CBSニュース・スクリプト
2000年1月25日、火曜日(東部時間午後9時00分)
ショー :60分 -- その2


見出し:チャンピオン、世界1位のピート・サンプラスが、彼のキャリアについて話をする 
総合司会:Charlie Rose

チャーリー・ローズ もしチャンピオンには何が必要か知りたければ、ピート・サンプラスをひと目ご覧なさい。28歳にして、彼は史上最高のテニスプレーヤーの1人です。しかし「〜の1人」では、彼にとっては充分でない。彼は「史上最高」でありたいのです。

彼は今週、その夢に向かってもう一歩近づこうとしています。オーストラリアン・オープンで優勝し、男子テニス界最多の13回目のタイトルを獲得する事で。

考えてみなければなりません:どうやって彼はここまで来たのか? サンプラスをそれほど特別にするものは、いったい何なのか?

まあ、手始めに、ちょっと彼のサーブをリターンしようとしてみて下さい。

(ピート・サンプラスとチャーリー・ローズのコート上の映像)

ローズ 君の最高のものを見せてくれ。さあ、行こう。

(ナレーション)ボールは時速130マイルで飛んでくる。

ピート おおっ、届きそうだったね。

ローズ(ナレーション) ボールはほとんど見えない。ましてや打てっこない。よし、もう1本。

ピート じゃあ行くよ。返してみて。

ローズ(ナレーション) ピート・サンプラスが彼のスポーツを支配する有り様は、他に例を見ない。彼は金持ちで、ハンサムだ。それでもなお、彼は一度も大衆の心に火をつけた事がない。

ピート 僕はどちらかと言えば、流行遅れの50年代タイプの男なんだ。僕は派手でもないし、お喋りでも、得意げなタイプでもない。

ローズ それでは、「彼は退屈である」というフレーズに対しては、何と言う?

ピート (肩をすくめて)僕はそうじゃない。自分のジェット機があるし、ハリウッドのガールフレンドがいるよ。

(新聞記事のクローズアップ:ビョルン・ボルグ、ジミー・コナーズ、ジョン・マッケンローの映像)

ローズ(ナレーション) キャリアを通じて、サンプラスは彼がそうでない事のために批判されてきた。彼はビョルン・ボルグのように、苦悩しない。彼はジミー・コナーズのように、けばけばしくない。そして彼はジョン・マッケンローのように、論争好きではない。

ピート 彼らは、幸せであるためには、1位でいる必要があったようだ。

ローズ 君は、幸せであるために、1位でいる必要がある?

ピート まあ、いや、必ずしも。もう映ってるの?

ローズ そんな事は気にするな。おい、君は1位でなくても幸せであり得る。でももし1位なら、もっともっと嬉しいだろう。

ピート 確かに、その通りだ。

ローズ それは君にとって重要だった。

ピート 確かに、確かに。

ローズ 君の命はテニスで、記録は君にとって重要だから。そうだろう?

ピート その通りだ。1位であり続けるためには……それが何より大切でなければならない。本当にそうだ。

(サンプラスのウォーミングアップ、アンドレ・アガシの映像)

ローズ(ナレーション) 昨年の夏にサンプラスと会った時、彼は最も最近の挑戦、USオープンのために準備していた。彼はライバル、アンドレ・アガシとの決着を予想していた。

ピート いい気分だ。僕は……最善の準備ができているよ。

ローズ 始める準備ができているかい?

ピート うん。がむしゃらだよ。

ローズ ありがとう。

ピート そこに……彼ら(アガシとパトリック・ラフター)がいるよ。やあ、どんな調子?

アンドレ・アガシ どうだい?

ローズ(ナレーション) サンプラスとアガシのライバル関係は、男子テニスを活性化させてきた。その一部は、アガシが141位からトップまで上昇という、注目に値するカムバックをしたからだ。しかし同時に、彼らが対戦する時はいつも、サンプラスが自分のゲームのレベルを引き上げたからだ。

(アガシのウォーミングアップ映像)

ローズ アンドレ・アガシがサーブに取り組んでいるね。

ピート うん、彼は良くなってきた。

ローズ 彼はより良くなった?

ピート うん。

ローズ 彼を見る時……2人が会う時は、君たちが「2人の男である」という事で、なにがしかの緊張感があった? つまり……

ピート いいや、一度も……コート外では、アンドレと僕の間に緊張感があった事はないよ。いまはカメラが周りにあるから、ほんの少しあるかもしれない。

ローズ うん、そうだね。

ピート ……でも、僕は座ってアンドレと話ができるし……何についても。僕たちはお互いに好意を持っているし。

アガシ 僕はピートとコート上にいる時、感じるものが好きだ。僕は彼と対戦するだろうと予想する時、感じるものが好きだ。おそらく今までにないくらい、一生懸命やらなければならないと知る事がね。

他の選手と対戦する時には、「オーケー、もし僕がこれをすれば、もし集中すれば、もしこれほど激しいなら、これをやれば……僕は勝つだろうと」と分かる。でもピートとだと、「僕はこうする」と思っても、どうなるかは分からない。

(試合の映像)

アナウンサー(多分クリフ・ドライスデール) ゲーム、セット、サンプラス。

(サンプラス子供時代の写真と映像)


ローズ サンプラスとアガシは、子供の頃から競い合ってきた。

ロバート・ランズドープ(映像から) オーケー。さあ、次はピートだ。スマイリー・ピート。

ローズ(ナレーション) ピートは7歳の時、初めてラケットを握った。このホームビデオは、子供時代の指導者、ロバート・ランズドープが撮影した。

ピート 驚くべき教育だった。毎日テニスをしていたんだ。1日に3時間。僕にはガールフレンドがいなかった。社交生活はなし。ダンスパーティーにも行かなかった。僕はただ……テニス、テニス、テニスだった。そして……

ローズ でも、それは君が望んだ事だった。

ピート そう、僕が望んだ事だった。両親は強制しなかった。でも……彼らは僕が楽しんでいるのを知っていて、サポートしてくれたんだ。

(サンプラスと父親の写真、サンプラス19歳の映像)

ローズ(ナレーション) しかし彼の両親は、同時に縁起をかつぐ人たちである。彼らは息子の試合を見にこない。実際、19歳のピートが最初のUSオープン優勝を果たした時、彼らはショッピングモールに出かけ、彼の試合を見なかったのだ。

ご両親は大会に来ないのかい?

ピート 来ない。両親は……

ローズ 君がプレーするのを見るため、一度もグランドスラムに来た事がないのかい?
左から:ピート、父親、ピート・フィッシャー、兄のガス

ピート いや、来た事がある。両親は……92年のUSオープン決勝で、僕がエドバーグに負けたのを見た。それが、両親が見た唯一のグランドスラムだ。

ローズ そしてその時「私達は決して再び息子が……最愛の息子が負けるのを見に行かない」と決めたのかい?

ピート まあ、彼らは……そう、一部にはそれもあった。それと一部には、彼らは人前に出たがらない。彼らは……ある意味で、僕みたいなんだ。

(サンプラスと両親の写真)

ローズ(ナレーション) 我々はその事について、彼の親に訊いてみたかった。しかし彼の大試合を避けるだけではなく、彼らはインタビューも受けない。

ピート 僕は毎年……ウインブルドン決勝に進んだ時、準決勝と決勝の間には1日あるが、僕はいつも両親を招待する。でも「いいや、ピート、ああ……」って……

ローズ 電話をかけるの?

ピート 両親は「いいや、ああ、お前は上手くやっている……」って……

ローズ 君は何と言うのかい?

ピート 「なぜ……なぜ来ないの?」って。父はいつも同じ事を言うんだ。「いいや、行かないよ。お前は……分かるだろ、お前はよくやっている。私は縁起をかついで家にいるよ」とね。

でも……僕は彼らに、僕のテニスの一部になってほしいんだ。そして僕は……今年のUSオープンだけでなく、来年のウインブルドンも……何の大会でも、僕がグランドスラム大会でプレーするのを……息子を見てほしい。

(トロフィーを掲げるサンプラスの映像)

アナウンサー2(多分トニー・トラバート) USオープンチャンピオン、ピート・サンプラス!


(自宅に飾ってあるトロフィーとサンプラスの映像)

ローズ(ナレーション) 彼らの息子は、とてもよくやってきた。

ピート この部屋に来ると、いつもチェックするんだ。

ローズ(ナレーション) 彼が次から次へとトロフィーを獲得するのを、両親は見たがらなくても、他の多くの人々は見たがる。

(声援するファンに、手を振るサンプラスの映像)

ピート(ナレーション) ……たくさんの人の前でプレーするのは楽しい。みんな僕を見るために来てくれる。それは……素晴らしい気持ちだ。

(ラケットを調整しているサンプラスの映像)

ピート(ナレーション) 面白いよ。僕がストリングスを切って、ラケットを替える時、僕は……時間をかける。慌てて新しいラケットを取りにいったりしない。つまり……僕は楽しんでいる。これは僕のステージだ。僕は僕のしたい事をしている。

(試合の映像:ジョン・マッケンロー)

ローズ(ナレーション)そのひたむきさは、ピート・サンプラスが、ジョン・マッケンローを含め、あらゆる偉大なチャンピオンと共有するものである。

ジョン・マッケンロー 彼がしてきた1つの事は、テニスに非常に打ち込んできたという事だ。だから……ある意味、彼が退屈だと言われてきたのは、彼がそれほど打ち込んでいるからだ。 彼は事実上、他の何事をも脇にのけてきた。

それは……ある意味で、私ももっと上手くやれたら良かったと思う事だ。彼は……その悪い面は、否定的な見方で捉えられるという事、良い面は、メジャータイトルをたくさん獲得するという事だ。

ローズ テニスプレーヤーとして、ピート・サンプラスは何が特別なのでしょう?

マッケンロー 人々はまだ充分に理解していないと思う。おそらく10〜15年後、彼がどれほど本当に素晴らしいプレーヤーか、理解するだろう。つまり、彼はプレーを簡単な事のように見せるからだ。

誰かがロッド・レーバーと同じくらい、あるいはもっと良いと言うのはためらわれるが……彼はなんと言っても2回のグランドスラムを制覇しているからね。私はロッドを尊敬しているし……しかし、もしピートの最高のプレーを見たら、ウインブルドンかUSオープンで、ロッドが彼を負かすとは想像しにくいだろう。

(ロッド・レーバーの映像、レーバーの昔の写真、サンプラスとピート・フィッシャーの写真)

ローズ(ナレーション) 実際、伝説的なロッド・レーバーは、今日までピート・サンプラスのアイドルである。それは偶然ではない。幼い頃のサンプラスは、ピート・フィッシャー、サンプラスの最初のコーチである小児科医によって、レーバーを崇敬する事を教えられた。

ピート・フィッシャーは、君に「ピート、君は史上最高の選手になれるか?」と言ったのかい? 
ピート ああ、僕が人々にロッド・レーバーを忘れさせるだろうと彼は言ったよ。

ローズ フィッシャーに見えたのは何だったんだろう?

ピート 才能は見えた。でも……僕の意志の力とか頭の中はあまり見えなかった。それは僕しだいだった。「僕はどこまで望むのか?」という事は。

(サンプラスとフィッシャーの写真)

ローズ(ナレーション) フィッシャーは要求の高い監督であった。そして10年一緒にやってきた後、コーチとプレーヤーは別れた。ピート・サンプラスが知らなかったのは、彼のコーチは秘密の生活を持っていたという事であった。1997年、フィッシャーは、幼い患者の数人に性的いたずらをしたという罪を認めた。彼は現在、カリフォルニア刑務所で6年の刑に服している。

君は今までに、 彼がそういう問題を抱えていたという印象を持った事があったかい?

ピート いいや。

ローズ 君の人生を変えた人が、いま刑務所にいる。彼に何を言える?

ピート 分からない。僕は……僕は友人として、彼をサポートしている。僕は7歳の時から、ピートを知っているんだ。そして彼が刑務所から出てくる時も、彼の友人でいるつもりだ。

ローズ それが君にできる最善の事だね……。

ピート 僕にできる最善の事だ。そう、つまり、僕は顔を背けたりしない。彼は……僕にとってはとても大切な人で、見捨てたりはできないよ。

(サンプラスとティム・ガリクソンの写真、試合の映像)

ローズ(ナレーション) 彼の友情は深い。それらの友情の一つが、コーチ、ティム・ガリクソンとの絆であった。彼はピートがテニスを支配し始めた時、そばにいた。そして、1995年オーストラリアン・オープンで、サンプラスはガリクソンが脳腫瘍で死にゆく事を知った。

アナウンサー3(クリフ・ドライスデール:試合映像から)……観客の誰かが ピート・サンプラスに「コーチのために頑張れ」と声をかけると、彼は泣きだした。

ピート(ナレーション) 僕はおよそ10分くらいの間、感情的に我を失っていた。僕は全てを内に秘めていたが、ただ……それを外に出した。

(サンプラスが泣きながらプレーする映像)

マリー・カリロ 涙を流しながらエースを打つ人なんて、見た事がないわ。

ピート この試合は2回しか見た事がない。今回が3度目だ。僕は……とても感情的な人間なんだ、本当に。僕は多くの……自分の感情を……内に秘める。あの時は、僕は……ただ精一杯やるしかなかった。
僕はロボットじゃない。僕がプレーして試合に勝ったり大会で優勝するのは、僕がロボットであるからじゃない。そこにはハードワークと、テニスへの情熱があるんだ。

ローズ(ナレーション) それは、多くを表に出す事を好まない男にとって、意義深い時であった。
(ファンの間を通り過ぎるサンプラスの映像)

ファン ピート! ピート! 

ローズ(ナレーション) コートを離れると、サンプラスはファンに対して礼儀正しいが、外向的ではない。彼はスーパースターのイメージに合わない。

ピート 旅をし、ホテルの部屋と飛行機の暮らしは……わくわくするような生活ではないよ。

ローズ わくわくしない?

ピート しない。

ローズ つまり、ナンバーワンテニスプレーヤーである事は、魅惑的ではないと……。

ピート 違うよ。そういう事じゃない。

ローズ ……誰もが君を知っていて……

ピート 違うよ。つまり……

ローズ なぜ?

ピート なぜなら……

ローズ 君は多くのとても魅力的で、頭が良くて、面白い若い女性達も選び放題じゃないか。

ピート (目を丸くして照れ笑い)待った、あなたは間違った方向へ話を持っていってる。

ローズ でも、何が魅惑的でないんだい? 何がわくわくしないんだい?

ピート なぜなら……

ローズ 君は君のしたい事を……ゲームじゃないか!

ピート ゲームだ。

ローズ これはゲームだ!

ピート そして僕は僕の望む事をしている。けれども、旅行やホテルに滞在する事は……僕を信じて……

ローズ ああ、やめてくれ。

ピート 長く……長くやってくると……

ローズ 最高に面白い事について、愚痴を言うのはやめてくれ。

ピート 聞いて。

ローズ 君は何について不平を言っているんだい?

ピート 分かった。あなたは正しい。僕は不平を言うべきじゃない。もう不平は言わない。素晴らしい生活だ。僕はずっとやっていく……

ローズ その通り。

ピート 僕は40歳まで、やっていく。

(USオープンの映像:記者会見でのサンプラス、優勝したアガシ)

ローズ(ナレーション) しかし昨年の夏、彼の心にあったのはUSオープンで優勝する事だけだったが、そうはならなかった。サンプラスは練習中に背中を痛め、棄権を余儀なくされた。アンドレ・アガシがUSオープンで優勝するのを、ピート・サンプラスは見守らなければならなかった。サンプラスはただ家に帰った。

(サンプラスのトレーニング映像、アガシが見ている前で、プレーする映像)

ローズ(ナレーション) 今、彼の背中は治り、再び最高の調子にある…… 新記録ともう一つのグランドスラムタイトルは、彼の視野にある。

アガシ 今、彼は興奮をもたらしている。

ローズ(ナレーション) 彼は望んだものをすべて持っているように見えるだろう。しかしピート・サンプラスが大いに望む試合が1つある。ピート・サンプラスは、10歳くらいの頃からの長年のライバル、アンドレ・アガシと決勝で対戦するのを望むだろう。

ピート うん。

ローズ センターコートの観客の中にはロッド・レーバーがいて?

ピート もちろん。

ローズ 多分、君の両親も?

ピート 彼は……多分、僕の両親も。多分彼らは……僕は両親を来るようにさせるよ。それは……それは夢だ。つまり、夜眠ろうとする時に見る夢、それは……あなたは僕の夢を話してしまった。

ローズ 今日オーストラリアで、サンプラスは男子のグランドスラム記録更新に、また1歩近づいた。彼は準々決勝に勝ち、準決勝へと向かう。