●特別ゲストが語る●
GREENHORN
ジェリーフィッシュ(2000)
ADV/ゲームB/精液B−(顔1:口0)

転校を繰りかえす主人公は、判で押したような生活にウンザリしていた。そんな彼に同級生、広瀬真理子に薦められるまま、「帰宅部」に参加することに。

 
     

・・・皆さん、こんばんは。
私のこと、ご存じ?知らない?そこの人は?・・・え?知ってる?よく知ってる?
ま〜、嬉しいですね。とても嬉しいですねぇ。

ハイ、今日は皆さん、お待ちかね、ジェリーフィッシュの「GREENHORN」。
これをお見せます。
え? 「GREEN」は知っているけど?「GREENHORN」は知らない?
それじゃ、そこに座って、私の話を聞きなさいね。

これは、去年の12月に出た、ジェリーフィッシュの「GREEN〜秋空のスクリーン」、皆さん遊びましたね、その「GREEN」のファンブックがこの11月に出たんですね。その題名が「GREEN AM BOOK COLOR OF GREEN」。その本におまけのCD−ROMがついているの。それが「GREENHORN」という訳なのね。これは「GREEN」のおまけストーリー、同じ舞台に別の主人公が出てくる、いわゆる、外伝みたいな、そんなお話です。

この「GREEN」、私、感心しました。映画のこと、よく勉強してる。とても立派。でもね、ゲームはあんまり良くなかったのね。特に映画のシーン、あれだけ映画のこと一生懸命、一生懸命、勉強しているのに、あんまり出来が良くなかったね。バカにしてる訳じゃないけど、マンガみたいだった、映画じゃなかった。それがね、とても残念。

でも、人物の描き方はすごく良かったのね。だから、このおまけのストーリーにも、ちょっと期待しながら見とったの。

最初のシーンは空から、始まるのね。とても綺麗な空。この主人公、転校してきた。「憂鬱だ・・・」と言っとる。主人公、転校ばっかりしてきたから、もうウンザリしてる。もう人生、イヤ。めんどくさいこと、イヤ。だから、新しい学校に来ても、ちっとも嬉しくない。クラスにきて、クラスメートに紹介されますね、でも、この主人公、何にも言わない。回りの生徒のやること見ては、文句ばっかり言ってる。ブツブツ、心のなかで言っとるのね。

こういう主人公、私は嫌い。私、強い男が好きです。あの素敵な、アランドロン、ジャン・ギャバン。みな、粋で強い男。だから、この主役の男の子を見て、ま〜嫌な男、軟弱な男、情けない男と思ったね。何でも知っているような顔で、クラスメートのことをバカにしている。そのくせ、自分では何もしてないのね、思っているだけなのね。思っているだけで、全て体験したような気になっているのね。ダメな人間、これはみんなそうなのね。だから、イヤじゃない。でもね、ダメな人間なのに回りの人間を見下している、これはすごく気分が悪い。そういうもの。これが若い人、例えば中学生が見るものなら共感を受けるものなのかも知れないけれど、大人の、立派な人がやるアダルトゲームの主人公としては、困ったな、と思ってしまう。これはつまらないゲームだわ、と思っとったの、初めは。

でも、違ったのね。彼、恋をするんです。隣の席に座っていた、クラスメート。名前が広瀬真理子って言うのね。この娘はとっても、魅力的ですね。 私、皆さん知っているかも知れないけど、女の人、嫌いね。だから、生涯、独身。私が好きな女の人は、この世の中でたった3人、マリリン・モンロー、マルレーネ・ディートリッヒ、それにウチのお母さん。その3人だけ。でも、この真理子も、かなり可愛いね。最初のシーン、その、情けない主人公が消しゴムを落とすんです。そうすると、隣の席で眠っている女の子がいる。それが真理子なんですね。ま〜なんちゅう、なんちゅう、可愛い、可愛い、寝顔。なんちゅう、おっきな、オッパイ。私、一遍に好きになってしまいましたね。

そんな訳で、主人公と、真理子は、同じクラブ、「帰宅部」として活動をする。でも真理子といても、やっぱり主人公はあんまり変わらないのね、自分だって、普通の人間、回りの人間を見下しているけど、実は普通の人間なの。可愛い子といたら、楽しい。早く、童貞を捨てたい。そういう自覚が、物語のなかで語られないのね。

柳沢というもう一人のクラスメートの男がいて、この人は主人公と同じような男。屋上で世界を全て知っているような、そういうことばっかり言う。やっぱり、嫌な男。主人公はその柳沢を「愚かだ」と思っているのね。でも、端からみると、同じなのね。ここが脚本を書いた人の色なんだと思うんです。女の子にもモテたい、華やかな人生を送りたい、でも、フラれたり、自分をおとしめるような、カッコ悪い羽目になるのはイヤ。だから、隣に可愛い娘が偶然いて、自分がカッコ悪いこと、自分が馬鹿にしているようなクラスメートのような、そんな真似をしなくても面白いことに引っ張り込んでくれないかと、日々思っているんです。要は、弱虫なんです。そう思うと、この話、とても面白く思い始めたんですよ。

そんな主人公がある日、倒れて保健室に担ぎ込まれるの。その時に心配して来てくれた真理子が、主人公を誘惑するんです。裸になって。主人公にキスをする。主人公はあの、真理子が裸でいる。も〜嬉しい、嬉しい。夢中です。顔射もしてしまうのね。でも、いざ本番となったときに、目が覚める。実は全部夢だったのね。一人で保健室で寝ていて、夢をみていたのね。ここで主人公は夢精をしてしまう。やっぱり寝ているだけでは、何も起こってくれないんです。とっても、とっても、悲しいシーン。

そのすぐ後ね、その後のシーンで、例の柳沢、嫌な男、その柳沢が言うんです。「オレもややこしいこと考えてないで本当は女の子とヨロシクやりたいんだ、でもできないんだ。」私、このシーンで、ポロポロ、ポロポロ、泣いてしまいましたね。現実が思い通りに行かない、それから逃げるために、理屈を色々付ける、世間を下に見る、女の子のイヤらしいところを妄想して、夢精する。そういう男たち。ま〜なんちゅう、切ない、青春。ここの部分は、私、すごく気に入りましたね。

でも、作っている人はそういう部分をあまりはっきりと、見せないのね。主人公が馬鹿にする世間、学校、生徒、それと主人公自身。それでも皆、同じ人生、同じ青春。そういうことを言ってくれない。主人公は最後まで変わらないままなのね。最後まで真理子次第の人間のままなのね。最後の方はストーリーもギクシャクしてて、ちょっと何を言いたかったのかわからない。主人公と真理子の間は何も起こらないで、また転校してしまいます。最初から最後まで、主人公の勘違いと思いこみ、それだけのお話。メッセージのない、作品。私としては弱虫の主人公が、どうやって変わるのか、そういう期待で見ていたから、やっぱりちょっと残念。おまけだから、あんまり文句いうのも悪いと思うけど、もっと良いお話になったと思うのね。

でも、2800円で綺麗な本とゲームが買える。しかもちゃんとHシーンと、お話のあるゲーム。これは非常にお得なものだと、思いました。つまらないゲームに何千円も払うよりは、よっぽどいい。

・・・そろそろ時間が来たようですね。
あら?あなた、話を聞いている間にすっかり映画人の顔になってきました。
デビッド・リーンそっくりになってきましたよ、ほら、そこのキンタマのシワあたりが。
今夜、私の部屋にいらっしゃいね。

それは、 皆さん、また、お会いしましょ。
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。

(2000.12.4)