今週のスポットライト2
Stay with・・・
〜カレンがくれた季節〜

天津堂(1999)
ADV/ゲームB/精液C(顔0:口0)
キーワード:しかし、自分で書いといてなんだけど、
「天津堂はこうでなきゃあダメなんだ!」
「天津堂がそんなことしちゃあいけないんだ!」
ってまるっきりストーカーやがな。

ラボで見つけた廃棄処分される「はず」のアンドロイド。なぜだか気になるその娘を盗み出す主人公。「カレン」と名付けられた、その限りなく人間的な彼女には、実は重大な秘密が・・・。

 
     

世の中、「Kanon」だ「こみっくパーティ」だと皆さん楽しそうやね。まあ、発売延びに延びてたんで一日千秋の心持ちで待っていた人たちの熱狂ぶりもわかりますわ。ゲーム買った帰り道なんぞは、はよ家つかんかい!と思っていたことでしょうな。

オレにとっては、この「Stay with」がそういうゲームやった。何しろ天津堂。「マーシャルエイジ2」でオレの心を一気に恐慌状態に陥れた後、「ホントにここ、大丈夫なんか?」という不安のなかで一年待つのはひっっじょ〜に辛かった。

去年、オレはこのサイトで「対天津堂7ヶ条の要求」を書いた。まとめると、

1・WINゲームらしいシステムとユーザーインターフェースの確立!
2・流行りを取り入れろ!
3・女の子の数を減らせ!
4・ファンタジー抜きで等身大の世界観の作品を作って!
5・乳輪をピンクにせよ!!
6・表情が大味なのはちょっと・・・・
7・ウンコをやめよ、精液だそう!

とまあ、こういう感じやった。

そして発売前に告知されていた「Stay with」の概要を見てオレは驚いた。フルカラー、フルボイス、機械人形の女の娘を中心にすえたヒューマン・ラブストーリー(残念ながら学園モノではなかったが)。つまり、いきなりオレの出した条件の1〜4を一気にクリアしてきたのだ!スゲーぜ!天津堂にはまだフレキシビリティがあった!オレは嬉しかった。そして待った。で、買った。オレにしては珍しくフルインストール。ヤル気マンマンやったんや。

まあ、よく考えたら、この時点での異様なまでの期待が後に響いたのかも知れんが・・・。

 

CD−ROMデザインがとてもキレイだ。銀とゴールドの色に分けられたDISC1と2。箱を開けただけで、「おお、今回はやるな」と思わせるムードが。そしてその印象に違わず、ゲームは非常に高揚感に満ちてオープニングを迎えた。

まず、CGレベルが非常に高い。ここらへんは流石だ。特に背景は見事としかいいようがない。これって3DCGなんだろうか?写真をレタッチしたようでいて、全く違う。秀逸。で、いつのまにかアクが強いという定評が出来てしまったRB26DETT氏のキャラ原画もなんだかんだとやっぱりカワイイ。巧いという点では議論の余地はない。が、やっぱり出てきてるなあ、ホルスタインが。今までになく等身大の世界観を描いているのに、なんでこんなあまりにもファンタスティックな巨胸を出してくる必要があるのかさっぱりわからんが。

そして、驚いたのは音楽の良さ。まあ、いつも天津堂の音楽というのは悪くなかったが、今回は最高。MIDIだとウチの環境では音声とのバランスが悪かったのでCD−DAを選択したが、キラキラしていて非常に心地がいい。「To Heart」のような音楽そのものがアイデンティティを持っているような感じではないが、ゲームのBGMとしては言うことなしだと思う。そしてエンディング曲が、なんつ〜かエロゲとは思えないホンマにエエ曲なんで度肝抜かれた。ディズニーかと思いましたわ。泣く。曲だけで。

「カレン」を巡る伏線を随所の張り巡らせてあるストーリーも何とも奥がありそうやし、やたらプッシュしてただけあって声優もがつくほど巧い。システムも快適(フルスクリーンのみの起動というのは不満やけど)。始めてから30分で「こ、これはやる!最高傑作完成や!」と自分の心臓がバクバクと激しく打っているのを感じてしまった。うおおお!

 

・・・だがしかし。だがしかし!

結局イマイチだったんや!これが!

何でこうなるんじゃいいい〜〜〜いぃぃぃぃ!!!!!

シナリオが軽い!軽すぎる。序盤はあんなにいい感じやったのに、ツインターボも驚く大逆噴射。中盤以降の人物の描写が大問題。どいつもこいつも物事の判断が早すぎる!例えば、カレンと和也との愛の芽生えにしても、本来なら

「萌芽(好意)」−「双葉(特別な親しさ)」−「干ばつ(すれ違い&自己欺瞞)」−「肥料&水(特別なイベント&涙)」−「開花」

と順々に来て欲しいもんなんだ。それがこの作品では、「萌芽」−「開花」といきなり恋が発生する。こんな早くできるもんはカイワレ大根ぐらいであって、そんなもんはサラダのトッピングぐらいにしかならんのである。キャラクターたちに逡巡する時間作って、プレーヤーが感情移入するタイミングを与えなアカンやろ。フォスターやないんやから。

これは他の人間とのラブストーリーだけでなく、この作品全てに言えること。カレンを利用して、主人公の父親を出し抜こうとしているシリアスストーリー部分のキーマンである美津子にしても、「実はこの人にはこういう事情があってこういう企みを計画したんですが、本当はこういう気持ちであって・・・」みたいな非常に重要な裏事情を、ト書きが一気に全部バラしてしまいよるんだ!ト書きが!お前は誰や!ト書き風情が何でそこまで知ってる!?せめてモノローグにしてくれ〜。しかもそのキーマン美津子も、ふと出てきた確執の相手(主人公の父親)に一喝されただけで「ごめんなさい」となってしまうんや。そんなんやったら最初からおとなしくしとれ!!

もう全体的にこんな調子なんで、序盤にせっかく用意された伏線が全く生かされてない。竜頭蛇尾を地でいくようなストーリーになってしまっているぞ!「マーシャルエイジ2」の尻切れトンボに匹敵するインパクトだ、これは!この作品はマルチエンドとは言っても基本的には1本筋のストーリー。その肝心の幹がちゃんとしてないと枝(各エンディング)まで栄養が行くわけないのだ。何ぼCGや音楽が良くってもこれじゃあ、「まじかるカナン」と全く同じ。

天津堂にシナリオのことで文句を言うことになるとは思わなかった。天津堂といえば今まで誰がシナリオを書いても供給過多と言ってイイほどの油っこいストーリーばっかりだったのに。今回は恋愛モノとしてもシリアスドラマとしても極めて舌足らずで中途半端なモノになっている。時間がなかったとは言わせんぞ!天津堂の2大傑作、「JINN」と「GOICE」が3ヶ月(!)の間に出てることを考えたら、1年待たされてこれぇ?という感じは否めないな。

 

しかも!!!!
Hシーンがウスい!

(通り一遍のことは書いたので、そろそろ本題に行くで)。

今回のHシーンはもうホ〜〜〜ントに味気なかった!これでも濃いという寝言を言う人もいるかも知れないが、天津堂がこの程度で満足しとったら汽車も電車もみな止まるっちゅ〜ねん。確かに、具体的な描写を女の娘が連呼するという点ではある程度の天津堂テイストがあることはある。しかし、全然セリフがグッとこない。天津堂ファンが期待してるHシーンとは、

「んふぅ!ああん!い、いやぁ、そんな赤ちゃんみたいに吸わないでよ〜!!!!」であり、 「ふふふ、いっぱい出た。すごいよ、こんなにいっぱい出すやついないよ。それに2度目でもこんなに濃い。」 でありはぅ!ひゃうん!ふひゃん!わたし、こんなエッチな子じゃないのに〜!!!!!!」であるのだ!「ストーリーが良ければ、これでも十分Hがなりたつ」と思ったら大間違い。昔の天津堂はストーリーもHもちゃんと両立させてた。しかも「とにかくHだけはハズセね〜ぜ!」という姿勢がオレのハートを鷲掴みにしたんや。有名声優起用で遠慮したとは思いたくないが、シーズやPILみたいには行かないのか?

ADV面では納得のCGも、Hシーンに関しては大いに不満。

今回RB26DETT氏の絵は「マーシャルエイジ2」より大分繊細さが戻って来たような感じがして、その部分は良かった。カレンの乳首はしっかりピンクだったし。だが!チンチンCGを描かない!シルエットすら描かない!当然69もフェラもパントマイム!そのフェラチオシーンもCGでは何と1枚しかない。どういうこと?これ?ホンマに天津堂か?そんでなぜホル系の娘の乳首だけは相変わらずやねん!しかも、「マーシャルエイジ2」に続いて汁なし!!!!!今度はもう本当にゼロ。

こうなると腹立つというか、虚無やね。

確かに、「クイズいっちょまえ」とか「G.R.」の「ガッツマン〜」とかと比べたらそりゃあそんなに悲観するべきもんじゃあ無いかも知れん。しかし!今回のこのゲームにかける天津堂の意気込みを考えたら、ハッキリ言って期待はずれ3乗。というか、今回のHシーンはただの不出来というよりは、天津堂のHシーンへの意識に根本的な変化があったんではなかろうかという感じすらする。

なぜかというと、断然のヒロイン・カレンのHシーン。これが全Hシーンのなかで一番H度が低いから。こんなことは、ゲーム進行にしたがってH度が増していく今までの天津堂作品では考えられない。しかも、全員とHができん。オナニーやレズを見るだけのキャラが3人もいる。やんやんですら脱がした天津堂がなぜ?エロさというのはストーリーなど違って、出来不出来の差がそんなにない。濃いところはいつでも濃い。

そう思うと、この作品には何かウスラ寒いものを感じずにはいられない。「マーシャルエイジ2」はなんやかんや言ってもHの数だけはふんだんにあったし、CGだけの問題やった。しかし、「カレン」ではもう明らかにHが薄味。これからは、そういうことなの?汁は?濃いHは?絶倫主人公は?みんなリストラなの?

 

・・・今までオレが天津堂というブランドに抱いていたイメージというのは、

1:ゲーム性が高く、しかもバランスがいい(マーシャルエイジや激闘同窓会、JINNなど、難易度もそこそこでHシーンの配分も良く、プレーヤーを飽きさせない)。

2:ストーリーが熱く濃い。テキストも同じ(特にHシーンの濃厚さは業界随一)。

3:CG・音楽ともにハイレベル(GOICEなど、特に98時代CGは破格)。

4:汁(JINNのイメージ強烈)。

5:ウンコ(まあ、これはどうでもいいが)。

どうだ。素晴らしいメーカーじゃないか!アリスなんてメじゃね〜ぜ!で、今回は当然、ウンコはともかくも、これらの要素が全て入って更にWIN時代に合わせたプラスαを加えてくるというのがオレの本作への期待だった。

しかし!!!!実際は今までの天津堂の美点を全て捨て去った、ゲーム性なし・ストーリー貧弱・H淡白・汁抜きという真逆の作品やった!残ったのは音楽(音声)とCGのみ。わざわざ自分たちの武器を捨てて丸裸で戦場に出てどうする!独特なのはもはや乳首だけやんか(しかもこれはハンデ)!これでいいのか!!?これで!!?しかも、それを「これでどないじゃ!」と自信満々で送り出す天津堂。困ったなあ。

と、ここで別の不安が。それは本当にこういうモノを天津堂が作りたかったのならどうしようということなんだ。今までのカルトヒーロー的立場を脱却したい。つまりF&Cになろうとしてるのか、と。まあ、そんな怖い事はないだろうけど、そう思われても仕方ないよ、この作品なら。H度低いし、「感動的」な話やし。

しかし、本当にそういう天津堂を皆が望んでいるのだろうか?「Hとストーリーとゲーム性の高次での融合」こそがエロゲの目指す地平だと、オレに教えてくれたのは他ならぬ天津堂だったはず。98時代からの天津堂ファンが支持している作品はやっぱり「マーシャルエイジ」と「GOICE」じゃないの?なぜ、素直にそっち方面の作品を作ってくれない?そうでなくて自分たちの好きなモノを作りたいなら、それなりに納得できるモノを出してきて、いつまでもリメイクの話ばっかりしてるようなオレを黙らしてくれ。

「マーシャルエイジ2」や「カレン」はファンが喜ぶ作品でも、納得できる作品でもない。喜ぶのはちょっと切ない気分を味わえそうなゲームやったらダボハゼみたいに突っ込んでいって、「けっして傑作ではないけど、なかなか楽しめました!最後は思わず泣いてしまいました!今まで天津堂の作品はやったことなかったんですが、いいブランドですね。カレン萌え〜(木亥火暴)!!!」みたいな愚にも付かんことを言うPIAきゃろゲーマーぐらいやで。ホンマ。オレは天津堂にそんなブランドになって欲しくないぞ!

とは言え、単なる一エロゲーマーであるオレがどれだけ言っても、大勢が「カレン」を支持したらもうグウの音も出ない。しかも結構「カレン」はいい、と言っている人もいるんだ。もし次回作に、「マーシャルエイジ1」「JINN」の延長戦上ではなく、この「STAY WITH」の延長戦上にあるゲームを作ってきたらオレの天津堂サポーター人生も終わりだ。もう他人や、他人!伊丹にでもどこにでも行っちまえってんだ!!バカァ〜〜〜!!!!

でも、お別れするにしてもやんやんを汁にしてから行ってくれ〜!!!!!

 

天津堂の関係者の方々、
ファンという立場を利用した暴言の数々、誠に失礼!
ごめんなさい。

(1999.6.21)