが僕の基本的な考え方だ。来年はいい年、もう少し安定した年になったらいいなあと思っている。フレンチの季節が来た時に、いいテニスができていたらいいなあ。

---デビスカップは優先事項の中に入っていますか? それともやはりあまり気にかけませんか?

ピート 気にかけてはいるよ。でも状況は厳しい。もし参加すると、たくさんプレーしなければならない。もし1回戦の対イギリス戦でプレーすると……(祝福のケーキとシャンパンが届けられる)

マーク・マイルズ(ATP代表) ピート、君は楽々とやってのけているように見える、希少な人物、希少なアスリートの1人だ。しかしスポーツを愛し、追っている我々は、君が傾けてきた今年の、そして6年間の献身を理解している。君がどれほど賞賛に値するか、我々がどんなに君を誇りに感じているか、語り尽くせない。後ほどちょっとした祝杯の機会がある。君は今夜ワインか何かをと言ったけれど、まずはシャンパンでお祝いだ。(シャンパンのしぶきを飛ばす)

ピート グラスの方が良かったなあ。

マーク ともかく、おめでとう。外でまたフォトセッションの機会があります。