新規開発テーマ・新規発明を見いだすためのデータ分析法
本講座で説明した発明の分析方法はとりも直さず新規開発テーマを捜し出すための技術分析法ともなります。
作用・効果から逆算することにより、今まで認識していた技術とは全く異なるアプローチから当該問題を解決する手段があるのではないか?との推測ができれば、新規技術の開発テーマが見いだせます。
また、まだ発明をしたという認識がない場合でも、自分をとりまく技術(例えば、日々の実験データ、身近な装置、他社の特許)を上記手法で分析することで新たな開発テーマ等を探し、発明を見いだせる場合があります。
特に、他社の特許明細書をこの分析方法で分析し、明細書の盲点を探しだし、その部分を研究して新発明を開発したり、あるいは、他社特許侵害を避ける手段を模索することができます。
その手法を以下説明します。
他社特許発明・従来技術分析手順
静的分析
「目的」「構成」「作用・効果」の項目を有する1枚の紙を用意する。
対象となる特許明細書から
@目的に相当する記載
A構成に相当する記載=請求項記載の構成
B作用・効果の記載
を抽出し、用意した用紙の各項目に振り分けて記載する。
動的分析
@各構成要素に着目=各構成要素が発明の効果を奏するためにどのような機能・作用を有しているのかを検討する。
★その際、特許発明の本質的効果を奏するために、請求項記載の構成がすべて必要かどうかを検討する。
例えば、「A,B,C,Dからなる装置。」という請求項で、構成要素「C」が本来は不要であるとすると、「A,B,Dからなる装置」は、前記特許発明と同等な効果を得られかつ、前記特許権を侵害しないこととなる。
★その機能と同一の機能・作用をする他の代替構成であって、当該明細書に記載されていないものはないかを検討する。作用・効果からのフィードバックによる分析で検討。
例えば、「A,B,C,Dからなる装置。」という請求項で、構成要素「C」と同一機能であるが、「C」とは技術的概念において並列関係にある構成要素「E」が発見されたとする。すると、「A,B,E,Dからなる装置。」は、前記特許権の侵害ではなくなる。
ここで注意してほしいことは、例えば、特許明細書に前記「C」の具体的例示として、c1,c2,c3が例示されており、これらと技術的に並列レベルにある、同一機能の「c4」が明細書中に記載されていない場合の取扱いである。
この「c4」は、c1,c2,c3とは技術的に並列関係にあるが、「C」の下位概念であることには変わりはない。従って、「A,B,c4,Dからなる装置。」は、「A,B,C,Dからなる装置。」の技術的範囲に属するもので、特許権の侵害となる。このように、同一機能の代替構成を単に探し出せばよいというものではないことに注意されたい。
Aある技術に関連した特許が複数存在するかを確認
ある技術に関連して複数の発明が特許出願されているのが通常である。
そこで、複数の発明を前記手法で分析し、その構成を並べてみる。
A出願の ○○物質。→構成は A,B,C,D
B出願の ○○物質。→構成は A,B,E,D
ここで、構成を分解し、再度他の組み合わせ、例えば、A,B,C,Eの組み合わせで同一効果の物質が完成するかを確認してみる。
前記A出願とB出願の出願人がどうしてA,B,C,Eからなる発明を出願しなかったのかを考えると、
(イ)この組み合わせも実験したが、同一効果なし
(ロ)何らかの理由で技術的不利益伴う
(ハ)発明者の見落とし等による出願もれ
等の場合が推定されます。
この場合、理由が(イ)であれば、やむを得ませんが、(ロ)の場合であればその技術的不利益を克服すれば、新発明を開発でき、(ハ)の場合であれば、それこそ、棚からぼた餅です。
以上の分析により、他社の特許発明を、その権利侵害をせずに、自社の技術発展の材料として利用できます。
この分析は、他社技術のパテントマップを併用することで、より戦略的となるでしょう。