今週のスポットライト5
同級生2
エルフ(1995)
恋愛SLG/ゲームAA/精液B−(顔2:口1)

冬休みを甘酸っぱい青春の思い出で一杯に満たそうっ。エルフの最高作のみならず、業界全てに大きな影響を与えたマイルストーン。

 
     

※このレビューは1999年6月に「SIN PLAN」に投稿したものです※

項目
評価
コメント
ストーリー
シナリオ
A+
下記参照。言うことなし。
システム
DOS時代とほとんど変わってない。フルスクリーンのみの起動、ゲーム途中でメニューへ戻れない、ギャラリーモードでHシーン回想ができない等欠点多し。ゲーム自体は非常に快適。インターフェースも良好。
キャラクター
A+
プレイ当時は女性タイプ完全網羅、と思われたが・・・。変態、電波(こずえはこれか?)、ロボ、メイド、巫女、ロリ、2重人格(ん?これはみのりか?)、鬼、幽霊、ふたなり、爆乳、レズ女王・・・どれもなし。
グラフィック
AA
95年当時の基準で。もちろん今の256色版も超美麗。
18禁ゲームとして
B-
ま、Hシーンはソフトです。

 

あいさつ:警告

こんにちは。ボクはPEROと申す者どす。今日は「同級生2」について話したいと思います。語りつくされているこの作品を今更声高に「最高最高!」ということもないのですが、そう思う人多いみたいで巷のレビューページでも「あとは省略」みたいな感じになっています。しかし、このゲームが発売されたのはゲームの世界では遠い昔の1995年。「東鳩」「ONE」「Kanon」等の恋愛ゲームが出そろった今、「同級生2」というゲームが持つ魅力も当時の思い出と共に色あせつつあります。だからこそ敢えて思いっきり書いてみました。自分自身この作品をどう評価しているのか再確認のためでもありますが、かなり熱苦しいことになってます。という訳で、あらかじめ言っておきますが長文です。レビューというよりエッセイです。ワンサイドエルフ放送です。「某Heart」や「某きめきメモリアル」等、他の恋愛ゲームを不当に蔑むような発言が各所にあるかも知れません。が、それはファン心理が引き起こす暴走であり、皆さんも明日は我が身と思って腹を立てず、見流して下さいね。

 

「同級生2」以前:サラダボール1994

ボクが初めてやったエロゲは90年発売のアリスの「闘神都市」。これは名作でありました。90年代に入ってエロゲは、ビジネスマシンから一大ゲームプラットフォームとなったPC−9801とともに、その勢力を急速に拡大していきます。お上の摘発などがありましたが、それはエロゲの世界がかなり大きくなりつつあったということの現れでもあったのです。しかし、作品的に良いものを作っているのはエルフやアリス、カクテルソフト(この頃はよかった!)など、ごくごく一部のメーカーだけ。「はっちゃけあやよさん」みたいなゲームが堂々と発売されてたり(しかも結構人気があった)して、業界としての成熟度はまだまだ低かったと言えます。丁度そんな時期、「ときめきメモリアル」もまだなかった1992年に「同級生」が発売されています。「同級生2」のベースフォーマットが既に完成を見ていた本作は画期的な傑作でした。しかし、「同級生」はヒットはしましたが、それがスーパーブレイクするほどにはまだ時は満ちてはいなかったのです。

何かが変わってきている、とボクが感じ始めたのが1994年です。この年に出たシーズウェアの「DESIRE 背徳の螺旋」。これは「マウス左クリック連射派」のボクが、初めてエロゲで全てのテキストをちゃんと読んだ作品でした。緻密な設定とリリカルな音楽、映画的な演出を随所に使っためくるめくストーリーにボクは初めて「エロゲ」に「エロ」以外の部分があったということに気づきました。この「DESIRE」より「リビドー7」の方が売れたというのが時代を思わせますが、「野々村病院の人々」「XENON」「Ambivalenz」と出た1994年はエロゲの業界が迎えた新緑の季節と言えるでしょう。ストーリーはますます緻密に。CGもどんどん美しく。FDの枚数も倍々ゲーム。今日のゲームを越えるのは明日のゲーム。明後日のゲームはもっと凄いぞ!という風に業界に熱気がみなぎっていました。ボクも毎月ワクワクしながら日本橋へと向かったものです。まだ世の中には開いていない宝箱が一杯。まさに早い者勝ちの生き馬の目を抜くような状態だったのです。

そんな感じで迎えたのがエロゲ史上もっとも実りが多かった年、1995年です。エロゲ最強の年の幕開けを飾るソフトとして「同級生2」が1月に早速発売されたというのは象徴的です。竹井正樹の殺人的に魅力的なポスターが貼られ、これをやりたいがために98を購入する人も一杯いたぐらいでして、もう始めから大成功は確定的な作品でした。エルフ嫌いだったボクもその2ヶ月ほど前に「同級生1(と便宜上呼びます)」に出会い、案の定ハマり2日でコンプ。「2」の発売日になんとか立ち会えました。

 

プロローグ:ブレイクスルー

「HD専用版」を購入後、早速インストール。240MBHDDを購入しておいて良かった!

とりあえずプロローグにド肝抜かれました。ボクはプロローグをやりながら「あれれ、今回はADVなんだ〜」って思いこんでました。なにしろプロローグにセーブポイントがあるんですから。当時、1日で終わるゲームがほとんどだったのに、本編までたどり着くのに丸1日かかるゲームをやった気分というのを想像できますか?「さ〜て、イーアルカンフーやるか〜」とファミコンつけたら鉄拳3が始まったというか、「え〜っと、消しゴム消しゴム」つって机の引き出し開けたらネコ型ロボットと目があったというか、「お〜い、テレビ見ようぜ〜」と妹の部屋に入ったら妹が後藤理沙になっていたというか。凄すぎてにわかに把握しきれない状況とでも言えばいいんでしょうか?「同級生1」の方はオープニングも無く、いきなりモノローグで始まるんです(ま、今でもフォスターの作品なんかはそうですが)。「1」と「2」を殆ど間を空けずにやったボクはその違いに愕然としました。

その長大な前説でゲームの舞台、そして登場人物が紹介されます。素晴らしいCG。素晴らしい音楽。そして素晴らしいキャラクター。プロローグに用意された各エピソードで、ゲームの舞台・八十八町には膨大なエネルギーが充填されます。そして、そのエネルギーを自由に扱える権限を持たされたのが我々のプレイする主人公です。主人公は学園恋愛ものでは珍しく、凡百の存在ではなくゲーム世界の全ての中心に設定されてます。街一番の有名人。男であろうと女であろうと自分に魅力を感じている、仮に犬猿の間柄のライバルであろうと何かと気になるそんな存在。皆が自分に何かを期待し、注目を一身に集める主人公は自分のパワーを抑えきれずにムズムズしています。自分の行動がこの「恋愛のために特化された世界」の全てを左右するのです。今年の冬休みは素晴らしい思い出でいっぱいになるだろう。なるに決まってる。画面から溢れでてくるその期待感に、ボクの心もキャラクター達の心とシンクロするようにその「予感」に震えました。

丸一日かかってやっと「同級生2」とタイトルが出た時。ボクは雷に打たれました。そして新しい時代の、その扉の開く音を聞いたのです。

 

本編1(ゲーム性):フラグの大伽藍

この「同級生2」、とりあえずエロとシナリオはおいといて、「ゲーム」として傑作です。

エロゲ界はいつのまにか「シナリオ至上主義」みたいな空気が支配的です。シナリオと音楽のクオリティが高いというだけの作品が「究極の傑作」という扱いをされ、しばしばゲーム性やエロさが無視されています。こういう風潮を非常に苦々しく思っているボクとしては、常にゲームとしての面白さを備えた作品を作り出してくるエルフが元気であった時代を懐かしく思ってしまいます。 エルフは常にゲーム性(攻略性)を考えたゲーム開発をやります。シナリオ・演出主導であった剣乃ゆきひろがシーズからエルフに移ってトータルゲーム「YU−NO」を出したというのは象徴的ですね。しかもゲームバランスがいい。「同級生」しかり、「遺作」しかり、難しすぎず簡単すぎず、攻略本に頼らなくても考えればちゃんとわかる絶妙のさじ加減。

(プレイした人無数にいるでしょうから今更ですが)ゲームの概要は二つの街+学校という広いフィールドを歩き回りながら女の子との出会いを楽しみ、親密度を高めてゲットするという非常に単純なルール。ですが、これが大変。前作の「同級生1」があまりにも同時攻略が容易なために、恋愛ゲームというよりは「女撃墜ゲーム」の様相を呈していましたが(ボクも2回プレイで全員攻略してエンディングは「なるほど・ザ・ワールド」の恋人選び状態でした)、「2」は一気に難しくなりました。

基本的に「2」も「1」と同じゲームシステムで、途中でオンリーシナリオに突入したりするわけではなく同時攻略も理論的には可能です。しかし、同時攻略できないように(?)非常にフラグが複雑に配置されています。しかも冬休みという非常に短い期間のなかで15人もの女の子との「思い出」作りをするわけで、それだけ入り組んだ構造。難易度はエルフの作品としては最高に高いです。ファーストプレイで誰か一人とでもENDを迎えられた人は非常に幸運。漠然としているとイベントなんか全然起こりません。

しかし、大変は大変ですが歩き回っていくうちにキャラクター達が、「そういえばあいつ、夕方になるとどこそこへ・・・」みたいに手がかりをセリフの端々から漏らしてくれます。そしてバッドエンド時にも仙人様が出てきてヒントを出してくれるので、本当に行き詰まってしまうということはない(はず)です。とは言っても「下級生」ほどヒントの情報量は多くないし、攻略はかなり腰を据えてかからなければなりませんが。しかし、それだけの苦労に報いる結果はちゃんと出ます。

このゲームのシステムは本当に良くできてますね。たった2週間ほどの短いゲーム期間に気の遠くなるほどの数の入り組んだフラグとイベントを詰め込んで、しかもバグも全然ない。芸術品です。ボクは文系だし、プログラム、ましてゲームの開発のこととかな〜んもわかりません。が、このゲームの仕組みはホントにどうなってるんでしょうか?シルキーズの「河原崎」「野々村」でマルチエンドを導入してテストしていたとはいえ、「同級生2」でのマルチシナリオを含むSLGゲームとしての完成度はそれらの作品に比べて何段階も上をいっています。この手の恋愛SLGというのはボクも色々やりましたけど、ことエロゲのレベルでは現在のゲームでも「同級生2」より遙かにショボイのが腐るほどあります。しかも同じ年にもう一つの傑作「遺作」も出せる当時のエルフの開発力というのは空恐ろしいとしか言いようがないですね。

 

本編2a(世界観):至高の蛭田時空

もっとも、ゲーム性という点では、ほぼ同時期に「ときめきメモリアル」という更に攻略性の高いゲームシステムを持つ怪物ソフトがありましたので、広くゲーム界全体として捉えた場合、「同級生2」だけが特別スゴイというわけではありません。

しかし、ボクは「ときメモ」その他、古今東西全ての恋愛ゲームと比べても、「同級生2」がナンバーワンであると言い切れます。

その理由は蛭田昌人の存在です。ジョーダンしかり、ペレしかり、どんな世界でもプレシャス・ワンの人間には「神」というニックネームがつくものですが、エロゲの世界で「神」と呼べるのは彼だけだと思います。「DE・JA」「ELLE」「ドラゴンナイト」「リップスティックアドベンチャー」と上げていくだけでキリがない。今のエロゲ界はこの人が耕した畑で仕事をしていると言っていいんではないでしょうか。その神様が本腰を入れて造りあげただけに、「同級生2」の世界はその存在感において別格です。

「同級生」の世界の特徴はその奇妙さです。特に変人の多さが顕著。女性キャラの半分弱、男の脇役キャラ全員。しばしば主人公。これらが皆変。「同級生2」に関しては女性キャラが幾分マトモな分、主人公が超エキセントリックです。こういうキャラクターが入り乱れていていればメイビーソフトのようなバカ世界になってしまいそうな感じがするのですが、世界全体としては極めて安定しています。一つ一つの要素を非日常で構成しているにも関わらず、「同級生」シリーズの世界観はプレイヤーにとっては極めて日常的に見えます。

これはスゴイことです。

リーフの作品や剣乃作品などは、強力な脇キャラをマトモな主人公がサバいていく形が基本です。これは世界観の軸がしっかりしている分、作りやすいです。しかし、その分脇キャラが立ちすぎた場合、主人公即ちプレーヤーとの距離が開きすぎてしまうという状況になってしまいます。いわゆる「萌え系」のゲームやテレビ東京のアニメなんか見てると、脇キャラの暴走に主人公が取り残されてしまい、自分が「コミケに紛れ込んでしまった一般人」ような気分になってしまうという場合がありますよ。ボクのように耐性のない人間には。

「同級生2」シリーズではむしろ世界観の軸、すなわち主人公を一番大きくズラしてしまうことによって全体をコントロールしてしまおうというやり方を取っています。これは技術的に難しい上に、失敗するとゲーム全体がまとめて沈没してしまうハイリスクな方法です。しかしこれは成功すると、主人公(プレーヤー)自身がより強く作品世界にリンクされ、ぶっ飛んだノリにも耐えることが出来るという大きなメリットがあります。

リアルな設定がリアリティを生み出すということはある程度は確かに正論です。しかし、人は虚構を常に求める生き物です。そして本当に人々を夢中にさせるモノがあるとするならば、それは現実を越えた虚構です。それは「日常的設定」より魅力的で、自分の心の欲求に対しては現実より遙かに「リアル」です。

当然、それには虚構の出来が非常に良いということが条件です。それは本当に現実的であるとかどうかとは全く関係なく、自己を埋没させるにふさわしい世界観の力があるかどうかなのです。「こんなこと出来るわけないよな〜」と思う気持ちが「でも、ホントに秘孔をついて人が破裂したらスゴイよな」という気持ちに駆逐されたとき、人間がその世界観にハマったということなのです。あやめ池遊園地では子供のお守りにウンザリしているお父さんお母さんが、ディズニーランドでは率先してドナルドダックのお面をつけハシャイでいる。それがよくできた世界観の持っている力です。

そういう観点でみると、この「同級生」世界は非日常の日常化という課題を見事にクリアしています。美しい母娘の下で居候し、宅は喫茶店。隣に住む幼なじみと窓越しに会話。街を歩けば美人にぶつかり、学校に行けばアイドルとの個人的交友。そこでは起こるはずのないことが平然と起こり、あるはずのないものが堂々とあります。にもかかわらず依然として舞台は等身大のままです。プレーヤー達は居心地の悪さを感じることなく、この世界の中にとけ込んでいけます。

手垢のついたレトリックを多く交えながらそれを新鮮に輝かせる技術は、数多くのゲームで培った蛭田氏の豊かな研鑽の賜物と言えるでしょう。画面をマウスクリックすることによってゲームを進めていく形式も効いてました。これはHシーンにおいては極めて不便ですが、こと日常の会話においては非常に効果的だと思います。「髪」や「胸」、色んな場所にそれぞれの反応があって、しかもそのコメントの種類が膨大です。それはどんな小さい部分に関しても同じで、背景のコンビニの看板をクリックしても、街中の名もないキャラクターに話しかけても必ずアクションがあります。神は細部に宿りたもう。この世界が非常に練り上げられていることを実感します。

ボクは今でもふと、ゲームを起動して何の目的も無しにウロウロしてしまう時があります。僕たちが昔マンガで読んだような世界。子供のころ、地図を開いてのび太達が住んでいる練馬区のすすきが原を探したものです。世界観の練度と自由度。八十八町を動き回る楽しさ。いずみや唯と同じ世界を共有できる気分。これこそ「同級生」(「下級生」)シリーズの本当の醍醐味ではないでしょうか。

 

本編2b(ストーリー):永遠の冬休み

女の娘を落とすのが目的の「同級生1」は女の子個人についてはあまり深く語られることはありませんでした。この「2」も大きなうねりのある太いストーリーはありません。一応「桜子」シナリオのような押し引きのあるものもありますが基本的には断片的で、小さなイベントを繰り返していくような感じです。ストーリーと言うレールの上の次の駅を探して行くような感じではなく、色々な場所を巡っていって散らばっている女の子との「思い出」を一つ一つ拾い上げていくような感覚です。

ボクはこういうのとても好きです。学生時代の思い出は些細な部分にこそ、その素晴らしさがあると思うのです。TYPESの「いちょうの舞う頃」というゲームをプレイしたときに気づいたのですが、尻切れトンボな会話やイベントと、繰り返される判で押したような日常こそが学校生活のメイン背景なのです。お目当てのあの娘に会えるかどうかわからない、会ってもいつも会話が弾む訳じゃない。そのような中でこそ、たまに起こる大きなイベントがより一層魅力を増すのではないでしょうか。「東鳩」や「ONE」では一回の一回の会話が膨大です。その情報量の多さは、現役学生の日常です。もはや学生生活を離れてしまったボクにとっては、「同級生」世界の断片的で些細な印象の山のなかに、一瞬光る宝石が見えるような感覚の方が、よりハマれるのです。

「同級生」シリーズはストーリーを楽しむゲームではなく、女の子と一緒の時間を共有しているというそのシチュエーションそのものを楽しむゲームなのです。「同級生」「下級生」のキャッチフレーズは「甘酸っぱい思い出作り」です。このゲームはクリアそのものというよりも、それを通じて意中の娘とのステキな瞬間をどれだけ作れるかというのがその真の目的です。

更に言うと、「同級生2」の神髄はストーリーを終わらせること、ではなく逆に「永遠に終わらない高校最後の冬休みをいつまでも過ごす」ことなのです。ゲームのセーブ・ロードを繰り返すことで永久に終わることを遅延された2週間の中で、我々は女の子達との思い出をいつまでも探し求めるのです。そのためのフレキシブルなゲームシステムです。この作品にとって、エンディングは蛇足でしかありません。「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」で夢邪鬼が作り出した「永遠の文化祭前日」と同じ世界を、今度はゲームで我々があたるや面堂のようにそれを体験するのです。それはとてつもなく甘美です。

そしてその思い出作りを大いにアシストしているのが蛭田氏独特の「会話」です。

ふざけてばかりで鈍感な(なフリをしている)主人公。その主人公に好意を寄せていても思うように伝えられないで主人公のペースに本意ならず巻き込まれてしまう女の子。彼らの会話は常に核心をつくことなく、熱くなりかけても最後はいつも笑いに変わってしまいます。それぞれ互いの思いを感じながら、それでいてつかず離れずの距離を保っているキャラクター達。当然、こんな連中ですから中押し、ダメ押しとたたみかけるような物語は望むべくもありません。しかし、シャイな会話の中にふと口から漏れる本音が、本当にココロに残るんです。唯が我慢しきれずに言ってしまった「お兄ちゃん」への思いや、いずみが屋上で見せたけなげさ。笑いで慣らされ、何の準備もしていなかったボクのココロの柔らかいトコにグサリと女の子の思いが突き刺さります。

これは80年代のあだち充等を強く連想させます。自意識過剰なキャラ。そして淡々と進んでいくなか、決めるときは突然トップギアに入るストーリー。これはよくあるイタいストーリーが大の苦手なボクにとっては非常に馴染みやすく、そしてキャラ達に置いてけぼりをくうことなく共に笑い、共に泣けました。

この組み立ては蛭田氏の専売特許というやり方ですし、しかもほとんどその技術は寡占状態。やっぱり難しいのかな?蛭田氏以外でやってのけたのは「ONE」ぐらいですね。これは感心しました。アリスソフトならやれそうだけど、「ランス」シリーズのような無国籍なシチュエーションではなく、学園モノという日常世界が舞台の作品ではやはり「同級生2」の右に出るものはありません。

 

本編3(Hシーン):左手では・・・。

そんな素晴らしい作品なのですが・・・・唯一、不満があるとしたら、Hシーン。しかもかなり不満です。「1」の方が大分Hでした。勝負作になるとH度が下がるというのはどこも同じなんでしょうかね・・・。

エルフでは「○作」シリーズと「下級生」以外はH度は全く期待できませんが、この「同級生2」も全体的に薄い。正直言って記憶にあんまり残ってないくらいです。なかにはフェラなどでお茶を濁して本番Hが出来ないという娘もいるぐらいでして、これはエロゲとしては大きな減点ですね。蛭田氏もやれば出来るくせになぜこんなことになってるんでしょう?

しかも竹井氏の描く裸はあんまり良くないです。この人、顔は本当にステキに描きますが、身体はそれに比べるとかなり落ちます。特に胸の描き方。上を向いたときなんかはどういうくっつき方してるのかわからない時があります。但し、塗りはやっぱりスゴイのでCGレベル的には非常に高いと思います。汁もまあ、一応描いてありますし。ウチのHP式に言うと「顔2:口1」というところでしょうか。友美と佐和子が顔射。美里が口射。どれもこれもバッとしないキャラばっかりなので汁が好きなボクには食い足りない限りです。

そして日常シーンであれだけ効果的だったマウスクリック方式が、Hシーンで大いに足を引っ張ります。右手が抜き差しならない状態になっているのに、いちいちマウスで色んなところを押していかないといけないのは非常に難儀です。「はよ次にいかんかい!!!!」という気分になってもしょうがないですね。

ちなみに、CGに関しては言うことないと思います。エルフの彩色技術は昔も今も業界最高ですし、原画の竹井正樹氏に関してもその実力は誰もが認めるところでしょう。しかし、98版でこのゲームが出たときは本当に驚きました。16色のCGとしては世界最高のレベルに達しているのではないでしょうか?エルフは元々コントラストの付いたキラキラした塗りが得意でしたから、竹井氏のタッチに非常に合ってました。まさに光に包まれたようなCGです。

「Hはおまけ」というのはボクの一番キライな言葉ですが、そうなってしまってますね〜。残念です。

 

「同級生2」以後:サマー・オブ・エロゲ1995

「同級生2」は大フィーバーを巻き起こしました。又聞き情報ですが、PC98版「同級生2」は20万本売れたと聞きます。「今の」エロゲユーザーの人口がほぼ10万人と言われているなか、当時のこの数字は天文学的数字です(「東鳩」でも多分10万本行ってないでしょう)。あまりの評判にエロゲに興味がない人もこれだけは持っているという感じでした。鳴沢唯と杉本桜子は長年「1」の田中美沙が守ってきたエロゲNO.1ヒロインの王座を奪い、そのままアニメージュファン投票でのナウシカばりの長期政権を築きました。コンシューマーを総なめにし、ポスタールーレットが大量に置かれ、版権グッズが大量に出回り、「何じゃこれ」というブレイクぶり。エロゲのキャラクターがいきなり巷の往来を闊歩し始めたのです。

そしてエロゲを取り巻く環境も大幅に変わりました。「同級生2」が暴力的なまでの勢いで押し広げたエロゲ市場を、「EVE 〜BURST ERROR〜」、「遺作」、「SEEK」、「VIPER−V16」、「夢幻泡影」、「黒の断章」といった百花繚乱の95年名作群が彩っていったのです。これだけそろって盛り上がらないわけがありません。エロゲは「美少女ゲーム」という一大メジャージャンルに成り上がりました。

「マカダム」や「オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?」、「天使達の午後」等の黎明期のエロゲがプレスリーであり、「のらくろ」であり、力道山であるならば、「同級生2」はビートルズであり、「鉄腕アトム」であり、馬場・猪木です。それまで貯められてきたエネルギーが「同級生2」というビッグバンで一気に解放され、世の中にメジャーカルチャーとしてのエロゲを浸透させてしまったのです。そしてその熱でもって今のエロゲシーンの隆盛がある訳なんですね。

 

あとがき:蛇足

ここまで我慢して読めた人は余程根気のある人です。ありがとう。今では「精液ゲーム専門」なんて狂ったHPの管理人をやっているボクにも、純粋にゲームにのめり込んでいた時代もあったんですね〜。ビバ・ヤング!

しかし、相変わらずエロゲ界は活気があるものの、レベル的には停滞している印象があるんですけどね・・・。分不相応な市場規模というんでしょうか。シナリオや音楽、その他一部のパラメータでは素晴らしい作品はあるものの、「同級生2」の持っていた「ゲーム」としてのトータルクオリティには足りないゲームばっかりです。「同級生」と並ぶ恋愛ゲームの双璧「ときめきメモリアル」は、今や完全に過去のゲームと化しています。しかし、それはある意味喜ぶべき事ではないでしょうか。それが日進月歩のゲーム界の必然なのです。むしろ、「同級生2」を1999年にもなってここまで褒め称えるレビューが出てくること自体、問題なのです。最近では新興勢力がノシていってるので価値が徐々に下がっていってはいますが、未だにエロゲ界に「同級生2」を越えるソフトは出ていないとボクは断言できます。仮に、明日「同級生2」が今のまま手直ししないで発売されてもやはり大ヒットすると思います。

結局エロゲ界は95年以来、あんまり成長していないということなんでしょう。進歩したのはCG技術と声優、あと属性の種類とノベルティ商売ぐらいですかねぇ。「同級生2」をゲーム性・キャラ・ストーリー・H他全ての面で上回ったゲームはこの先出るのか、それはわかりません。しかしそれが出た時が、まさにエロゲの次なるステージの幕開けと言えるでしょう。(意外とポリゴンゲームだったりして)。ちなみに「Kanon」とかは違いますよ。こういうこと必死で言ってると「エヴァなんかガンダムに比べたらや!!!」と青筋立ててるオッサンみたいですが、その通りです。

・・・それでは、さようなら。

 

ちなみにWIN版は1997年に出ました。DOS版とはゲーム内容は全く同じですが、CGの256色化。BGMの強化、フルボイス化(男の声もフルです)。そして当時は別途通販されていたスペシャルディスクのコンテンツであった「卒業生」が同梱。ボイスはテキストのみで先にプレイしまったので、何となく違和感を感じてしまうのはいかんともしがたいですが、レベル的には良好です。しかし、WIN版には非っ常〜〜に大きな失敗があります。それはプロローグの最大のヤマである、「SWEET ON YOU」に合わせてタイトル登場の直前にDISK交換があること。これはヒドい。こんな中折れをカマしてしまったらプロローグの素晴らしさが台無し!ですから、PC98を持っている人はプロローグだけは98版でやることをお勧めします。

 

こんな人におすすめ:
1:18才になったんですが・・・、「エロゲ」って何?
2:とき○モをやっていて「ナゼ!Hができない!」と思った。(by SINさん)
3:オレは何をするにもまず歴史から入る!目指せ!名作全制覇!

こんな人には、ちょっと・・・
1:このゲームを楽しめない人なんていない!だろ!?

(1999.6.29)