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1999年7月 デニス・ミラー・ライブ |
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*このスクリプトは、ファンがテレビから書き取ってくれたものです。緑色の文字は、そのファンの印象などです。 |
ピートが紹介されると、彼は歩いてきて椅子に座った。聴衆の誰かが「シャツを脱いで!」と大声で言うと、ピートは「多分後でね」と言った。 ミラー 私は君がウインブルドンで優勝したのを見たし、君について書かれたものもすべて読んだよ。君には数年前、フロリダでちょっと会ったね。君のインタビューを見て思ったよ。ワウ! なんて堅実で、謙虚な男なんだって。 君は12回目のグランドスラム優勝を果たし、頭の中では、これはテニス界の*ラシュモア山のようなものだ、自分がグランドスラム最多記録に並んだのだと知っている。君は頭の中で、ピンポンみたいに行ったり来たりしてるんじゃないかと思うんだが。「僕は最高だ、ノー、謙虚になれ、ピート。僕は最高だ、ノー、謙虚になれ、ピート」とね。 それは気を散らせるんじゃないか? 対処するのがむずかしい? あるいは……? 訳注:マウント・ラシュモア。サウスダコタ州にある大統領の顔を彫った山。左からワシントン、ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、リンカーン。 ピート そりゃすっごく素晴らしいさ。(大きな微笑)僕はやった。言った。 (みんなドッと湧いて、笑い転げた) ピート いや、それは僕にとって素晴らしい瞬間だった。あー、12回目の優勝を果たし、アンドレを破ったんだからね。彼は素晴らしいプレーをしていて、フレンチで優勝したばかりだった。そして僕のやり方でプレーできた。まだ少し喜びに圧倒されているよ。 決勝では、僕は少しばかりゾーン状態だった。でも自分がしたすべての事に対して、いつも謙虚で控えめであろうとしてきた。歴史とか記録更新については、何と言ったらいいのか分からないな。僕はごく普通の人間で、たまたまテニスが上手くできるというだけなんだ。 ミラー ゾーン状態について話してくれるかい。ゾーンとはシロッコ(台風)みたいなものかい? 砂漠を吹き荒れ、突然、君はその中心にいる。何が起こったのか分からない。君は口を覆っていたのに、それは消え失せ、そして考える。「ワウ、いかしてるぜ。信じられない」 ただ、君の例では、私は試合を見ていたんだが……第1セットの3オール、0-40か何かでアガシがブレークポイントを握っていた。私は考えていたよ。「ワウ、もし彼がここで足掛かりを得たら、これは……彼は活発な奴だからな」って。 彼がここで最初のきっかけを得たら…なんて思っていたら、次には君が、摩訶不思議な方法で……「ゾーン」を召還したように見えたよ。 4本のレーザー光線が走ったようだったからね。いや、君はジェームズ・ボンドとなるんだな。最後に1本1stサーブをミスしたが、2ndサーブさえリターン不能だった。 私は「これで終わった」と思ったね。あれについて、いま解説できるかい? ピート あの時点では……芝生でプレーするのは大変なんだ。特に大会のあの時点では、すべてがとても速く展開し、2〜3ポイントで試合の様相がすっかり変わってしまうからね。0-40の場面は、もし彼があのゲームを取っていたら、彼は4-3でサービスゲームを迎える。もし彼が第1セットを取っていたら、試合は完全に違ったものになっていただろう。 僕はあのゲームを取り、彼は2〜3本ルーズなショットを打って5-3、6-3となった。試合全体が2分間くらいで変わったんだ。そして僕は第1セットを取ったら快適になり、つまり…いい感じだった。試合が進むにつれて、僕はどんどん良くなっていった。 ミラー いやぁ、私にはルーズショットには見えなかったよ。思うに、あの時アンドレの頭の中では、報われないという思いが吹き荒れたんじゃないかなあ。彼は1年前141位だった。そこからカムバックし、フレンチで優勝したのは賞賛すべき事だ。彼は4大会すべてに優勝した5人の中の1人となり、いまや神殿にいる。 だが単純な事実は、心の深い奥底では、完全な自信を取り戻すには、1回のグランドスラム優勝だけでは足りないんじゃないだろうか。彼は次のレベルの自信を得ようと押し進めたが……はねつけられ、顔をピシャリと叩かれたような気分になったんじゃないかな? ピート まあ、僕はかなり上手く彼をひっぱたいたよ。(大きな微笑)彼を大いに尊敬している。彼はテニスにとって素晴らしい存在だ。そして僕のベストを引き出してくれる。 ウインブルドン決勝で彼と対戦するというのは、ボルグ対マッケンローみたいなものだ。歴史的で…2カ月後には、多分USオープンで再び対戦するチャンスがある。テニスにとっていい事だ。2人の全く違うタイプの男の対戦を見るのはいいものだ。僕はいわば物静かな方だし、彼はもう少し外向的だ。それに僕たちのゲームは異なっていて、素晴らしい組み合わせだ。 ミラー 君はUSオープンでは、ウインブルドンほど自信を持てないかい? というのは、君がウインブルドンのセンターコートに出ていくのを見て気づいたんだが、あそこの緑色を見ると、君はパブロフの犬みたいに涎が湧いてきて、「ここでは誰も僕をやっつけられない。僕はここを所有しているんだ」と思うに違いない。かつては自分のリビングルームだと言っていたベッカーですら、放棄したんだからね。ベッカーは君をウインブルドン最高の男だと言ったよ。 だがUSオープンでは、ラフターが、君がウインブルドンで持っているものを作りつつあると思うかい? もし君が彼を負かすなら、それは今年じゃないかな? ピート うん、彼はあそこで2年連続優勝した。6回優勝に向かう途上だ。僕はハードコートテニスが好きだよ。カリフォルニアで育ち、ハードコートでプレーしてきた。でも優勝は簡単じゃない。ラフターは素晴らしいプレーをしているし、アンドレもいる。楽しみだよ。自分の持てるすべてを尽くして、世界のベストプレーヤーたちに向かうんだ。 ミラー 君はタイトルを12手に入れ、エマーソンと並んだ。でも、いいかい、来年ゴーゴンが海から現れてロンドンを襲いでもしない限り、君は13個目を手に入れるだろう。だから君がESPNに取り上げられるには、コレチャ戦みたいな試合をやって、多分吐いたりしなくちゃならないだろう。 ボビー、君はピートに質問があるかい? (ピートの前に出演したボブ・コスタスへ話しかける) 訳注:ボブ・コスタス。アメリカで名高いスポーツキャスター。 コスタス あなたが話していた事で1つ。あなたは故郷ピッツバーグ出身の、ロベルト・クレメントの事に触れたね。 映画製作者のジョン・セイルズがかつて言ったんだが、彼はロベルト・クレメントやその時代の男たちから、スタイルについてあらゆる事を学んだと。クレメントを見るのは、サンディー・クーファックス 、あるいはウィリー・メイズ、ゲイル・セイアーズを見る事だと、私はいつも考えていた。 この男たちは、カメラの前で気取ったり得意にならなくても、愚かなふざけた行為をしなくても、とても粋で、そして面白かった。 君はその時代の男のようだ。君のプレーを見るのは楽しいし、そう感じさせるために辛辣な一言を必要としたりしない。 ピート ありがとう、感謝します。 ミラー ピート、それは……私が言おう。君はまだそのただ中にいるし、君自身が言う事はできないからね。君にとって、自己中心的な野郎でないとか、プリマドンナでないという事でたわごとを言われるのは、頭に来るに違いない。 君はそういう奴になれないし、良い人間だ。でも君が普通の人間であるという事にさえ、あれこれ言われるのには、さぞかし頭に来るだろう。 一体全体、あべこべ奇想天外の世界でもなければ、奇人でないからって文句をつける事なんてあるかい? ……私の言っている意味が分かるかい? ピート ええ、たとえばNBAで、デニス・ロッドマンのような人だと、彼は素晴らしいアスリートで、素晴らしいリバウンダーだけれど、みんなは彼の物議をかもす事柄について、より関心を示すよね。 みんな常に、アスリートについて、スポーツ以外の事を求めている。彼が誰と寝ているか、彼が何をしているか、あるいは彼がドラッグをしているかとか。スポーツセンターを見ると、誰それが刑務所に入ったとか出たとかって事でいっぱいだ。 コスタス それがスポーツ放送になってる!!! ピート そうだ。 ミラー ラップしてるね、ロバート?? ミラー ここでフレンチ・オープンについて質問させてくれ。いまや君はすべてを手に入れた。 ピート 質問しなくちゃダメなのかい? ミラー 6年連続1位というのは、最も厳しい仕事だと思うが。妙なランキングシステムのせいで……みんなそれを、電話で知らされるもののように考えているに違いない。でも私は、6年連続で1位になる事ほど、長い骨の折れる「死の行進」を想像できないよ。それは君を徐々に食い荒らしていくに違いない。 君は12個を手に入れ、いずれ13個のグランドスラムを得るだろう。君は歴史に名を刻み、そして君のような男は、多分さらに上を望むだろう。そしてそれを最も整ったパッケージにするには、1つ欠けているものがある。それがフレンチ・オープンだ。 フレンチでは何が起きているのかい? サーフェスはそれほど違うのかい? もし優勝しなかったら……君は史上最高のテニスプレーヤーだ。だがあのサーフェスは、戸惑うものなのかい? それとも考えすぎて、硬くなってしまうのかい? ピート その通り。あなたは僕をコーチすべきだね。僕はコーチにデニス・ミラーが必要だ。 ミラー 君の10パーセントでも、僕より上だよ。 ピート いやいや、あなたは正しいよ。それは僕が優勝してない大会で、自分にプレッシャーをかけすぎてしまう。それに僕のゲームにはむずかしい。滑りやすい事やスライディングを身に付けるのも。そして今日フレンチで優勝する事は、40年前とは完全に別物だ。つまり、ランキングを見てみると、誰もがクレーでプレーできるんだ。 僕がフレンチで勝つには、ただプレーする必要がある。僕は優勝していない事、どうやってプレーするか、ラケット、ストリングスなどに悩む……つまり、僕があそこでいいプレーをするには、いろいろな事が関わってくる。でも僕はただプレーする必要がある。人が言う事や書く事に悩まずにね。それに、どんなグランドスラム大会であれ、優勝するには幸運が必要なんだ。僕がフレンチで優勝するためには、神の行為が必要さ。 (私は彼がここで冗談を言っていたと思います) ミラー それじゃあ、まだ1年あるけど、問題だね。君はあそこに行くにあたり、こうしなくちゃダメだよ。最初の試合の朝コンコルドに乗り込み、ベレー帽を被って降りてきて、フランス製の消毒剤(ワイン?)か何か引っかけ、男が若い娘っ子とダンスをする時に着るような白黒の縞のシャツでも着て、ただ考えるんだ……神様、ありがとう。僕ぁぜ〜んぜんかまいませんってね。 訳注:ここ、英文の意味が何がなんだか分かりません。適当です。 ピート そうしよう。 |
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書き取ったファンのコメント 大体こんな感じでした。その後ミラーはピートに、大統領に会った事について尋ね、ピートはゴルフコースでクリントンに会ったが、彼はシルベスタ・スタローンと葉巻を吸いながらゴルフをしていたと話しました。 テニス関連の事はこれがすべてです。 全体が陽気な雰囲気で、彼らはずっと笑っていました。だから皮肉なコメントを真に受けないように。ほとんどは笑い話として言った事です。 |