1996年11月24日
1996 ATPチャンピオンシップ / ハノーバー ドイツ
ピート・サンプラス/ボリス・ベッカー 3-6, 7-6(5), 7-6(4), 6-7(11), 6-4

ピート・サンプラス記者会見



---どんな気分ですか、ピート?

ピート ホッとしている。本当にね。彼は観客と一体になって、素晴らしいスタートを切った。第1セット、彼は今まで対戦した選手の中でも、最高のプレイをした。もし彼がそのレベルをずっと保っていたら、僕は彼と握手するだけで、幸せとしなければならなかったよ。僕が第2セットを取ったら、観客は少し静まり、勢いが変わったのを感じた。第5セットのマッチポイントでは、僕は少し守りに入り、硬くなってしまった。それと第5セットの初めの4ゲームの間、僕は少し狼狽していた。どちらが勝ってもおかしくない試合だった。僕とボリスとには殆ど差がなかった。それがすべてだ。

もし僕が負けていたら、もちろんとてもガッカリしただろうけど、階段を下りてコートに向かう時の気持ちは、信じられないほどのものだったよ。観客は……彼らはボリスを応援していたけれど、僕に敵対するものではなかった。この場の一人でいられたのはステキだった。これこそが試合をする喜びだ。お金だとか、そういうもののためじゃない。素晴らしい試合だった。僕の試合の中でも最高のものの1つだった。

---もしこの試合がどこか他の場所で行われていたら、ストレートで勝っていたと思いますか?

ピート いや、それは難しい。それはない。どのセットも1つか2つのショットの差で決まった。それにボリスは世界のどこでも、どんなサーフェスでも、倒すのが難しい相手だ。確かに、彼はここでは観客から少し強みを得ただろうけど……でも、いいテニスだった。僕たちは2人とも、とてもいいプレーをしたと思うよ。ほんの1・2ポイントが明暗を分け、僕がそれをものにした。差はそれだけだった。

---第4セットを落とした後、ここで試合を終わらせられたかもしれないのに、流れが変わり、また続けなければならないというのは、どのくらい難しい状況でしたか?

ピート とても狼狽してしまった。マッチポイントで僕はちょっとあやふやになり、バックハンドをワイドに打って、ミスしてしまった。少し守りに入ってしまった。ボリスはそういうポイントを逃さない、特にとても重要なポイントではね。ラケットの一振りで、ロッカールームに戻れていたかもしれなかったけれど……。

でもまだ2セット・オールだった。すべきなのは、ポジティブな側面を見て、頑張り通すだけだ。なんだって起こる。僕は試合を投げてしまうつもりはなかったよ。諦める気は全くなかった。戦い続けるだけだ。願わくばブレークポイントをものにする事だ。そして僕はそうした。試合中、僕はいろんな感情を内に秘めて、観客や何かに対して冷静さを保ってきたが、最後にそれを解放した。とてもステキな気分だったよ。

---今年はあなたにとって色々な事がありましたが、終わりを迎え、どんな気持ちですか?

ピート そうだね、今年は、特にオフコートではとても困難な年だった。家族に支えてもらい、ポールやトッド(当時のトレーナー)や僕の回りのみんなが、それを乗り越えさせてくれた。ティムの兄弟のトム・ガリクソンもね。それに……ティムも、僕が一生懸命いいテニスを続け、幸せでいる事を望んでいるはずだ。こういう試合をすると、彼が僕に教えてくれた事を思い出すよ。他に言える事はない。まだ辛いけれど……先に進まなければ。

---五分五分で試合の終局に向かい……疲れましたか、それともイライラしましたか?

ピート マッチポイントはとても緊張する瞬間だった。長いポイントだった。最高の瞬間の1つで、1995USオープンでアンドレと対戦した時のポイントを少し思い出したよ。両者がサイドからサイドに走り回り、心臓の鼓動が跳ね上がり、それを感じた。ボリスにそれを話したら、彼も同じように感じていた。終わってただ嬉しいよ。試合に勝ち、今年を素晴らしい形で締めくくる事ができて嬉しいよ。

---試合後にコート上で、今までで多分最もドラマチックな試合だろうと語りましたね。それから40分ほど経ち、少し落ち着いた今でも同じ気持ちですか?

ピート うん、特別な試合というものはある。USオープンやウインブルドンでも、そういう試合はあった。でもここの観客は、この週を通して、特に今日は、止む事なく試合に熱中してくれた。不作法でなく、僕たちのテニスに敬意を払ってくれた。さっきも言ったけれど、コートに向かって階段を下りていく時の気分をいったら! こんな事は、ツアーの中でそう多く経験するものじゃない。そして15,000人の人が試合に熱中し、素晴らしい雰囲気で、それがテニスのレベルを上げてくれる。こういう場にいられるのは楽しいよ。

---ピート、ボリスは多くの意味で、選手たちの中であなたをいちばん尊敬していると言っています。あなたはボリスについて、どんな風に感じていますか?

ピート 僕も彼をとても尊敬しているよ。他に何が言える? 彼のキャリアは驚異的だ。グランドスラムで6回優勝し、1位にもなったし、ウインブルドンで3回優勝している。彼は本当に危険な相手だ。何でもうまくやれる。彼のゲームには、これといった弱点がない。僕は彼の苦手を指摘する事ができない。そして大いに尊敬し合っている。つまり、ただコートに出てプレーするだけで、僕たちの間には、個人的なわだかまりは何もない。よりいい方が勝って、最後に握手をする。それだけだ。そういう試合の片方でいるのは、とてもステキだよ。

---終わってすぐに、彼はあなたに何と言ったのですか?

ピート 観客の声が大きくて、お互いにあまりよく聞き取れなかったと思う。セレモニーの時に少し話したけど、第5セットで僕は疲れていたようだったが、彼も同じように感じていたって言ってたよ。観客についても話した。ドイツで最大のテニスの観客で、試合にとても熱中していたねって。少し話しただけだよ。クールだろ? オーケイ。