「日本人科学者の創造性」
野依教授のオンリーワンに生きてQ」より
2002年8月6日(火)読売新聞
2002年8月8日 遠山 勉
野依良治名古屋大学大学院教授が読売新聞に連載している標記の記事を引用しつつ、日本人科学者の創造性について考察してみたい。
野依教授によれば、「優れた科学研究は、個人の創造性とそれをはぐくむ環境がマッチして初めて生まれる。日本人は十分な創造性を持つ。しかし、社会の風土がその発祥を阻み、わが国の科学研究の発展を困難にしている。」と指摘する。
多くの科学者が、米国でその才能が開花している。例えば、
中西香爾氏・・・・・コロンビア大教授(自然界、特に生物、生命現象にかかわる有機分子の研究)
岸義人博士・・・・ハーバード大教授(フグ毒物質の化学合成:複雑天然分子の合成の第一人者)
野依教授はさらに指摘する。「日本人研究者の現状を垣間見て、首をかしげる。公私にわたる画一的な処遇と一律の定年制だ。」「国も社会も「評価」の重要性をうたいながら、明確に優れたものを認めない。この頑迷と無為の蓄積は、まさに教育界にまん延する悪しき平等主義の延長である。」「これで果たして科学技術創造立国はあり得るのか。」と・・・・・。
2002年7月3日に出された知的財産戦略大綱では、研究者へのインセンティブの付与をも視野に入れているが、上記のような本質的問題に確かな解答を与えるものであろうか。