今週のスポットライト3
GREEN
〜秋空のスクリーン〜
ジェリーフィッシュ(1999)
ADV/ゲームB+/精液B(顔1:口0)
キーワード:これで厄払いはすんだか?

文化祭での発表に向けて映画製作を続ける武蔵ヶ丘学院映画部。ライバルのシネマ研究会との対決に負けたら廃部は必至だ。しかし、撮影も大詰めにさしかかった頃、突然主演女優が降板することに。意欲を失って製作中止を決めた部長に代わり、新しい脚本で監督をすることになった主人公。文化祭までは僅か1カ月しかない。無事映画は完成するのだろうか・・・。

 
     

・・・1999年の忌まわしい記憶とともに・・・・

思えば。
この「エロゲカウントダウン」という汁HPを作った理由ってのは、98年という年のソフトが凄く面白かったからなんだわ。にくきゅうとかスクープとかも元気やったし。開設当初はコンテンツ、カウントダウンしか無くって、その時の第1位が今でもいるけど「VIPERシリーズ」。で、第2位にランクしていたのが「ラブ・エスカレーター」。VIPERは全作品合わせての順位やったから、実質ラブエスが1位だった訳。ラブエスの破壊力ってのはもう凄かった訳です。

そんなオレが同じスタッフ製作の「GREEN」を、1999年1月に今年の期待ソフトとして一番に挙げたのは当然だった。ま、この時点で既に1999年のオレの命運は決していたのかも知れないが。

それにしても1999年は暗かった。

この年オレが味わった気分ってのは、ナリタブライアン、ビワハヤヒデ、ヒシアマゾンのバラ色の平成6年から競馬を始めたファンが、タヤスツヨシ、ライデンリーダー、ライスシャワーの挫折の平成7年を経験してしまったときの気持ちと同じであった。強い馬が強いレースをして勝つものだと思っていた世界が突如乱れ、ダービー馬は全然勝てない。期待された馬は平気で人気を裏切り、華々しく勝った馬が直後死んだり。トラウマやで、これ。

発売延期は当然のように繰り返されて、仮に出てもマトモに遊べないほどに不具合を盛り込んだモノしか出せない。「バグ」と「延期」がこれほどまでに言われた年もなかったんじゃないの?しかも、トップブランドがそれをやらかすのでお話にならない。ブランド乱立でタダでさえ乏しい才能が拡散し、ゲームレベルの低下は著しかった。エルフとアリスだけはマトモやったけど、その2社にしてもゲームそのものは目立つのを出せなかったし。「ON AIR」、「STAY WITH」、「プレゼントプレイ」、「エヴァと愉快な仲間たち」、「VIPERーF50」と、オレの本命も当てつけのように大コケした

「GREEN」も考えられる限りのドタバタを網羅。ラブエスの頃からそのアマチュアリズムは際だっていたが、今回も作業は遅れに遅れ、発売予定日はあってなきが如し。延期の度にゲーム規模がでかくなってるし。発売元とのゴタゴタでマスターアップが終わった後で「重大なバグ(という公式発表)」が出るという信じがたいことにもなったりして、問題山積でもう出ないのでは〜?という感じにもなったな。最初の頃は怒り心頭だったけど、夏頃にはもう諦観。98年の状況ではプレイする気にもなった「ONE」系のゲームも、99年のオレの心境ではとても遊ぶ気にもなれず、「加奈」や「Kanon」、「こみパ」が受け入れられるシーンってのはむしろ危機感を助長していくばっかりだった。

そうしてどんどんオレの心はすさみ、オーストラリアにでも移住しようかな〜大橋巨泉のようなことまで考え始めた12月29日、ついにオレの天中殺の大元凶「GREEN」が店頭に並んだ。それも恐ろしくギリギリまで折衝を繰り返しての発売決定だったらしい。待ったぜ〜。

という訳で、今回の「GREEN」のレビューは当然スポットライトなのであった。

 

これから後はかなり叩く予定なので、誤解を招かないように最初に言っておくと、この作品は決して地雷ではありません。多少不具合はあったけど良好なシステム、ストーリーも完成度高いし、CGはキレイだし、非常に作り込まれている作品やと思う。オレが心配だったのは急な発売だったんで、未完成品を出して来るんじゃないの?ということだったんだけど、一応完成してますな。ま、メインヒロインの真琴以外のシナリオのおざなりさが気になるといえば気になるけど、これは多分仕様でしょ。

で、起動。
主人公じゃなくってメインヒロインの真琴の方のモノローグから始まる。
スタッフとセリフが交互に現れる、まさに映画的な雰囲気のオープニングだ。

ちなみに、オレはもう主人公のモノローグから始まるゲームにはもうウンザリしていて、朝起きるところから始まって、何かわけわからん女が部屋に入ってきて・・・、

わけわからん女:「もう、いつまで寝てるのよ、○○!学校遅れちゃうよ!」
主人公:「何だ?どこから入ってきたんだよ・・・。ううん・・・。」
わけわからん女:「玄関から入ったわよっ。キミのこと頼むっておばさんから鍵もらったんだから。ほら!起きてよっ!」
主人公モノローグ:
”このやたら元気な女は××、隣の家に住んでいるんだが、毎朝こうやってオレを起こしにやってくるんだ。おせっかいにも程があるぞ。クラスの連中のなかにはこいつのこと、可愛いっていう奴もいるらしいが全く物好きもいるもんだ。”
選択肢:
『おとなしく起きる』
『もう少し寝かせろ』

・・・・・。
ま、こういう始まり方されたら、即アンインストールしてしまうぐらい飽き飽きしているんだけども。この作品はさすがにそんなことは無かった。

とはいえ、特に気をてらった作品でもなく、ストーリーや演出的には非常にオーソドックスなやり方を採っていますな。このオーソドックスな手法ってのはとてつもなく陳腐になるという可能性はあるんだけど、ちゃんと作ってあれば全時代的にいつでも力を発揮できるポテンシャルがある。この作品はさすがに時間はたっぷりあったので、細部にわたる作り込みってのはしっかりやってある。コンテの切り方とか、シーンのつなぎ目のちょっとした演出にとどまらず、例えば、口パクアニメとセリフの切れ目がシンクロしているとか、人物のテーマ曲が人物の立ち絵が出るのと同時にちゃんと始まるとか、そういう部分にも好感が持てる。特に気に入ったのは男のキャラの立て方。ベタな話に魅力あるキャラってのは成功作の典型やけれども、部長や音楽担当の本山、真琴の弟など、それぞれ非常に個性があるし、親しめる。女性キャラは全くフツーやったけど、ワキ役はしっかりワキ役らしく彩りを添えていて、このキャラクター達の個性がオーソドックスなストーリーを魅力的にしていたと思う。ちなみにオレは「クレイジーナックルII」以来、久々に男の声もONにしてやった。ま、役柄の物語における重要度と声優の演技レベルが比例してるのは笑ったけど。ことレベル面だけでいえば、エロゲでここまで作ってあるのは大したモノだと思いますわ。

んがしかし。しかしですよ。力が入っているかといって、面白かったかというとそうとも限らないわけで。作り込み過ぎというか、演出過多な部分がかなり見受けられる。特にテキストはもう時間の許す限り書き続けたという感じで、序盤から重いこと重いこと。どいつもこいつもめっちゃくちゃ喋りやがる。やれ、ガファーがどうの、ディゾルブだワイプだ、キーライトだって、とりあえず序盤は映画用語、映画関係の故事が満載。あのさ〜、思いついたモン全部入れることないと思うのよ。こんなん2、3個で充分やねん。毎日毎日聞かすな。淀川長治さんみたいに面白く話してくれたら聴きたいけど、単なる豆知識やないかい。

しかもこのテキスト、「もじり」がかなり酷くてねぇ。新宿が新竺なぐらいはまあ許すとしても、問題なのは人名。ビビアン・リーバイス、フランク・キャンプ、トム・バンクス・・・。なんちゅう投げやりな。うさんくさいったらありゃしない。これなら全く違う名前の方がよっぽどマシやで〜。これワザとやってんのかなぁ。ヒッチコックなんて、ビッチコックですよ。こんな放禁用語男のエピソード聞かされても有り難くもなんともないわいな。

投げやりといえば、男性登場人物の名前。全員現サッカー五輪代表の連中から採っている。もう適当の極み。しかも、何か序列があるような・・・。

Aランク(主要登場人物):小野(主人公のデフォルト名)、中田、本山

Bランク(ワキ役):小笠原、小島、高原

Cランク(名前だけ):宮本、遠藤、明神

これって各選手への期待度と比例してるんでしょうか?何で稲本おらんの?しかも小島は小島でめっちゃアホキャラやし。この時点でガンバサポのオレとしてはジクジたるものがあるんやが・・・。中村もおらんなぁ。で、唯一男キャラで現五輪代表以外のサッカー選手名がある。卑怯姑息なシネ研部長、財前がそう。何で財前?謎すぎる。中田との関係かなあ(ってオレが気に病む問題ではないと思うけど)。しかし、ラブエスもそうやったけど、こんなにもあからさまなサッカー選手名つけなくても。同じサッカー選手でも野田とか、古賀とか、平岡とか、目立たんのなんぼでもおるやろう。気になってしゃあない。

で、映画の撮影中のテイクはことごとくアニメなんやけどね〜。これもクセモノ。いちいち長いっ。真琴が何度もNGをだしてしまうシーンがあるけど、そこも全部最初からやり直し。だるいことこの上ない。時々メッセージスキップ受け付けないし。しかも、それを上回るインパクトが終盤に待ってまして。最後の映画の上映当日は、今まで撮影したシーンを全てフルサイズで繋げて見せてもらえます。いや〜有り難いな。今まで苦労して切り抜けてきたシーンをもう一度。これ、製作者の意向としては「それぞれのシーンをもう一度思い出してもらって、感激を味わってもらいましょう」という「ドラゴンナイト4」的な気持ちであったんだろうけど、残念ながらこれ、「DE・FANA」ですわ、姫屋の。地獄は一回でいいでしょ、普通。

更にこのゲーム、ボーナスシナリオってのがあって、トゥルーエンドをみると音楽担当の本山君が主人公になって加奈子センセをモノにするというお話に入れるんやけど、このシナリオもフルゲームと同じだけの分量がある。もちろん、最後にしっかり映画も上映。加奈子センセとのHもあるけど、これだけのために1ヶ月分もプレイできませんわ。ストーリーに関しては万事が万事この調子。過ぎたるは及ばざるが如し。何事も節度ですわね。

 

さて、肝心のエロシーンに関して。

これは非常に出来がよかったと言える。エロシーン単体としては。

この「GREEN」では、エロアニメでドゥーハン並みのぶっちぎりの強さを誇るソニアのVIPERに勝てるのか?というのが一つの興味としてあった。で、結果どうだったかというと。確かに今回ラブエスよりは遙かにアニメの質は上がった。が、残念ながらアニメそのものの流麗さではまだソニアの方が上だった。しかしながら、他の部分では圧勝やね。テキストや構成、レイアウトなど総合的な出来では、現時点で他に比べるモノが無いほどの圧倒的なエロアニメを実現したと思う。これは素直に褒める。特に真琴のエロシーンは全編アニメでいつ終わるとも知れない長尺のシーンが繰り出される。例えばラブエスではフェラシーンは動作カットごとに7種類あってそれらが別々に出てきた訳やけれども、今回は1つのフェラシーンにそれらを全部注ぎ込んだような形になっていた。労作ですわ。演技指導と称して何度もキスを繰り返す様(しかも真琴の方から)とか、フェラに入る前に真琴がチンチンを触りながら色々コメントしてくれたり、演出的にもツボ。めちゃHです、これは。

しかし、ひとつひとつのシーンごとに力を注ぎすぎた結果、Hシーンの数が減ってしまったのは痛い。どれだけエロシーンがよかったとしても、シーンにすると真琴が3個、茜が1個、加奈子センセが1個、有紀恵先輩が1個の実質6個(+バリエーション3つ)。かなりのエロアニメの量を用意したにもかかわらず、ものスゴ少なく感じる。ここら辺、10分×6のエロシーンにするか、5分×12のエロシーンするかってのは考え方やけど、これだけ長いストーリーでこのエロシーンの配置は密度が低すぎるんではなかろうか。最初のエロシーンまで何時間もかかるし〜。オレの持論としてエロシーンの間隔はチンポの冷めない距離で、ってのがあるんやけど。チンポが萎えるどころか、途中で一泊できますよ、これは。

汁が無かったってのもポイント低い。特に口内射精した後、吐き出すシーンが無いのにはちょっと参ったね。その割に身体に出すとか、膣内射精して溢れる汁はドバドバでるんや、これが。顔射シーンも1回のみ。それなのに、その1回限りの顔射シーンはエロゲ史上最強レベルやったりするし。もう、もどかしいねんっ!!!逆に「何で出し惜しみすんのや!!!!」という気持ちになってしまう〜。

エロゲに関してプレイをし続けるモチベーションはストーリーの求心力よりも、エロシーンに対する渇望であるべき。という訳で、この作品にはプレイをし続ける為の燃料になるべきエロが不足していると思う。やっててチンポが萎えてる時間がほとんど。ストーリーに対する優先度が高すぎ、エロゲとしては失格作ですわ。こんな無粋なこと、「Kanon」なら言わないよ。でも敢えて言うのは、監督の滝さん自身がマキノの本のなかで、エロが薄いゲームを指して「バカヤロー!そんならコンシューマー行けー!!」って言ってるからね。それなら、これはイカンでしょ。

 

この「GREEN」はずっと、ラブ・エスカレーターを越えられるか?ということを言われていたし、スタッフもそのつもりでやってきたと思う。確かにアニメの質もストーリーの整合性も「GREEN」の方がラブエスより遙かに上やった。でも、出来の悪いはずのラブエスの方が断然面白かったよなあ。ここら辺が難しいところ。オレの指向性もあるんやろうけど。ラブエスはストーリー、キャラ、エロがそれぞれ相互補完になっていて、一つが気に入らなくても他のところで楽しみを落とし込むことができたけど、「GREEN」ほどに堅牢な体制を作られてしまうと、ストーリーが気に入らなかったらもう完全にアウト。

この作品に関してオレが思ったのは「もっと製作時間が少なかったら・・・」ということ。完璧を求めて延期延期を繰り返したことが本当によかったかどうか・・・。何しろ、シナリオのMAB氏ってめちゃくちゃ凝るからなあ。ラブエスの時もそうやったように、延期されたらここぞとばかりにテキスト増やしたやろうし。イランとこに贅肉がつきすぎたんちゃう?これだけ膨大なシナリオで、かつゲーム性のない一本道のクリックゲーム。何度もやれないって。オレがやりたいのはゲームであって、挿し絵つき小説じゃない。とことん時間かけたからっていいもんができるとは限らないって中田部長も言ってたでしょうに。それに延期日程分が全てシナリオの修正増補に使われて、どんどんゲームが重くなっていったかと思うと、限りなくドス暗い気持ちになってしまうのであった。これなら、お手軽にアニメ見れるし「カオスクィーン遼子」でええわ。

何か、レビューを書いているうちにこの作品、実はVIPERと変わらない評価になってきているのではなかろうかという気にもなってきたけど・・・。長すぎるストーリー+流麗アニメと簡素すぎる話+流麗アニメ。どっちがいいのやら。とにかく、このゲームに関しては怨念の部分が強すぎてね。これだけ待たされると素直に喜べない部分もありますよ、そりゃ。「ラブエス」も延期しまくったけど、オレは既に出てる状態でプレイしてるから。そういう点では「GREEN」には気の毒やとは思うけど。

更に余計なことを言っておくと、作り手達の満足度はこの際置いといて、あれだけ延期してユーザーや流通に迷惑かけまくっても、このゲームは皆の圧倒的な評価を勝ち取れるような出来やったかというと、です。これは間違いなく言える。

「満足できる作品作り」ってのは誰にとってなのよ?
作り手?ユーザー?スポンサー?

またゲームからの引用やけど、「才能ってのは自分で思っているだけではダメ。人から認められて初めてそれを才能と呼べる」って言ってたでしょ?自分達だけが満足ってのはアマチュアの考え方よ。延期した時間でどれだけのことができたか知らないけど、ジェリーフィッシュの方々もプロなら、回りの人間も一緒に幸せになるような形の作品作りをしてはどうでしょうか?今回のように、ドロ沼の末に自分たち「は」満足できるってのはもうこれっきりにしてもらいたいですね。それには妥協が必要でしょ。でも、その妥協が必ずしも作品にとってマイナスばっかりじゃないってのは、この「GREEN」が証明したんではなかろうか、と思う訳です。

次回作(のはず)の、ラブエスのWIN版、期待しています。

 

・・・これでグチばっかりのレビューはおしまい。

過度の期待は禁物、というのが去年の教訓として残ったわ。
でも、これで99年の澱はなくなったしホッとしたね。
今年はいい年でありますように・・・・。

 

(2000.1.12)