Court Central(フランス)
2003年10月号
発言
文:ギー・フォルジェ


レジェンドが去っていく。史上最高のチャンピオンの1人に関する、恐らくテニス史の最も美しいページの1つが閉じられたのだ。

専制的なまでのグランドスラム記録保持者は、フラッシングメドウのセンターコートで、最後の大きな喝采を送る観客に別れを告げた。そこは2002年USオープン決勝で、彼が最後の公式試合をし、勝利した場所でもあった。

我々はもう、彼が何時間もの戦いの後にトロフィーを掲げる姿を見る事はない。決勝で彼はしばしば夢のようなテニスをしたものだった。それは彼だけが当然の事として期待できるテニスだった。

プロ選手にとって、熱狂し声援してくれる観衆にもはや会えないという事は、とても寂しいものである。さらに8月25日、別れのセレモニーでは、普段は精神的にとてもタフで、どんな状況にも冷静なチャンピオンは、感動のあまり涙を抑える事ができなかった。これから彼の新しい人生が始まる。それは彼にとり、一種のルネッサンスであろうと思わずにはいられない。

多くの人が彼を内向的で控えめ、時には退屈とさえ見なしていた。アガシやベッカーのような男達と同様のメディア効果を引き起こすためには、彼は常により多くのタイトルを獲得しなければならなかった。

地に足の着いた人間であるが、そしてそれがまさに彼の本質だが、彼はどこから見ても申し分のないプレーヤーであった。私は彼の他の対戦者と同様に、彼との試合は全て覚えている。勝利も敗北も。彼は信じがたいショットをあまりに簡単そうに打つ事ができたので、時に観客は試合中ボーッとなる事さえあった。

私の心残りは、1991年のデビスカップ決勝でアメリカに勝利した後、彼と握手できなかった事だ。とはいえ優勝自体が既に途方もなく素晴らしい事だったが。

彼はマッケンローのタッチ、アガシの力強さ、エドバーグのボレーのプレースメント、イワニセビッチのサーブを持っていた。乗っている時の彼に立ち向かう事を想像してくれ! しかし何よりも、彼は完璧なモーションを持っていた。最も難しいショットもこの上なくシンプルに見せるという、最高の能力を持っていた。

過去モハメド・アリあるいはマイケル・ジョーダンが、そして現在タイガー・ウッズが我々を魅了するものを、ピートは最高レベルで所有していたのだ。

ミスター・サンプラス、あなたがテニスにもたらしてくれたもの全てに感謝する。我々に夢を見させてくれて、ありがとう。そして時には、我々にも夢を実現する事を許してくれて。